題名に惹かれて入手。前置きが長くて、スパルタの兵士のトレーニングとかローマの軍団の話を引用しています。21世紀の先進国において、「強くならなければ潰される」というプレッシャーが最も作用するのは監獄の中で、20年収監されていた著者が設備も道具もなしに体を有効に鍛え上げるために、交流のあった囚人や看守に学び、本を読み漁って実践したノウハウをまとめたものだそうです。
著者のポール・ウェイドは近代的なトレーニングに否定的な人で、バーベルやノーチラスマシンを「おもちゃ」、ジムでパンプアップしたビルダーの体も「筋肉付けて髪の手入れすら不自由になった」と見下します。この辺は各人のゴールの設定の違いであって、ヴィジュアルな誇張された筋肉やベンチプレスの数字を追い求める人もいるし、囚人として襲われないように「動ける筋肉」を必要としている人もいるので、必ずしもウェイドに全面賛成しなくても本書は役に立ちます。
具体的なトレーニング編の腕立て伏せの進め方、強度の高め方を見れば、このトレーニングが合理的なものであることは十分に理解できます。道具を使わずに、どれだけ筋肉や靭帯、関節などの自然な協調を保ったまま強度を上げられるのか、故障やステロイドの副作用に苦しまずにゴールを達成できるのか、やはり十分な考察と経験がなくては書けない本だと思いました。まだ全部は読んでないので先が楽しみです。訳文も曖昧さがなくて読みやすく、いい仕事だと評価できます。