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朝鮮総連仮装売買事件について

2007年06月30日 18時54分32秒 | 法関係
元公安庁長官の緒方氏逮捕という異例の事態となりましたが、この事件について少し考えてみたいと思います。

Yahooニュース - 毎日新聞 - 朝鮮総連仮装売買 緒方元長官ら3人逮捕 詐欺容疑

(以下に一部引用)

調べでは、緒方元長官らは4月中旬~5月下旬、総連が中央本部の土地・建物の売却先を探していたことを利用して、この不動産をだまし取ろうと計画。購入代金を支払う意思も能力もないのに、総連側代理人の土屋公献(こうけん)・元日本弁護士連合会会長(84)らに「金主(出資者)が確実にいる」などと虚偽説明をした。
 さらに、総連側に「先に所有権を移転登記し、後で売買代金を払う形にしたい。金主は登記手続きができて初めて安心して金を出せると言っている」と要望。5月31日に緒方元長官が社長の「ハーベスト投資顧問」を売却先とする売買契約を締結させ、翌6月1日に所有権移転登記を申請して、中央本部の土地・建物をだまし取った疑い。
 緒方元長官はこれまでの会見などで「取引は仮装売買ではない。出資予定者が資金を必ず調達してくれるものと信じていた」と主張し、実現見込みのない売買契約だった疑いを否定していた。
 特捜部は、中央本部の売却先が緒方元長官の会社だったことが毎日新聞の報道で発覚した今月12日、緒方元長官から初めて任意で事情聴取。13日には、電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で関係先の家宅捜索に乗り出し、関係者の事情聴取を続けていた。




初めの頃は、売買を偽装していたのではないか、という疑いが持ち上がったのですよね。それが丁度RCC関連の判決直前の話であった。この時には、朝鮮総連と投資顧問会社との間で、強制執行を逃れる為に売買を偽装して、所有権の移転登記を行ったのではないか、というのが疑われていたと思う。これと非常によく似た説明が、虚偽表示 - Wikipediaに出ていた。

AはCからの借金を返せる見込みがなくなった。Aの財産で見るべきものは先祖伝来の土地のみであったが、この土地に対する強制執行を免れるため、Aは友人のBと相談して、Bへ売却したように装い、土地の登記名義もAからBに書き換えた。Cによる強制執行の危機が去った後、AはBに登記名義を戻すよう要請したが、Bは「この土地は買ったものだ」といって応じない。この場合、AB間の売買契約は両者の通謀によって作出された虚偽の関係であり無効とされるから(民法94条)、AはBに対して登記名義の移転を請求できる。もしもBがこの土地をDへ売却してしていた場合(登記していなくても)、DがAB間の虚偽表示について知らなければ(善意であれば)、Dとの関係ではAB間の売買は有効なものとして扱われる。すなわち、AはDに対して土地の返還を請求できない(民法94条2項)。


「虚偽表示」といっても、日常で用いられる用語とは異なっています。ミートのやった牛肉とかコロッケなんかの「虚偽表示」みたいなものとは違いますよ(笑)。この具体例で登場するAが朝鮮総連、Bが投資顧問会社、CがRCCということになるでしょうか。朝鮮総連の場合には損害賠償ですから借金ではないのですが、大して違いなどないでしょう。
で、通謀によって作出された虚偽の関係がAからBへの土地所有権の移転登記ということであり、これは民法94条第1項により無効となる、ということですね。この場合には、売買契約が無効となって「BからAへの移転請求が可能」ということです。しかし、全くの別人DにBが土地を売ってしまったら、Dが善意の第三者であると「虚偽表示」を知ることができないので、Bの所有権が有効となってこれを買った契約は効果を持つことになる、と。そうなってしまえば、AがDに「Bに売ったのはウソだったから、土地を返してくれ」と言っても、返せません、ということになりますよ、と。なーるほど。

民法第94条第1項は、『相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。』、第2項は 『前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。』となっている。これが、朝鮮総連仮装売買事件と関係していた可能性があったわけですね。
ところで、この前すごく適当に書いてしまったのだが(日本の憲法学者の真意を問う)、「意思表示」のような言葉は法律用語では全て決まっているものだったのですね。失礼しました。「意思表示」「錯誤」「売買」「贈与」とか、普通に使っている言葉とちょっと違うので結構困るよね。専門的意味で用いる時には、何かの印みたいなものがあればいいのですけど。経済学用語もそういう面が多いかも。中には、非常に悪い印象を与える言葉として定着してしまったものもある。「合理化」とか(笑)。最近あんまり見かけないけど。昔、立て看板とかプラカードとか、そういうものには「合理化反対!」って赤字で書いてあったな。何となくのイメージでは、「合理化」というのが「首切り」のことかと思っていた。


話が逸れてしまったが、逮捕容疑は詐欺罪ということのようで、これについて考えてみる。
民法上の詐欺と刑法上の詐欺罪は、似ているが異なっているようである。

詐欺罪 - Wikipedia

中身から大雑把に言いますと、詐欺罪成立には
①欺罔行為をする
②相手方が錯誤に陥る
③相手方の意思で利益の処分をする
④利益が行為者又は第三者に移転する

ということが必要で、①~④には因果関係が認められること、行為者の故意であること、というのが必要になる。

今回の事件でいえば、
・容疑者A、B、Cが最初から「(詐欺を)やる気があって」共謀
・Aがその過去の経歴や肩書き等をもって相手方を信用させた
・結果、相手方とその代理人は錯誤に陥った
(=自分たちの条件を受け入れる売却先が見つかると信じた)
・錯誤に陥ったので現金と移転登記を行った
・それら利益はA、B、Cに移転された
ということになるだろうか。
因果関係については、割と明瞭になっているのではないかと思われる。朝鮮総連と代理人が登記移転に応じたのは錯誤に陥ったからであり、Aらが登場しなければ所有権移転の登記は行われることはなかったであろうし、現金を渡すこともなかった。

問題になりそうなのは、
・故意が確認できるか
・緒方元長官の行為のどれが欺罔行為に当たるか
・相手方も通謀していたという主張を否定できるか
といったあたりだろうか。

仮に、「最初か売却先が見つけられないとしても、登記さえ移転しておけば強制執行からは逃れられる。だからたとえ資金提供者が現れないとしても損することはない」みたいに言っていたとすると、相手方が偽装表示に同意していたということがなかったのかどうかはよく判らない。
それと、共謀したA、B、Cが移転登記によって虚偽表示をしておき(総連側から所有権を移転し売買が成立したかのように見せかける)、これを「善意の第三者」のDに売却してしまったとしたら、総連側がDに返還請求はできなくなる。なので、共謀したA、B、Cが、全くの「善意の第三者」を装った本当は悪い人E(裏で共謀者の誰かと密通して買い取るという人)に売却し、これが成立してしまった場合には、どうなるのだろうか。Eには過失がなかったと言えるか?
普通の注意力をもってすれば、物件の所有権を辿れば「朝鮮総連の不動産」ということはすぐ判り、総連が「RCCと訴訟になっている当事者である」ということは十分知りえるわけであるし、売却が本当に行われたものであるか否かに疑問を抱く余地はあるのかもしれない。すると、民法94条第2項の善意の第三者には対抗できない、という規定が適用できない可能性もあるのだろうか?
だが、もし対抗できないとなれば、共謀者たちは本当に売却してしまい、売却先からの利益も得ることが可能になってしまうようにも思われるがどうなんだろうか。その場合、相手方がAらに「通謀していた契約なのだから、返せ」と求めても無効(Eへ所有権は既に移っている)であるので、損害賠償請求くらいしかないのかな?どうなんだろうか。


捜査開始時に推測された偽装売買であると、刑事事件としての捜査は可能だったのだろうか?強制執行を逃れる為に所有権を移転すると、何の罪になるのかな。よく判らないのだが。
最初の家宅捜索の時に別件捜査でやったのだが、あの時には具体的な罪状がなかったような気がする。電磁的公正証書原本不実記録とかって、微罪で取り掛かったということですもんね。詐欺じゃないとしたら何で逮捕だったのかな、とちょっと疑問に思ったので。

ちょっと追加。
強制執行妨害罪だそうな。

東京新聞緒方元公安庁長官を逮捕 詐欺容疑、仲介役らも社会TOKYO Web

そんな罪があるとは知らなかった。でも、これって、○ちゃんだかの「裁判で判決が出ても賠償金を払わなくてもいいんだよ~」とか言ってたような人には適用にならないんだろうか?財産を隠しても罪になるんじゃないの???




禁反言の法理(エストッペル)とは…?

2007年06月30日 14時04分42秒 | 法関係
法学的な考え方では、信義誠実の原則というのがあるそうだ。

民法にもそれが規定されていて、第1条第2項の『権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。』とある。この原則には4つある。

・禁反言の法理(エストッペル)
・クリーンハンズの原則
・事情変更の法則
・権利失効の原則

で、この最初の法理というのが耳慣れない言葉なので、どんなことなのかな、と。

禁反言の法則 - Wikipediaには、次のように書かれている。

『禁反言の法理(きんはんげんのほうり、ラテン語:estoppel、エストッペル)とは、自己の言動(表示)により他人をしてある事実を誤信せしめた者は、その誤信に基き、その事実を前提として行動(地位、利害関係を変更)した他人に対し、それと矛盾した事実を主張することを禁ぜられる、という法原則をいう。』


判ったような、判らないような…
具体例を考えると判りやすいので、書いてみる。
あくまで適当に考えた例なので、間違っているかも。その時は優しく教えてね。

<例1>

A 「昨日の夜、机の上に置いてあった肉まん食べなかった?」
B 「昨夜は何も食べてないよ」
A 「おかしいなー、別な人に聞いてみよう」
B 「Cから貰ったまんじゅうは食べたけど、机のは知らないよ」

Bは初めに何も食べてないと証言しておきながら、後から、貰ったまんじゅうを食べたと証言している。初めの態度、主張と矛盾しているよ、と。


<例2>

A 「合コンに行くようなヤツは軟弱者だ」
B 「じゃあ今度誘われてたんだけど、行くの断るよ」
……
A 「いやー、この前の合コンはカワイ子ちゃん揃いだった」
B 「合コンは軟弱って言ってたじゃん」
A 「んー、ああ、あれ?でも、行かないとは言ってないし」
B 「俺は断ったんだぞ?」
A 「おかげて一つ空きができたから、俺が代わりに行ってきたのさ」
B 「(こやつ許せん!天誅を受けろ)…」

Aがずるすぎだ。。。Bは可哀想すぎるな。。。


<例3>

A 「募金しないのは虐殺に加担してるのと同じだ」
   ↓
B 信じたので募金した
   ↓
A 「募金してるヤツラはただの自己満足なんだよ」

どっちなんだよ…


厳密に考えると、例2も3も、前と後の主張が矛盾とまでは言えないかもしれない。けれど、おおよそ「禁反言の法理」を表しているかな、と。


普通の生活の中でも、見かけるかも。
前の主張と後の主張が矛盾であるとか、ブログ界隈でも見かけるな。

初めに戻って、そうなるとブログを書くにも「信義誠実の原則」を守ってないとダメということになって、すると、それは契約か何かみたいなもの?ってことになり、萎縮することになりそう。
ちょっとくらい信義誠実ではないとしても、許容することも必要なんではないかな、と。勿論、完璧なまでに信義誠実の原則を貫いて頂ける人は、それでいいと思いますけど。

俺が禁反言の法理を守っているのだから、お前らも全員守れ、これは義務だ、みたいなルールを義務化されても困る人々が大勢出てくるのではないかと思う。「存在しないルール」を誰にでも強制しないで欲しいよね、というようなことはあるだろう。

これは、単なる寄り道なので、深くは考えてない。
いえね、朝鮮総連の事件について、ちょっと考えてみようと思ったりして、情報を探索してたら見つけたから、面白いなと思って書いておいた。



ちっちぇえな、クルーダス

2007年06月29日 19時31分18秒 | 俺のそれ
マジ怒り。


なんでわざわざ記録として、駄文を残すのかねえ。

しかも、藻ッチーを引き合いに出すというのは、リアルでも何かイチモツあるわけ?新進気鋭のクルーダスともあろうものが、何だって人さまの庭先に立ちション引っ掛けていくんかね。

やっぱり流石だな、「アンタイ族」。
品性下劣。


いざとなりゃ、「三者介入」を求めて第三国に泣きついたヤツが、何を偉そうに言ってんだ?
あんなもん、一人で戦えっての。
自分の頭で何とかしろっての。
その程度の戦闘力も持たねーヤツが、皮肉る口先だけは一丁前だ(笑)。
ただのへっぽこじゃねーか。

で、何?
打たれ弱そうと見るや、ササッと現れて立ちションすんの?

つまんねー罵倒芸を見せるくらいなら、コメント書くなよ。


気に入らねえなら、ストレートに書けよ。
オレ様の何が気に食わないんだ?とか書けるだろ。

何で、「藻ちお」並べるわけ?
全然関係ねーだろ。

そんなのを期待されていると思っているなら、一生イナゴの巣窟にすっこんでろ。そういう手合いと一緒に、死ぬまでやってろって。


批評されない言論人なんざ、いねえんだよ。
んなもん、昔から当たり前のこったろ。
素人衆に絡まれるのが気に喰わないなら、書くのを止めればいいんじゃないの?


リアルで書いてっから、オレの戦場と違うんだよ、くらい言えねーのかね。
ま、クルーダスは自分で何かを生み出せないんだろうな。
それが悔しいのかい?
羨んでいるのかい?


そんなヤツに、いい言論を期待してもしょうがないって。


ネットが汚染されるだけだ。



政務調査費問題は自治能力の指標かも

2007年06月29日 12時17分57秒 | 社会全般
先日来より、大阪府の政務調査費について記事を書いてきましたが、この問題の本質部分とは、どうやら地方議員の資質と言いますか、自治能力に比例しているのではないかと、ふと感じました。

またコメントの一部を以下に再掲いたします。
毎回有益な情報が多く、誠に有難うございます。


今回の混乱は、政務調査費制度を導入する時の地方自治法改正の折に、明示的に不正使用を正すための方策を法定してこなかった国政レベルの問題と考えてきたからです。現状では、監査請求は「議員の使途の適否を直接監査する」ことはできず、「議員に支出した知事の行為を監査する」と言う遠回りな方法でしか監査が行えないわけで、そこに混乱を増す要因があるように考えてきました。知事の問題より制度(法律)の問題が大きいと。

立法時においては、議会が知事等執行機関から独立し監視する権能を持つ事の責任を自覚して自分の事は自分で律するという議員の見識に期待したからかもしれません。

でも、だからこそ、私も議員の態度にはかなり怒っています。少しは権限や地位と対にある責任を自覚したらどうなんだと思います。政務調査費制度は地方議会団体の要望で導入されました。なら、余計に自分たちで責任持って運用しなさいよ、と強く思います。

目的外使用分は文句言わずに返してください(怒)って感じです。




議員の自覚と責任において、文句を言う前に返還してくれるなら、それが解決への一番の近道です。これは完全に同意致します。ただ、一つだけ気になる部分について書いておきたいと思います。

地方自治法改正で政務調査費導入となったことは知らなかったのですが、恐らく地方側の要請が強くあったものと推測しますけれども、「条例による制定」と基本としているのが重要と思います。これは、何でも国に統一的な基準を作ってもらうとか、国政レベルでの立法措置を求めるという性格のものではなく、地方議員が活動を行うにあたり必要な経費を自分たちで考えて決めなさい、というまさしく「自治能力」を試されるものと思います。どういった仕事をどれくらいやっているのか、自分たちで点検・評価して、その活動を支えるにあたり住民たちに「これだけの仕事をしますので、予算として認めて欲しい」ということを説明し納得してもらえるようにやってみなさい、ということに他なりません。それができていないというのが、今回の大阪府議会の騒動に繋がっていると思います。

本来、条文上では「条例で定めなさい」ということで自治体に裁量権を与えられているわけですから、自治体ごとの違いや特性などを考慮しつつ、「条例制定権」という自分たちの使える権限をきちんと行使するのが当然なのです。大都市圏の都道府県議会や市議会と、過疎地の市町村議会でも違いがあるでしょうし、住民の求めるものや議会への評価も当然違いがあるのですから、ルールを自分たちで決めるのは当たり前なのです。この程度のことができないのに、地方分権などと建前論だけ叫ぶのは片腹痛いでしょう。

議員活動が盛んで、地域住民たちからの信頼も厚ければ、「いいよ、いいよ、それくらい使ってもらって」という地域があるかもしれないし、くだらん仕事しかしてないのに海外旅行だけは行くという議員は許せない、みたいに考える地域もあるかもしれません。貧乏な自治体であれば、議員活動にそんなにお金を回せない、ということもあるかもしれません。そういうのは、自治体ごとに違っても当たり前で、自分たちの責任範囲でやってくれ、ということでありましょう。大阪府議(一部だけかもしれませんが)の言い分が明らかにおかしいのは「使途基準が不明確だ」ということで、そんな不透明な予算を認めている議員たちの能力がそもそも大問題なのだ、ということさえも気付けないことなのです。毎年毎年、予算決算を見てきたのは自分たちでしょ、不当な予算執行がないか監視するのは議員の役割でしょ、という当たり前のことが判っていないのです。即ち、議員たちの条例制定能力、地方自治を担当する能力、そういった部分で「能力に欠ける」ということなのです。

一般的に見て、若干の問題があるかもしれないにせよ、度が過ぎることがなければ、政務調査費がこれほど問題にはされたりしないでしょう。1万、2万を間違えました、とか、そういうレベルではないわけです。明らかに「やる気でやってる」のですから(笑)。そんな程度の議員が圧倒的多数であるということが問題なのです。例えば飲食費とか交際費みたいなものにしても、時には情報交換とか有益な情報を仕入れるのに会食などが必要となる場合があるかもしれませんが、年間で使用限度を定めて「年~万円まで」とか何かの規定を作ることは可能なのです。一回の限度額を定めるでもいいし、いくらでもルールの作りようはあるのです。多くの住民たちは、全部がダメとは言わないと思いますよ。ところが、外部から強く指摘されないと自分たちの思うがままに使っている部分があって、自律できないということが問題の発端なのですよね。住民たちが「任せておきます」と油断していると、自制できない連中が色々やった、ということでしょう。

いずれにせよ、地方分権が現状のような低レベルの地方自治制度の中で進められれば、一部の利権野郎とか腐敗議員どもの餌食にされるのがオチのようにも思えます。そんな議員が誕生するのは、まさに「住民が選んだんだよ」と言われてしまうかもしれませんが。



宮沢喜一氏の死去

2007年06月28日 17時56分56秒 | 社会全般
御悔み申し上げます。

引退されたのは、つい数年前ですから、政治に悔いは残っていないのではないかと思います。


こちらが詳しい。既に死亡記事が書き加えられていたけど。

宮澤喜一 - Wikipedia


印象としては、妖怪のような政治家でした。特に90年代以降の時期しか知らなかったので、政治家としての個人的な評価は良くないものでありました。あまりに歳を取ってからも政治の中心に居座り続けるというのは、良い結果をもたらさないのではないかな、と感じました。非常に優秀な方であったそうですが、私の知る時代では、単なる耄碌ジジイのようにも思えました。結果的には、90年代後半に向けて、日本が沈没していく基礎を作ってしまったようにも思えます。政策上も、政治的混乱も、悪い時の政治家というイメージしかありません。


必ずしも高齢の政治家が悪いというわけではありませんが、「結果はあまり良くない」というのが個人的な教訓です。中曽根さんとかも含めて、引退してもらったのは当然だと思いました。ご隠居になるべき人たちが無理に権力にしがみついていてもロクなことはない、というようなことかもな、と。



続々・知事の能力を疑う~政務調査費の監査について

2007年06月27日 23時13分33秒 | 法関係
これまでの続きですが、頂いたコメントにお答えしたいと思います。

知事の能力を疑う~政務調査費の返還請求について

続・知事の能力を疑う~政務調査費の返還請求について

「住民が選んだんだよ、議員を。」~by 太田大阪府知事

続・「住民が選んだんだよ、議員を。」~by 太田大阪府知事


まず、コメントを再掲致します。

今回の知事の一連の発言は「監査自体が異例の事態」を起点において始まっていると思いますが、この発言について以下の理由から正当性ありと判断しております。

そもそも、地方自治法は戦前の行政権のあり方の反省もあり三権分立の思想により「議会及び監査委員会により知事を筆頭とした地方行政組織の事務執行を監視すること」を想定して法律が作られており、「知事をはじめとした事務の執行機関が地方議会(議員)を監視する事は想定外」な事とされてきました。知事を筆頭に地方行政事務は議会・監査委員の監視下におき、議会は住民を通して(司法権の介入を含む)監視する事が前提とされてきました。

この事は、第242条の住民監査請求が議長・議員の行為を対象としない旨について、議長には最高裁・議員には下級裁判所の判例があり、これを覆す判例は今の所ない事もあって確定した法解釈とされてきました。また第199条の監査請求(外部監査込み)は「地方公共団体の事務」を対象としており、議長・議員の行為は対象に含まれないとの解釈がありこれを正面から覆す判例は今の所無いとされていたと思われます。

そのようなわけで、議長・議員の行為は監査請求の対象とはならず(監査委員は議長・議員の行為について監査できず)、しかし措置の請求の対象とはなりうるとされてきました。これは、議決無く行政事務の変更を行えない事案もあることを想定して措置の対象と定められたとされていました。

ところが、今回「議員の行為(政務調査費の具体的な使い方)」について監査報告及び措置の請求がなされました。これは過去の法律の運用からすると当否は別として異例の事態であったことは確かのように思います。




監査委員の監査権限とは、独立性の高い会計検査院と同様な位置付けの意味があるのではないかと思っています。基本的には、権力を持つことになる執行機関に対して監査権限が及ぶもので、国民側が権力機構(行政の執行機関)を監視するということなのでありましょう。そして、本来的には国民の側に立つであろう議員たちが構成する議会の要請があれば、その監査権限行使が期待されているものであろうと思います。理念としては、よもや議員たちが腐敗や堕落をするはずはないものとして、制度が作られていたものと思います。

今回が「異例の監査」であったのは、これまでは監査委員とは言いながらも、府議会議員や議員経験者たちなどが選任されていたので、実質的には「内輪」で馴れ合ってやってきただけでしょう。監視機能ということは期待できない、機能していない、ということだったのでしょう。監査委員とは名ばかりであった、ということです。この決定権限は行政や議会などにあるのであって、結託されてしまえば止めようがない、ということです。気付いた住民が選挙で落とすしか方法がない、ということです。まさしく、そんな議員を「住民が選んだんだよ」ということでしょう。


何度も書きますけれども、住民監査請求は「議員の行為」の監査を請求するものではない、というのはよく判ります。別に住民たちにしても、行為を監査して結果を教えろ、ということを求めてはいないでありましょう。過去の判例の判決文が判ればいいのですが、見ていませんのでどういった解釈が述べられていたのか気になるところです。判決文を読むのが一番なのですが、番号とか判決年月日などがわからないので…

とりあえず、また具体的な例を考えてみます(あくまで架空の話ですので)。

ある地方議会の議長Aが、政務調査費として支出した。
県内経済動向調査を目的として、料亭Bにおいて他の地方議員Cや会社経営者Dと伴に会食した。費用は15万円であった。同時に、芸者の雇用・勤務実態調査及び個別的家計調査のサンプリングの為、当該会食時に芸者を数名呼び、聞き取り調査等を行った。この費用は10万円であった。以上の合計費用は25万円で、議長の政務調査費として支出された。


再三指摘しておられるのは、「住民監査請求においては、議員の行為について監査できない」という点です。これを考えてみます。

上記事例の場合には、具体的行為として
・料亭Bで会食
・地方議員Cと会社経営者Dと同伴
・芸者数名も同席
などというものです。

監査結果としては、請求者に監査報告が公開されるのと、知事や議会などにも報告が提出されるわけです。要するに、全部バレてしまう、と。こういう危惧があるではありませんか、と。それを問題視されているのかな、と思いました。
しかし、監査報告を決定するのは監査委員であって、個別具体的行為まで報告する必要はない、すなわち住民の請求ではそのような情報まで「知る権利」としては保障されていない、というものではないかと思います。住民が知るべきこととしては、「25万円が政務調査費として適正に費消されたかどうか」だけであって、具体的「議員の行為」まで監査請求できるものではない、ということだろうと思います。

住民にはそこまで知る権利がないとしても、監査委員は監査するにあたり必要なものは精査せねばなりませんから、具体的に「何に使ったのか」ということを監査します。そこで知り得た情報というのは、原則秘密にされるもので、監査委員に守秘義務が課せられているのはその為であると思います。そうではありながら、監査結果として報告せねばなりませんので、決定するにあたり法的に公開が禁止される場合を除いて、25万円がどのように使われ適正であったかどうか、ということは明らかにせねばならないでありましょう。それが、地方自治法第100条第13項の「交付対象、交付額、交付方法」を条例で定めることになっております。目的は、「調査研究に資するため必要な経費の一部として」であって、あくまで一部分を公金で補いましょう、という主旨と思います。

上記例に戻りますけれども、条例に従って、「交付対象」「交付額」が法に則っているかどうかを見るものと思います。その上で、監査委員は具体的な支出項目について、本当に「調査研究に資するために必要な経費」なのかどうかを判断せねばなりません。自治体が支払うべき「債務」であることが必要で、この政務調査費は次のように表せます。前と同様な書き方です。

債務者:知事
債権者:議長A
債務:料亭会食費15万円、芸者費用10万円
(債権者から見れば、債権でもあるか)

監査を行う場合に、債権が存在することを確認するには、「料亭で会食をした事実」を証明するとか「料亭の領収書」の存在が必要になりましょう。そうでなければ、実際に支出されていたことが物理的に確認のしようがないですので。もしも領収書のような具体的記録が残されていない場合には、議員Cや会社経営者Dとか、料亭の女将や従業員たちなどからの、整合性のある証言などによって実際に支出された事実がある、というようなことを確かめるしかないでしょう。こうした確認が「行為の監査」にあたる、故に監査することは認められないという判決があるのでしょうか。それは考え難いのではないかと思えますが。領収書などを実際に見て支出された事実を確認するとか、物理的証拠がないのであれば証言などから確認するといったことは、監査を実施する上では認められるものと思います。
これを、「行為の監査」にあたるのでこれら確認行為ができない、ということは、事実上監査できないのと同じであり、議員側の言い分だけで全てを「確実に支出したものと認める」ということになってしまいます。


争点になるのは、上記25万円分の支出が「調査研究に資するために必要な経費」と認めうるか、条例に則っていたか、ということだろうと思われます。これは国税庁の判断や決定においても同様な「見解の相違」というものがあり、監査される側には文句の出る余地というものがあるのは不思議ではないでしょう。

料亭における会食費や芸者費用が、
・交付対象外である
・調査研究が行われたことを示す具体的結果がない
(=調査研究はなかったと推定される)
・調査研究に資するとは判断できない
(故に、必要な経費とは認められない)
などであれば、政務調査費に該当しない支出、と判断されうるということです。

25万円が政務調査費に該当しないとなれば、債務は存在していないことになるわけですから、債権者が主張しているような「政務調査費として25万円を支出した」ということを認めることはできないでしょう。監査結果としては、「会食費等で使用された25万円分は目的外使用で、不適正。よって返還せよ」という監査報告となる、ということです。請求者が知るべきは、基本的にこの部分だけでよい、ということが「住民監査請求」の本来的意義でしょう、ということです。住民にとっての利益とは、「芸者費用10万円」を監査結果から知ることによって10万円を請求するということではなく、「目的外使用された10万円を自治体に返還してもらうこと」であって、これをもって(住民監査請求の)目的が十分達成されている、ということなのではないかな、と。「議員の行為」を監査請求するわけではない、ということは、そういう意味なのではないのかな、と。


いずれにせよ、料亭会食費や芸者費用が政務調査費に該当している、というのが債権者の見解であるならば、監査委員の決定が不当であるとして「裁判で争えばよい」ことでしょう。返還に応じたとしても、別な解決方法はまだ残されている、ということであって、債権者だけに一方的に不利なものとも思われません。一般国民はこれまでの監査請求や情報公開請求などの過程で、一体どれほど多くの提訴を行い時間やお金や労力を投入してきたのか、ということを考えるならば、府議会議員たちの監査結果に対する不服など微々たるものでありましょう。

これまで行政側の決定を覆せないことによって国民が蒙ってきた不利益のごく一部を、今回議員さんたちに感じてもらえることになるのであれば、よい勉強になるでありましょう。ちょっと授業料は高くついたかもしれませんが。政務調査費として認められないにせよ、使ったお金の受益者は議員本人ですから、別に損したわけでもないでしょう。購入した液晶テレビとか消えてなくなるわけでもないのですから(笑)。



フランク・ナイトと「白いカラス」

2007年06月26日 17時49分02秒 | 俺のそれ
ナイトの不確実性については、前に書いた。

「不確実性」と価格

「不確実性」と価格・2(追加あり)

「不確実性」と資産価格

「不確実性」と資産価格・2

でも、素人のトンデモ談義なので、大ハズシの可能性大だと思う。
黒い白鳥に対抗して、「白いカラス」とでも名前を付けようかな(笑)。

黒いなら「白鳥」じゃないだろ!というお叱りがあるかも。
そっか、「黒鳥」ですか?
「白鳥の湖」みたいな?


確か、ギリシャ神話の中では、カラスは白かったハズ。アポロンに黒くされちゃったんじゃなかったかな?
なので、「白いカラス」というのは、いいネーミングかもしれない(と、独り悦に入る)。


関係ないが、今日タクシーに乗ったら、女性ドライバーでしかも60歳過ぎの方だった。愛想がよく、何故か「お兄さん、お茶飲む?これ、よかったら」と言って、新品のよく冷えた「おーい、お茶」(500mlペットボトル)をくれた。
ん?と思ったが、多分自分が飲む積もりで買ったばかりのものだったのであろう。

その運転手さんが言うには、近隣でツガイ?と思しき2羽のカラスが歩行者を襲っていた、とのことだ。近くに巣があって子カラスでもいるんじゃないか、みたいに言っていた。ふーん、と思って聞いていたが、更に、「カラスは怖いし、頭がいいんだ」という話をしてくれた。映画(多分ヒッチコック?)を観てから、カラスが怖くなったと。それと、近所の坂道に行くと、カラスが胡桃をくわえて、上空から道路に落とす、という話だった。車のタイヤで潰させる、というやつだ。

でもそれって、ひょっとして「BMWのCMなんじゃないの?」とも思ったが(あれは潰さないように避けるのだけどね)、おばあさんタクシードライバーが直に目撃した現象を話しているのだから、きっとカラスの行動は同じようなものなんだな、と思った。結構頭がいいんだよ。確か少し前のボツネタさんの記事にも紹介があったし。頭がいいというのは、逆に「憎まれやすいキャラ」でもあるのかも。狡賢いとかの悪いイメージもあるね。


話が随分とんでしまったが、「black swan」に対抗して「白いカラス」はどうでしょう?
ダメ?
全然違うって?


ああ、やっぱりね…



続・「住民が選んだんだよ、議員を。」~by 太田大阪府知事

2007年06月26日 14時58分42秒 | 社会全般
前の記事の続きですが、長くなったので分割しました。


太田知事の言い分を大体まとめると、次のようなことです。

①知事に調査権限はない
②三権分立、民主主義の原則により議長に権限がある
③異例の監査及び監査報告
④使途に関する基準がないのに監査した
⑤返還請求はあり方協議会の基準を見ないと判らない
⑥民主主義の根本を考えろ
⑦議員はもう大人
⑧そんな議員を選んだのは住民

民主主義とか三権分立という言葉が、これほどまでに軽々しく用いられたら、住民は泣くね(笑)。これが大阪府のトップである知事の言葉ですから。まあ、太田知事にしてみれば、「住民が選んだんだよ、こんな知事を。」ということなんでしょう(笑)。

出発点として、どうして「監査できる」と考えたのでしょうね、太田知事は。監査委員の調査権限が及ぶということは、知事はいつでも「調査可能」ということではないですか。地方自治法第199条第6項及び第7項により、知事の要求があれば監査できるのですよ。太田府知事は、何度も「私に調査権限がない」と言っていますが、これは明らかな誤認でしょう。監査できないものであれば、今回の監査だって不可能ではありませんか。

知事会見では、
『議会にボールを投げるにはまず調査しなきゃいけませんね。本当に基準がないのか、あるいは基準どおりに使われているのか。さっきも申し上げたように、私にはその調査権限がありません。権限があるのは議長さんです。私がさっきから申し上げているように、三権分立というのは何も形の上だけであるわけではなくて、それぞれが府民に対して責任を負っているんです。したがって、私が言わなければ動かないということ自体がおかしいわけで、こちらが自主的に動く、議会が自主的に動いていくということが前提にあって三権分立というのは成り立っているわけですから、私は、皆さん方が私の責任を追及されること自体がおかしいと思います。』
と答弁しているわけですが、勘違いとしか思えませんね。知事は監査を要求できますよ、当然。
①や②の主張は、太田府知事独自の「民主主義」や「三権分立」の原則なんでしょうか。


もっと問題なのは③と④で、監査とその結果について疑問を呈しているということ。「異例」と言及しているのは、地方行政の長としては非難されてしかるべきであろう(漆間警察庁長官の得意な言い回しでは「言語道断」)。あたかも、「基準がないのに無理矢理監査された」というような意図で言ってるのですからね。これは議会の頭のアレな府議会議員たちと一緒。監査する側は、条例等に照らして監査する以外にないのであるから、立法するべき議会に根本的責任があるに決まっているだろう。そもそも、基準がない、というのは、初めからオカシイでしょうが。条例は存在しているでしょ。本当に基準がないものなら、予算をつけていること自体が問題でしょうよ。例えば「大阪府民生活調査費」みたいに適当な名称をつけて、「現実にはどのような支出でも構いません、カメラを買ったり、旅行に行ったりしてもいいですよ」という予算を認めるとでも言うのでしょうか?ふざけるなよ、でしょう。

⑤の返還請求は、あり方会議の基準なんて基本的には関係ないでしょうね。監査委員から勧告された返還請求権は、残されるだろう。たとえ基準が今から策定されたとしても、不遡及の原則に従って、今後の政務調査費について適用されるものであろう。なので、既に監査された部分については、新たな基準とは無関係であり、返還請求できるものと考えるのが妥当であろう。それをなぜ「基準を見てみないと判らない」みたいに言うのであろうか。

⑥~⑧は、知事のお人柄が滲み出ていますね(笑)。「もう、いい大人なんですから、議員も。」って、そりゃ議員に言ってやれよ。普通の常識で考えれば、「何が政務調査費か」くらいは考えられるでしょうに、いい大人なんですからね。

トドメの一撃は、
「住民が選んだんだよ、議員を。」
だな。

仰る通り。そうですよ、日本の政治とは、こういうもんなんですよ。
あんたらが選んだ議員のやってることなんだから、あんたらに責任があるんだよ、と。
そうですね。
そんな程度の議員や首長しか選べない住民に問題があるんだ、と。

民主主義とか三権分立とか、大上段に構える太田大阪府知事当人が、果たしてどれほど地方自治のルールを理解していると言うのであろうか?間違っているのは自分なんじゃないのか?民主主義のルールを吐き違えているのは、自分なんじゃないのか?それでも、知事は務まるということらしい(爆)。


まあ、私のような人間があれこれ言ってもどうにもならん。
力なき者は、役に立たない。
一匹狼には、遠吠えしかない。


「住民が選んだんだよ、議員を。」~by 太田大阪府知事

2007年06月26日 14時55分05秒 | 社会全般
いやー、やっぱりネットってのは本当に有り難いものでございます。できるだけ多くの地方自治体の方で、情報公開を進めて頂ければ幸いでございます。

大阪府の政務調査費問題に関して、コメントを頂いておりましたが、大変貴重な情報をお寄せ下さり有難うございました。
参考記事:
知事の能力を疑う~政務調査費の返還請求について

続・知事の能力を疑う~政務調査費の返還請求について

調べましたら、監査報告が公開(大阪府/報道発表資料)されておりまして、太田知事会見の要旨も見ることができました。

本当に凄いです、太田知事。強烈。
記者諸君はよく食い下がって頑張ったと思うよ。ナイス。
これでこそ、権力の監視、ジャーナリスト魂だ!
この前は、テレビだったので詳しくは覚えていなかったのですが、記者会見の模様が出ておりましたので、問題の部分を取り上げてみたいと思います。会見の前半は、別な話題ですので、政務調査費に関する記者からの質疑部分を見てみます。

知事記者会見
(以下に一部引用)

【質疑応答】

《記者》  先週の金曜日に監査委員が議会の政務調査費について監査報告を出して、3億4,000万円の返還を勧告せよということですが、まずは、この報告書をお読みになって、府民の税金を預かる者として議会の政調費の使い方についてどういう感想をお持ちになったのかからお伺いしたいんですが。

〈知事〉  これは後の質問で出てくるかもしれないですけど、今回、私は、これは少し異例だったなと思いますのは、政務調査費の使途基準が必ずしも明確でない中でこの監査結果が出されたということです。ですから、外部監査人という制度で監査をしていただいたわけですけれども、この外部監査人も、結局は、過去の判例などを参考にして、一定の考え方のもとで判断せざるを得なかったということで判断されたと私は受け取っております。

《記者》  我々府民の感覚としては、こんないいかげんな使い方をしていたのかと思ったんですが、知事はそうお思いになられませんでした?

〈知事〉  今申し上げたように、基準があいまいなもとで運用されてきました。基準はもっと早くつくるべきではなかったかと思いますし、今、あり方協議会が動き始めておりますから、それに期待をしているんですね。まず一番大事なことはやっぱり府民に対する透明性、今おっしゃったようなご意見があるのは承知していますけれども、そういうことに対して透明性の向上を含めて、このあり方協議会がしっかりした基準・枠組みというものをつくるということが、今、議会に求められている一番大切なことだと思いますので、私としては、それを期待しつつ見守りたいと思っています。

《記者》  今の知事の「判例などをもとにつくらざるを得なかった」というお言葉を聞いていると、今回の監査結果には一定の限界があったと知事自身見ておられるようですが、今回の監査結果自体は、知事に対して返還請求してくださいと要請しているものでありまして、知事の判断が監査結果を受けて問われるところだと思うんですが、その辺、知事はどうお考えなんでしょうか。

〈知事〉  この際、皆さんにぜひ知っておいていただきたいんですが、三権分立、民主主義の基本ですよね。確かに、皆さんのおっしゃる意味はわかります。一般的には、私は、公金がどのように使われるかということに対して、府民に対して責任を負う立場にあります。しかし、この政務調査費というのは非常に議会の独立性の高い制度でして、私にはこれがどのように使われているかということの調査権限もないんです。まず、そういう三権分立のもとで設けられている制度だということを前提にしないと。皆さんが私に対していろんなことを要求されるのはよくわかりますが、そういう制度になっていない。ですから、私にはやれることに限界があるということもわかっていただきたい。その上で、今、一番ちゃんとやらなくてはならないのは議会のあり方協議会だとお思いになりませんか。やっぱりそこがきちんとやるということが、まず、府民に対する責任を果たすということにつながるんじゃないでしょうか。

《記者》  それはそれとして、あり方協議会がきちっと議論するというのは当然必要なことで、一方で、知事の、今までどういうふうに使われてきたかということの調査権限あるなし、あるいは監視・チェックということを言っているわけじゃなくて、そもそもこの監査結果自体が、知事に向けて……。

〈知事〉  それもさっき最初に申し上げたんですけど、私もいろいろ考えてみたんです。この監査制度自体も、政務調査費の使途基準がはっきりしたもとでこれを返しなさいというのが前提になっていると思うんです。つまり、今回のような、もともと基準があいまいで、しかも、外部監査人にそれを考えてくださいということを前提にした監査ということが本当に考えられていたものなのかなというのが私の今考えていることでして、私に調査権限もない、それから、その審査基準を今から後追いでつくるという状況というのが前提とされている制度じゃないと私は思うんですよ。別に外部監査人がやってこられたことが不適当だとかそういうことを言っているんじゃないんです。非常に難しいケースである、それをよく考えてやらないといけないだろうなと思っている。決して議会の味方をしているわけじゃありません。議会に今求められているのは、さっきから申し上げているように、そういう異例のケースの中で行われている監査請求であるということをしっかり受けて、府民に対する透明性の向上を含めてしっかりした基準をつくる、これがまず第一。その後で私もしっかり考えますから、そういう制度であるということを皆さんにはご理解いただきたい。これも違うご理解の方はいらっしゃると思いますが、私は、一生懸命考えた結果、そういう理解をしておかないと、さっきのほかのこととも関連しますけれども、スタートのところを間違えるかなと思っています。

《記者》  議会のほうは、自分たちで基準をつくって、それに従って返還するということを昨日協議会でお決めになりましたけれども、その場合、当然、3億4,000万円より大幅に下がると予想されますけれども、そのときに知事がどうなさるのかというのが焦点になってくると思うんですが、そのとき、どうなさいますか。

〈知事〉  結論から言うと、まだそういうことに言及する時期ではない。さっき申し上げたように、異例の状況で行われている監査、そして対応です。それから、今、あり方協議会が動いております。まずは、その基準が府民にわかりやすい形でできるということが大事であり、その先のことはそれを見てから考えるのが私の責任だと思っております。

《記者》  三権分立のご説明はそのとおりだと思いますけれども、ただ、今、全国の都道府県で政務調査費について全面公開しているのは4県あるんですけれども、岩手、宮城、長野、鳥取ですけれども、いずれも知事が情報公開に熱心なところなんですね。そういう意味で、知事がしっかりと議会に対して情報公開しなさいという意思を今示していただきたいと思うんですけど。

〈知事〉  情報公開は、さっき透明性の向上ということで申し上げました。情報公開の責任を負っているのは私だけじゃない、議会も負っております。ですから、三権分立のもとで、私だけではなく、情報公開の必要性というものを大阪府議会議員の一人一人がしっかりと感じ取られて、それに基づいて今回の基準をつくられるということがこの時代にふさわしいやり方だと思います。知事が請求をしてやるというのも一つの方式かもしれませんけれども、これだけ三権分立がきちっとできている世の中においては、それぞれが、行政も議会も車の両輪として、透明性の向上、情報公開ということをしっかりやっていくというのが本来じゃないんでしょうか。

《記者》  もう一つ、「使途基準はもっと早くつくるべきではなかったかとは思っている」というご発言、今、言われていましたけれども、それについては各会派の幹事長も「ほかの県で使途基準がある中で、使途基準づくりが遅れたことは認める。それについては府民におわびする」というご発言がありました。そういう点を突いたのが今回の監査結果だったという観点からいいますと、やはり監査結果、使途基準を作ってこなかった、そして、あいまいな使い方をしてきたということを指摘しているわけで、それに知事自身は則って判断されるべきではないでしょうか。

〈知事〉  最初のコメントでも出しましたように、基本として監査結果を尊重するという立場はずっと堅持しております。その上で、議会も今対応を一生懸命考えておられるわけですから、そういう対応についても私は見守るという立場も崩すわけにはいきません。今、非常に難しい時点にあるということはしっかり認識しながら、今後の議会のしっかりした対応を望みたいと思います。

《記者》  監査報告書で、「措置に当たってはまず一定の期間を定め、自主的な修正と返還を促すよう配慮されたい」となっていますので、大体目処はいつぐらいまでに議会にきちんとせよとお考えになっていますか。

〈知事〉  9月30日までに返還についての結論を出してほしいということになっております。

《記者》  それとは別の条文で入っている。返還の期限は9月末ですけれども、それまでの間に一定の期間を定め、自主的に修正と返還を促すよう配慮されたいと。

【担当者】 検討中です。返還請求をするのが9月30日までと。

〈知事〉  デッドラインというか、最後が9月30日。その中でどうするかというのはまだ決めていないんですね。

《記者》  議会の動きを見てからと。

〈知事〉  あり方協議会は動いているわけですからね。これが26日ですから、それを見て決めます。

《記者》  ほかのところの判例も含めて、政務調査費、今までなかなかメスが入ってこなかった議会のお金の使い方に対する一般府民・国民の視線は大変厳しいと思うんですけれども、そこに知事が一定の裁量を加えられるようなことになると、知事のご判断も問われるということになると思うんですけれども。

〈知事〉  さっきから申し上げているんですけども、この時代、私だけが透明性を向上させ、府民のほうに向くという時代じゃないと思う。今、いい機会なんですよ。議会の先生方にも、本当に府民の代表として責任を持ってあり方を考え、基準をつくる、そして、それに則ってきちっとした政務調査費を府民に示していく。皆さんは、私が議会を動かして、正当な政務調査費の使い方をつくるということを期待していらっしゃるんでしょうが、それは本来の民主主義の姿であるとは思わない。議会も私も府民のほうを向いてしっかり対応していくというのが本来の姿じゃありませんか。それを変なふうに、私には「あれがない」「これがない」と言われるのは、私は本意じゃないです。議会も府民のほうを向く、私も府民のほうを向く、そうしていい制度をつくっていく。そうじゃないと本物はできません。一方が一方の尻をたたいてどうこうするという時代ではない。

《記者》  今の時点で尻をたたいてくれと言っているわけではないんですが、今の議会の議論の方向性を見ていますと、監査結果にそのまま従う、それを尊重するという結果になっていないようなので、知事は議会に対してどう向き合われるか、これは執行機関側の代表としてどう向き合われるかということはきっと問われてくると思う。

〈知事〉  そういう時は来るでしょう。その時点で申し上げます。

《記者》  確認なんですけれども、監査で出た、3億4,000万円返還せよというのは、今後のあり方協議会の基準次第では全額を求めない可能性があるということ?

〈知事〉  そういうことではありません。まだその結論が出ていない状況では何も言えないということです。

《記者》  一部返還を求めない可能性は……。

〈知事〉  そういうことは一切、私、今申し上げれる段階ではない。基準がまだ出てきていないんだから。

《記者》  基準を見てそれを判断する?

〈知事〉  基準を見て、それに則って個々人が対応されるわけですよね。それを見て判断します。

《記者》  今の政調費のお話で、使途基準が明確でないということは知事自身もわかっていらしたわけですよね。

〈知事〉  そうですね。

《記者》  認識されていた中で、公金がどのように使われるべきか、責任を負うべきというふうにご自身で理解されているのに、そんなあいまいな使い方のままでいいのかということで、議会に対して何らボールを投げてこれらなかったというのがいまいち腑に落ちない面があるんですが。

〈知事〉  議会にボールを投げるにはまず調査しなきゃいけませんね。本当に基準がないのか、あるいは基準どおりに使われているのか。さっきも申し上げたように、私にはその調査権限がありません。権限があるのは議長さんです。私がさっきから申し上げているように、三権分立というのは何も形の上だけであるわけではなくて、それぞれが府民に対して責任を負っているんです。したがって、私が言わなければ動かないということ自体がおかしいわけで、こちらが自主的に動く、議会が自主的に動いていくということが前提にあって三権分立というのは成り立っているわけですから、私は、皆さん方が私の責任を追及されること自体がおかしいと思います。議会に対してしっかり正論を向けていくのが皆さん方の今やるべきことなんじゃないですか。

《記者》  ただ、今のご説明もわかりますけど、府民からすれば、選挙で応援してもらっている議員さんには知事は何も物を言わない……。

〈知事〉  そんなことないですよ。

《記者》  そういうふうにとられませんか。

〈知事〉  そんなことないですよ。さっきも言っているじゃないですか、基準をつくるのが遅過ぎたと。それは陰に陽に伝わっているはずです。

《記者》  一般論として、電気製品を一括して購入されたりとか、みんなで連れ立ってハワイに行ったりとか、落語家を呼んでそれにお金を払ったりしているんですけども、一般論で結構です……。

〈知事〉  一般論といったって答えられないです。

《記者》  いや、だから、知事としては、今のところ、まだあいまいな基準のままだったから……。

〈知事〉  何か言わせたいんだ。

《記者》  それはそうでしょう。でも、府民として感情が……。

〈知事〉  だから、さっきも言ったとおり。府民のほうを向いて、府民の代表としてしっかりした基準をつくってほしいというのが私の願い。

《記者》  それはわかります。じゃ、これまでの使い方として、それが適切だったかどうかということについてはどうお考えですか。

〈知事〉  私、調査権限がないので、今、この時点では何も申し上げられません。ただ、もう大人なんですから、議員も。きちっとやるべきです。

《記者》  では、きちっとしていない部分があったというのは……。

〈知事〉  そんなこと言ってない。民主主義の根本というのをあなたたちももう少し考えてください。

《記者》  知事、そうおっしゃいますけど、府民……。

〈知事〉  住民が選んだんだよ、議員を。

《記者》  そうですが、知事だってその府民の代表という立場でしたら、調査権限がないということで逃げられるのはちょっといかがなものかと。

〈知事〉  逃げていないじゃないですか。結果を見て考えると言ったんです。あり方委員会の基準が出た時点で何らかは申し上げます。基準と違うことをやった人が出てきたときにどうするかということをその時点で申し上げますと言っているだけで、何も逃げているわけでもね……。ここは真剣勝負の場なんだからね。

《記者》  だから、今までの使い方が不適正だとは、知事ご自身、調査権限云々ではなく、率直に思われません。

〈知事〉  そのことについて言及は今できません。

《記者》  どうしてですか。私は別に知事の責任を追及しているつもりは全くなくて、ただ、知事がどうしてあの報告書を見て、こんなおかしい使い方をしているのかとおっしゃらないことのほうが不思議でなりませんけど。

〈知事〉  さっきから申し上げているように、それぞれの立場があって。ほかの場だったらいろんなことを申し上げますよ。だけど、これは公式の発言になるんですから。車の両輪、パートナー、それぞれ独立した機関として、あの報告書に対して今対応を検討しておられるわけだから、その時点で私が、こんな不適切な使い方をして何なんだということが言えると思いますか。そういうこともちょっと考えていただきたい。今、対応を検討しておられるんですから。それでイエスと出たら、あのときの批判は何だったんだということになります。

《記者》  対応の話であって、監査結果はもう出ているわけですよ、こういう使い方をしていたという。その事実に対する知事の考えをお聞きしただけなんですけど。

〈知事〉  監査結果というのは、基準があいまいなもとで判断されたものですし、あのようないろいろな使われ方が出てきたんだろうな、そういうふうに思っています。

《記者》  その基準のあいまいさに対して、議員個々に甘えがあったとか、そういうことはお考えはないですか。

〈知事〉  それぞれ今一生懸命対応されていますから、まずはそっちを頑張ってもらいたいですね。



長いのでウンザリ、という方々もおられたかもしれませんね。知事は発言中で、記者諸君に再三「民主主義の根本原則」だの「三権分立」だのと偉そうに解説をしているわけですが、勘違いも甚だしいのは太田府知事の方でありましょう。しかも、会見途中からはあたかも「自分が政務調査費(の目的外使途)について責められている」と錯覚でもしていたのではないかと思われます(笑)。もう、○○かと。記者諸君たちの意図は、今のところ「議員側がすんなり返還するとは言っていない」という状況のようなので、もし(部分的にでも)返還しないという事態が生じたら知事責任としてどう対応する積もりなのでしょう、と太田知事の見解を聞いたものでありましょう。これは、当たり前の質問ですよね。

普通ならば、

『政務調査費は元々議員や議会の運営に係る自律性の高い予算でありますので、監査委員からの勧告に従いまして、議会側の自主的返還あるいは対応を待っているところでございます。既に基準作りにも着手されたようです。その結果を見てから、監査結果及び勧告等を踏まえ、返還請求するべきものが残されるということであれば、知事の責任として返還を求めていくのは当然であると考えております。』

くらいに答えておけば何らの問題もないでしょう。

ここで、記者諸君から「もし返還されない部分があったら、請求しますか?」と聞かれたら、太田知事が答弁してたみたいな「だから、今は判らない、言えないと何遍も言ってるだろうが、それが判らんのかボケ」(完全なる創作意訳です)みたいな答えではなく、「監査結果及び勧告を尊重し、請求すべきものは請求致します」とか言えばいいだけなのですよね。知事がそう答えていれば、記者諸君だってこれほどしつこく質問をしなくても済んだんですよね。たったこれだけの質疑で終わるものが、こんな有様ですから(爆)。

(続く)


ハムがいただき

2007年06月25日 21時47分50秒 | いいことないかな
交流戦はハムがゲットしたわけですが、北海道はどうやら「ハム」ではなくて、ミート問題が大炎上中。

雪印は可哀想だったが、今度のは「ジャストミート」みたい。いちいち社長の発言がジャストミートってことで。

オヤジギャグで…すみません。

パは今年のプレーオフ3チームほぼ決まったでしょう。

西武は「GWG(コムスン)ショック」とともに沈んでいきました。
後は、ハムの天敵ソフトバンクを思う存分痛めつけてあげて下さい(笑)。宜しくです。

今年、楽天山崎が2冠王だったら、どうするか。
今、大注目は今年のホームラン数ですよね。60本行けるかもよ。
優勝とか関係ないチームだから、マークが厳しくないだろうし。後半の消化試合が盛りだくさんだろうから、チャンスありまくり。

ローズが必死に追い上げてきているのも、何だしな。
一体この2人には何が起こったのだろう?
人間、一度は(何度もか?)どん底に沈んでみるのもいいのかもしれん。

地獄の淵から這い上がると、誰も予想もできなかったことができるようになることがあるのかもしれない。

でも、大半は地獄から抜け出せず、むしろカンダタのように真っ逆さまに堕ちて逝くんだろうけど。



続・知事の能力を疑う~政務調査費の返還請求について

2007年06月25日 00時48分00秒 | 法関係
前の記事にコメントを頂戴しましたので、検討してみたいと思います。
以下にコメントを再掲いたします。


この問題を考えるときには、「地方自治法第242条第1項の規定はあくまでも職員の行為についての規定であり、議員の行為は監査請求の対象と定められていない」という事実を考慮する必要があるように思います。また、「法律上議員は職員ではない」ため知事の直接の指揮・命令権限は及ばない(議員は知事の部下でなく議会は知事の下部組織ではない)事も考慮しなければいけないと思います。

もし、政務調査費について監査請求をするなら、議員に対して不当に政務調査費を支出した(おそらくは議会事務局の)職員の行為が対象になると思います。そして、支出に過誤があった場合、知事は支出行為を行った職員に対して弁償を命じる事はできても、議員に直接弁償を命じる事は出来ないはずです。

また、大阪府の政務調査費の条例では、議員が政務調査費に残余があると申告した場合、その額の返納を知事が「命じることができる」との規定はあります。しかし、この場合議員は「正当な支出であり残余額はない」としておられますから、知事は返還を求めることが出来ません。と言うわけで、議員に返還を求めるのは議会(議長)にしか出来ない行為であり、この点において知事の発言は正当と思われます。

なので今回は監査を担当した方々が、「知事に対して議員へ返納させるよう求める」ではなく「議会(議長)に対して議員に返納させるよう求める」と監査報告をしていれば何の問題もなかったと思います。そもそも監査報告が法律の谷間というかグレーな部分に該当するような内容であったと、私はみております。

しかしながら、住民訴訟の場合は議員を直接名宛人として提起できるとされていますから、監査請求で明らかになった金額について返還を求める訴訟を議員に直接提起する事は可能かと思われます。訴訟を提起するには監査請求が必要ですから、そういう意味で監査に意味はあったとは思います。

長いコメントで恐縮ですが、知事の発言は相応の正当性があったと思っています。いかがでしょうか?




①知事の指揮命令権と予算執行権は異なる

支出の執行責任者は首長であり、予算執行権限があることが重要です。下級組織や支出先に対する指揮命令権(監督権も?)は、基本的に必要とはならないでしょう。例えば、道府県警への指揮命令権や監督権を有している訳ではないが、予算執行権限を有していることから、第221条の予算に関する調査権限が及ぶと考えられます(判例から)。府議会議員への指揮命令権は知事にあるはずないですが、返還請求可能かどうかはこれと関係がないものと思います。

住民監査請求では、「府議会議員の行為」について監査請求など行わないでしょう(そのような請求権はない)。単純に監査をしてくれ、という請求を行ったものと思います。監査委員は関係人(今回は主に府議会議員だったのでしょうか)について調査したり、帳簿類等記録を精査するだけであって、議員の「行為の違法性」を検討しているわけではないでしょう。第199条第7項及び第8項の権限に基づき、監査が実施されただけと思われます。


②支出を実行した下級職員の個人的責任なのか

下級職員は予算及び出納に係る諸法令に基づき支出を実行しているであろうと思われます。支出の命令を出すのは上級職員であり、(出納長若しくは収入役ということなのかもしれませんが)最終的責任所在は首長であると思われます。もしも予算に無い支出項目で、下級職員が独断で勝手に公金を支出すれば個人的責任を負うことになるかもしれませんが、政務調査費はそれとは違うでありましょう。更に、支出に伴う手続に関して下級職員に落ち度が無いのに、個人的責任を負うのは明らかにおかしいでありましょう。

下級職員が個人的責任を負うことになれば、仮に、徴税に関する未収があれば、徴税実務に関わる職員は軒並み個人的責任を負わされて、全員破産してしまいかねません。これが本当ならば、大変なことになってしまいます。


③地方自治法第242条第1項は「職員の行為」の規定なのか

第242条の骨組みだけ考えると次のようになります。

・首長について、違法若しくは不当な公金の支出があると認めるときは、これらを証する書面を添え監査委員に対して監査を求めることができる。

・(監査の結果)当該行為を是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によってこうむった損害を補填するために必要な措置を講ずるべきことを請求することができる。

支出の最終責任者が知事であり、違法若しくは不当な公金の支出があることが疑われるのであれば、住民監査請求ができるものと思います。更に、この損害を補填する為に必要な措置を講ずるべきことを知事に対して求めることも可能であろうと思われます。知事の相手方に対する返還請求権は、法的権利が何に該当しているのか判りませんが、通常の損害賠償請求権のようなものかもしれません。裏金事件のような場合であれば、行政職員に対する命令ができるので、知事の職務上の権限であるかもしれませんが。


例で考えてみます。
(現実の公共事業とか支出形式とは全く異なるでしょうが、一応便宜的に仮定したものとします。)

都道府県がある土木工事Aに対して、予算1000万円を組んでいたものとします。請負業者Bが当該工事を実施して、900万円かかったと請求したものとしましょう。下級職員Cが業者Bに対して工事代金を事前に1000万円渡しておき、引き去り方式によって使ったものとします。つまり、かかった分だけその都度支出し、残余があった場合には返却する、ということです。
そこで監査が行われたところ、業者Bが「土木工事に使用した」と主張していた900万円のうち、実際の工事に使った分は500万円だけで、400万円は飲食に使用してしまっていたことが明らかになったとします。

すると、コメントの内容からは、

ア)100万円が余っているので、知事が返還請求できるのはこの100万円だけ
イ)知事は不適切使用の400万円の請求権がない
ウ)下級職員Cがこの400万円の支出責任を負う
エ)知事は下級職員Cに対して400万円請求する、という権限を持つ
オ)住民訴訟ではエ)の請求権発動を求めることができる
カ)住民訴訟では業者Bに対して直接の損害賠償請求権を持つ

ということを述べているものと思います。

まず、ア)については、条例で規定されている、とのことですので(私には条例内容は一切わかりませんが)、請求は可能であると思われます。問題はイ)、ウ)、エ)ですが、この考え方には同意しかねます。下級職員Cには手続上問題なく、違法支出であるとの認識がなかった、支出命令は上級職員から出された、というものであれば、その責を個人に負わせるとは考えられないからです。命令に従って支出したら、支出先が違法行為を働き、その責任を下級職員Cが負わねばならないとすれば、公務員になる人は誰もいなくなってしまうでしょう。予算執行の責任は知事が負うべきものであり、すなわち地方公共団体が負っているということです。下級職員への請求が可能になるのは、所謂裏金事件のような場合で職員が加担している、といった場合ではないかと思われます。

その他の場合では、国家公務員であれば、「国家公務員法」や「予算執行職員等の責任に関する法律」などの法的規定によって個人的賠償責任を負う範囲が定められていると思いますので、地方公務員についてもほぼ同様な責任範囲となっているであろうと予想されます(よくある、地方公務員法での読み替え、とか何とか?他には地方自治法では第243条の二とか)。そうでなければ、下級職員には賠償責任はないでありましょう。

あと、カ)の請求権ですが、実際に可能なのでありましょうか?第242条の二の第1~4号規定では業者Bに対する請求権はないように思えます。相手方が行政機関や公務員の場合にはそれが可能、という意味なのかもしれませんが、これは私には判りません。これは本質的には関係ないので、とりあえずおいておきます。


例に沿って私の考えを書くと、次のように言えるかと思います。
土木工事代金が地方公共団体の債務に該当すると思いますので、
債務者=知事(直接支払い行為は職員C)
債権者=工事業者B
でありましょう。

業者Bは「債権額は900万円」と主張、しかし、監査の結果「正しい債権額は500万円」と判明した、ということです。しかし、既に900万円は支払われた後である、と(100万円は残余として返還済み)。
この時、知事(地方公共団体)は「債権額900万円は誤りであり、400万円には債権が存在しない」、故に、「400万円を返せ」と業者に返還請求できるものと思います。立証については、監査結果で既に証拠が挙がっていると考えられます。ここでは、400万円が違法な行為に使用されたかどうかは問題となりません。400万円には業者Bの債権が存在していない、ということだけです。業者Bが飲食などではなく、例えば(違法行為である)児童買春に使った、とかそういうことを立証しようというのではないのです。知事がこの400万円の返還請求権を有しているということであれば、住民訴訟においては知事の有する「返還請求権を発動せよ」と知事に対して求めることが可能、ということです。

議員活動がどうの、とか、議長が返還を認めるかどうかなどという話は関係なく、債権者が府議会議員だ、ということだけであり、債権者が主張する債権について監査したところ「条例違反であったので債権とは認められない」という結果が出た、ということでありましょう。「土木工事」費用として使われたと考えられていたのに、実際には飲食に使われていた、ということが判明したならば、返すのは当然であるということです。

では、議員側主張とは何かと言うと、「土木工事」費用についての定義問題であり、これは条例の解釈問題ということです。何が土木工事費用に含まれるものなのか、ということを争うのであれば、行政側の出した解釈=監査結果について「裁判で争いなさい」ということになりましょう。たとえグレー部分が決定に含まれていたとしても、監査報告は覆せません。国民が追徴に関する決定を不服として裁判で争うのと同様に、監査結果が不服なのであればそれについて争いなさい、ということです。更に、監査報告は公表されることになっているので、あまりに不適切な監査結果であるというならば、大勢の大阪府民やその他国民が「監査は不当だ」などの非難をするので安心して良いのではないでしょうか。

議員側は、土木工事を行うに当たり、過去の工事ビデオを見る為に買った「50インチ液晶テレビ代金」は工事代金に含まれるんだ、というような主張をした、ということです。監査委員側は「いやいや、これは土木工事費用ではありませんよ」と認めなかった、ということでしょう。この見解の相違については、別件で争うべき事柄でしょう、ということです。条例違反かどうかの判断・決定は、議会で行うわけではありません。そのような権限は議会にはありません。故に、議長の権限には関係なく、監査委員の勧告が知事宛ということは当然であると思います。


最後に太田府知事の発言には何らの正当性など認められない、というのが私の感想です。上記例で言えば、業者Bに急遽「返還するかどうか考えて下さい」と求めているようなものです。ましてや、実際に支出した下級職員に責任がある、などという判断は、今の所有り得ないとしか思われません。知事の責務や職権(言葉として適切かどうか判りませんが)について、地方行政の長として検討することもなく、思い致すこともないままに、「こっちの権限じゃない、議会でやることだ」みたいに言い切るのは、地方行政や監査委員の制度の根本原則を無視したものと判断致しました。



知事の能力を疑う~政務調査費の返還請求について

2007年06月24日 14時44分02秒 | 法関係
今年は東京都知事選があったりして、国会議員ばかりではなく知事にもそれなりの注目はありました。大統領級の権限とか何とか喩えられますが、本当に大丈夫か?とは思う部分は少なからずあるわけです。けれども、偉そうな答弁だけはする、ということですわな。いや、別に石原さんがそうだ、とか言ってるわけではありませんよ(笑)。

法人税の見直しなどに関して大都市圏の知事(東京、神奈川、大阪、愛知)は反対する、というのは判らないではありませんが、「原則を無視するな」みたいに言ってるのはよく覚えておいて頂きたいと思います。原則を無視しているのはどっちだ、と。
今回は、著しく当事者意識を欠いている「太田大阪府知事」について取り上げたいと思います。

コトの起こりはこちら。

Yahooニュース - 毎日新聞 - <大阪府議政調費>3億4100万円は目的外支出と返還勧告

大阪府議に支給された04、05年度分の政務調査費の一部が目的外支出に当たるとして、市民グループが返還を求めた住民監査請求で、府監査委員は15日、総額約3億4100万円を目的外支出と認定し、現職や元職の議員112人に返還請求するよう太田房江知事に勧告した。「全国市民オンブズマン連絡会議」によると、議会全体を対象とした返還勧告は全国初で、金額も最多。府議会は「使途基準に見解の相違がある」と反発しており、全額返還されるかは不透明だ。

大阪市の市民団体「見張り番」(松浦米子代表世話人)が2月、政調費約15億5500万円のうち約8億1000万円が目的外支出だとして監査請求した。府監査委員に府議がいるため、外部監査を委託された弁護士は、他の自治体の判例や監査結果などを参考に独自の判断基準を設定。現職、元職計114人から事情を聴き、▽自己所有の事務所の賃料▽自動車購入代▽契約書のない調査委託費▽携帯電話、名刺、薬の購入代や慶弔費――などを認めなかった。目的外支出と認定された個人支給分は両年度で計約2億9000万円。議員別の最高額は1176万円で、自宅と同住所の事務所賃料を計上していたなどとして、支給額全額を目的外と認定。また共産は、会派で雇用する職員への調査委託費として各議員が年間264万円を負担しているが、「具体的な委託内容が認められない」として半分の返還を求められた。会派への支給分では▽自民約2250万円▽民主約1204万円▽公明約1534万円が目的外とされ、共産はゼロだった。政調費は議員1人当たり月額49万円と会派に1人当たり月額10万円。太田知事は「勧告は尊重されるべきで、まずは議会として対応を判断すべきものと考えている」とのコメントを発表した。【堀川剛護】



で、太田府知事は自分の方では判断しない、議会の方でやってくれ、というようなことを言っていたようだ。知事として返還はさせられない、監査権限はこっちじゃないんだから、みたいにも言っていた。地方自治というのは、首長がダメ、地方議会もダメ、ということで、問題が解決に向かわないのかもしれない。まるで映画『県庁の星』に出てきたみたいな、首長と議会の関係というのが思い浮かんだ。太田府知事のような無責任首長がいる限り、地方行政に前進はないであろう。テレビでチラッと出てた会見の映像では、記者からの質問に対して、ヒステリックに「返還させられない」みたいなことを叫んでいた。女性の首長だから、ということではないだろうし、性差別的表現を意図してはいないが、ありゃ、かなり問題だな。何であんなに偉そうなの?そもそも、自分に責任があると思っていないのではないか。日本の知事というのは、こういうレベルなのであろうか。例えば、名前が良く似た諮問会議の大田さん(経済財政担当)も女性であるが、大阪府知事とは全然違うよね(笑)。

この前国税庁の話をちょっと取り上げたが、一般企業でもよく国税庁から追徴されているよね?上場企業は公認会計士とか監査役とかの経理・会計処理を経ている訳だから、そんなに大きな間違いなんてないと思うのだけど、それでも申告漏れだと国税庁から指摘されるわけだ。時々裁判になったりしているけれども、ありがちな理由というのは、「見解の相違」ってやつだな。これは話が判る。会計士・税理士とかは法令とかこれまでの通達なんかを考えた上で処理しているはずなんだが、国税庁は法を解釈し適用する側(=行政)なので、「この場合には~となるので、所得になり課税されます」とかの解釈を勝手に行えるわけだ。行政庁のこうした決定を覆すことは、普通の人々にはできないので裁判で争うのだ。

基本原則としては、法令があり、それに従って行政側が解釈・判断し、適用して処分を決する。処分が出されたら、覆すには裁判で争いなさい、という仕組みになっている、ということ。国税の場合で言うと、上場企業といえども、追徴されれば一度納付して、その後に不服であることを裁判で争う、ということだ。4知事と一緒になって原則を無視するな、とほざいている太田府知事は、こうした標準的なことを理解できず、自らが原則を無視しているんじゃないか?(笑)


今回の監査請求に関して、全体の流れをザッと見ていく。

①住民が監査請求→②監査実施→③監査結果を知事・議会へ、返還勧告
ということになっている。

以前にも書いたのだが、地方自治法を再び取り上げてみる。

第242条  
普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
(ここでは第1項のみ記しています)

長々と書いてある条文ですけれども、非常に簡単に言いますと、住民監査請求とは、「監査してくれ、その結果、間違いやマズイ所があればきちんと改めさせろ、損害を受けたなら補填させろ」ということを求めるものです。従って、最終的には地方自治体が蒙った損失について弁償させる(あくまで日常用語として使っています)という権限行使を求めるということを視野にいれています。ですので、監査報告を受けた首長や議会、他の行政機関等が何らの適切な措置を取らない場合には、措置をしなさいということを求めることになります。

同じく地方自治法第242条の第4項、第9項を見ると次のように規定されています。

4  第一項の規定による請求があつた場合においては、監査委員は、監査を行い、請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表し、請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

9  第四項の規定による監査委員の勧告があつたときは、当該勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講ずるとともに、その旨を監査委員に通知しなければならない。この場合においては、監査委員は、当該通知に係る事項を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

今回の大阪の件では、第4項に従い「必要な措置を構ずべきことを勧告」した、というところまで来た訳ですね。上記①~③というのは、この242条規定に沿ったものであります。
参考までに附記しておきますが、今回の監査は監査委員に府議会議員が含まれていたことから、外部委託されたとのことです。この規定はいくつかあって、外部監査契約とは「包括外部監査契約」と「個別外部監査契約」があります。で、今回の242条に基づく住民監査請求には特例があります。

第252条の四十三  
第二百四十二条第一項の請求に係る監査について監査委員の監査に代えて契約に基づく監査によることができることを条例により定める普通地方公共団体の住民は、同項の請求をする場合において、特に必要があると認めるときは、政令の定めるところにより、その理由を付して、併せて監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めることができる。

2  監査委員は、前項の規定により個別外部監査契約に基づく監査によることが求められた第二百四十二条第一項の請求(以下本条において「住民監査請求に係る個別外部監査の請求」という。)があつた場合において、当該住民監査請求に係る個別外部監査の請求について、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることが相当であると認めるときは、個別外部監査契約に基づく監査によることを決定し、当該住民監査請求に係る個別外部監査の請求があつた日から二十日以内に、その旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、監査委員は、当該通知をした旨を、当該住民監査請求に係る個別外部監査の請求に係る請求人に直ちに通知しなければならない。

(以下略)

第1項が重要なのですが、条例で監査委員の代わりに外部監査契約ができることが定められているなら、必要があればその理由を附して「個別外部監査契約に基づく監査」を請求できるのです。今回大阪では、それが実施されたのであろうと思われます。

問題となっているのはここから先の話でありまして、第242条第9項規定の期間内に必要な措置を講ずるということについて、太田府知事本人が「私はやりませんよ」と言っていることです。もしも知事が措置を講じないとなれば、措置することを求める住民訴訟提起ということになりましょうか。これは、次の条文で規定されています。

第242条の二  
普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第四項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第四項の規定による監査若しくは勧告を同条第五項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。

一  当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二  行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三  当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四  当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求

(以下略)

恐らく第4号規定の住民訴訟ではないかと思います。
相手方(今回では府議会議員)に対して不当利得の返還を請求してくれ、と執行機関に求める請求ということになりますね。要するに、「府議会議員は不当利得を大阪府に返還せよ」と請求してくれ、ということを知事に求める裁判ということでしょう。監査委員からは、監査の結果、「返還を求めるべきである」という勧告が出されているはずですから、これを無視するのは知事として大問題であります。

太田府知事の「議会の方で考える」云々という言い訳というのは、果たして妥当なのでしょうか。これを考えてみたいと思います。

1)政務調査費とは

この根拠は地方自治法に規定があります。

第100条
○13  普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。

○14  前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。

ここから判ることは、政務調査費は基本的に条例で決められている、ということです。13項より「交付対象、額、交付方法」が、14項より「収入と支出の報告書は議長提出」ということが定められているはずです。

住民監査請求によって実施された監査とは、基本原則として「条例に基づいて監査された」ということです。これは、会計検査院が行う検査とか、国税庁が行う検査なども同じであり、基準は法令にあるのであって、その適用は実施側(=行政側)に判断する権限が与えられています(行政の裁量権の範囲にあるかどうかは争いの余地があるかもしれないが、今は措いておく)。今回の監査においては、「法令に照らして不当、法令からは逸脱した支出」と監査委員が判断した、即ち「政務調査費とは認められない」支出と言えましょう。


2)地方自治体の支出

これについても、条文上で規定があります。

第232条の四
会計管理者は、普通地方公共団体の長の政令で定めるところによる命令がなければ、支出をすることができない。
2  出納長又は収入役は、前項の命令を受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない。

これを簡単に言いますと、
・首長が命令しないと支出できない
・(首長命令があっても)「法令や予算違反がないこと」「債務が確定していること」が確認されていなければ支出できない
ということです。
法令違反があれば支出できない、ということであり、首長であれば支出命令を止めることは可能で、出納長や収入役でも止めることは可能。

更に、次の条文があります。

第232条の五  
普通地方公共団体の支出は、債権者のためでなければ、これをすることができない。
2  普通地方公共団体の支出は、政令の定めるところにより、資金前渡、概算払、前金払、繰替払、隔地払又は口座振替の方法によつてこれをすることができる。

ここで、第1項を平たく言えば「債権者のためでなければ、支出できない」ということが定められています。
2つの条文から、払うべき対象とは「債権者」に対してであり、
・法令違反がない
・予算違反がない
・債務が確定している
が確認されていることが必要である、ということです。
法令違反や予算違反があれば、それは本来「債権者」ではなく、債務とは認め難いでありましょう。

今回の件は、
債権者=府議会議員
債務=政務調査費
でありましたが、「政務調査費ではない(とは認められない)支出」が債務に含まれていた、という監査結果なのですから、法令違反ではないという欠格事項に該当し、これを返還するのは当然でしょう。政務調査費と判断するべきか否か、ということについては、「行政の出した処分」を争う裁判で決着をつけよ、というのが本来のシステムでしょう。


3)返還請求するべきは誰か

上述した第232条の四規定により、首長命令がなければ支出できません。更に、

第220条  
普通地方公共団体の長は、政令で定める基準に従つて予算の執行に関する手続を定め、これに従つて予算を執行しなければならない。

となっていることから、予算の執行者とは最終的には首長であって、執行責任も首長にあるはずです。
お金を払ったのは地方公共団体ですが、裁判となれば請求者は知事ということになりましょうか。補助金不正などの場合に返還を求めたりしているはずですから、「支払ったもの(債務者)」が債権者に対して返還を求めることになるのではないかと思います。現に、監査委員からの勧告でも、知事に対して返還請求の勧告が出ているはずですから、勧告に従って府議会議員に返還請求するかどうかの決定権限についても知事にあると思われます。府議会にはその権限はないでありましょう。

なので、太田府知事の言う、「私じゃない、議会の方で云々」というのは、そもそも誤りなのではないかと思えます。債権者たちが、債権者自らに対して返還せよとか、どれを返還しどれを返還しない、といったこと決めるというのはオカシイのではないかな、と。


4)頓珍漢な府議会議員たちの言い分

最後に、呆れた議員が多いことを見てみましょう。
府議会議員たちの言い訳があまりに面白い。

Yahooニュース - 毎日新聞 - 府議会:「目的外」政調費、独自の使途基準作成へ 返還はその後検討 /大阪

会合では、議会事務局が、自己所有の事務所賃料や自動車購入費などを目的外支出とした監査の使途基準について説明。出席した主要4会派の議員から「見解の相違があり、納得できない」などの声が相次いだ。府監査委員は、知事に全額返還を勧告するよう求め、同日午前には、元府議1人が自主的に返還した。同様に返還の意向を示している議員もいる一方、「返還するつもりはない」という議員も多く、全額が返還されるかどうかは不透明な状況。このため、会合では、これまで明確な使途基準がなかったことが混乱を招いたとして、基準作りを急ぐことで合意。返還は、基準を作るまで保留することにした。



地方議員というのは、行政のシステムについて何も考えていないのではないか?今頃になって、「見解の相違があり、納得できない」とか「返還するつもりはない」といったおバカな回答をしているのは、本物のアレだな(爆)。
いいですか、国税庁に「申告漏れですから税金を納めなさい」と言われた国民は、どうなると思いますか?(因みに私は言われたことないから知らんが、笑)「見解の相違があり、納得できない」とか「納めるつもりはない」とか言って済まされるとでも?強制執行されてしまうのではないですかね。もう、議員のクセに一体何を言っているのかと思いますね。

まずは全額払いなさいよ。で、納得いかない人たちは、自分で裁判なりを全件やっていきなさいよ。違法な支出だったのは、「条例違反」だから仕方がないじゃないですか。条例は誰が決めたんですか?あなた方か、その昔の議員たちか、要するに「府議会議員」が決めてたことなんだよ。それを十分知っているのは、他ならぬ「府議会議員」じゃないですか?(笑)
出てきた言葉は、「明確な使途基準がなかったことが混乱を招いた」って、究極の○○だね。使途基準が不明確なら、ある支出が「政務調査費」に区分される、って、自分たちはどうやって判ったんですか?本当に政務調査費に該当しているかどうかが自分では判断できんでしょう?基準が不明確で条例に不備があると思うなら、それを変えるとか新たに条例を制定するのが自分たちの仕事でしょうが。今頃何を寝惚けたことを言っているのでしょう?

条例が悪いのは、作った府議会の責任だっての。
基準が不明確なのも、使途基準が曖昧なのも、府議会の責任だっての。
元々の責任は、全て自分たちにある、ってことだよ。

そんな簡単なことが判らない地方議員というのは、どうかしているね。
で、「返還しないぞ」と抵抗するのも、ホンマもんの○○じゃ。


5)今後のこと

違法支出に対して知事が返還請求しない場合には、住民訴訟になるだろう。
監査結果が不当であるとする判決は多分期待できないでしょうよ。監査結果を出しているのは行政側であり、行政側決定を知事側が裁判で覆せない限り監査不当ということにはならんわけで。監査の結果を受け入れるとなれば、知事の不作為(勧告に従い適切な措置を講ずることをやっていない)というのが正当であるとは到底認め難いでしょう。そうなれば、知事は府議会議員たちに対して「返還請求」をせざるを得ない。違法支出ではなかった、ということを行政側が立証せねば、まず覆せないと思うよ。違法支出ではないことの証明とは、同時に監査委員の監査結果を否定するということなんだからね。そんな面倒を抱え込むなら、初めから府議会議員側に返還請求をしておいた方がいいに決まっている(笑)。



脇役のつまらない時代劇

2007年06月23日 15時57分06秒 | 政治って?
私はこれまで「水戸黄門」とか「大岡越前」とかが結構好きだ、と何度か書いてきた。「仕事人」シリーズや「桃太郎侍」も悪くないけど。もっと古けりゃ、「子連れ狼」とか、「木枯らし紋次郎」とか(字が間違ってるかも?)。
「あっしにはかかわりのねえことでござんす」とか、爪楊枝をくわえる仕草とか、小学生頃にマネしてた。何度吹いても、柱には突き刺さらなかったけど(笑)。

ひとーつ、人の生き血をすすり、
ふたーつ、不埒な悪行三昧、
みっつ、醜いこの世の鬼を、
退治てくれよう、桃太郎。

(セリフを書くと、著作権法違反?大丈夫でしょうか?)
こんな感じだった。と思う…
これを未だに覚えている人は、多分あまりいないと思う。どうでもいいけど。


書くかどうか迷ったが、書いておく。

今の安倍政権は風前の灯火の如く言われているが、「参院選の責任」云々って、全部が安倍総理の話にもっていかれているが、参院選の負けは基本的に「参院の責任」ですよね?
すなわち、第一の責任者である、「青木・片山」の首が飛ぶ、ということ。
これ間違いなし。自分たちがまず責任を取れよ。
「良識の府」だとか、衆院と参院は違う、とかいつも言ってるんだから、自前の責任は自前で取れっての。何でも人のせいにするな。責任所在がどうの、なんて、そりゃ、アナタ自身に決まっているでしょうが。何で、総理が参院選の体たらくまで尻拭いしてやらにゃいかんのよ。

年金問題にしても、今の事態を招いたのは安倍総理だけの責任なのか?何十年も国会議員をやってきた連中は、今のいままで一体全体何をやり何を監視監督していたのよ?○○みたいな頭の悪い「ダメな議員」ばかりだったからこそ、今の状況になっているんじゃないの?長年議員をやり、与党内でやってきた人間にこそ、多くの責任があるであろうことは間違いないでしょうよ。何で年金改革の時に、もっと真剣に調査・検討しなかった?与党が強行採決に踏み切って、ダメ議員みんなが「賛成票」を投じたんでしょ?自分たちで種を蒔いて、何十年もかけて問題が「大きく成長」した結果が、今なんでしょうよ。この解決に乗り出したことの方が、これまでの腐れ頭のダメ議員なんかよりは、はるかに評価できる。

この前参院選予想を書いたが、あの時、ちょっと判ったことがあるんですよ。04年参院選で比例の「自民党」票は1100万強だった(民主は1800万票近くで個人名の票は少なかった)が、個人名の票が520万票くらいあったはずだ。つまり3分の1くらいは「候補者個人」への期待といったもので、ある程度は得票を伸ばすことが可能なのですよ。逆風の中でも、候補者が優れているなら、頑張ればある程度票が取れるということ。

舛添とか、総理の進退問題とかに言及しているが、この議員も本当にどうしようもないな。こういう足を引っ張る人間が、選挙直前になってでさえ党内に出てくるのが本当に困ったもんなんですよ。以前にも「裸の王様」発言で官邸批判をしていたが、こういう発言がマイナスになっていることが判らないんだよ。ま、舛添自身が前回選挙で150万票以上取っているから、その議員活動の結果が評価されるわけだ。もしも、今回100万票割れならば、前回投票してくれた人たちからは期待外れだった、という評価ってことだな。党内の役職は全て辞任した方がいいんじゃないか?今回どんだけ票を減らすのか、見ものだな。


今回選挙で仮に過半数割れとなってしまうにせよ、政権選択とは違う選挙なのだから総理の進退云々ということにはならないだろう。本当に問うのであれば、衆院を解散するべきだ。解散できないなら、辞職もやむなしかもしれんが。

それ以上に、党内で負けた時の「切られ役」が出てこないのはなんでなの?総裁を守るのが役目の人間は、一体何をやっているのかね。安倍総理が直に切られてどうすんの?選挙で負ければ、安倍幹事長がかつてそうだったように、「幹事長の首を取る」ということになるでしょう。秀さんには悪いが、真っ先に切られて下さい、ってことだわな。でも、他には守る手立てがないでしょうよ。青木・片山も勿論一緒に首を差し出してくれ、ってことだワナ。当たり前だよね?

で、一新して出直すには内閣改造、ということになるだろう。その後の評価で、どうしても浮上できない、求心力も厳しい、ということであれば、総辞職か解散しかないでしょうね。自民党は参院の過半数を社会党などの野党に取られてしまっていた時期があったんだから、過半数割れでもやるしかないと判っているはずでしょう。首班指名でさえ、毎回野党党首を出されていたんじゃないの。それでも政権運営はやっていたでしょ。なので、「負ければ、死に体だ」とか言ってるのもどうなの、とは思うね。まあ、本当にいつ逝ってもおかしくなさそうな…以下自粛。

時代劇で主人公が輝くのは、上手な「切られ役」がいてこそでしょう。脇役が悪けりゃ、主人公にどんないい俳優さんを当てたとしても、低調で終わる。今の自民党がまさしくそうなんだよね。シナリオも酷い、主役の演技を殺す連中ばかり、目立ちたがりの大根役者揃い、ということで、見るに耐えない劇といったところでしょうか。憎まれ役も魅力ある敵役も出てこない、と。主演男優を見殺しにするしか能のない連中ばかり、と。


まあ、チャンスはまだ残されているので、よく頭を使い、知恵を絞って、戦の準備をしておいた方がいいだろうね。選挙結果は、フタを開けるまでは判らないからね。50万票取れそうな候補者を3人出せば、それで150万票取れるけど、これも難しいか。



弁護士の決め台詞は「憲法違反」?

2007年06月22日 19時47分21秒 | 社会全般
この前、慶応大学教授で憲法学者の小林節先生の書かれた産経新聞の記事を見て思ったのだが、「憲法違反だ」という主張を繰り出すのは、ある種の「お約束」みたいなもんなんでしょうか?

日本の憲法学者の真意を問う

で、調べたら出てた。

小林節 - Wikipedia

憲法学者にして弁護士、という大変優秀な先生らしい。では、どうしてこれほど立派な教授が、「違憲性が問われてしかるべき」などという甘い記述をするのであろうか?法学部教授にして、憲法学者で、弁護士なんですよ?要するに、違憲性を法学的に考える立場としては、申し分ないというかこの上ない経歴と言えるのではないでしょうか。にも関わらず、「憲法22条、25条、29条に反する」立法ではないか、ということを具体的に述べないというのは、本当に不思議でしょうがない。だって、自分の専門領域ではありませんか。自分の得意とする所であるのに、何故か厳しく言及していないのですね。「これこれこういう理由で、違憲だ」とか明確にすればいいのにね。何故言わないのでしょうか。

それと、通常提訴する一般の人々にとっては、「違憲なのか否か」といったことを考えたりするのは結構難しいのではないかと思うのですよ。提訴の理由として考えるとすれば、「納得できない」とか「解釈が間違ってるんじゃないか」とか、その位は考えたりするかもしれませんが、さすがに「憲法違反なんじゃないか?」とかって弁護士に相談に行ったりはしないことが普通だと思うのですよ。大体憲法違反かどうかを、法学に無関係な人が判断したり考えたりはできないことが圧倒的に多いだろうし(そもそも憲法の条文を正確には憶えてないし思い出せないことが多いのでは。これって、私だけ?)。

つまり、裁判での原告側主張にある「憲法違反だ!」みたいな主張を付け足しているのは、殆どが「弁護士の仕業なんじゃないの?」ということ。

「憲法違反だ」という主張が割とありがちなんじゃないのかな、と思ったのは、前にこの記事を書いたから。
コレ>公共交通機関の禁煙措置は違法か?

普通の人たちは、思いつかないことの方が多いと思うよ、やっぱり。憲法違反かどうかなんて、大それたテーマだから思いつかないもの。でも弁護士ならば、多分可能なんじゃないのかな、とは思う。これって、認められないと判っていても、必ず一箇所には「憲法違反だ」という主張を付け足しておくのが、裁判の慣例というか「お約束」なんでしょうか?と思ったわけです。他の判決文などでも、目にする機会が多かったように思うし。で、実際の裁判で憲法違反が認定されたケースって、どれほどあるかと言えば、まず滅多にない、という印象なんですよね。

<ちょっと寄り道:
「憲法違反だ」との主張をして認定された割合って、どの程度なのか調べてみて欲しいですよね。無効なことが判っているのに主張するのは、止めたらいいのに。毎回裁判官は「~の理由で憲法に反するとは認められない」とか、「~なので違憲とまでは言えない」とか、無駄に多く作文せねばならなくなるんですよ(笑)。裁判だと「言った者勝ち」みたいなところがあって、無謀だろうが何だろうが「憲法違反だ」と主張するから、毎回「いや、それ、違うから」と判決で答えねばならないのですよね。何と言いますか、詭弁士みたいなことになってしまって、まさしく 「口は弁護士、心はサギ師」が実感されるわけです(笑)。主張点を増やそうとするのは、弁護士の見栄なのか、心底違憲と解釈しているのか、よく判りませんが、「憲法違反だ」と言うのはタダだし言わないと損する、ということなのかもしれません。「超大穴狙い」の論点で、運良く当たれば儲けもの、ということでしょうか。>

小林節教授の「違憲性が問われてしかるべき」というのも、これと同じ心性なのではなかろうか、と。それは弁護士という職業的習性から、ついつい「入れてしまいがちな主張」ということなのかもな、と。でも私が知らないだけで、法学とか司法の世界では、本当はそうじゃないんだ、ということが何かあるのかもしれません。もっと真剣に憲法解釈した結果、「憲法違反だ」という主張が当然出てくるんだ、といった、「みんなバラバラ」みたいなことになっているのかもしれません。仮に違憲と認められるのが「100回主張して1回あるかないか」という程度なのに、頻繁に「憲法違反だ」と主張する弁護士たちのレベルというのは一体どうなのでしょうか、と疑問には思いますよね。それって、早い話が適当に言ってるのと何が違うのでしょう、ということです。


私は特に法学部教授や弁護士を非難したいわけではありません。弁護士といっても、全部ひと括りではないでしょうし。ですが、誰でも「憲法違反だ」みたいに使うのも、どうかとは思うのですよね。


違憲性があると主張するのであれば、是非ともその論を提示して頂きたいと思います。弁護士であり、法学部教授にして憲法学者ともあろうお方が、適当な主張点を付け足しただけに過ぎない、ということはよもやありますまい。次回の産経新聞紙上で結構ですので、ご説を開陳されるよう希望します。

法学的見解が何ら提示されないのであれば、日本の法学部・法学教育とはこうレベルなのだな、と受け止めたいと思います。



キリギリスに貸すのは愚策?~行動経済学と上限金利規制

2007年06月21日 20時10分13秒 | 社会全般
日経新聞の当該記事を読んだわけではないので、あまり踏み込んだ話はできないのですが、一応、昨日の記事に追加しておきたいと思いますね。


参考になったのはこちらの記事。
さるさる日記 - 泥酔論説委員の日経の読み方


この6月15日付記事には次のように記されています。

大阪大学教授 筒井義郎

 社会問題化した消費者金融はまだ解決すべき課題がある。借り入れ制限は是認できるというのが新しい行動経済学に基づく政策の含意だ。昨年末の法改正で上限金利が引き下げられたが、借り手の情報を貸し手が十分把握できていない場合、上限金利規制は有効かどうか疑問である。

グレーゾーンと呼ばれた上限金利が20%に引き下げられるなど、昨年暮れに改正貸金業法が成立しましたが、これで本当に多重債務問題が解決するのかという問いに対し、筒井教授は行動経済学からみて有効性が疑わしいとしています。
筒井教授は、サラ金で債務整理・自己破産した経験者と借り入れたことがある経験者、そして利用未経験者とのアンケート調査(下図)を行います。
「双曲線割引度」というのは、「直近の借り入れなら高い金利でよいと考えるが、遠い将来の借り入れについては低い金利でも借りたくない」と考えることであり、「アリとキリギリス」で例えれば「キリギリス」な人と言えましょう。
調査と分析の結果、双曲線割引度が高く自信過剰な人ほどサラ金からの借り入れで債務整理に陥る可能性が高いことが示されており、こういう人に対していくら金利を低くしても、借金が雪だるま式に増えていくことは回避できない可能性を示唆しています。

一方、サラ金側も借り手のリスクがよく分からないまま低金利で貸すと、貸し倒れが続出して経営が悪化するので、採るべき選択は貸し渋るという以外になく、消費者金融業は縮小均衡になりましょう。
しかし、キリギリスな人々はいくら高金利でも今日のお金が借りたいわけですから、サラ金が貸してくれなければ暴力団が支配するヤミ金に走ることは自明です。
もし消費者金融がなくなったらどうなるのか、筒井教授らの試算によると、キリギリスな人は国民の約2~3割、サラ金利用者では約3~4割と見られ、残り約6~7割の人は担保なしでお金を借りたくても行き場を失うということになります。




この記事から、私なりの理解として書きますと、次のようなことです。

①借り手側に問題行動の人(便宜的に「キリギリス」と呼びます)が存在する
②貸し手側は、キリギリスの見分けがついてなかった(情報の非対称ということ)
③キリギリスは金利に関係なく借金を重ねて雪だるまになる
④キリギリスだと金利規制は有効性に疑問がある
⑤キリギリスは高金利でもヤミ金でも借りてしまう
⑥キリギリスは国民の2~3割、借り手の3~4割存在する

<参考までに憲法学者である小林節慶大教授は、「多重債務者の多くは性格や生活態度に問題がある」旨、述べている。「ライフイベントなんだ」説は規制反対派から取り下げられたのであろうか?ギャンブルや浪費のような典型例ということが言いたいのだろうか。>


なるほど、行動経済学には上記①~⑥があるので、上限金利規制は効果的ではなく疑問である、ということですね。
ハイ、判りやすいですね。では、少し書いてみたいと思います。

対策としては、貸し手はキリギリスをうまく見分けて、キリギリス以外の人に貸しなさい、ということなわけです。つまり

「貸金市場からはキリギリスを排除する方法こそ、求められる対策である」

というふうに思ったわけですが、違いますか?

キリギリスに上限金利規制が無効だから、ですよね。
キリギリスは金利水準に関係なく雪だるまになってしまうから、ですよね。
このキリギリス理論が正確ならば、ヤミ金は相当儲かるな。対象者がごっそりいるわけで。
しかも、多重債務を背負っている者の名簿を元にカモを探しているヤミ金たちは、まさしく理論通り実践しているということだね。


昨日の記事でも少し触れたのだが、仮に、貸金市場が1500万人市場(1400万人でもいいんですが、切がいい数字なので一応こうしました)ということなら、この3~4割が「キリギリス」なんだ、ということですな。ならば、450~600万人が「キリギリス」の疑いが濃いので、このキリギリス層には「貸してはいけない」ということなんですかね。この層を貸金市場から排除しなけりゃいけないよ、ってことなんですよね。貸金市場が崩壊したら従来の借り手の6~7割くらいが不利益を蒙る、ということらしいので、「本来キリギリスは一切借りられなくていい」という前提でそう述べているように思われますからね。

キリギリス対策としては、誰か厳格なカウンセラーみたいな管理者を置いて、この管理者に許可を受けて借入を行うとか、借金がどれほど危険なのか思い知らせたり、性格や生活態度について説教したり、ということなんですかね。それをクリアしたら、借りてもいいですよ、とか。でも、キリギリスに貸さないとヤミ金に直行されるんだそうで(笑)。高金利でも何でも借りてしまうので、金利を低くしても意味がない、ということらしいですからね。どうせ雪だるまになるから450~600万人程度のキリギリスに貸してはいけない、しかし貸さなければヤミ金に直行。ならばどうしますか?貸せってことでしょうか?「借りられなければヤミ金に走る、ヤミ金被害が増える」とか反対派はよく主張していて、なおかつ「キリギリスは雪だるまになるから貸すな」と?それとも、昨日の記事にも書いた、借り手の免許制にしてみるとか?

キリギリス判別試験を義務化して、キリギリスと分類された人々については借りる前に行動や性格の矯正を行って、矯正措置がうまくいって再試験に合格した人たちだけに貸し出す、とか、そういった対策を取れってことですか?(笑)すると、試験逃れの為に余計にヤミ金に走ったりして。即ち自動車などの無免許運転者が存在するのと同じく、矯正失敗とか試験逃れのキリギリスが出る、というだけになってしまうとか。


要するに、キリギリスの判別水準程度の精度では、大した「役に立たない」というのが結論になりそうな気がしますが、もしも、いい政策があるならば是非ともご教示願います。>筒井阪大教授

貸金市場からキリギリスを完全排除しますか?ヤミ金直行らしいですけど。
キリギリスに貸すけど、別な管理者とか保証人を立てますか?で、一緒に雪だるまになれ、とか(笑)。
キリギリスの矯正措置をやってみて、合格者にだけ貸しますか?どの道ヤミ金が儲かるけど。

でも、それなら、問題と目される230万人をしらみつぶしに、追加貸付を行う際に「カウンセリング」とかを全員義務化した方が早くないですかね。それよりも、450~600万人くらい存在しているであろうキリギリスを正確に判別し、ターゲットを絞りこんで適切な対応、すなわち行動とか性格とかを矯正すべし、ということなのかもしれませんが。どちらの方が経済学的に得なのか知りたいところです。