アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Destroy Rock & Roll

2005-10-26 09:23:56 | 音楽
『Destroy Rock & Roll』 Mylo   ☆☆☆★

 Amazonのレビューやネットの各所で絶賛されているのを見て購入した。「カリスマDJ」、「ロイクソップへのスコットランドからの回答」と随分持ち上げられているようだ。まあなかなか良いし、売れるのは分かるが、絶賛されるほどではないような気がする。

 これはクラブジャズでもなく当然ボッサでもラテンでもなく、おそらくはブレイクビーツでもダブでもない。エレクトロニカやチルアウトと言えば言えないことはないだろうが、私的には音響派的なテイストが感じられないので躊躇してしまう。では何かというと、一番近いのは昔のいわゆる「ディスコ・ミュージック」だと思う。クラブ、ではなくディスコ、って感じ。もちろんそのままじゃなくてそこから一ひねりしてあるが、ジャズやラテンやアンビエントの風味はほとんどまったくない、80年代ポップスのテイストで作られたダンス・ミュージックもしくはエレクトロ・ポップである。

 もちろん、だからいかんということはないのであって、ノスタルジックで、キャッチーで、メロディアスな曲の数々はなかなか魅力的だ。かなりキュートな曲もある。クールというより暖かい感じの曲調。ヴォコーダーとか使われているし、シンセの音もアナログっぽい肌触りでこだわりを感じさせる。そういうところは全然悪くない。しかしリズム・トラックがどうもチープな気がするんだけれども、これもレトロ感を出すための計算なのか。音の組み立ても緻密というよりは、どこか大味なんだがこれもノスタルジーなのか。

 ロイクソップと比較されるのは分からないでもない。彼らもメロディ志向だし、アナログっぽいシンセの音を生かした少々レトロなテクノの味わいを持っている。しかし音の緻密さやリズム・トラックのセンスはロイクソップの方がワンクラス上だと思うのだが、どんなもんだろう。

 繰り返すがこういうのも嫌いじゃない。というか、この80年代レトロな感じはかなりイイのである。1曲目の『Valley Of The Dolls』は名曲といってもいい。可愛らしいシンセのストリングスとブラス、エフェクトがかかったコーラス、シンプルなビート、そして明るく切ないメロディ。ポップの王道である。この曲を聴き終え、メランコリックでノスタルジックな2曲目のイントロが始まった時は「このCDは傑作だ!」と思ったものである。
 
 しかし、全曲聴き終えてみると全体に漂う音の大味さとリズムトラックのチープさがあちこちで気になり、傑作とまでは言えないというところで落ち着いた。そこがノスタルジックでいいのだ、ということなのかも知れないが、私にとってはマイナスポイントだった。

 良かったのは1曲目『Valley Of The Dolls』、2曲目『Sunworshipper』、6曲目『Guilty Of Love』、最後の『Emotion 98.6』。ここらへんはレトロ感が良い方向に出ていて、チャーミングだと思う。ファンタスティック・プラスティック・マシーンに通じるお洒落ポップな感覚がある。

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