アブソリュート・エゴ・レビュー

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座頭市逆手斬り

2014-07-28 23:13:59 | 映画
『座頭市逆手斬り』 森一生監督   ☆☆

 久しぶりに座頭市ボックスを引っ張り出して、残り少なくなった未見の一話を鑑賞。シリーズ第11作目。バクチでつかまった座頭市、牢の中で島三という男に「おれは無実だ、身の証を立ててくれるはずの男二人におれの窮地を知らせてくれ」と頼まれる。しかし案の定、その男二人が島三をはめた張本人で……という話。あとは大体いつもと似たような感じだ。

 本作のウリは多分藤山寛美の出演と、彼が演じるニセ座頭市だろう。これがものすごくいい加減な男で、まあ悪人というわけではないが、旅で出会った座頭市のふりをしてあちこちのヤクザから用心棒代をせしめ、出入りの前に逃げ出すということを繰り返して座頭市の評判を下げまくり、本人を激怒させる。そしてある町で例によって座頭市のふりをしてヤクザに金を出させ、ご馳走を出せ、女を呼べ、など言いたい放題言った挙句、按摩を呼べ、というのでやってきた按摩が座頭市本人。最初は気づかずに揉ませているがやがて気づいて大慌て。あまりにもベタだが、ここ一応笑うところである。

 全体的にはいかにもプログラム・ピクチャーという出来で、シリーズ中どっちかというと出来が悪い方だ。脚本があちこちテキトーである。たとえば女があまりにも都合よくあちこちに出没したり、島三が助かった描写が省かれていたり。座頭市が藤山寛美と出会う射的屋の場面では、座頭市が動いている的に百発百中で弓矢を当てるが、いくらなんでもあれは無理だ。あれが出来るならもう盲目じゃない。スーパーマンにし過ぎである。
 
 それから殺陣にしろタンカにしろ、これぞという印象に残る場面がないのが痛い。敵の浪人もザコキャラだし、座頭市にまとわりついてくる女も存在感なし。あえていえば、ヤクザの親分の一人を演じているのが『白い巨塔』『天国と地獄』にも出ている石山健二郎(スキンヘッドのごつい役者さん)で、さすがの迫力を見せてくれる。ただし登場場面は少ないし、あまり活かせているとは言いがたい。

 これもまた、座頭市シリーズ全話制覇を狙っている人以外、観る必要のない作品かも知れない。



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