いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

保険会社の不払い問題

2007年09月30日 19時05分58秒 | 社会全般
これも、大変大袈裟な感じで、あたかも保険会社が意図的に支払いを拒否したり、払うべきはずの保険金を払わなかったかのように報じられていますが、本当にそうなんでしょうか?

確かに、払いたくないから敢えて拒否みたいなことは、ごく一部にはあったかもしれませんが、もし全部がそうであるなら保険会社の殆どは潰れるでしょう。誰も信用しなくなり、加入する人たちはいなくなりますよ。加入者たちも一斉に解約手続をするかもしれませんよね。でも、現実には殆どの場合において、貰うものは貰えているからこそ、保険会社も保険も続いているのではないかな、と思います。

Yahooニュース - 毎日新聞 - <生保不払い>大手4社で100万件400億円規模に

(一部引用)
金融庁の命令を受けて生命保険各社が進めている保険金の不払い調査で、日本、第一、住友、明治安田生命保険の大手4社の不払い件数が100万件、金額が400億円規模に達する見通しであることが27日分かった。大手4社は来月5日に金融庁に調査結果を報告するが、金融庁が調査不足と判断して再調査を命じる事態になれば、さらに不払いが大幅に増える可能性もある。
 大手4社の不払い件数は、調査途中の4月中旬には合計で20万件、163億円とされた。しかし、調査が進むと、1件当たりの支払い金額が数百万円となる3大疾病特約の不払いが大幅に増え、さらに4月の時点では手つかずだった通院給付金の不払いも、各社とも10万件前後に達した。

◇◇


こう言ってはナンだが、大した額でもないんじゃないの?100万件ですから、平均で1件当たり4万円くらい、ってことですよね?これは加入者が「申請しなかったので」保険会社が気付かなかった、というものなんですよね?そんなに大袈裟に言う程のことなんでしょうかね。

例えば、生命保険に特約がついていて、入院して手術を受けた後で退院してからも通院日数があった、みたいなもので、入院期間中の分だけ申請していて、その後の分は手続をしていなかった、というようなことなんですよね?そんなの加入者が注意を怠った部分が大きいのですから、しょうがないんじゃないですか?確かに契約内容が複雑だとか、特約までは細かく憶えていないとか、色々とあるかもしれないけれども、忘れたのは加入者にも責任がありますよ。まるで保険会社が全て加入者たちを騙していたかのような印象を与えるのは良くないと思いますよ。

こういう手続をする場合、申請用紙を保険会社から取り寄せて、自分が入院していた病院に提出して記載してもらい、それを保険会社に提出するんだろうと思うけれど、「退院するまでに記入しておいてもらえませんか」みたいにお願いしてるなら(精算とか何かの都合上?なのか判りませんけど)、退院する時に用紙を受け取ってしまうので、その後の通院分を忘れる、みたいなことはあるかもしれません。それに、通院終了時にまた書類を提出し、それを受取ったりする手間暇みたいなのが面倒なので、別にいいか、みたいに思ってる人もいるかもしれないでしょ。文書料を取られたり、交通費かかったり、先生に会ってお願いしたりする時間とか、そういうモロモロが面倒だな、とか思うことは不思議じゃないし。ただ単にうっかり忘れたりしてるだけかもしれないし。

要するに、こうした手続関係を各個人が網羅するというのは中々大変だし面倒だ、ということ。ならば、それら手続きを一括でやる、みたいにしておけばいいけれど、そうなれば保険料が上がるとか代行手数料がとられてしまうのは当然なんですよ。保険会社の方では、いちいち誰が何回通院した、とか、判らないんだから、基本的情報(手術したか、しなかったか、とか、通院何回した、とか、してないとか)を保険会社に全て加入者が伝えない限り知りようがない。毎回毎回、退院した後に通院はありましたか、みたいに確認することはできるかもしれませんが、相談する分だけ高い値段設定にしておくならばいいと思うけど。

証券会社の口座管理料みたいなもので、あれこれ相談したりアドバイスして欲しい人は高い金額を取られるし(職員の時間とか手間暇を消費するのだから当然だな)、ネット証券みたい全部自分でやりたいです・できます、という人は人的コストが少ない代わりに安い値段設定になっているのだから、加入者が「自分の契約について正確に知らなかった、自分でできなかった」みたいに言う人は自分だけ高い金額を払うべきだろう。今回みたいな騒動のせいで、自分できちんとできてる人たちの保険料まで値上げされたりするなら、いい迷惑というものだ。保険会社も証券会社みたいに、手取り足取り全部お任せでやってあげるシステムと、加入者が自力でやるシステムと分けておいた方がいいんじゃないかな。

普通の公的健康保険制度にしても、例えば「高額医療費」の払い戻し制度なんて、原則自分で手続に行かないと「あなたは払い戻しが受けられますので取りに来てください」なんてご案内は来ないわけですが。海外での疾病とか傷害なんかの給付にしても、手続は自分でやらないと誰も教えてくれないと思いますけどね。死亡後の給付にしてもそうじゃなかったかな。何で公的健康保険制度でやってないことを、民間に強制するのかちょっと疑問なんですよね。税金の還付申告にしても、全て「自力で手続」しない限り、税務署に取りに来てください、なんていうご案内はしてくれないんですけどね。知らなかった、というのは理由にはならんでしょう?普通。何で教えてくれなかったんだ、みたいに税務署に誰も怒鳴り込んでは行かないでしょう?住宅関連の減税にしても、忘れてるとか知らないとか、難しくてよく判ってないので自分で出来ないとか、事情が色々あるとしても、役所で不動産登記したら自動的に教えてくれる、とかもありません。誰も手続をしてくれたりしないんですよ。自分でできないのであれば、税理士みたいな誰かに還付申告を代行してもらうしかなく、その分は「料金を取られる」ことになるのですよ。サービスの向上を求めるのであれば、その分は高くなってしまっても止むを得ないということなんですけどね。

でもこれが民間保険会社となると、何故これほどまでに完璧を求めるのか不思議ではある。忘れたのは加入者であって、保険会社側には大きな落ち度というものはあまりなさそうに思えるけど。いや、勿論、加入者全部に「漏れはありませんか、○○は大丈夫ですか」みたいにチェックしろ、ってことは有り得ると思うけど、そういう「上等なサービス」を義務化するならば、その分は上乗せコストが掛かるのを覚悟しているならいいんですけどね。

こうした「契約してるんだからお前らの責任だろ、こっちは客なんだよ、客にサービスするのは当たり前だろ」的な発想は、あまりに行き過ぎると「モンスターpatient」なんかと同じ感じだなと思うわけですよ。保険会社がみんな悪意を持っていたり、重大な落ち度で不払いだったのではなくて、加入者側からの情報提供とか聞く・尋ねるみたいな基本的コミュニケーション不足ではなかろうか、と思うのですよ。もしも、全件で「意図的な不払いだった、加入者を騙した」みたいに言われるのであれば、公的年金も健康保険制度も税関係も、ほぼ全部が「不払いが常態化」「国民を欺いてきた」ということになってしまうでしょう(笑、事実そういう部分が明るみに出ているわけで)。


知らない、ということは、基本的には個々人においても責任を負わねばならない部分がある、ということです。それを回避する為には、代理人のような誰かに依頼するとか、できる人にそれをお願いすることになり、その分のコストは「知らない人」が支払わねばならない、ということです。



早稲田大学消費者金融サービス研究所のこと

2007年09月30日 14時05分50秒 | 経済関連
今更感が漂うのだが、一応書いておく。

はてなブックマーク - MyNewsJapan早稲田大、サラ金業界と癒着 寄付5千万円で“御用論文”量産

反応としては、酷い、嘘つきだ、みたいな意見がありがちだと思うが、まずは本当に「御用論文」と言える代物なのかどうかの評価をきちんと行うべきであろう。それは一般素人からの批判だけでは不十分で、専門家が経済学のルールに則って評価するべきものだろう。なので、単純に「インチキだ」というような批判をしても、それはそれであまり良くはないと思う。

MyNewsJapan

この記事を全部読んだわけではないが、詳しく調べたり取材をすれば、割と簡単に判明することなのではないかな。私のような「下衆の勘繰り」でも十分陰謀論は想像可能でしたので(爆)。そういえば、うちのコメント欄でも「5千万円貰ってる」とか、誰かが書き込んでいましたね。


この問題については、私が上限金利問題を書き始めた06年4月から再三取り上げてきた。

消費者金融顧客の分析は果たして妥当か?

で、名指しで書いたこともある。ネット上では著名な磯崎氏、bewaad氏、47th氏などが取り上げていたからだ。
権威主義?それとも・・・

後には池田信夫氏も加わった。
池田信夫氏への質問

彼らに共通するのは、論拠として早稲田大消費者金融サービス研究所のペーパーを挙げていること。「自分は何を信じるか」ということだから、それはそれで構わないだろう。磯崎氏は自身の記事で「資金の出所」について示唆的記述をしていて、「そういう立場」を勘案した上で、それでもなおペーパーへの信頼性があったと考えたのではないかな、とは思っていた。


私の考え方としては、研究費を企業が出しても別にいいんじゃないかと思っている。けれど、ペーパーにはそうした立場を書いておくのが当たり前で、論文であれば普通そうだろうと思っていたが、経済学の分野ではそうではないということを知りましたよ。これも前に書いたけど。
経済学とは何だろう?
(一応、これもだった>「ソツロン」って何ですか?


この後、ブログ界隈の話だけに留まらず、06年6月には朝日新聞も坂野論文を掲載するに至ってしまった。勿論批判したけど。
坂野教授に反論する(追記後+訂正あり)

恐らく、ネット上では件のペーパーに疑義を述べていたのがウチのような場末ブログくらいで、他はみんな有名ブロガーであり知的水準も高い公認会計士・官僚・弁護士ですので、どこの馬の骨ともわからんオメガ級粘着野郎(=私)の言うことより、信頼性は高いと判断されても仕方がないであろう。大手紙に掲載されたことで、圧倒的に不利な状況に追い込まれましたよ(笑)。あのまま行けば、規制案は無理だったかもしれない。影響力が大きいと、彼らが取り上げたペーパーの正当性などについては、殆どの人が「疑わない」というようなことが起こってしまうのですよ。東洋経済の記事でも同じく、坂野先生のご意見は出されていましたしね。


時には、陰謀論を信じ込んでいる愚か者とか、勧善懲悪主義者とか、パターナリズムの古い脳だとか、色々と非難があったりしたかもしれませんが、私の「尊厳ポートフォリオ」(kanose銘)は若干傷つきましたよ(笑)。これもオメガ級スナイパーなんだから仕方がないことですけどね。
中でも卑怯な連中(どこの誰かは知りません―月光仮面か!―けど)というのは、論文の中身を吟味し検討するという「基本的姿勢」を全く欠いているとしか思えませんでしたね。要するに、個人にハゲとかチビとか言ったりして、自分たちの溜飲を下げることができればそれで十分満足なんでしょう。


ま、書き続けることで、逆転チャンスが巡ってきたのですから、別にいいんですけど。結局、昨年秋には上限金利規制が決定的となり、法案が通過した。


堂下先生にしても、再三取り上げてきましたよ。阪大の大竹先生グループの論文にも名前は出ているし、金融庁でも何度も喋ってますからね。当ブログの記事では数が11もあるので、検索結果だけ出しておきます。
いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」



問題なのは、金の出所というのはあるのですが、必ずしも「学問的に間違っている」ことを言うと限っているわけでもないと思いますので、研究所の存在そのものがダメとか、研究費を貰うなというような話にはならないでしょう。別に、どこから金を貰ってようと、誠実な研究や論文を出していればそれでいいわけですから。これについても、記事に書いたので挙げておきたいと思います。

政策決定と価値観
利益相反と研究費の寄附

予め立場を明確にしておけ、貰ってるものは書いておけ、読み手も注意して読め、みたいなことでしょうかね。