いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

菊正宗酒造記念館(酛場、槽場)

2020年06月04日 | 極楽日記(日帰り)

酛場(もとば)は酛(もと)とか酒母とか言われる清酒酵母を培養する所。酵母(イースト)は多種多様であり、特に酒造に適したものが清酒酵母として継代培養されています。

酵母を培養するために乳酸菌を先に培養して、産物である乳酸を餌に酵母を増やす、という高度な技法が開発されていました。これは多分、乳酸菌の増殖の速さと乳酸による腐敗防止作用を利用しているのでしょう。原核生物である乳酸菌は増殖が速く、速やかに環境を酸性にして雑菌の繁殖を防ぎます。酵母は真核生物で増殖がやや遅いのですが、雑菌が増えないような酸性の環境でも乳酸を餌にして増殖し、やがてアルコールを作ることで雑菌や乳酸菌を死滅させます。アルコールが十分にできたところで、今度は人間様が火入れをして酵母にも退出願う、という都合のいい仕組みになっています。ここまで完成するのに何百年も掛かったでしょうね。菊正宗酒造では酒造に使われてきた乳酸菌の解析もしています。

槽場(ふなば)は器具を見てわかるように酒を搾る所。原酒を袋詰にして、酒槽(さかぶね)と言われる舟のような形の箱に詰めます。器具を見ると圧搾用のてこが目に付きますが、圧搾せずに自然に流出させる揚槽(あげぶね)の酒が上等であり、その後に圧搾して絞り出す責槽(せめぶね)の酒は雑味が多くなり品質はやや落ちるとされています。一つの袋を揚槽に2段、責槽に1段通せば3段階の清酒ができて、それぞれ荒走り(あらばしり)、中取り、責め、などと呼ばれています。通常はこれをうまく調合して製品にするのでしょうが、同じ銘柄で3段階のものを別に販売しているマニアックな蔵もあるようです。

 

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