いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

マツダCX-5は売れるだろうか

2012年02月17日 | 自動車
 自動車で今月最大の話題と言えば、マツダCX-5でしょう。このクラスのクロスオーバーSUV (Sport Utility Vehicle)はトヨタRAV4や日産エクストレイル、ホンダCR-Vなど先行車種があり珍しいわけではありませんが、高性能低燃費と期待されていた新型ディーゼル、SKYACTIV-Dのお目見えを含み、相当な意欲作ということで関心を集めています。

 日本では乗用車用のディーゼルが長らく廃れていました。市街地が多い日本の交通環境で、ディーゼル車の増加による大気汚染が大きな問題になったからです。特に東京都が石原知事の肝煎りで排出物の規制を大幅に強化し、新しい基準の対策車以外を取り締まったり、汚染の元凶とされた変造軽油を摘発したりと積極的に動いたのが契機になって、日本全国でディーゼル排出物への関心が高まりました。この結果、政府も世界一厳しいと言われるポスト新長期規制を制定し、新車として販売されるディーゼル車は厳重な排出物対策をとった、いわゆるクリーンディーゼル車のみとなったのです。

 クリーンディーゼルは旧型ディーゼルに比べて触媒などのコストが高く、大型車においても価格の改定や車種整理を引き起こしましたし、元々が値段の安い乗用車ではディーゼル車の廃止に繋がりました。この状態が10年ほど続いたでしょうか。その間に、日本よりも市街地走行の少ないヨーロッパではディーゼル乗用車に人気が集まり、各社が新型車を投入していました。日本のメーカーもヨーロッパ用にはディーゼルを搭載していたのです。

 ディーゼル乗用車の本場になったヨーロッパから戻って来るような形で、日産がエクストレイルのクリーンディーゼル版を世に問うたのが2008年。しかし値段が同装備のガソリン車に比べて50万円ほど高く、燃費で元を取るのが難しいとか、当初はマニュアルミッションしか用意されなかったということが響いて、大きなヒットには繋がりませんでした。CX-5ではコストダウンに努めた上で、安価なFF車を用意したため、6ATのディーゼルが258万円から。4WDでも279万円と努力しています。エクストレイルディーゼルの6AT車には4WDしかなく、値段は314万円からなので、「FFで十分」という人にとっては何と56万円差です。これでは勝負にならないでしょう。

 公表されている燃費もエクストレイルが15km/L程度、CX-5が19.4-20km/Lと後発のCX-5が大幅に改良されています。CX-5の実燃費はコンパクトカー並みになりそうですね。

 CX-5ディーゼルがエクストレイルディーゼルよりも格段に競争力があるのはよくわかりました。しかし一番競合するのは、実は同じCX-5のガソリン版じゃないでしょうか。燃費効率こそ17.6km/Lとわずかに落ちますが、これもマツダの売り物であるSKYACTIV-Gの威力で立派なもの。何より、装備が違うとは言え205万円からあります。これでもABSやスタビリティコントロール、マルチエアバッグまで標準装備ですからとても安いと感じます。世界で年16万台の販売を見込んでいるということなので、売れることを前提とした戦略的な価格設定です。

 やはり出たばかりのホンダCR-Vが15.4km/Lで、これでも1.5t近い2Lガソリン車としては立派なのですが、圧縮比13のCX-5が楽勝です。ホンダがCR-Vに2Lモデルを投入してきたのはCX-5対策なのでしょうが、それでも及びませんでした。ただし、先に出たデミオでは「カタログに書いてあるほど燃費が良くない」という批判もあり、運転のパターンによってはCR-Vが逆転する可能性もあります。CR-Vのつや消しは値段。これも世界のベストセラーカーのひとつなのですが、日本ではたいして売る気がないらしく248万円から。最初から勝負あったということころです。

 技術的には新型ディーゼルに興味があるものの、CX-5の売れ筋はバーゲン価格のガソリン車だと予想します。市街地で確実に10km/L以上走れるなら、一般家庭の走行距離数なら十分でしょう。プリウスに食傷気味の人が、同価格帯ということで評価してくれれば、日本でもヒットするのではないでしょうか。
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