崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

『時が滲む朝』(文芸春秋社)

2008年08月22日 07時17分31秒 | エッセイ
中国からのニューカーマーの楊逸氏が芥川賞を受賞したことを耳にした時は新鮮なショックであった。それはニューカーマーがそのような権威ある賞を受けたことと、天安門事件を描いたと報じられていたからであった。ニューカーマーにとっては難しいことだと思いからそれは文学外の戦略的な配慮の賞ではないかと思うほどであった。さっそく『時が滲む朝』(文芸春秋社)を買い求め読み始めた。中国民主化の運動を描きながら、実にページ毎に私がこなせない言葉が場面を効果的に表現している。「国を愛することはできても人を愛することが言えない社会か」という言葉が痛感する。私は中国の民主化にはいつも関心を持っていて、中国からの留学生はなぜそこに関心が薄いのかと疑問を持っていたが、この小説によって民主化へ大きい意欲を持つようにという作家精神が読み取れてうれしく思う。この作品は日本に多くいるニューカーマーにとって励まされる小説である。その迫力を感じたのである。