アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Famous Last Words

2009-05-01 20:01:42 | 音楽
『Famous Last Words』 Supertramp   ☆☆☆★

 スーパートランプ7枚目のスタジオアルバム。大ヒットした『ブレックファスト・イン・アメリカ』に続く作品にして、ロジャー・ホジスンが在籍した最後のアルバムである。

 最近久しぶりに通して聴いて、なかなかいいアルバムだと再認識した。楽曲の充実振りは決して『ブレックファスト・イン・アメリカ』に負けていない。ロジャーの曲は内省的で静かな曲が多いがポップさ、キャッチーさともに絶好調だし、もう一方のリック・デイヴィスの曲は多彩で遊び心や大人の余裕のようなものを感じさせ、むしろ『ブレックファスト』よりもいい曲を書いていると思う。きわめてAOR的だった『ブレックファスト』に比べて、『Bonnie』や『My Kind Of Lady』といった曲ではこの人たちらしい温かみのある、オールドファッションな持ち味が蘇っている。ひんやりした清涼感を漂わせたロジャーの曲と、暖かく大らかなリックの曲のコントラストがとてもいい。ピアノやオーケストラ、コーラスを活かしたアレンジも華やかでとてもカラフル。ちょうどこのアルバム・ジャケットのように。

 しかし惜しむらくは、リック、ロジャーそれぞれが書いた最後の二曲が両方ともやたら暗く、しかも力が入り過ぎたかのように長くて大仰だ。そのせいで聴き通した後に妙な疲労感が残ってしまう。アルバム全体のバランスを崩している。特にオオトリのロジャー作『Don't Leave Me Now』は暗い上に感傷的、メロディは単調、おそらく本作のロジャー作品中最低の出来だと思う。なぜこの曲を最後に持ってきたのか理解に苦しんでしまう。そこまではむしろ明るく華やかな雰囲気で進んでくるので、この構成に余計に違和感を感じてしまうのである。この二曲がフィナーレにふさわしい出来だったら確実に『ブレックファスト』に並ぶ傑作になったと思うので、残念だ。

 ついでに言うと、私が持っているこのCDはどうも音がこもり気味で、他のスーパートランプのアルバムと比べて明らかにシャープさに欠ける。これも印象を損ねている理由の一つだが、最近のリマスター盤では改善されているのだろうか。


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