いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

Jane Eyre

2008年07月30日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 目下の通勤の友は名作"Jane Eyre"です。大英帝国最高の繁栄と言われるヴィクトリア朝は芸術活動においても百花繚乱の黄金期であり、小説だけでも最大の文豪ディケンズに加えてブロンテ姉妹、サッカレー(虚栄の市)、ワイルド(幸福な王子)、エリオット(ミドルマーチ)、スティーブンソン(宝島)、ドイル(シャーロック・ホームズ)などの著名な作家を輩出しています。

 産業革命後の工業化により急速に豊かになった大英帝国ですが、社会的にはまだ古いキリスト教的価値観が支配しており、女性の小説家がようやく世に出始めた状況でした。最初は男性名で作品を出さないと出版もできなかったようで、ジョージ・エリオットは男性名ですが実は女性作家ですし、ブロンテ姉妹も男性名で詩集を出したことがあるそうです。"Jane Eyre"はそんな時代の重苦しい価値観に反発して、旧態依然の男性社会に踏み潰されそうになりながら懸命に生きていく孤児の姿を描いて好評を得た作品です。

 孤児たちには「肉体の苦痛を忍んで神の教えに近づくこと」を強要しながら、自分と家族は安逸で贅沢な暮らしをしている偽善者の校長が経営する"Lowood Institution"は、度を過ぎた清貧を押し付けてブロンテ姉妹の二人を肺炎で死なせた実際の学校がモデルになっているそうで、描写もリアルです。

 女の子の10歳からの回想録というスタイルにしては語彙が非常に豊富で、辞書が頻繁に必要になるため、通勤には荷物が増えてしまうのが難点ですが、今読んでも大変面白いです。古本で入手したので、40年前のオーナーがあちこちに書き込んであるのも一興です。まさに名作は時代を超えるという実感があります。
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