いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

名古屋から変わるか教育委員会

2009年09月02日 | たまには意見表明
 新聞各紙によれば、名古屋市の河村市長が教育委員に学習塾経営者を任命の意向とのことで、なかなか面白い試みだと思いました。早速名古屋市教育委員会について調べてみようと思ったのですが、事務局のページしか見当たらず、どういう人が教育委員を務めているのかわかりません。教育委員会は自治体の首長から独立して教育業務を行うとされているはずですが、現状では市役所の一部局という扱いなのですね。

 そこで愛知県教育委員会のサイトを見てみました。教育委員の紹介もあります。PTA代表、弁護士、大学教授、元校長、会社社長ときて、最後の教育長だけ肩書きがないのは、県の職員でしょうか。

 戦後しばらくの間、教育委員は公選制でした。当初は予算や人事にも大きな権限があり、かなりの有力者が委員になって自治体首長と対立することもあったようで、これを嫌った政府により公選制廃止と権限の大幅な縮小が決定されて今に至っています。首長の任命制となった教育委員は、県や市の職員の横滑りであることも多く、首長から独立して教育行政を執行するという目的が形骸化しています。

 私は小学校と中学校が名古屋市立、高校が愛知県立でしたが、いずれも教育委員会の存在をほとんど感じませんでした。文化財の管理や文化活動の主催、表彰、教材の追認、広報などが業務のようで、教育委員会において教育の現場を左右する決定がなされたという記憶はありません。こんな名誉職みたいな機関がわざわざ独立している意味はない、と多くの人が感じるでしょう。これなら教育委員なしの事務局だけで十分です。

 不活性化した教育委員会が社会の要請に対応できていないという指摘は以前よりあって、臨時教育審議会や教育改革国民会議でもこのことに言及されています。東京では一時的に中野区が準公選制を導入していますが、元の公選制と同じように上からの圧力で潰されます。首長にとって、公選制の教育委員は余程目障りなんでしょうね。

 私は責任の所在がはっきりしていれば教育委員が公選でも任命でも構いません。現状では法律的に公選制の復活が困難であり、任命制を維持しつつ教育委員会が活性化するような人選を考える必要があります。名誉職と化した教育委員会を改革して教育効果を上げるためには、教育の現場を熟知する委員が必要です。「学習指導のプロ」と言われれば、子供を持つ名古屋市民の多くは学習塾の先生や予備校の先生を連想するのではないですか?河村市長によれば「小中学生の7割が塾に通っている」現状で学習塾を敵視しても益はありません。

 学習効果を本当に上げようと思えば、東京や名古屋市の多くの家庭では塾通いを選択します。これは学校の先生が必ずしも能力不足だからではなく、落ち着いて学習指導ができるシステムになっていないからです。生活指導や行事、不登校や犯罪など、学習指導以外のことで時間と労力を奪われ、1クラスが40人では意欲的な先生だって参ってしまいます。塾経営者が教育委員になったからと言って、これを直ちに学習塾の環境に近づけられるわけではありませんが、学校における業務の優先順位を塾の目から評価するのはとても意義のあることだと考えます。だって、昔も今も学生の本分は勉強なのに、あまりに雑事に追われる先生が多いと思いませんか?

 教育委員会の介入により学校が本来の教育機能を回復できたなら、この名古屋発の試みに大きな意義があったことになります。河村市長の政策には、今まで正直言って感心したものがありませんでしたが、今回の教育委員会の人事にはお金が掛かるわけでもなく、餅は餅屋にという当然の選択なので期待しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする