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「もっとよく知って欲しい」と求めるだけではダメだと思う

2007年09月06日 17時40分45秒 | 法と医療
ちょっと過ぎてしまいましたが、気になるニュースなので。ボツネタさんのところでも取り上げられておりましたし。

Yahooニュース - 毎日新聞 - <医療事故>検事が現場学ぶ研修制度本格化

(一部引用)

 法務省刑事局などによると、検事の医療研修は05年6月に初めて東京医科歯科大であり、8人が参加。06年10月にも同大学で2回目が実施され、10人が参加している。今年は順天堂大学が加わり、2大学で計20人が手術部や外来診療現場を見学、輸血業務や薬剤業務の講義も受けた。医師らの症例検討会にも出席し、看護師、薬剤師も交えた座談会での意見交換会も行われた。
 参加者からは「実際に医療現場を見て、医師や看護師の立場が実感できてよかった」「捜査や公判でも生きる有意義な研修になった」との声が聞かれたという。一方、病院側も「捜査機関の医療への理解を深める機会」ととらえている。東京医科歯科大医学部付属病院の坂本徹病院長は「医療にかかわる捜査が机上の空論にならないよう、現場を実際に見て知ってほしい」と来年以降も積極的に協力していく姿勢。
 ある法務・検察幹部は「検察は、限られた時間と手段の中で取られた医療措置についてきちんと事件化にふさわしいかどうか見極められるようにしなければならない。研修を通して、医療現場の実情を少しでも知るべきだ」と話しており、来年以降も引き続き研修を実施するという。



実はこうした研修制度があることや、検事の方が実際に医療機関を訪れておられたことは存じませんでした。これは大変良い試みであると思います。是非とも、医療の実態というものを肌で感じてもらえるとよいかな、と思います。

よくカップルの関係などでもありがちかな、と思うのは、「私のことをよく知って欲しい」と相手に求めることです。ドラマなんかでも、「私のことなんて、ちっとも理解してくれてないじゃない」みたいに、彼氏を非難したりとか(笑)。こういう時、相手は自分のことをよく判っていない面があるのかもしれませんが、では自分が相手のことをよく知っているかと言えばやはりそうでもなくて、自分も理解不足ということはあるだろうな、と思うのです。パートナーとして互いのことを尊重し長く付き合おうと思ったら、相手にばかり理解を求めてもダメなんですよね。自分も相手のことをよく知ろうとしなくてはいけない。そういう互いの理解への努力があってはじめて、「ああ、そうなんだな」と伝わる部分ができてくるのだろうと思います。


医療側には、司法の人間はもっと医療のことを知れ、とか、検察も裁判官も勉強不足だ、というような非難がないわけではないでしょう。私自身も医者でもないくせに、余計なことをあれこれと書いてきたので同じなんですが。でも、そういうのをただ求めても、上に書いたような「私のことなんて全然判ってくれてないじゃない!」と彼氏を非難する彼女みたいなものなのです。自分自身も相手のことを理解するように、或いは彼氏に理解してもらえるように努力しなければ、結局は双方ともに理解が深まらないままに終わってしまうのではないでしょうか。相手側だけに責任を求めても、判り合えるようにはならないんじゃなかろうか、と。

なので、検察側がこうして「理解しようと努めてくれている」ということについては、素直に感謝をもって受け止めるべきではないでしょうか。医療側からは、これと似たような司法側への研修を行ったりしているかというと、多分何もないんじゃないのかな、と思うのです。前にもチラッと書いたけれど(言語が違えば、理解は困難になると思う)、理解は一方通行では成立しないだろうな、と。医療側も、検察や裁判所という司法側のことを、もっと知る努力をした方がよいのではないかと思います。私もブログに書くまでは、基本的なこともよく知らなかったし、医療裁判に関わる問題点とかについても殆ど判りませんでした。でも、判決文をよく読んでみると、大変重要なことが書かれているのです。他にも、報道から窺い知れる検察側の態度とか考え方みたいな部分についても、勉強になることはいくつもあるでしょう。裁判の傍聴記事なども大変有り難いですし、勉強になると思います。医療裁判ばかりではなく色々な裁判例も含めて、「どういうふうになっているか」「何が書かれているか」「どんなことが問題になるのか」というようなことを医療側の誰かが理解して、医療側の人間が理解可能な説明が必要になってくる、というようなことです。それを医者の中の誰かがやっていくことが、司法にどういった説明をしたら判ってもらえるか、ということの解決に繋がるんじゃないのかな、と。少なくとも、検察側は「理解しようと取り組んでいる」のですから。何もやらずに相手の理解不足をなじるよりは、手掛かりもあるし、将来の見込みもあると思います。


なんだか偉そうなことを書いてしまいましたが、私は医者でも法曹でもなく、どちらでもないという立場だから好きなことを書けるのかもしれません。当事者にとってはもっと大変なのだ、ということもあるかもしれません。でも、医療側と司法側とが、反目しあったり相手側を非難だけしていても、問題解決は遠のくだけだと思うのです。「自分のことを知ってもらう」とは、あくまで相互理解ということなのであり、彼氏彼女であっても夫婦であっても、相手のことをよく知ろうとすることなんだろうな、と思うのです。