濃い紫色にまで完熟したヤマモモ。ここまで来れば、好きな人には絶品です。極楽息子(大小)には人気がないのが大変残念です。子供の喜ぶような単純な甘味だけではなく、豊富なクエン酸を感じさせる酸味と、濃度の高い色素による風味、まあポリフェノールとか言うんでしょうが。それから独特の樹脂性の風味など、赤ワイン用のブドウとの類似を思わせる奥行きのある味わいで、多分赤ワインの好きな人ならわかって頂けるのではないでしょうか。
難点は日持ちがしないことと、歩留まりが良くないことですね。完熟する前にかなりの割合で落ちてしまいます。従って、徳島のような地元では喜ばれても、大消費地への出荷がほとんどなく、知られざる名物という地位に甘んじています。街路樹や庭木用のヤマモモが普及しているのも痛し痒しで、街路樹用には下を汚さないように雄木が選ばれるのですが、たまに雌木が紛れ込んでいて、実を付けることがあります。図鑑などで「食べられる」と書いてあるため試してみる人もいるでしょうけど、街路樹の実は小さくてあまりおいしくありません。だから、食べてみた人のほとんどが、「食べられないことはないんだな」で終わってしまうんでしょう。ヤマモモの名誉のためには惜しいことです。