恐竜の王様として子供に大人気のティラノサウルス。でかい顎で何でも噛み砕きそうですが、動きが鈍いので狩りは上手じゃなかったそうです。生後数年から15年ほどの子供は体形がずっとスリムで動きが速く、むしろ子供が狩りの主役だったとも言われています。子供が獲物を追い込み、親がでかい顎で仕留めたということでしょう。
実際に化石を調べてみると、子供から成獣に体形が大きく変化する15歳ぐらいでほとんどの個体が死んでいるらしいです。個体レベルで考えれば、動きが鈍くなって餌が取れなくなったからと解釈できますし、群れとして考えれば、獲物の追い込みに必要な「勢子」役の子供はたくさん必要だけど、「猟銃」役の成獣はそんなにいらないということ。
巨大な体を維持するために膨大な餌が必要なので、成獣が増えすぎると効率が悪いのです。恐らく、15歳ほどで「口減らし」のために群れを追い出され、自前で子供を作るまでは苦難の日々が続いたのでしょう。だからティラノサウルスの「人口構成」は極端なピラミッド型だったと推定されます。「ティラノサウルス」と言えばこの巨大な体を思い浮かべるのが普通ですが、実際は子供が主役だったようですね。
こちらも子供に人気のトリケラトプス。恐竜化石の宝庫である北米では、恐竜時代の末期になるとティラノサウルスとトリケラトプスの割合が増え、種族としての恐竜がとても単調な構成になったと言われています。自動車産業の黎明期にあった中小の会社が統廃合され、今では巨大メーカーしか残っていないのに似ています。
今の巨大自動車メーカーが、綿密な市場調査の結果、「売れるクルマ」を目指すことでどこのクルマも似たり寄ったりになってきたのと同様、最も環境に適応したティラノサウルスとトリケラトプスだけが増え、恐竜の総数としては繁栄を謳歌する一方で、異なった環境への適応力がなくなっていきます。
そのような状況で、恐竜に抑圧されて、あの手この手で恐竜の支配の及ばない「ニッチ」に生きていた哺乳類は、生き残りのために多様な姿や能力を獲得します。そして実態はよくわからないのですが、突然「ネメシス」がやって来ます。地上の支配者であった恐竜は絶滅し、哺乳類にその地位を明け渡します。ちょうど、技術開発を軽視して、同じエンジン、同じシャーシに化粧直しをするだけで人気商品を次々に作り、巨利を貪った末に競争力を失っていったアメリカの自動車メーカーのように。
今夏の特別展、中国は雲南の恐竜展示のハイライト、ユアンモウサウルスです。全長17m。でか過ぎて内蔵ストロボでは光が届きません。
この日は特別に民族楽器の演奏会がこの化石の前で開催されたのですが、赤ちゃん連れだったので諦めました。
ユアンモウサウルスの尻尾のところに展示されていたルーフェンゴサウルス。これでも十分大きいです。
ルーフェンゴサウルスの大腿骨に触って、博物館から証明カードをもらいました。