いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

新型インスパイアはどこが違う

2007年12月20日 | 自動車
 ホンダのインスパイアがモデルチェンジしました。販売目標が月500台というのを見ればわかりますが、あまり売れると思っていないようです。簡単にスペックを見ると、全長4,940mm、最小回転半径5.7mとあり、都市のドライバーならこれを見ただけで候補から外すでしょう。これは北米市場のための余裕のあるセダンであって、狭い日本の街には合っていません。

 これでインスパイアの評価は終わりかな、とも思いましたが、一般向けの技術資料である"FACT BOOK"を見てみるとなかなか面白い。このクルマが北米市場における主力車種であり、ホンダが渾身の力を入れて開発したことがよくわかるからです。

 エンジンの細かい可変気筒制御は今更目新しくもないと思いますが、この技術を継続して(つまり改良して)採用しているのは主要メーカーではホンダぐらいでしょう。GMも三菱も採用したことはあっても、その後が続きませんでした。ただでさえ複雑なエンジンのヘッド周りが更に複雑になるので、信頼性のあるメカニズムは日本のメーカーでなくては生産不可能でしょう。今度は6気筒から4気筒、3気筒と3段階の制御です。

 レギュラーガソリンで280馬力を実現したのもたいした技術ですが、一説によるとホンダのレギュラーガソリン車は、ハイオクを入れた方が調子が良くなるらしいです。ミラーサイクルなどの特殊技術を使えばノッキングなしで出力を上げられるでしょうが、そうした離れ業なしで出力を上げるためには、地道なフリクション低減などを積み重ねたものでしょう。1つだけわからないのは、これだけやったのに10/15モード燃費が旧モデルの11.4km/Lから9.8km/Lに悪化していることです。日本の試験モードに合わせる余裕がなかったのでしょうか。

 ホンダが変わったな、と思わされたのはシャーシの方ですね。ホンダが重心の低さに拘り続けて来たのは、低重心ミニバンの宣伝を見てもわかりますが、ロールセンターを上げた、と公言したのは私が知る限りこれが初めてです。車体はロールセンターを中心にロールしますから、極端に言えばロールセンターが高ければスキー場のリフトみたいな上から吊られているようなロールをしますし、低ければバイクみたいに下でロールする感覚になります。

 ホンダのクルマは伝統的にロールセンターが低く、山道などではひょこひょことバイクみたいな感触で頭を振られながら走るような印象がありました。なるほど、バイク屋がクルマを作るとこうなるのかな、という納得はありましたね。もちろんバイクとはロールの方向が逆ですが。

 ただ、上から吊られているのと、下から棒で支えられているのと、どちらがロールした場合に安定感があるかと言いますと、上から吊られている方です。ロールセンターが上にあると、体感ではロールしても復元力が働きやすいように感じるのか、それとも頭が揺すられないからなのか、安心感があります。この点でお手本はフォルクスワーゲンなどの輸入車で、以前乗っていたヴェントVR6では、小さいクルマながらどっしりした感触があり、路面の荒れた高速道路でも微塵も不安を感じさせませんでした。ロールセンターだけの問題ではないでしょうが、インスパイアがあんな足回りならもちろん大賛成です。

 後は可変ステアリングレシオですかね。舵角が大きくなるほどレシオをクイックにして、微分ハンドルに似た特性を持たせているようです。使い慣れれば小型車のようにきびきびと走れるかも知れませんね。かつて流行した4WSの感覚が甦るかも。

 トヨタという強力なライバルがいるため、騒音対策も高度なものです。最新のフィットに試乗してもわかるように、ホンダのエンジンマウントは大きく進化しており、振動と騒音を効果的に封じ込めています。フィットなど小型車にもかかわらず、ハイブリッドに匹敵するアイドリングの静けさを実現していましたから、インスパイアではあらゆる領域で静かなドライブが楽しめるのでしょう。

 インスパイア自体はファミリーカーとしてやはり大き過ぎますが、この技術が他の車種にも展開されれば、なかなか面白いクルマになりそうです。
コメント
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