王様の耳はロバの耳

横浜在住の偏屈爺が世の出来事、時折の事件、日々の話、読書や映画等に感想をもらし心の憂さを晴らす場所です

山本一力 「深川黄表紙掛取り帳」 を読む

2008-05-06 07:37:13 | 本を読む
ここ半年ほど山本一力氏の作品を読み捲くりました。
同氏の作品の多くは江戸深川界隈に纏わる人情話です。
直木賞をとった「あかね空」も江戸で豆腐造りに苦闘する町人の親子二代に亘る苦労話です。長すぎて読み終わると最初の頃を忘れてしまう位です。

同氏の作品で爺が好きなのは「損料屋喜八郎始末控え」と「銭うり賽蔵」です。
ここで紹介する「深川黄表紙掛取り帳」も似たような系統に思えるのです。

時は元禄7年(1694年)7月に始まります。話しが展開する中で判って来ますが主人公蔵秀(ぞうしゅう)は季節商売の「定斎屋」が表の商売です。
爺は知りませんでしたがクーラーやエアコンが無い時代「夏負け防止」の為の家庭薬を担ぎ売りしてします。
そこで夏場の3月が終わったら残りの季節をどう暮らしを立てたら良いのでしょう? 
なじみの客先から頼まれた「厄介ごと」を片付けた事から口コミで裏の仕事が増えつつ有ります。

蔵秀のブレインと言うかスタッフが三人居ます。彼等は蔵秀の親父が立てた持ち家の一間を事務所兼宿舎代わりに使っています。
その一人は「雅乃(多分まさのと読む)」尾張町の小間物問屋の一人娘で22歳、身長5尺6寸(167センチメートル)です。江戸初期の男性の身長が5尺4寸(160センチ)ですから大柄の上、行き遅れ(婚期遅れ)の様です。 勘の鋭さは仲間の中で抜きん出ています。
次は「辰二郎」印形屋(はんこう屋)の次男坊で絵草子本の作者を目指す27歳。
物事を計数で捉える能力に秀で算盤の達者です。
最後が「宗佑」飾り行灯師の33歳。細工物、仕掛け物よろずに堪能です。
「蔵秀」は彼より4歳若いとありますから29歳の様です。
この4人が一緒なって「厄介ごと」を片付けているようです。

物語は雑穀を扱う「丹後屋」が年間扱う50俵の大豆を500俵も(騙されて)押し付けられた苦境を何とか乗り越える事を依頼された事に始まります。
蔵秀等4人はこの大量の大豆を1升に小分けして2万人ほどの江戸町民に小売する方法を考えて「丹後屋」の苦境を救う方策を考え出します。

上手く行った企画に見えましたが小売した大豆は豆の品質が悪く次の問題を起こしてしまいました。江戸中に小売した豆腐をどう回収したら良いでしょう?

4人の知恵と企画力が試されます。
こうして4人の働きを縦糸に次々と難問を解決して行きます。
その中で紀文事「紀伊国屋文左衛門」27歳が出てきたり徳川幕府老中「柳沢吉保」が出てきてついには非公式に面談なんて事になります。

話は一話ごとに片付き次次と新しい話につながって行きますから読みやすくなっています。 後付を読むと「小説現代」に載った話5話を単行本に纏めた物ですから納得です。
暇なお方は一読あれ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする