雨の名古屋国際会議場です。1年ぶりのオーディオフェスタはほぼ予定通り開催されました。コロナウィルスの影響でソニーとアイシン高丘が展示中止。去年は初めてだったので適当に見て回っただけですが、今回は効率よく回るために予定を組みました。1時間単位で各社がセッションを組んでいるので、学会と同じような感覚でプレゼンテーションに参加します。
まず12時からエクリプス。卵型のユニークなスピーカー、TDシリーズによるサラウンドのデモ。メインのTD712IIが3本にTD508IIIが4本、超低音の725SWIIが2本という豪華な組み合わせ。TD712IIだけで1本40万円します。JVCの200万のプロジェクターで迫力のある4K画像を堪能。TDシリーズは前面の面積が小さいので、画面の邪魔をせずマルチ配列にするにはうってつけ。
ソースは下記。
アビイ・ロード50周年記念スーパー・デラックス・エディションから「ビコーズ」
インド映画「イエスタディ」より。エルトン・ジョンの伝記映画「ロケットマン」より。ポーランド映画「コールド・ウォー」より。「ドリームガールズ」の解散コンサートより。「フォードvsフェラーリ」のゴールシーンより。
大音量の反応の良いデジタルサラウンドは、アクション映画を楽しむには最適ですね。最新の映画館のドルビーサラウンド音響をターゲットにしているだけあって、完成度は非常に高いと思いました。ただ、演者も言ってましたが、この環境を家庭で実現しようと思えば、まず部屋の防音と防振を徹底しないと無理でしょう。私にとっては絵に描いた餅かなあ。
午後1時からヤマハ。こちらは渋くて、高級ピュアオーディオ機器の5000番シリーズでLPレコードの視聴です。
Diana Krall "Tune up the quiet" クラールは視聴用に人気があって、JBLでもデモに使っていました。ボーカルとベースの両方がバランス良く聴けないといけません。
The Dave Brubeck Quartet "Time Out" アルトサックスの定番。
Duke Ellington "Paris Live" これもサックスが聴きどころで、上記との音色の違いに注目。このシステムならLPでもそこまで聴き分けられる、ということです。
Al di Meola "Elegant Gypsy"
Mendelssohn violin concerto in D minor, Viktoria Mullova いつものメンデルスゾーンじゃなくて、若い頃の作品。
Count Basie "Live at the Sands"
さっきのデジタルサラウンドと違って派手さはないんですが、ベースの力感とかサックスの超絶技巧とか、フラメンコギターの弦の軋む様子とか、聴き込めば十分な情報量があることがわかります。LPにもまだまだ聴こえていなかった音が入っているということですね。スピーカーのNS-5000は開発に8年を要した力作で、特定のキャラクターを排除することに尽力したとのことで、弦の微妙な揺れを表現するかと思えば、ビッグバンドの重なった音をダンゴにすることなく、苦もなく提示して見せます。底しれぬ実力、という印象で、私の耳では限界がわからないですね。セットで150万の大型スピーカーですが、価値は十分にあるのだと思います。
あと演者が強調していたのが、5000番シリーズ最新のLPプレーヤー。振動を極限まで減らすため、敢えてモーターを小型化してベルトドライブ採用。ターンテーブルは重量級なので、スイッチを入れてから低速になるまで10秒という規格外のおおらかさ。昭和の時代にハイエンドマニアを対象とした巨大糸ドライブのターンテーブルと思想は同じですね。ダイレクトドライブと違ってスピンドルが頑丈なので、待ち切れなければ手で加速してやればいいでしょう。
不思議だったのは、LP時代に散々悩まされた針雑音が全くと言っていいほど聞こえなかったこと。乾燥して静電気の起きやすいこの時期に、ヤマハにはどんなマジックがあったのでしょうか?後で聴いたJBLの会場では、昔懐かしいプツプツ音が派手に飛び交っていたので、21世紀のLPが静電気から開放されたということはないはず。