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辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消の代執行に関する裁判の争点について~6

2015年11月30日 17時04分17秒 | 法関係
政府の準備書面について、時事通信報道によれば、次のように主張されているようだ。

「米軍施設をわが国のどこに配置するかは、内閣ないし日米両政府間で決定されるべき事項だ。都道府県知事に審査・判断する権限は与えられていない」

まさしく強権の典型。権限があるのは俺様だけだから、俺様のいうことを全部きけ、俺様の土地なんだからどんなことだって許される、みたいな妄言である。
過日、往来妨害罪とかいう殆ど耳にすることのない犯罪で逮捕された老夫婦がいたが、彼らの主張と政府見解はそっくりだ。「俺の家の前の土地は私有地なんだから、何をどう配置しようが自由だ、俺が決定権を握っているんだ、だから好きにさせろ」といったような言い分ですな。

確かに、一知事に過ぎない立場で「○○基地とヘリ部隊はハワイに置け」というように政府に命じたり、沖縄よりグアム配置が有利であるといった具体論について比較検討しいちいち政府にこれを実施するよう求めるという(行政としての)権限は、持ってはいないでしょう。しかし、賛否は認められるべきものです。基地の配置を指示したりはできないが、「そこに作るぞ」と言われた場合にはこれを拒否できる権限を有している、ということです。
これについて、書いてゆくこととします。


まず、わかりやすい例から説明します。

賃貸マンションがあります。所有権者は甲、マンションの部屋の賃借人がおり乙とします。
普通マンションの部屋というのは、所有権者といえども甲がいちいち部屋の内部に入ってきたり、あれこれと乙に命令したりする権利が与えられているものではありません。普段は、住人である乙が部屋を支配している、ということです。つまり、管理権者(とりあえずこう呼ぶ)は乙であり、所有権者とは異なった支配権を持ち部屋を管理している、ということになります。
所有権者の甲は、水道水の流量について乙にあれこれ求めることはできません。もっと少なくしろ、とか命令権がないのです。

部屋に設置されている暖房器具が、エアコンか灯油式かガス式かということについては、乙は甲に対しあれこれ注文を言える権限はありません。エアコンを設置するかどうかは、甲に裁量権があるということです。それとも、給湯器が電気式よりガス式にしろとか、キッチンのガスコンロを廃棄して電磁調理器にしろとか、シャワーヘッドの形やメーカーはこれにしろ等々を審査する権限は乙にはありません。あくまで所有権者の甲が部屋に付ける設備を考え配置するべき権限を有している、ということです。

ここで、甲が乙の在住する部屋に対して、「明日、お前の部屋にアイランドキッチンを設置し、コンロを一つ増設することにした。だから、その場所を空けておけ」と命じたとします。これを乙は受け入れる義務があるのか、ということです。

甲は所有権者ですから部屋の増改築や設備工事の権限はあるにはあります。しかし、賃借人の乙は、現在部屋の管理権者として部屋を実効支配しています。給湯器は甲の所有物ですが、給湯器を毎日使用しようが、3日にいっぺん使おうが、乙の自由です。甲にとやかく命令されるいわれはありません。

乙はアイランドキッチンの設置予定の場所に食卓セットを置いているのに、これをよけて設置工事を認めなくてはならないものなのか?

乙の同意なくしては、甲のいう設置工事は強行できるものではないでしょう。部屋の管理権者たる乙が部屋を支配しており、甲の権利主張が通用するとは思えません。契約によるとか、甲の特段の事情がなければ、乙にはこれを拒否する権利があるものと言えます。


甲=国、乙=沖縄県、アイランドキッチン=米軍基地、と置き換えてみれば、所有権者の甲の要求がいかに無謀かということです。部屋の設備についての自由裁量が甲にあるとしても、乙の権利を無視して設置工事を強引に行うことは許されないでしょう。


以下において、沖縄県が管理権者たる地位にあるのかどうか、ということを示したいと思います。


要旨:
1)憲法94条は「地方公共団体は、その財産を管理し」と規定
2)埋立対象海域は「財産」の一部である
3)地方公共団体は埋立対象海域の「管理権者」である
故に、沖縄県は憲法94条が保障する管理権者の権限行使が許される。それが埋立を拒否できる根拠である。



1)憲法94条は「地方公共団体は、その財産を管理し」と規定

説明するまでもありませんが、憲法94条は、
『地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる』
となっています。
「その財産」とは、恐らく地方自治法238条にいう財産です。特に重要な条文は次のものです。

○地方自治法238条
4  行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。


2)埋立対象海域は「財産」である

これまで何度も書いてきたように、海は、自然公物であって法定外公共物である。機能面で見れば、公共用財産としての行政財産と同等物であるとみなせる。ただし、最高裁判例にあるように「国の直接の公法的支配管理に服する」とされており、所有権限が地方自治体にあるものでなく、原則として国の支配管理下にある。
公有水面埋立法1条にいうところも、その旨であると考えられる。

保護すべき公共用に供される財産というべきものは、他にも存在する。
環境基本法2条3項にいう「水の状態」と「水底の底質」である。

○環境基本法 2条
3  この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。


「水の状態」や「水底の底質」の悪化は、例えば水産資源に損害を与える可能性があるのであり、これを防ぐべく水産資源保護法のような規制法がある。


また、景観法によって保護される資産も、公共用に供される財産と同等である。
2条1項において「国民共通の資産」とされ、2項及び3項では地域の自然、歴史、文化等調和を配慮することと地域固有の特性を活かす土地利用などが求められている。


○景観法 第二条  
良好な景観は、美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠なものであることにかんがみ、国民共通の資産として、現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう、その整備及び保全が図られなければならない。
2  良好な景観は、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により形成されるものであることにかんがみ、適正な制限の下にこれらが調和した土地利用がなされること等を通じて、その整備及び保全が図られなければならない。
3  良好な景観は、地域の固有の特性と密接に関連するものであることにかんがみ、地域住民の意向を踏まえ、それぞれの地域の個性及び特色の伸長に資するよう、その多様な形成が図られなければならない。

(以下略)


従って、保護するべき公共用に供される財産と言えるものには、

・公共用物としての海
・「水の状態」や「水底の底質」
・景観法に規定される資産たる景観


がある。


本件埋立海域では、埋立工事によってこれら利益に対し侵害が発生すると言える。


3)地方公共団体は埋立対象海域の「管理権者」である

海域が財産と見做せるとして、地方公共団体に権限があるのか、というのが検討すべき条件として残されている。

本件提供海域が、全部国の管理下にあるもので、自治体の財産ではないなら、口出しできないという主張もあり得るだろう。先の賃貸マンションの例で見たように、所有権者甲に対し、管理権者たる乙にも権限があることをいわねばならない。


まず、海岸法37条の三により、知事が海岸管理者である。

○海岸法 第三十七条の三  
一般公共海岸区域の管理は、当該一般公共海岸区域の存する地域を統括する都道府県知事が行うものとする。

知事以外の場合もあるが、主に知事か市町村長ということになっており、地方公共団体が管理主体である。また、漁港漁場整備法25条でも、地方公共団体が管理者となっている。


○漁港漁場整備法 第二十五条
 次の各号に掲げる漁港の漁港管理者は、当該各号に定める地方公共団体とする。
一 第一種漁港であつてその所在地が一の市町村に限られるもの 当該漁港の所在地の市町村
二 第一種漁港以外の漁港であつてその所在地が一の都道府県に限られるもの 当該漁港の所在地の都道府県
三 前二号に掲げる漁港以外の漁港 農林水産大臣が、水産政策審議会の議を経て定める基準に従い、かつ、関係地方公共団体の意見を聴いて、当該漁港の所在地の地方公共団体のうちから告示で指定する一の地方公共団体



これら海岸や海岸域における管理者というのは、実質的に地方公共団体であることを意味している。
キャンプシュワブの陸地から一定範囲の海域が米軍の独占排他的使用を主張しているとしても、海の管理権者たる地方公共団体の立場は影響されない。


公共の用に供しない水面(米軍のみが使用できる海面)が存在するとしても、水産資源保護法において、

○第三条
公共の用に供しない水面であつて公共の用に供する水面と連接して一体を成すものには、この法律を適用する。

○第八条
 公共の用に供しない水面であつて公共の用に供する水面又は第三条の水面に通ずるものには、政令で、第四条から前条までの規定及びこれらに係る罰則を適用することができる。

とあるので、公共用に供される海面と繋がっているから、水産資源保護法の管理権者たる知事権限は及ぶ(だからこそ、本件埋立に伴い岩礁破砕許可申請がなされた)。保護すべき利益としての「水の状態」や「水底の底質」は、管理権者の知事が管理権限を有する、ということである。


更に、本件埋立海域は一般公共海岸区域であるから、海岸法に基づく管理権限は一号法定受託事務には該当しない(40条の四)。自治事務であって、第一義的に管理主体は地方公共団体である。

そして、たとえ海岸の土地が国有地であったにせよ、管理主体の地方公共団体に対して無償貸付された土地においては、地上部分にも知事の管理権限が及ぶものというべきである。たとえ元来は国の財産であっても、貸し出された土地においては管理権者に権限が存在するのである。

○第四十条の三  
国の所有する公共海岸の土地は、国有財産法 (昭和二十三年法律第七十三号)第十八条 の規定にかかわらず、当該土地の存する海岸保全区域等を管理する海岸管理者の属する地方公共団体に無償で貸し付けられたものとみなす。


公有水面埋立法において、知事が免許するか承認するという権限を有するということを鑑みれば、基本的に海域の管理権者たる地方公共団体に判断の権限が与えられていると解するべきである。


ここで再び憲法94条に戻ろう。
地方公共団体には、財産を管理する権限が憲法で保障されている。「管理」とは、国有財産法1条で規定される、「保存及び運用」をいう。
すなわち、「保存すべき財産」があるなら、地方公共団体はこれを管理=保存してよい、と憲法が認めているものである。「保存すべき財産」には、2)で示した自然公物たる海、「水の状態」又は「水底の底質」、景観、などがある。

これに基づく権利行使が埋立事業を承認しないことであり、米軍基地の配置等の審査権限の有無には影響されない権利行使である。


海岸~公有水面(海面)という一連の区域について、管理権者たる知事には、当然に管理権限を有するものというべきである。管理権限行使の一部が、埋立のを免許(承認)するということである。


国の主張を粉砕すべし。



違法を重ねる安倍政権~海保の暴力行為を糾弾せよ

2015年11月30日 13時47分26秒 | 法関係
安倍政権がやってきた法の無視の数々は、戦争法案の採決にすらなっていない委員会採決の暴挙だけではない。昨年から繰り返し述べてきたが、海保の暴力行為は、全くの違法でありデタラメである。


糸数議員の出した質問主意書に対する回答がいい例だ(良くはないけど)。


内閣参質一八九第九号(平成二十七年二月十日)

御指摘の「暴力行為を伴う海上保安官による警備活動」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、海上保安庁は、海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)第二条第一項の規定に基づき、海上の安全及び治安を確保するための業務を適切に行っているものと考えている。


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海上保安庁法2条は

海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における船舶の航行の秩序の維持、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする。

となっている。


このような海上保安庁の目的を述べた条文によって、海上保安庁職員の行った具体的行為が合法であることを立証することはできない。
むしろ、このような答弁を閣議決定するということは、内閣がこれを正当であると認識している証拠であり、法の根拠を欠いたまま不法行為であろうとも実行させることの証左である。


例えば、警察官が発砲した場合において、その行為について法的根拠を質されたなら、警察法の第2条の条文を挙げて、当該行為は合法であったことを立論するようなものである。これを、一国の内閣が、立法府への正式答弁として行い得ることは、法の軽視を自ら証明するも同然である。

警察法 第二条  
警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。


これを理由に行為を正当化できるなら、他の関係法令はいらない。

普通の考え方であれば、警察法の具体的条文や警察官職務執行法の条文を挙げて、法的根拠が存することを説明できるものだろう。それを意図的に回避するということは、海上保安庁の行為が法の正当性をもって説明できうるものではないことを自覚しているということの表れである。


ここで改めて海上保安庁の行ってきた身体拘束等の行為の重大性・悪質性について検討する。


ア)公益侵害・被害の程度

告訴例がある。身体的苦痛を与えられたり、怪我を負わされた例がある。一般人の自由使用をほぼ毎日妨害し続けてきたので、公益侵害は決して小さくない。


イ)行為自体の悪質性

海上の自由使用者から多数の苦情を受けている。首長、議会や国会議員団なども再三申し入れしたにも関わらず、引き続き暴力的行為を続けている。法的根拠がないと指摘を受けても、意に介さず実行しており、極めて悪質。


ウ)当該行為が行われた期間や反復性

海上作業が行われだした、平成26年7月以降から多数の高速ボートや「あるたいる」など30ノット以上の高速艇を投入し、反復して拘束が行われた。カヌー没収もあった。


エ)故意性の有無

故意性は高い。抗議や申し入れを無視し、暴力的行為をやめない。恐怖を植え付ける為に水没させ続けたり、敢えて組伏せたりする。


オ)組織性の有無

海上保安庁として取り組んでいるので当然組織的。庁外の防衛省からの指示ないし要請で組織的に活動している。自由使用を妨害する為、多数のボートや船舶類及び人員を投入。


カ)隠蔽の有無

前記質問主意書においても明らかなように、自由使用の妨害行為がまるで存在しないかのように振舞っている。




現政権における法を無視する行為は、反復性と継続性を有し、組織的であり故意に行っているものである。これは、海上保安庁の行為に限ったことではない。

極めて悪質な違法が、政府によって繰り返されているということである。



辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消の代執行に関する裁判の争点について~5

2015年11月28日 14時39分00秒 | 法関係
産経新聞曰く、『最高裁判決などが壁として立ちはだかる』と寝言を言っているようだ。


>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151127-00000085-san-pol

(一部引用)

承認に瑕疵はないという後段の争点をめぐって、ポイントとなる判例は2つある。平成8年最高裁判決では、軍用地の使用に関して「首相の政策的、技術的な裁量に委ねられている」との判断を示しており、政府は県が普天間飛行場の移設先を判断する権限はないとした。

 翁長氏は辺野古の埋め立てに伴う環境保全措置も不十分として瑕疵と主張しているが、24年東京高裁判決は「環境保全のため常に最高水準を講じるべきとする絶対的基準があるわけではない」との判断を示している。これを踏まえ政府は環境保全措置は適正で、翁長氏の主張は「実行不可能な措置を強いるもの」と断じている。


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前段の昭和43(1968)年最高裁判決については、適用も解釈も誤っていることをシリーズの4の記事で述べたので、ここでは省略する。不利益の比較考量であっても、大規模埋立工事は不可逆的であって影響の大きい事業であるから、埋立ない場合とは到底比べるべくもない不利益であることは明らか。


更には、承認の瑕疵についての検討もされているようである。
全くの推測ですが、国の訴状は、どうも年齢的に下っ端(失礼)もといお若い方々を動員して書かせた(下準備させた)ものではないでしょうか。判例も満足に解釈できず、主張点を正しく記述することもできないように思えます。いわゆる「ネット情報のつまみ食い」レベルでは。全くの論外ですな。

まず平成8年の判例から。
これが沖縄県と国の代執行を巡る裁判となった判決でしょう。
【平成8(行ツ)90 最判大 平成8年8月28日】


産経記事中にある、『軍用地の使用に関して「首相の政策的、技術的な裁量に委ねられている』という部分は、現在では適用できません。

まず、当時には防衛庁長官に権限があったのではなく内閣総理大臣でした(なので産経記事中には「首相」となっている)。今では防衛省があるので、総理権限ではなく防衛大臣権限のはずです。故に軍用地使用の「裁量権を有する」のは防衛大臣です。
当該判決文中では、次のように述べられています。

『諸般の事情を総合考慮してなされるべき政治的、外交的判断を要するだけでなく、駐留軍基地にかかわる専門技術的な判断を要することも明らかであるから、その判断は、被上告人の政策的、技術的な裁量にゆだねられているものというべきである。沖縄県に駐留軍の基地が集中していることによって生じているとされる種々の問題も、右の判断過程において考慮、検討されるべき問題である。』

駐留軍の土地使用について、これが合理的なのか妥当なのか等々の判断は、根拠法に基づく裁量権の範囲内であれば、合法的に認められるというだけに過ぎません。
最高裁は当該判決中において、「適法な裁量の判断の下」であることを明示しています。
当該代執行においては、駐留軍用地特措法、土地収用法という根拠法に基づく判断があって、その上で後続する手続を巡る争いです。

本件埋立承認においては、沖縄防衛局(防衛大臣)が埋立地を決定できた根拠法は何か、ということを尋ねているわけですよ。それは、日米安保条約や地位協定や日米合意文書という、防衛大臣の裁量権を根拠づける法令ではないものは無効に決まっているのです。
国は「適法」の法の意味を全く理解していません。
法とは、大臣の裁量権を行使することを「許す」法令であって、日米合意や安保条約ではありません。防衛大臣が持つ裁量権により、米軍に提供する区域を決め、区域内に飛行場その他施設を建設・設置してよい、と認めている法律のことです。
(普天間基地が完全な米軍基地であるなら、米国法しか通じません。厳格に連邦法の基準を全部遵守する義務を生じます。米軍の持ち物、みたいなものではないことは明白です。)

国は、根拠法を裁判で明らかにしなければなりません。


それから、当該判例は、元々沖縄返還直前までは「米国統治下」にあって米軍が戦後から使用を続けてきた施設及び区域を、「引き続き使用する」為に生じた争いでした。
借地借家法みたいなのに似てますが、現に今住んでいて地上部分を使っている、というような場合には、地主がいくら「出ていけ」と一方的に要求してもこれは難しい場合もあるよ、という例と近いということです。
しかし、辺野古沖の場合には違います。制限海域は元々米軍の独占排他的使用(漁船等の通航も不可なほどに)があった場所ではありません。「新たに」区域を決めた、というものです。それが防衛省告示第123号の制限海域、ということです。

当該最高裁判決時において、代理署名の対象となった軍用地は沖縄返還協定において合意された施設及び区域であって、本件埋立地とは異なります。すなわち、防衛省告示第123号で新たに米軍に提供した制限区域は、沖縄返還協定で合意された区域に一致せず、また、この制限海域や埋立地の範囲が米軍のみ使用でき、一般人の自由使用を一切不可能とする法的根拠は沖縄返還協定文書や国内法にも存在しません。


短くまとめると、

・「政策的、技術的裁量に委ねられる」のはあくまで適法下においてのみであり、その根拠法の存在が必須である。本件埋立地の根拠法令を明らかにせよ

・防衛省告示第123号は沖縄返還協定の合意に一致せず、埋立範囲もまた米軍が自由に埋立地を形成できる権限の存在を証明する法的根拠はない


これらのことから、平成8年の最高裁判決を言う国の主張は適用を誤っており、無制限、無分別な行政の裁量権を肯定しこの実施を許可する為の判例ではない。


(海面の埋立は、その手続きが適法に実施された場合にのみ許されるのであり、米軍だろうと防衛省だろうと、使用するならば、法令に基づく正当な手続きを経てから使え、ということである。一般人の自由使用の権利を消滅させたいのであれば、法律でそれを実施するべきことである)


次の判例に行こう。
環境保全措置について、「環境保全のため常に最高水準を講じるべきとする絶対的基準があるわけではない」という国の判例適用は、あながち間違いというほどではない。

海岸法改正で、自治体権限が以前より明確にされ、例えば一般公共海岸区域の管理者は都道府県知事になっている。海岸法は岸からかなり離れた海面までは含まないが、海岸と沿岸部を一体として捉えれば、地域の自主性を尊重する方向へと変わってきたのだ、ということである。
従って、地域ごとに、何を重視するのか、というのは価値観が全国均一であるということではなく、自治体が基本となって自主的に判断すべきものである、ということだ。ある地域では、工業が盛んなので工場用の埋立地が必要とされるかもしれないし、名勝とか景観保全を第一に重視したいかもしれない。それは、地域の独自性として、自治体住人が自主的に判断するべき、というものである。どんなに環境保護が大事だといっても、市町村財政が立ち行かなくなるほどの保護策を実現できるかといえば、それは難しい。経済合理性も当然に関係してくるものだということ。

そうであればこそ、埋立承認の権限が知事にあるのは当然であり、配慮すべき環境保全措置についても、地域ごとの自主性が尊重されねばならない。自治体の条例や環境保全政策の方針に全くそぐわないものについては、「適当とは認められない」とする判断があっても、不当でも何でもないものである。

国は、「実現不可能な措置の要求だ」と言う。しかし、その批判はあたらない(官房長官風)。
国は、本件裁判以前から、埋立工事の主体は私人同様の一事業者である、と主張する。ならば、原則として民間事業者が行うであろう手続きを踏襲することは、ごく当たり前のことであるということになろう。もしも本件事業者が、民間人であったならば、どのような評価方法や手続きを必要としたのであろうか?

以下に、参照すべき具体例を挙げておく。

・国土交通大臣の認可
・環境大臣の意見
・「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」の適用検討
・「海辺の生物国勢調査マニュアル」の実施及び事後の継続的モニタリング
・「海岸景観形成ガイドライン」に基づく検討
・「河川・海岸構造物の復旧における景観配慮の手引き」を参照した事業計画


上記2点は民間事業者が50ha以上の埋立を行う場合には、必然的に実施される手続であるから、防衛局においても国交大臣への意見照会と前提となる環境大臣意見の聴取を実施することは、何ら困難なことではなかったはずである。その文書を沖縄県の申請に際して添付すれば、事業計画の信頼性向上になることはあっても、逆に審査を困難にするような不利益を生じることはない。

また、下4つのマニュアルやガイドライン等は、本件承認以前から存在していたものであって、現実の政策に反映されているものであるから、実現不可能な措置の強要などといった批判は全くあたらない。


処分庁からの「環境保全措置について、改善するように」という求め(指導)に対し、現行の政策の中で考えられる実施可能な手法を検討するのであれば、これら既存の制度なり政策手法なりを参考にすることは難しいことではない。そもそも所管省庁たる国交省において作成されており、これを取り入れることが「実現不可能な措置」などと呼ぶ方がおかしい。
これら行政が主導してきたマニュアルやガイドライン等は、日本最高水準を強制したり経済合理性を無視させたりするものであるはずもなく、地域特性に基づき自治体が主体となって実施できることを政策に取り入れる為の指針の一部である。
こうした最低限度の「実施可能な措置」すらも検討された形跡がない、というのが、本件埋立事業なのだということである。何一つ、やってない。


本件埋立事業において、国が適法に行っていないことの証拠は容易に見つけられるが、国の主張を裏付ける根拠は極めて乏しい。
少なくとも、判例の適用くらいはきちんと行えるようにすべきである。訴訟での請求以前に、お話にならないレベルで落第級である。これのどこが、「最高裁判例が壁として立ちはだかる」のか。笑止。


参考までに、拙ブログでは「沖縄県にだけ基地が集中していて負担が大変なんだ」という、過去に幾度となく主張されてきた論点を全く挙げずに書いてきました。
心情的には、本当にその通りだと思っておりますが、過去の裁判例においては、これをいくら言っても無駄というか無効であり、平成8年の代執行裁判での最高裁大法廷が判示したのも、そういう論点は早い話が「裁判には関係がない」ということでした。

だから、適法に請求されているか、手続されているか、という、国側を攻撃できる点だけに絞って考えてきました。行政訴訟においては、住民の苦しみを知るべきだというような説得の仕方は、裁判官には通じるものではないと割り切って臨むべきではないかと。


米中連携の証拠らしき本が出たそうな

2015年11月27日 21時16分36秒 | 外交問題
まあ、驚くほどのことでもないような。振り返ってみれば、当然ありえる話だろう、という程度ではないか。


>http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46298

(一部引用)

すべては、最大の敵だったソ連に対抗するためでした。このプロジェクトは、30年にわたり極秘扱いとし、CIA(中央情報局)にも明かしませんでした。'79年8月に、カーター政権のモンデール副大統領が訪中した際、国防総省とCIAは、軍事機材を軍用輸送機で中国に運びました。

その後、私の政治の師匠であるレーガン大統領時代の'81年になって、中国への支援はレベルアップしました。レーガン大統領は、「NSDD(国家安全保障決定令)11」に署名しました。これは、人民解放軍の戦闘能力を国際レベルにまで底上げするために、先進的な空軍、陸軍、海軍及びミサイルの技術を、中国に売却することを、国防総省に許可するものでした。

レーガン大統領は、'84年には「NSDD140」にも署名しています。そこには、「強く安全で安定した中国は、アジアと世界の平和を保つ力になるはずなので、その近代化を助けよう」と書かれています。

中国に武器を輸出して軍事力強化を支援し、台湾への武器輸出は削減しようと指示したのです。その文書のコピーは国家安全保障会議のスタッフ用として15部しか作成されませんでした。

実際に、'85年には、中国に武器を提供しています。10億ドルを超す6つの主要な武器システムを、中国に売る手はずを整えたのです。


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傍から見ると、やっぱりな、ということではないでしょうかね。
拙ブログでは、実情を知ることはできなかったものの、推測ではそういうこともあるかもな、と思っていましたので。


10年5月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/79f9f6869f95e345df77bf8be731e897

(一部再掲)

米国は、言わずとしれたベトナム戦争で失敗したわけだ。しかし、米中関係は、強化されていった。
ニクソンが訪中を果たして、中華民国(台湾)政府のケツを蹴り飛ばして、中華人民共和国を「中国」として国際社会に披露したわけだ。安保理の指定席も、さあどうぞ、と中国に座らせたんですよ。台湾は捨てられた。


そして、79年1月からは米中国交正常化となった。

その中国は、2月にかつて米国に煮え湯を飲ませたベトナムに侵攻し、中越戦争が勃発した。つまり、中国は米国との関係が強化されたのを見計らって、ベトナムに越境侵入していった、と考えられないわけでもないのだ。代理戦争の如く、米国が中国をそそのかして攻めさせた、ということかもしれないし(80年のイラン・イラク戦争では、イラクにイランを攻めさせたのは、米国だったようなものだからね。フセインに軍事協力をしていたわけだし。
お馴染みの手口なのですよ、米国にとっては)。


更には、4月に台湾からの駐留米軍の撤退完了、ということだな。
本当に「中国が脅威だ」というのが正しいとすれば、米国のとった行動とは、全て逆の反応というふうに見えるわけである。

「ベトナム侵攻の次は台湾か」という危惧を抱くのに、どうして米軍を撤退させたりするのだろうか?
台湾がとても大事で、守らねばならない、というつもりなら、むしろ強化することはあっても撤退させたりする必然性というものは、判らない。


しかし、米中が連携しているなら、この動きは当然のことのように見える
米国は中国が台湾に侵攻するつもりがない、ということを知っているからである。そうであるなら、中国が戦争を仕掛けていってるのに、それを脅威と喧伝することもなくサクッと台湾から撤退していったのも理解できる。

今の「脅威」の比じゃないでしょうね。
中国が他国に攻め込んで戦争してる最中に、軍を退くわけですから。
普通の人なら、「次こそ、台湾か」と考えるだろう、ということです。


要するに、米中の利害が一致してさえいれば、米国は中国との協力関係を長く続けていたい、というのは当然なんですよ。
特に80年代の対日政策上でも、米中の利害一致と協力というのは、大変都合が良かったのではないかな、ということです。



今でも、このような関係が生きているのであれば、日本なんてただの犬以下の存在でしかないわけで、いいように利用されて毟り取られるだけ。
米国が中国は脅威だと言い立てるなら、それ相応の対応をしているはずなんですよ。現実には、米中関係が一番大事、ということなのですよ。

それは過去30年間、変わってなかったということさ。

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こうした米国の動きについて、当時には嗅ぎつけることができなかったにせよ、事後的に振り返ってみれば、そこそこ情報は揃っているわけだから、推測することは可能なのではないか。これが、全く奇想天外であって、予想だにできない、という事柄ではあるまいに。


というか、日本の軍ヲタ系?の人たちの、問題意識というか視点というか、残念なんだよね。何故か、米軍さま相手になると、盲信というのか盲目的になるような傾向があるような気が。


それは、アメリカさまに恋でもしているのだろうか?
ゆえの、盲目?(笑)


違うのであれば、もっと中立的というか、厳しい姿勢とか考え方で臨むべきではないかと思うわけだが。
簡単に言えば、裏切りはあるんだ、という、ごく普通の時代劇やドラマの中で見られる展開を知るとか心構えとして持っておくとか。


よく用いられるフレーズで言えば、「お花畑」脳なのは、一体誰なのか、ということですわな。



沖縄県は『平成26年(行ウ)第一号公有水面埋立承認処分取消請求事件』の答弁書を撤回すべき

2015年11月26日 11時24分37秒 | 法関係
沖縄県が国交大臣の執行停止決定について、抗告訴訟を提起する前に、やらねばならないことがあろう。

それが、住民が提起している行政訴訟に対し、誠実に対応することである。

何故、相反する主張を維持したまま、国と戦えるというのか。


>http://blog.goo.ne.jp/chuy/e/676fd94e840e9df1072e9e1bd4c54f9c

(一部引用)

原告の意見陳述が終り、次回の弁論の日程に入ろうとしたとき、弁護団事務局長の三宅弁護士が立ち上がった。「被告答弁書は、国の主張であれば分かるが、これは本当に県の主張なのか。今までの県の説明とは全く違うではないか? 県はこの答弁書をあくまでも維持するつもりなのか?」と切り出し、答弁書の次の部分を問題とした。

・「国は公有水面に対する支配権に基づいて公有水面の一部につき適法に埋立をなしうる。」、「公有水面を埋め立てるかどうかは、本来、国の判断に委ねられるべきものである。」(答弁書P10)

・「国が知事の承認を得ずに埋立を行った場合であっても、知事から是正を受けたり、罰則を適用されることもない。」(同P10)

・「知事が承認を行わない場合には、国の知事に対する是正の指示、係争処理委員会による審査、国による代執行などで解決される。」(同P11)

・「国は本来、公有水面に対する支配権を有しており、この支配権に もとづいて公有水面の一部について埋め立てを行う権限を有している。」(同P12)

・「本件承認処分は、飽くまでも本件埋立事業に係るものであり、本件埋立事業後に建設される飛行場の運用によって生じ得る生活環境の被害とは直接のつながりがない。」(同P26)


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これら答弁書は、今回の代執行を巡る裁判においても、国側の答弁として予想できるものだったろう。重要な証拠というか資料ではないか。
沖縄県が、この被告の立場で述べた見解を全部維持したままで、代執行裁判を戦えると思っているのか。


法務省の訟務局から投入された部隊が書いたものを読んでいただけなのであれば、まず、被告の県の立場として行った答弁を撤回するべきだ。法務大臣に対し、見解を維持することは不可能であるということを通告しなければならないのではないのか?

被告としての敗訴受け入れを法務省が絶対に許さないから、その後にこの裁判の取り扱いがどのように変わるのかは裁判所側の判断となるだろう。


公有水面埋立は、国が、自由気ままに、好き勝手にいくらでもやっていいんだ、みたいな、暴論を許せると思うか?
国の支配管理下にあるとしても、独占排他的にその使用制限や海面の所有権が必然的に確立されているものではないぞ。もしも本当に国有財産であって、利用者は所有権のある国に許可を求める必要があるというなら、逆に漁業を行う者は国に対し「費用を払う」のが当然で、補償対象になどなるわけがない。


国は海をどう使ってもいいんだ、という理屈は成り立たない。
少なくとも、沖縄県がこうした行政裁判で答弁した事実は残っているのだから、これを完全に白紙に戻さねば、原告団の住民たちと同じ主張や請求をすることなどできないだろうに。


話し合うのが必要なのは、この裁判についてどのように対処すべきか、だ。
執行停止を取り消させる為に、国を訴えるより先に、やるべきことをなすべきである。



沖縄県が国を訴えるなら普天間基地の運用停止を提起すべき

2015年11月26日 09時58分13秒 | 法関係
沖縄県知事が抗告訴訟を提起すべく、議会に諮るということのようだが、何度も書いているように「執行停止」決定を取り消す訴訟よりもやるべきことがある。


普天間基地の運用停止ないし飛行制限を課すよう措置を義務付ける裁判である。
同じ「原告適格」が問題とされる(自治体が原告となれるかどうか)のであれば、執行停止なんかよりもずっと立証がしやすい「普天間基地の危険性」を問題とすべきなのだ。


11/17>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/33a53dacde971369e10c00e6dc1d030b

11/19>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/d9f5c109c70e3acdc78a38513a62f3ec


この抗告訴訟ならば、国の主張をまるまる利用できるから、国の抗弁は難しいのだよ。

小学校設置基準7条とか、環境基本法16条4項を理由として、防衛大臣に請求することは可能である(何度も言うが原告適格がハードルとなろう)。


合衆国軍隊への施設・区域の提供は、原則として防衛省が行っているものであろう。米軍の所有権といった権利関係にはないはずだ(なので土地の賃貸料みたいなのが発生している)。


普天間飛行場が、自衛隊法107条5項に言う「自衛隊が設置する飛行場」に該当するのであれば、自衛隊法でも請求可能では。

被告は、防衛大臣なり、環境基本法で言う「政府」=国として、請求することを考えてみるべき。



執行停止を争うよりも、ずっと本質的な法廷闘争となろう。




国交大臣の執行停止決定をいくら争っても勝ち目はない

2015年11月25日 11時45分34秒 | 法関係
どうして、わざわざマイナスになるような主張をしようとするのだろう?

翁長沖縄県知事の周辺には、本当は負けて欲しいと願っている人々でもいるのだろうか?
それは、政府関係者と内通しているもので、自分から転びたい・自ら失敗して敗北を招き入れたい、という目論見でもあるのでしょうか?


表向きは、「反対した、頑強に抵抗した、だけど、判決だから負けも仕方ない」という形作りでもしたい、とか?
知事は頑張った、だけどしょうがない、納得するしかないんだ、と?


知事に入れ知恵してる人たちの中に、政府側と協力している人がいるのではないか?

国地方係争委員会への主張においても、「執行停止決定」を取り消せ、と頑なに主張しているわけだが、既にブログ記事で書いた通りに「裁決や決定」は基本的に除外されているわけで、どうして無効なものを主張するのか?

「勧告」や「代執行」は明らかに「国の関与」に規定されているのに、なぜこれを外して、執行停止決定ばかりに拘るのか?


>http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015112400775&g=pol

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、沖縄県は24日、政府が翁長雄志知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しの効力を停止したことに対し、停止決定の取り消しを求める訴えを起こす方針を固めた。政府は既に取り消し撤回の「代執行」に向けて県を提訴しており、移設をめぐる対立は異例の訴訟合戦に発展する。
 提訴には県議会の議決が必要で、翁長知事が24日、県議会与党会派に提訴の方針を説明した。県は議案の作成を進めており、25日から始まる県議会11月定例会に追加提案する。
 政府の効力停止に対し、県は既に総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に不服審査を申し出ている。審査の間も移設工事が進む可能性が大きいため、行政事件訴訟法に基づく訴訟に踏み切ることで移設阻止の強い姿勢を示す。ただ、同法は行政機関同士の訴訟を想定しておらず、裁判所が県の訴えを却下する可能性がある。
 県は提訴と同時に、判決が出るまでの間、停止決定の効力を一時的に止める仮処分も申し立てる。認められれば、翁長知事による承認取り消しの効力が回復するため、移設工事の法的根拠が失われる。
 辺野古埋め立てをめぐり、政府は17日、知事が埋め立て承認を取り消したのは違法だとして、県に代わって処分を撤回する代執行に向けた訴訟を福岡高裁那覇支部に起こしている。 (2015/11/24-21:16)

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今回の提訴の論点にしても同じ。
わざわざ、執行停止決定だけを提訴するのは、明らかに「負けたい場合の主張」に等しい。

大臣の出した「執行停止」は、普通の行政訴訟で言うところの「仮の処分」でしかなく、差止めの仮処分が裁判所から出たのと大差ない。
問題になるのは、本裁判、すなわち取消訴訟とかなんだよ。

例えば。岩国基地の埋立建設工事を止めようとしよう。

埋立承認取消訴訟とか工事差し止め仮処分を提訴するわけだ。
たとえ仮処分で工事が止まったとしても、その後の本裁判で埋立承認の取消訴訟で負けたら、工事を止めることなんかできないんだ。

重要なのは、仮処分で勝つこと、なんかじゃない。

本裁判で「勝つこと」なんだって。


ド素人の拙ブログ記事ごときに、あれこれ言われるのは面白くないというのは、分かります。
ですが、大臣の執行停止決定はいくら争っても、勝てる見込みは乏しい上に、執行停止が解けるより残っている方が、有利なのです。これは代執行訴訟の論点の検討によって、明らかなのですよ。


執行停止決定を争って敗北のイメージを拡散でもしようという魂胆でもあるのですか?


もう一度書きます。

大臣の執行停止決定は、あくまで仮の処分であって、工事の本体を争う裁判ではありません。
たとえ一時的に執行停止決定が解除になったとして、工事そのものの妥当性を争う裁決とか裁判で負ける場合には、執行停止を解除したことなんて殆ど意味がないのですよ。


それよりも、執行停止を決定する際に国が主張した点を逆用する方が、はるかに勝てる可能性が高くなるのですってば。
執行停止の決定が生きていることの方が、本裁判での戦いは有利にできますよ、と言っているのに、どうしてなんだ。


執行停止決定が違法であることの論証は、拙ブログでも色々と考えてみたけど、相当困難だ。

裁量権の濫用を説明する場合、沖縄県知事の出した承認取消処分についても、同様にその点を突かれることになるんだぞ。わざわざ自らの主張で自分の不利な状況を招きたいということですか?


頼む。
執行停止決定を、無駄に争うのは、本当にやめてほしいです。


勝ち筋というか、突破口を思いついた時、僅かに希望が出てきたのですよ。
それが、無用な主張や訴訟で、自分の刃で自らを傷つける真似をしようとしているのですから、勝ちを放棄したいというのも同然で、最後の望みも絶たれることになってしまうかもしれません。



安倍政権の代執行裁判での「次の一手」は何か?

2015年11月24日 13時11分50秒 | 政治って?
拙ブログ記事のうち、17日以降の代執行に関連する記事が表示できないように工作でもされているんですかねえ。
向こうはどんな手を使ってくるか分からないですから、邪魔立てすることなど造作もないこと。アクセス制限とか「現在表示できません」とか、どんな手だって使える奴らだから。クズ連中というのは、真正面から戦って勝とうなんて思っていやしないんだよ。幼児のゲームみたいなもので、卑怯だろうがルール違反だろうが、暴れて泣き喚こうが、兎に角勝ちさえすればいい、ということなので。
ま、狂気の集団なんですな。


読まれたくない記事は封印できる、というのが、ネット世界では常識らしい。

で、訴状が17日に提出となったわけだが、それまでの期間において以下の記事を書いておいたのだが、これにはワケがあった。

11/8>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/8c0b4f7394fef4145f5053593d6c92b1
11/11>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/e0d476bcb592a499e8ec0f94a0e21465


言質を確保しておくこと、だ。
特に、安倍総理の閉会中審査で行われた答弁は、重要な公式発言だった。報道記事では、見出し程度の断片しか出てなかったのだが(議事録も探したがまだ掲載されていないようだった)、次のページにはもうちょっと詳しく出ていた。


>http://blog.livedoor.jp/doorkaz/archives/1044766067.html

安倍首相: 普天間の返還は一日も早く実現しなければならない。この基本的な考え方の上に立って、移設作業の事業者である沖縄防衛局長は、一刻も早く移設作業を再開するため、迅速な手続きである審査請求を行うとともに、執行停止の申立を行なった。これを受けて国土交通大臣は沖縄県の意見を聴取した上で重大な損害を避けるために、緊急の必要性がある等の判断のもとに行政不服審査法に則り、執行停止の決定を行なったものであります。一方、このようなプロセスの中で政府として改めて検討した結果、翁長知事による埋め立て承認の取り消しは違法であり、著しく法益を害するものであることから、この問題の解決を図るためには、最終的に司法の判断を得ることができる代執行等の手続きに着手することがより適切な手段であると判断され閣議において政府の一致した方針として了解されたものであります。

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「一刻も早く作業再開の為、執行停止決定」という点と、知事の「承認取消は違法であり著しく法益(恐らく”公益”と言ったものと思うが滑舌が悪くこのように聞こえたのだろう)を害する」ならびに「司法判断を得られる代執行が適切な手段である」という主張を安倍総理自身が明確に行っているわけだ。
これは、「閣議において政府の一致した方針であることも了解済み」だ、と。


読売新聞も産経新聞も、社説で代執行が妥当なものだ、と力説していたわけである。安倍総理も、政府の一致した方針、と断言した。


ありがとう!これで逃げることはできなくなった、ってことだ。
今後、裁判を降りることは不可能となったわけだよ。撤退などあり得ない。
そうすると、裁判で勝利するしかない、ということだ。100%勝てる(毎日新聞)、99.99%勝てる(読売新聞)、と政権幹部は豪語したわけだしな。今さら撤回もできまい?(笑)


原告の国は、100ページ超の訴状を提出したそうだが、あまりに恥で追加の主張とか請求とかは出せないだろう?
まさか、当方のようなド素人のブログ記事ごときを読んだ結果、主張を変えてみるなどという屈辱は耐えられないだろう?(笑)
そりゃそうだわな。無駄に何人もで作業してきて、ド素人でも気付ける程度のことが専門の連中には分かりませんでした、なんて、恥知らずなことを言えるわけがないでしょう?


で、本当に国が100%勝利間違いなし、なのか?
執行停止を決定し裁決を出す権限を有する大臣が、その同じ口で代執行請求というのは、「理由がない」の一言で終わるくらいに明白な誤りだろう。
論点の例示でも書いたが、停止の仮処分を決定した同じ裁判官が、行政代執行の発動を命じる判決を別に出すようなものだ。

国交大臣には裁決を出せる権限があって、これを留保したまま、司法に行政権の肩替りを委ねること自体が失当である(最高裁判例でもそうだったはずだ)。


代執行の訴訟で国が負けるようなことが起こったら、どうなると思うか?
ひとしきり、負け惜しみをマスコミに流して、いやいや政府にはまだまだ権限が色々と残されているんだ、と言ってくるかもしれんな。
こうなったら、大臣裁決を出してやるぜ、と。審査庁は霞が関だから、裁決では国が勝つことは想定内だ。


そうなったら、別に戦いを挑むよりないだろうな。
裁決を不服としてまた裁判、となるやもしれぬ。だが、裁判において、国の違法を暴き出すチャンスを得たことは、大きな前進となるだろう。


相手の土俵に乗った上で、それでも戦って勝つ方法を考えなければ突破できないんだ。
政権幹部どもが誘導した、代執行を巡る法廷で、向こうを叩き潰すしかないんだ。


これからも、政権側は、なりふり構わずどんな手段でも使ってくるだろう。
卑怯だろうと、恥だろうと、何だってやってくる、そう思っていた方がいい。失敗を取り繕い、隠蔽しようとするのが、クズ官僚どもの習性だからだ。油断は禁物だ。




普天間基地を停止に追い込むチャンス到来

2015年11月19日 17時31分01秒 | 法関係
国自身が主張したことを用いて、彼らの主張を縛る方法を考えてみた。
しっぺ返しを食らえばいい。


まず、執行停止に関する部分から見てゆく。条文の関係部分を抜き出した。

○行政不服審査法 34条4項

処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない


成立の要件は、「重大な損害を避けるため」と「緊急の必要がある」なので、拙ブログではこれらを簡略的に条件ア)「重大な損害」と条件イ)「緊急性」と呼んだものである。
執行停止の決定がされる為には、必ず

ア)重大な損害
イ)緊急性

を両方同時に満たしていなければならない、ということである。
執行停止申立て者である、防衛省は勿論、農水省と国交省はいずれもこれを認め執行停止決定をしたので、これが最有力の証拠となる。

なので、沖縄県庁に既に存在する、

①沖縄防衛局の審査請求及び執行停止申立ての文書
②農水省の出した執行停止決定通知書
③国交省の出した執行停止決定通知書

が重要証拠となります。


また、本件における国交省の出した

④地方自治法245条の八に基づく勧告及び指示の通知文書
⑤代執行の訴状

も同じく有力な証拠となります。

再掲しますが、地方自治法上の代執行手続の要件は、

ウ)法律違反がある(授益的処分の取消が違法というのが国の主張)
エ)代執行以外に是正困難(=他に手段がないこと)
オ)放置が著しく公益を害すること(=著しい公益侵害)

です。
国の主張では、エ)について立証が欠けており、成立要件を満たしません。
役に立つのが、オ)著しく公益を害するという要件です。


これの立証として、国の訴状では、次のように述べられています。
(一部抜粋)


(a)普天間飛行場の周辺住民等の生命・身体に対する危険除去ができなくなること。
(中略)
 宜野湾市内には2015年度、幼稚園8施設、小学校9校、中学校5校、高等学校3校、大学1校の学校施設や、約4万1600世帯の住宅、約70施設超の医療施設や公共施設等が密集している。沖縄県が本土復帰を果たしてから15年3月18日までの間に105回(年平均2・4回)の航空機による事故が発生しており世界一危険な飛行場といわれることもある。普天間飛行場における航空機による訓練では飛行経路が市街地上空で、普天間飛行場の周辺住民や上記各施設の利用者等は航空機事故の危険性や騒音等の被害にさらされる事態が常態化している。万一、航空機による事故が発生すれば周辺住民等の生命・身体に甚大な被害を及ぼす危険性が高くその危険は具体的なものとして現に存在しているといえる。

 沖縄防衛局は騒音問題に周辺地域の住宅防音工事の助成事業を実施し、これまで約427億円の補助金を支出し、1万世帯以上の防音工事が実施されている。依然として航空機騒音の被害や事故に対する危険感不安感などの精神的被害に対する苦情が14年度に300件以上、15年度は9月までに160件以上が宜野湾市に寄せられ騒音被害が解消されているとはいえない。

 以上の通り航空機事故や騒音被害といった周辺住民の生命身体に対する重大な危険は現実化し現在も継続し一刻も早く除去されなければならない。
 長年積み重ねられた交渉で普天間飛行場の危険性除去は社会からも大きな信頼が寄せられており、取り消しは社会の信頼を一方的に無視するものであり、行政処分一般に対する信頼を失わせることになりかねない。

(b)普天間飛行場返還後の跡地利用による宜野湾市の経済的利益が得られなくなること。

(以下略)


本件代執行の請求訴訟までに、国が主張してきた、ア)、イ)、オ)をもう一度見ますと、

ア)重大な損害
イ)緊急性
オ)著しい公益侵害

これは、国自身が述べ、立証しているものである、というのが重要点なのです。



ここで、行政事件訴訟法を振り返りましょう。

○第37条の二  

第三条第六項第一号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。

成立する為の要件としては、

A)重大な損害を生ずるおそれがあること
B)損害を避けるため他に方法がないこと

なのです。
上で見た通り、執行停止や代執行の成立要件と殆ど似ている、ということです。


そこで、A)の「重大な損害」条件は、上記ア)とオ)で国自身がその立証を述べているのだから、そのまんま返せばいいのです。普天間周辺住民の「生命身体への危険」や宜野湾市の「経済的利益享受機会の喪失」です。
イ)の緊急性というのは、執行停止しないと回復不能な損害を受けるので回避する為には執行停止するしかない、というのが国の言い分なのです。これが、B)の要件の理由の一部そのものなのです。国はこれに反対できません。自分がそう主張したので。

しかも代執行の訴状で普天間飛行場の危険除去は基地を廃止するしか方法がない、と言っているのである。

国の訴状での言葉を借りれば、

航空機事故や騒音被害といった周辺住民の生命身体に対する重大な危険は現実化し現在も継続し一刻も早く除去されなければならない
『普天間飛行場の危険性除去は社会からも大きな信頼が寄せられており』

だそうで、これを証拠提出すればいい。


よって、A)の「重大な損害」は難なく立証できる。B)の他に回避の方法がない、についても執行停止の理由に国が使った文言を返せばいい。これに加えて、国は十分に「普天間飛行場の危険性について認識している」ことが自ら述べて立証しているのであるから、危険の存在を知っていたのに何らの手立ても講じないことが違法と判断されるであろうことは、当然に可能性が高くなるのだ。


次に、裁判で具体的に何を請求するべきか、ということになる。

住民が訴訟を提起するなら環境基準から攻める。

○環境基本法16条 1項及び4項

政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。

4  政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下「公害の防止に関する施策」という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。



ここから、飛行場周辺の騒音被害について(これを国が自身で数々主張している)1項の基準を満たすよう、4項に従い「政府は総合的かつ有効適切に講ずべし」と求める、という請求が考えられる。

他には、防衛大臣に対する請求も可能。

○自衛隊法 107条5項

 防衛大臣は、第一項及び前項の規定にかかわらず、自衛隊が使用する航空機の安全性及び運航に関する基準、その航空機に乗り組んで運航に従事する者の技能に関する基準並びに自衛隊が設置する飛行場及び航空保安施設の設置及び管理に関する基準を定め、その他航空機に因る災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講じなければならない。


ここで言う「その他航空機に因る災害を防止し、公共の安全を確保するための必要な措置を講じなければならない」ということで、措置を義務づける請求。


また、防衛省組織令9条による使用条件の変更ないし返還に関することを求めるべく防衛大臣が地方協力局に対し指揮監督権を行使せよ、という請求。

○防衛省組織令9条1項3号

3 駐留軍の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること

国の訴状での主張を再掲しよう。

『普天間飛行場における航空機による訓練では飛行経路が市街地上空で、普天間飛行場の周辺住民や上記各施設の利用者等は航空機事故の危険性や騒音等の被害にさらされる事態が常態化している。万一、航空機による事故が発生すれば周辺住民等の生命・身体に甚大な被害を及ぼす危険性が高くその危険は具体的なものとして現に存在しているといえる』

この生命・身体に甚大な被害を及ぼす具体的な、現に存在する危険を放置することは、到底許されず、防衛大臣は直ちに適切な措置を講じるべく、環境省もまた政府に環境基本法に則り是正するよう求めるべきである。



都道府県知事が原告として訴訟を起こす場合には、学校の設置者としての立場から行うことは可能ではないか。例えば小学校の設置者は都道府県知事であり、他にも知事が設置者となっている学校はあるだろう(*追加:ちょっと考えてみたが、やっぱり知事が原告で国を訴える、というルートは、最初から訴訟というのも無理っぽいような気が。他の申立て制度を経ないと、簡単にはできないかも。直接訴えられるという制度設計にはなっていなさそうなので。やはり住民の訴訟が効果的かと)

○小学校設置基準 1条3項

3  小学校の設置者は、小学校の編制、施設、設備等がこの省令で定める設置基準より低下した状態にならないようにすることはもとより、これらの水準の向上を図ることに努めなければならない。

○同7条  小学校の施設及び設備は、指導上、保健衛生上、安全上及び管理上適切なものでなければならない。

ここで言う「施設の設置基準」について水準向上を図らねばならないこと、7条より「安全上適切なものでなければならない」ことから、この義務を果たすには普天間飛行場の国が言う「現に存在する危険」は明らかに設置基準に違背する。

訴状においても、国は、『宜野湾市内には2015年度、幼稚園8施設、小学校9校、中学校5校、高等学校3校、大学1校の学校施設や、約4万1600世帯の住宅、約70施設超の医療施設や公共施設等が密集している。沖縄県が本土復帰を果たしてから15年3月18日までの間に105回(年平均2・4回)の航空機による事故が発生しており世界一危険な飛行場といわれることもある』と自分で立論しているのだから、学校の設置基準を満たさない状態であることを認識しているといえる。


とすれば、学校設置基準の言う「安全上適切なもの」であることを達成するよう、普天間飛行場の運用を停止させる義務を負うものと言うべきである。
防衛大臣は、「公共の安全を確保するために必要な措置をすべき義務」(自衛隊法107条)があるのであるから、すみやかに、その措置を実施すべきである。


類似条文;
中学校設置基準 同1条3項、7条
高等学校設置基準 同1条3項、12条


参考までに、大学は文部科学省であるので、大学設置基準 同1条3項が小学・中学・高校と同等で、34条1項『校地は、教育にふさわしい環境をもち、校舎の敷地には、学生が休息その他に利用するのに適当な空地を有するものとする。』の基準を達成するよう、防衛大臣に協力を要請するべき、ということになろうか。


いずれにせよ、国は、代執行請求訴訟の訴状と、その他①~⑤の重要な証拠を提供してくれたことに間違いはなく、補強材料を少し見つければ、国が抗弁できる要素はかなり少ない、ということだ。
米軍の配置がどうとか、防衛上の価値がどうのとか、そういう論点に触れることなく、国の主張を潰せるのだ。


国は、自ら述べた通りに、
重大な損害が存在し、具体的な危険について十分に認識
しており、それは防衛省だけならず、農水省や国交省などにまたがって共有されており、しかも閣議了承を得られるだけの根拠を持っている、ということである。これを漫然と放置し、何ら適切な措置をとらないことは違法以外のなにものでもない。


辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消の代執行に関する裁判の争点について~4(追記あり)

2015年11月18日 23時52分52秒 | 法関係
国の主張の要旨を見つけました。

若干の反論を書きましたので、取り急ぎ。


>https://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=142068


(一部引用)

本件の「処分の取り消しによって生ずる不利益」は、辺野古沿岸域を埋め立てる最大の目的の、普天間飛行場の周辺住民へ危険除去ができなくなることであり、96年に日米間で合意して以来約19年間にわたって日米両国が積み上げてきた努力がわが国側の一方的な行為で無に帰し、日米間の外交、防衛、政治、経済など計り知れない不利益だ。さらに、普天間飛行場跡地利用による宜野湾市、県の経済発展の計画は白紙に戻され、県全体の負担軽減も実現されないことになる膨大な不利益が生じる。

 国は辺野古沿岸域の埋め立て工事等のため約900億円の契約を締結し既に約473億円を支払っており、承認が取り消されれば全くの無駄金となり、国民がその負担を背負うことになる。

 (中略)


最高裁判決の位置づけ

 行政処分の安定性・信頼性の確保は、行政事件訴訟法がそれを指導理念としているものである。また授益的処分の取り消しは、授益的処分に法律的な瑕疵があったからといって取り消すことはできず、極めて限定的な場合にのみできると考えられている。

 最高裁1968年判決は、授益的処分をした行政庁が、その違法または不当を認めて取り消すためには、「取り消しによって生ずる不利益と、取り消さないままの不利益を比較し、公共の福祉に照らして不当だと認められるときに限り、取り消すことができる」として、違法な行政処分の取り消しを極めて例外的な場合と限定し、この高いハードルを超えない限り瑕疵があったとしても取り消しはできないとしている。

 本件が授益的処分なのは明白で、判決が示すハードルを超えない限り適法に取り消すことはできない。


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◆契約金等の損失

原告国の言う契約額約900億円や払済金473億円は、本件埋立事業において、実質的に未だ埋立工事が実施されておらず、ボーリング調査すら完了し終えていないのであるから、違約金を支払ってもなお解約できる余地はある(朝霞公務員宿舎の建設計画に際しても、計画取りやめで数十億円もの違約金が発生すると主張していたが、やはり建設工事は中止された。その違約金がいくらであったか問うべきである。財務省の説明と違っている場合には、理由付けの為に過大な金額を言うのが常道だからである)。
しかも過去に繰り返し基地建設事業の関連費用や調査費用等で無駄に国費を浪費してきたに等しいものも含まれており、そもそも杜撰な事業計画に起因するものであって、埋立を不承認にしたことによる直接的費用はもっと小さい。


住宅建設工事を想定してみよう。工事の請負契約をしたとして、契約書に中途で契約破棄する場合の違約金があるだろうが、まだ基礎工事前の更地状態でボーリング調査(杭打ち問題で言えば、工事前の調査に過ぎない)を実施した段階であり、これを契約解除できないなどという理屈はないだろう。
これまでかかった費用は損失とはなるが、元の事業計画が悪いからであり、無駄な基地建設工事により将来的な事業費用が数兆円単位にかかるよりは、損失がはるかに小さい。



◆判例適用の基本的な誤り


原告国は、次の最高裁判例を引いて、処分の取消によって生ずる不利益と、取消をしないことで処分により既に生じた効果を維持することの不利益を比較考量すること、また処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当である場合に限り取り消すことができると解する、と主張する。

(報道記事からは、判例詳細が不明であるが、当方が探してきた、恐らく以下のものであるという仮定で書くものとする。国の訴状には引用判例の記載をしてほしい)


【昭和43年11月7日 最判小一 民集22巻12号2421】

すでに法定の不服申立期間の徒過により争訟手続によつてその効力を争い得なくなつたものであつても、処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては、自らその違法または不当を認めて、処分の取消によつて生ずる不利益と、取消をしないことによつてかかる処分に基づきすでに生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、しかも該処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときに限り、これを取り消すことができると解するのが相当である(昭和二八年(オ)第三七五号、同三一年三月二日第二小法廷判決、民集一〇巻三号一四七頁参照)。


しかし、判例の適用及び解釈の誤りは明白である。

第一に、上記判例は法定の不服申立期間の徒過している場合であり、異議申立者は処分の当事者に該当しない訴外人であるといった、通常の行政手続法・行政不服審査法などの救済制度を用い得ない場合に、適用されるものである。

すなわち、前記判例の言うように既に通常の争訟手続によって争い得なくなった処分の取り扱いについては、「不利益の比較考量」と「公共の福祉の要請」を検討した上で処分の取消や変更を行政庁は行うべし、とするものである。本件においては、法定の争訟手続によって争い得なくなった処分でないことは明らかであり、事実行政不服審査法に基づく審査請求が事業者からなされているのであるから、本判例の適用は誤りである。

第二に、本判例には次のような指摘がある。

かかる処分が、本件におけるごとく、法定の要件に違反して行なわれ、買収すべからざる者より農地を買収したような場合には、他に特段の事情の認められない以上、その処分を取り消して該農地を旧所有者に復帰させることが、公共の福祉の要請に沿う所以である

取り消されるに至った、その元となる処分が「法定の要件に違反して行なわれ、買収すべからざる者より農地を買収したような場合」なのであって、本件埋立について考えれば、「法定の要件に違反して行われ、埋立すべからざる者より埋立された場合」であるなら、埋立承認の処分を取り消すことは可能である証拠である。

これにより行政庁が「争訟期間を経過している処分」であって、しかも買収計画や所有権取得登記が完了しているものであっても、行政庁が取り消すことを認容したものである。本件について見れば、未だ埋立工事の具体的作業が何らなされておらず埋立地竣工や土地取得すら生じていないのであるから、これを取消できないとする理由はない。

かえって、行政庁が既に授益的処分をした場合であろうとも、その処分に違法の誤りがあって、これに気付いた場合には、不利益の比較考量の上、処分を取り消す方が公共の福祉の要請に合致しているならば、契約関係が完了しているとしても「取り消してよい」ということを補強している判例であると言えよう。


以上により、この判例の適用誤りについての説明は十分であるが、一応主張点であるところの埋立承認を取り消した場合の不利益と埋立承認によって生じた効果を維持した場合の不利益について検討する。


①埋立承認の取消によって生じる不利益

a.契約関係における金銭的損失
b.国際関係上の不利益
c.普天間飛行場に関する不利益


②埋立承認の維持によって生じる不利益

・回復困難な不可逆的変化をもたらす
・環境保全が極めて困難
・景観の破壊
・自然公物の自由使用の制限
・永続的軍事施設の残存
・航空機等による騒音、振動など


②の影響が大きいとするのが、知事及び沖縄県の判断である。
また、国の言う①の不利益のうち、普天間飛行場に関する不利益や沖縄県の負担軽減に関する不利益については、「本件埋立工事」が必然に生じさせるものではないことは明らかであって、本来これら不利益を除去すべき義務を国が負うものであるから、その措置を政策的に実現するべきことである。

たった一つの埋立工事に、これら全ての要件が存するという立論そのものに破綻があり、それでは埋立工事の成否いかんにより、ありとあらゆる効果が波及するという、通常では行政には考えられない状態が本件工事ということになる。それならば、当然に立法措置をもって対処すべき深刻な事態であるから、特別法があってしかるべきところ、その存在は証明されない。


少なくとも、cについての不利益の解消は、国が知事の執行停止を決定していることから、「重大な損害」要件を満たしているのが明らかなので、別の政策をもって不作為を早急に解決すべき義務を負うものと言うべきである。

a.の損失は既に述べた。b.の不利益は、あるにはあるが、国の主張では抽象の域を出ないものであり、米国との約束を反故にすることが甚大な不利益を生じるというのなら、前の記事で述べた通りに日米関係はとうに破綻していることであろう。



簡単に言うなら、国が主張の大半に費やしている、埋立工事をしないとどうなるか、というデメリットの強調であるが、殆ど検討以前の問題である。あくまで法の技術的議論というか、手続の正しさをまず見るべきであって、国の言う理由のあれこれはほぼ関係がない。それ以前の話だということ。


沖縄タイムス記事からさらに引用する。

そもそも法定受託事務として、公有水面埋立法に基づいて一定範囲の権限を与えられたにすぎない県知事が、わが国における米軍施設および区域の配置場所などといった国防や外交に関する国政にとって極めて重大な事項の適否を審査したり、判断する権限がないことは明らかだ。法を所管する国土交通省の所属事務に国の国防や外交に係る事項の適否の判断は含まれず、法に基づく法定受託事務の範囲で公有水面埋め立ての権限を付与されているにとどまる県知事に、米軍施設および区域を辺野古沿岸域とすることの国防上の適否について審査判断する権限が与えられていない。

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これが典型的な例。
米軍基地になって、これがどのように運用されるか、は、本件埋立承認についての代執行手続が正当かどうかには影響を及ぼしていない。拙ブログでの争点1~3でも、米軍基地の配置が妥当か否かなどといった検討は全くしていない。

知事が判断していいのか、という国の言い分であるが、これを反対しても問題ない。
埋立について、「承認」や「承認取り消し」といった処分が、適法に手続きされたかどうか、をまず見ているものである。完成した埋立地の利用状況が政治的に正しいかどうか、の判断以前の問題なのだ、ということである。


国の行った埋立申請の手続上においては、制限海域の提供という点において違法があると見るべきである。
更に、審査請求に対し裁決をすることなく、また代執行を行える条件を整えることなく、本件代執行の手続きを行い裁判を請求している点が、埋立地の目的や用途や運用方法の是非を判断するまでもなく、根本的に誤っている、ということだからだ。


故に、原告国の主張は、無効なものが圧倒的に多いのであり、更に言えば、上記判例の適用すら「満足にできていないのではないか」ということである。


国の訴状には、取消処分の根拠として挙げた条文の4条が国に準用されない、といった主張がなかった。この点が、最も攻撃されるのではないかと想定していたのであるが、取消条文の誤り、これがなかったのであれば、前の記事の「論点10」で述べたように、形式的には取消処分は有効となるだろう。



19日10時頃 追記:


損失となる金額について、次のような質問をするべき


「900億円が損失だと言うが、例えば、朝霞公務員宿舎建設計画が中止になった際、財務省が最大40億円程度の違約金等損失が出ると主張していたことが報道されていたが、受注企業の大林組はこのような違約金を受領していない、とも報道された。現実には、建設計画中止に伴って、いくらの違約金の負担が発生したか?その総額に対する割合は何%か?」

「もしも本件工事において、発生するであろう違約金の割合が朝霞公務員宿舎と比較して大幅に違うなら、その理由は何か?契約上のミスではないのか?」

「原告国は473億円の損失額について、不利益の理由として挙げている。このうち、埋立承認後の平成26年度予算以降に入札及び契約となった金額と実際に支払った金額(A)はいくらか?」

「米国政府が未払いとなっているFMS調達の金額はいくらか?」

「日米地位協定に基づく米国政府の負担相当額(25%部分)のうち、米国政府が未払いの金額はいくらか?」

「これら米国政府が払ってない合計額(B)と(A)を比較して、沖縄県知事が与えた損失額の大小を言え」

「沖縄県知事が与える損失を、甚大な損害であるかのように主張しているのに、米国政府には請求できず明らかな損失を与えていることを放置することは行政として許されるのか?」

「沖縄県知事が与えた損失が大であって、米国政府は許されるとするなら、その法的根拠や合理的理由をいえ」

「米国政府と地方自治体に取扱の差別はあるのか?ないなら、何故米国政府が許されるのか?」

「(A)以前に払った金額は、現知事の任期外で無関係であり、損失を言うのは不当。そもそも承認がない時点で払った金額を算入するのは国の勝手な希望的観測による(承認はきっと得られるであろうという)皮算用的支出によるもの。承認が得られないなら、どの時点でも損失になるに過ぎない」



辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消の代執行に関する裁判の争点について~3

2015年11月17日 12時49分29秒 | 法関係
補論 

代執行についての裁判には、直接影響しないが、今後に主張できる点を書いておく。

1)国が埋立の事業者の場合にも、法令上で区別せず同等基準とすべき

国は、沖縄防衛局が一民間事業者と同等の立場であるとの見解を認めている(防衛省、農林水産省、国土交通省の文書記載の見解により明らか)。そうであるなら、国の行う埋立事業についても、一般事業者と同じ基準や法令適用とすべきである。区分する合理的理由を欠く。公有水面埋立法を改正して、殆どを統一的にすべきである。例えば、免許と承認で分ける必要がない。

また、私人たる事業者と同等の立場に過ぎないと国が自ら主張している(那覇地裁における埋立承認取消訴訟の裁判においても同様)のであるから、環境影響評価についても、50haを超える埋立の場合には国土交通大臣の認可と、それに前置される環境大臣に意見を求めることも同じく行うべきである。これを手続上で行わないことの理由がない。実施しないことによる何らの利益も照明できない。

沖縄県の取消事由に挙げられていたのは、環境保全措置が不十分であることであったのだから、これについて専門的な吟味をするべき義務を国は負うはずである。何故なら、審査しないと裁決できないから、である。

環境影響評価法でいう第一種事業に該当し、また50haを大幅に超える埋立(本件では約160ha)を行う予定であるから、環境影響の程度が著しいものとなるおそれが十分にあり、絶滅危惧種であるジュゴンやトカゲハゼなど絶滅危惧種の保護、サンゴ礁その他海洋生物の保護や生物多様性保護の観点からも、詳細に検討されて当然である。

生物多様性基本法3条3項によれば『一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であること』、海洋基本法2条より『海洋の生物の多様性が確保されることその他の良好な海洋環境が保全されることが人類の存続の基盤であり、かつ、豊かで潤いのある国民生活に不可欠であること』から、ひとたび大規模埋立工事がなされてしまうと、事実上は原状回復が甚だ困難であり、失われた生物環境は戻せない。そして、長期に渡る争訴となっている諫早湾干拓事業を見れば、事後の解決・調整・損害の補償といったことが極めて困難であることも明らかとなったわけである。

よって、国には環境省の調査と環境大臣意見を照会するなどすべきであるし、審査請求のあった事案についての裁決を出すという点においても、これら注意義務を果たすべきであり、一民間事業者の立場であるなら本件埋立を除外するべき合理的理由はない。

那覇空港拡張事業(第2滑走路増設)の際、平成21年2月沖縄県に対し環境省意見が送付さえれたが、この事業においては「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」に基づいて事業の推進が実施された。本件埋立より以前から、こうしたガイドラインの適用があったのであるから、本件でもこれに沿った事業実施が当然なのであって、意図的に国がこうした手続を回避したことは明らか(国が知らなったはずがない)であり、不当の謗りを免れない。私人同様と主張するなら、過失ともいうべき手続上の誤りがある。


2)国の不作為が明確化された

これまでの論点で何度も記述してきたが、防衛省、農林水産省、国土交通省の見解からすると、確実に言えることがある。
それは、執行停止をすべきことの正当性、である。

3省全てにおいて、執行停止するべきほどに緊急性や重大性がある、としているのは明らか。「重大な損害」の該当事由となっている、ということである。処分内容と性質からすると、単なる海上・海底作業をさせないようにするものであるので、処分自体には他事業と比べて特殊性はなく、これが執行停止理由の主要な根拠とはなりえない。
では、執行停止を満たすだけの理由とは何か?

回復が困難なほどの損害、ということである。これは、一つに日米政府間の外交・防衛上の損害、もう一つは普天間基地の存在による損害、とされている。

まず、日米政府間の外交・防衛上の損害については、国がその具体的な損害の性質や程度を明らかにしていないので、今後に立証されるだろう。沖縄県が裁判で国と争う場合には、必ずや具体的にどういうものが「重大な損害」に該当しているか、という点を国側に立証させるべきである。

これについて筆者なりの見解を述べるものとする。
基地建設の日米政府間の合意があって、これを遵守しない場合には、日本政府が米国政府の信頼を失い外交上の打撃を受ける、ということであろうか。

もしもこれが真実であるなら、今頃両国間は断絶していてもおかしくないのではないか。日米政府間合意の存在をもって、これが未達成だと二度と回復が困難な程に「重大な損害」を形成しているとは見えない。具体例を挙げよう。
普天間基地の返還については、96年12月のSACO勧告(最終報告)がSCCに承認されたものである。SACOによれば、『今後5乃至7年以内に十分な代替施設が完成し運用可能になった後、普天間飛行場を返還する』とされた。
SCCにおいては、『海上施設は、軍事施設として使用する間は固定施設として機能し得る一方、その必要性が失われたときには撤去可能なものである』との合意があった。

これらは、全て現実には起こっていないし、期日も工事方法も全くの別物である。政府間合意の重大性とは、この程度のものでしかない、ということの証左であるとも言える。
また、日米地位協定18条に基づく損害賠償金の米国政府に支払義務がある金額は推定120億円とされるが、債務不履行のままであることは確実である。同様に、日米政府間でのFMS調達では2012年度末時点で2282億7366万円が未精算となっており、これら法的義務を負うべき合意ですら履行されなくとも、日米政府間の外交は回復困難な程の損害を受けている様子は見られない。外交上の回復困難な重大な損害について、国はその存在を立証すべきである。

たとえ日本政府が米国政府との合意を約したとしても、日本国民には直ちにその履行の法的義務を負うものではない。あくまで国会が議決し立法措置のあったものだけである。或いは、国内法上で政府の裁量権の範囲内で行えるものである。日本国民は米軍に対し、本件基地を提供すべき法的義務を有していない。一般的に、日本国政府が外国政府との間で何らかの合意形成がなされたとしても、その効力はあくまで国内法上の法的根拠を有するものだけであり、例えば違法な合意である場合にはその履行はなされることがないのは明白である。合意事項の履行が実現できないことによって、たとえ政府間の信頼関係に何らかの影響を与えたとしても、それは国際政治の上では珍しいことではなく、これを回復不可能な「重大な損害」とするなら、いかなる合意事項であっても履行義務を負うことになってしまいかねず、それは立法府の権能を超越している。

(*つい数日前の13日、ジョエル・エレンライク駐沖縄米総領事は、共同通信社のインタビューに対し、普天間飛行場の辺野古移設問題について、『「非常に重要で深刻な問題だが、基地負担を軽減し、日米同盟を強化する在日米軍再編計画の中では小さな問題(one small part)にすぎない」との見解を示した』とされる。日米関係に甚大な影響を与えるようなことではない、という理解も可能であるということである。「重大な損害」事由とはなり得ない、ということの証明である)


それでは、防衛上の損害とは何か?

埋立工事が停止されることにより、日本の防衛に一体全体どのような二度と回復が困難な程度に重大な損害が発生したというのであろうか?これも国が立証できることだろう。もしもそれが本当ならば、過去20年余り埋立工事が停止状態であったので、工事の非常なる遅れから重大な損害が考えられない程に蓄積していることだろう。その存在について立証されたし。
これまでの行政訴訟においては、「重大な損害」というものが単に抽象的な損失が観念されるというだけでは足りず、より具体的かつ定量的な損害が現実にあることを証明できなければならなかったはずだろう。国(防衛省、農林水産省、国土交通省)の言う、「日米政府間の信頼関係」といった曖昧な説明しかできない外交上若しくは防衛上の損害など、「重大な損害」の要件を満たすものではないのである。


さて、残るは理由とは何か?普天間飛行場の存在そのもの、これによる周辺住民の被害、ということだ。埋立工事が遂行できなくなると、普天間飛行場が残り続けることになり、それが二度と回復困難な程に「重大な損害」を与え、しかもその損害は緊急性を満たすということである。3省が揃って、この損害の重大性かつ緊急性を満たす、と主張したのであるから、これを今更嘘でしたとは言うことはできない。
執行停止せず裁決を待っていたのでは、その間に受ける損害があまりにも甚大であり回復不可能なので、執行を停止するのだから。裁決を待って不利益処分が取り消される(本件の場合には停止していた埋立工事再開)と救済されるような損害では、「重大な損害」には該当しないのである。

すると、普天間飛行場は二度と回復困難な程の「重大な損害」があって、しかもそれは緊急性を要するもの、という条件を満たしているということだ。

加えて、代執行手続開始には、代替手段がないことの他、著しく公益を害することが明らかな場合という2つの要件を同時に満たす必要があるのだ。著しく「公益を害する」のだから、これも普天間飛行場のことが含まれるのは明らか。


これらにより、本当に大切なことが明らかにされたのである。
普天間飛行場は、直ちに運用を停止させるだけの「重大な損害」を与えており、しかも緊急性を有するということを、国自身が認めたのだ、ということだ!禁反言の法理により、国自身が「重大な損害」の存在を否定する主張や立論は今後一切できなくなった、ということだ。


しかもその損害程度は、二度と回復が困難な程の、行政事件訴訟法上で言うところの「重大な損害」要件を満たすものだ、ということ。今後、行政裁判を起こすと、国がこれら重大な損害を放置して何らの措置もとらないことは違法とすることができ、国にはこれを否定できる論拠を自ら失ったのだ。国の不作為を裁判で改めさせることが確定的となるだろう。

もしも米軍が普天間飛行場を返還しない、運用停止は同意できない、と言ったらどうするか?

日本政府は米軍に命令したりはできないが、政府間で「重大な損害を与えているので、改善するか運用停止して」と言うことはできる。しかも、それは日本の裁判所の管轄権であって、裁判所命令が運用停止命令だと、それに米軍が従わなくてもよいとする理由は、恐らく存在しない。
連邦最高裁は米国人に具体的被害が及ぶものは管轄権が米国にある、としており、日本でもその法理は類推適用できる。実際に「重大な損害」の立論を日本政府自らが行ったのだから、政府にはこれを否定する論拠はなく、裁判でも主張することは不可能。基地周辺の日本国民に具体的に回避すべき「被害」があるのであって、それは回復困難な程に重大性と緊急性を兼ね備えた「重大な損害」である。著しく公益を害することが明らかなものである。

たとえ合衆国軍隊が、指揮命令は合衆国政府の行政権のみであり、直接的には日本の法令が及ばずこれに拘束されないとしても、日本の施政権の及ぶ範囲において日本の法令を遵守することなく無制限な活動が許されると解することはできず、原則として日本の法令を遵守する義務を負うものというべきである。例外として、日本の法令を遵守することが合衆国憲法あるいは連邦法上で違法となってしまうことが明らかな場合か、日本の法令を遵守することにより合衆国を安全保障上の危機に至らしめるなどの著しく公益を害するおそれがあって、日本の法令違反を犯すことになったとしてもこの損害を回避せざるをえないという正当な事由が証明される場合を除いては、合衆国軍隊といえども日本政府の施政範囲において日本の法令を逸脱することは許されないと解するのが相当である。

同時に、合衆国政府には、日本国において日本国民に対し「重大な損害」を与えてもこれが許されるとする行政裁量権を有しているという根拠はない

故に、今回の代執行に関する訴訟で、万が一負けるようなことがあったとしても(もし国を勝たせる裁判官が存在するなら、法の信頼は果てしなく地に堕ちるだろう)、普天間飛行場を運用停止に追い込める可能性はかなり高いということになる。

米国は、常々「法の支配」と掲げてきたのだから、当然法に従うだろう。日本の裁判所が出した判決には、従うよりないのである。日本政府に不作為がある、という判決であるとしても、米軍が日本政府に「違法行為」を唆すことなど許されない。日本政府が違法を行っているのを承知で、その利益を享受するなら、米軍も同罪だということ。不当利得を得ているのも同然であり、日本政府と米軍の共謀関係というべきかもしれない。

これを回避する唯一の方法は、普天間飛行場の違法を止めることだけである。

辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消の代執行に関する裁判の争点について~2

2015年11月17日 12時43分14秒 | 法関係
各論


1 代執行手続の開始以前の問題点

10月27日、政府は閣議にて沖縄県知事の本件取消処分に関し、代執行手続を開始することを口頭了承したとされる。29日には沖縄県に勧告書が送付された。これより以前の段階において、国の対応に問題点があったので、これについて指摘する。


1)論点5:聴聞の出頭拒否は不当

沖縄防衛局に対し、本件取消処分を行う前に聴聞の手続がとられたものであるが、国が合法であることの立証ができるのであれば「処分がなされる以前」に聴聞に応じて、あらゆる資料と正当性の根拠と、それに基づく「国が正しいと考える理由」を主張できたはずである。その証明が必要十分であって、知事にこれを覆せない場合には、必然的に取消処分は出されることがなかったはずである。この立証機会を、自らの不出頭により放棄する合理的理由はない。出頭せずに、わざわざ知事に取消処分をさせておきながら、事後的に国土交通大臣による執行停止をさせたのは、行政手続法・行政不服審査法の救済制度及び法令の悪用であって、少しでも早く工事を再開せんとする為である。

一般的に、免許や許認可の取消等不利益処分に際して、聴聞に不出頭となる者の多くは、反論するべき合理的根拠を有しないか、取消処分もやむを得ないという黙示の同意をする者(例えば違法な活動を行っていた貸金業者や金融商品取引事業者など)であって、自らの正当性を立論できる者がその貴重な機会を喪失したいと考えることは合理的とは言えず、不利益処分の前にこれを回避することを望むのが普通である。

(筆者推測:事業者が最初から出頭する意志を有しないことは処分前から事前に沖縄県に対し伝達されており、国土交通大臣が審査請求と執行停止を受理し、この主張が認められることを既に事業者が知っていたと考えるのが自然である。聴聞を省いた方が時間短縮になるから、である。国の法令の悪用であるとしか見えない)


2)論点6:岩礁破砕許可に係る審査請求に対し裁決がなされていないこと

事業者は、27年3月に行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止申立てを行っているが、審査庁たる農林水産省は未だ裁決を出していない。この申し立の際、事業者の主張と農林水産大臣の執行停止の決定通知においては、本件埋立工事の作業が停止することは、回復困難な重大な損害を与えるものであり、緊急性と重大性という点において、知事の作業停止指示(と、その後に想定される岩礁破砕許可取消処分)は執行停止されるべきとして、現にそうなっているものである。

岩礁破砕許可についての審査請求と執行停止は、実質的に本件基地建設に関する国と沖縄県との争いという点において本件と同一であって、国に正当性があり、知事の権限行使に違法があるというなら、見解の相違を解消するべく一刻も早く裁決を出すことが必要であったはずである。

事業者は防衛省と本質において同一であるから、執行停止を正当と考え申立てた防衛省のほか、農林水産省と国土交通省が揃って「執行停止」を決定する程に、緊急性と重大性を本件基地建設に認めているのであるから、徒に裁決時期を先延ばしすることは、事業遂行の妨げとなることは明らかである。もしも公水法の承認取消処分がされる前の時点において農林水産大臣の裁決があったならば、1号法定受託事務に係る沖縄県の執行等に違法があることを容易に指摘かつこれを是正することができたはずであり、それをしなかったことは国の落ち度である。審査庁の行う裁決は法的拘束力を有しており、取消の裁決が出されれば処分の取消について行政不服審査法43条により履行義務を負うものだからである。


3)論点7:手続上の違法や不当があっても処分の取消とは限らない

事業者は農林水産省及び国土交通省に対する審査請求において、知事の手続上の違法を指摘しているが、これをもって当該不利益処分が取消されることにはならない。例えば農林水産省への審査請求では、行政手続法上の不利益処分時に行われる13条1項の聴聞等(弁明機会の付与)や行政不服審査法上の教示義務のある事項の不備などを指摘している。そのような主張は認められるかもしれないが、これをもって知事の取消処分が無効となりこれを審査庁が取り消す裁決を出すことの根拠にはならない。

例えば、年金給付額aを行政庁が決定し給付していたところ、加給年金分が過大に給付されていることが判明した為、年金給付額bへの減額変更という処分をされたとする。この説明や手続過程に処分庁の違法(不当や義務違反など)があったとしても、年金給付額bが正しいならその処分は維持される。相手方から見れば、aが受益的処分であっても、これは取り消されるし、bへの減額変更は違法や不当が裁決で判明した後でも維持される。相手方には行政庁の違法に対して国家賠償法による賠償を求める権利は生ずるかもしれないが、その違法分は賠償で解決できるものであり、bへの減額変更の処分自体が無効や取消となるわけではない。そもそも受益的処分を行政庁が取消・撤回できないとする法理は存在しない。

別の例では、行政不服審査法55条では『審査請求を却下し又は棄却した裁決が違法又は不当である場合においても、当該裁決に係る処分が違法又は不当でないときは、再審査庁は、当該再審査請求を棄却する』とされており、手続過程の違法の存在が必ずしも処分に対する判断を決するものではない。


4)論点8:基地建設の民間業者との契約関係は処分の正否判断には影響しない

事業者の農林水産省に対する執行停止申立てによれば、工事作業に関する民間業者等の契約関係を重大な損害として挙げていたが、これは執行停止を正当化する事由にはならない。国家賠償法上の義務を負う可能性を生ずるに過ぎず、重大性や緊急性の要件を満たすものでない。知事のした不利益処分の取消を正当化できる理由にもならない。


5)論点9:国が最善の努力をした形跡は認められない

これまで述べたように、各省庁並びに政府は本件事業につき緊急性や重大性を認めているのであるから、農林水産省の裁決を早急に出すことはできたはずである。その参考となる行政制度は以前から存在している。
それは、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」による緊急裁決である。

同法19条により地方防衛局長の申立てがあった場合には権利取得裁決か明渡裁決を5月内に収用委員会が行うことができ、同法22条によりこの期間内に裁決がなされない場合には地方防衛局長より行政不服審査法の異議申立てがあれば(この法律から、地方防衛局長は行政不服審査法上の異議申立ての権利行使が可能であることは、自明となる。同様に異議申立てに限らず不服申立て一般、すなわち審査請求の権利行使もできることは類推される。異議申立てが可能で審査請求は不可能とする解釈は困難ではないか)、1月以内に収用委員会が裁決を出すか防衛大臣への事件送致となる。同法23条から、防衛大臣は防衛施設中央審議会の議を経て大臣自ら1月以内に裁決できる。

また、同法24条から防衛大臣が収用委員会に対し「自らが使用又は収用の指示」を行った場合にのみ、審査請求のなされた収用委員会の「却下の裁決」を大臣が取り消して「使用又は収用」の裁決を行うことができる。つまり、事前の指示がなければ、大臣が取消の裁決を自ら行うことはできない。収用委員会の行った却下の裁決を審査請求後に取り消す裁決を行う場合には、原則として実施主体は収用委員会であり、収用委員会に対して防衛大臣が「使用又は収用」の裁決に変更するよう指示することは可能となっている。大臣自身の裁決には、防衛施設審議会の議が前置されている。

このように、重要性の高い土地等の使用又は収用に関しては、緊急裁決や大臣による代行裁決等の制度が存在しており、これが可能であるというなら、他の審査請求についても同様の考え方をとることはできよう。すると、概ね6か月以内に裁決を出すことは、決して不可能な要請ではないはずだ、ということである。

国には、取り急ぎ裁決を出すべき義務があったにも関わらず、農林水産省に対し速やかに裁決を出すよう要請することもせず、内閣総理大臣が農林水産大臣に対して指示することもなく、審査に必要な追加の資料提出や意見徴収を沖縄県に対して行った形跡もない。国は義務を怠ったとしか見えない、ということである。



2 地方自治法に基づく代執行手続が不適法であることについて

知事が公有水面埋立法に基づく埋立承認について取消処分を行い、これに対し事業者から審査請求及び執行停止申立てを受理した国土交通大臣が執行停止の決定後に、代執行手続となった。これについて検討する。

地方自治法245条の八1項は、『各大臣は、その所管する法律若しくはこれに基づく政令に係る都道府県知事の法定受託事務の管理若しくは執行が法令の規定若しくは当該大臣の処分に違反するものがある場合又は当該法定受託事務の管理若しくは執行を怠るものがある場合において、本項から第八項までに規定する措置以外の方法によってその是正を図ることが困難であり、かつそれを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときは、文書により、当該都道府県知事に対して、その旨を指摘し、期限を定めて、当該違反を是正し、又は当該怠る法定受託事務の管理若しくは執行を改めるべきことを勧告することができる。』と定める。

国の主張はまだ不明なので、執行が法令違反なのか、大臣処分に違反しているのか、取消処分を取り消さないという点について「怠る」(不作為)としているのか、分からない。現時点で、沖縄県側が主張できる論点について列挙することとする。


1)論点10:公有水面埋立法は取消処分があることを前提としている

国が法令違反を言うとしても、埋立承認の取消処分についての手続は形式的には違法性は立証できないだろう。たとえ前知事が承認したとしても、これを後任者が取り消すことができないという法理はないからである。

公水法32条1項各号において取消事由となり得ることが示されており、32条2項は取り消された場合に損害を補償する旨が定められている。事後的に取り消すことが必ずしも違法とはならない。同法35条では、原状回復に関して規定されている。ただし、国に対する埋立承認について、「取消処分」が違法であるとする見解はあり得る。公水法42条からすると、同法32条は準用されていないからである。この場合、埋立承認の取消処分ではなく、「承認の撤回」とすべきところかもしれない。実際上の効果としては同じではあるが、知事の処分としては、国が「免許を受けたる者」ではないので、同法32条1項は適用できないと解釈され、取消処分は違法とされる可能性がある(その場合には、取消処分は一旦取り下げて、改めて承認の撤回を宣言・通知するよりないと思われる)。

都道府県知事の錯誤により、誤って承認(免許)することはあり得るので、これを自らの職権にて取り下げることができないとするのは、事務の処理として実際的ではない。原則として、行政庁が自身の明らかな過誤、違法や不当に気付いた場合には、当然に自らが進んでこれを是正する義務を有するべきものであるから、取り消すことは認められるべきである。

知事がした不利益処分が公水法4条(1項ないし2項)に基づくものである場合には、やはり準用規定では該当しない可能性がある。事業者が「用途の変更」か「設計概要の変更」の申請を行っている場合にのみ公水法13条の2が準用されるが、事業者は変更申請を取り下げているので本件承認については公水法4条の規定は準用から除外される可能性がある(取消事由とはできない)。また、13条の2は「変更できる」という規定である為、承認(免許)取消権を規定しているものではないので、変更を取り下げられた(当初計画通りの)場合には承認は有効として残存し続けるものと考えられうる。

取消処分の根拠条文を4条や32条として挙げている場合には、一度取り下げてから撤回をする必要がある、ということである。


2)論点11:代執行以外に取り得る手段がある

地方自治法上の代執行は、これ以外の措置では是正を図ることが困難な場合であるという要件を満たしている場合にのみ、適用される。しかし、そのような立証が国によってなされているとはみえない。

第一に、論点5で指摘した聴聞において出頭せず、第二に、論点6の裁決を出さないことは、国が沖縄県に対し説明を尽くしたといえず、本件手続開始以前において、是正を図れたであろうこれら機会を無為に喪失したものと言わざるを得ない。

第三に、沖縄県から協議の申し出が幾度か行われたが、当初国はこれを拒否し続けたものである。8月になって、官房長官が知事と協議を実施したものの、問題となっていた埋立承認の事務を担任する主務大臣は国土交通大臣であるから、当然に国土交通大臣からの説明があってしかるべきであった。本件処分が違法であると国は主張するのであるから、本来ならば処分がなされる以前にこれを回避するよう努力する義務が国にはあった。地方自治法250条によれば、国は地方公共団体から協議の申し出があった場合にはこれに誠実に応じることとなっているのであるから、官房長官でなく国土交通大臣との協議を実施してしかるべきだった。

(16時頃追記:
11月7日に沖縄県が送付した質問状は、地方自治法245条の四3項に基づく技術的な助言若しくは勧告又は必要な情報提供を各大臣に求めることができるという権利行使であり、これに対して条文等を挙げて何らの具体的な説明や回答も行っていないことは、明らかな義務違反があるものと言わざるを得ない)


第四に、沖縄県は国地方係争処理委員会に審理の申し出を行っており、この裁決が出されていないにも関わらず、他に手段がないとして代執行手続を沖縄県の本申し出以前に開始することは不当である。

これらのことから、国には代執行以外の是正を図る手段がなかったとは言えず、本件代執行の適用は違法である。


3)論点12:国土交通大臣の代執行手続開始以前には、是正指示がなされてないこと

知事が埋立承認を取り消す意思を有していることは、官房長官との会談でも述べられ、報道からも知り得るので、国がこれを知らなかったと主張することは不適切である。本件埋立承認の取消処分がされる前の時点でも、また、処分後の審査請求があった後の時点においても、明らかな法令違反があることを知っていたのであるから、これを具体的に指摘しその理由を添えて国土交通大臣が助言ないし勧告(これを拒否なら指示)することは可能だった。また、本件において国土交通大臣による是正勧告は10月30日?に通知された文書であり、地方自治法245条の八第1項の勧告に続く同条第2項の指示は11月?日に通知された文書であって、この指示に従わないことをもって代執行の開始要件である大臣処分違反とすることは、不適法である。

第2項の大臣指示に従わないことをもって、第1項にいう「当該大臣の処分に違反するもの」とすることは循環論法的であり、そのような解釈を行うことはできない。245条の八第1項が適用されるには、これより事前に大臣の処分の存在が証明されることが必要であり、これに違反して従わない場合にのみ、代執行手続に基づく勧告・指示・第3項の裁判請求が可能となるものである。本件代執行手続開始以前に、国土交通大臣による知事のした不利益処分を取消す処分(指示)があったことは証明できていない。

地方自治法上では、同法245条の四による是正勧告、同法245条の七による措置の指示が可能なのであるから、例えば次のような指示を行ったにも関わらずこれに従わないのであれば、大臣処分違反を問うことは可能と考える。

『 地方自治法245条の七に基づき、公有水面埋立法の承認に係る1号法定受託事務について誤りがあるので、次のように(国土交通大臣が)是正するよう指示する

国が埋立の事業者である場合には、公有水面埋立法42条1項の知事承認を受けることとなっている。本承認を受けた国に対し、同法2条2項及び3項、3条、11条、13条の二、15条(加えて14条)、31条、37条、44条を準用することが同法42条3項に規定されている。従って、同法32条1項は準用すべき条文からは外れており、国には本条の効力は及ばず、これに基づく取消処分も誤りである。
よってこれを是正し、32条1項に基づき行った不利益処分を取消すよう指示する。   』

地方自治法249条により、こうした是正要求や指示は文書で行うこととなっており、交付した事実があるなら、その文書の存在を証明すべきである。
論点9で例示した防衛大臣が行う「代行裁決等」の場合においても、収用委員会の却下の裁決に先立って、防衛大臣の「使用又は収用の指示」がなされ、その指示があった場合に限り代行裁決等が可能なので、本件代執行においても、地方自治法245条の八1項に基づく勧告及び同条2項に基づく指示に先立つ国土交通大臣指示の存在があってはじめて、主務大臣の代執行が可能になると解釈すべきである。

行政代執行の場合においても、事前の改善指導等が一切なく代執行令書をもって着手することは、裁量権の濫用というべきであり、一般的には事前に助言や指導を複数回行ってもなお是正されない場合には、意見陳述機会を附与した上で命令を発し、それでも実施されない場合において行政代執行着手が許されるものである。原告国の本件代執行請求は、これら事前に実施すべき手続を行っておらず不当であって、違法な手続に基づくもので失当である。


4)論点13:大臣が執行停止した処分に対し、代執行は不適法

国土交通大臣は知事のした不利益処分について執行停止を決定しており、この処分に関する知事の権限は凍結された状態に等しい。国土交通大臣が自らその決定をしたのであるから、同じ大臣が代執行手続をとることは不当である。せめて、執行停止を取消し(行政不服審査法35条)、知事の処分の凍結を解除してから、代執行の手続をとるべきであろう。

まるで、建築物が違法であるか否かの争訴があって(行政と住民の間で)、違法建築物であることが確定すると確認申請が取り消されるような場合、建築工事が仮処分で停止している間に、同じ法廷・同じ裁判官が建築物の取り壊すよう判決で行政代執行を命じるようなものである。本来、建築確認の取消訴訟で争っているから、違法建築物であることが確定するなら必然的に取消処分になり、まずその審理をすべきなのである。ところが、行政代執行を直ちに実施することを命じる判決を出すのは取消訴訟を無意味に帰するものであって、行政代執行で取り壊しを認めることは違法確定で判決を出したのと同じである。

裁判例においても、産業廃棄物処分場に関する平成23年2月福岡高裁判決(平成24年7月最高裁不受理決定で確定)では知事による措置命令の義務付けは認容、行政代執行は棄却された(現在判決文を探し中)。不服申立ての審査庁たる国土交通省は、前記例示でいうところの裁判官(所)に相当する立場であり、裁決がされる以前に代執行を請求するというのは、取消訴訟の確定判決前に行政代執行を確定するのと同義であろう、ということである。

従って、国土交通大臣が審査請求を受理した上で執行停止を決定しているのであるから、裁決を出すことが果たすべき義務であり、裁決は必然に行政不服審査法43条から知事も法的拘束力から外れることは許されず、なした不利益処分が取り消され裁決に基づく処分(本件では国の埋立を承認)がされることは明白である。すなわち、自ら執行停止を決定した大臣が、代執行を請求する利益は存在しない、ということである。行政訴訟での言い回しを用いるなら、本案には理由がない。

代執行の請求以外でも手段はあり、審査請求に基づく裁決を出せば事足りる。審査請求の受理と執行停止決定から、極めて短時間で代執行手続開始の閣議了承が行われ、本来なら国土交通省が本件について緻密に吟味すべき義務を負うところ、そのような形跡は全く窺われず、受理以前から代執行を開始することが決まっていたも同然である。常に行政行為は法に基づき正しくなければならず、適正に執行するべき注意義務を負うはずの国が、法や審査制度の主旨を蔑ろにすることは、制度の形骸化を肯定するも同然であり、到底許されない。



以上、各論点の検討により、国の代執行は誤りであって違法がある。
本件代執行の請求は棄却されるべきである。


16時過ぎ追記:

違法の上に違法を積み重ねて実施されている本件埋立事業や手続を鑑みれば、国は違法を自ら是正すべきである。国は、知事の承認撤回を待つまでもなく、埋立承認申請を行った事業者に対し本件申請を取り下げさせるべき義務を負うのが相当である。
国は、違法を是正する合法的手段を有しているものであり、これを正当に実施させる権限として、審査請求に対する裁決があるのであって、これを行わない場合においては、裁判所命令をもってこれを実施させるよりないものといわざるをえない。



辺野古沖基地建設に係る埋立承認取消の代執行に関する裁判の争点について~1

2015年11月17日 12時36分01秒 | 法関係
(個人的感想について:半月も待つのは、かなり辛かった。この日、この瞬間を待っていたのだよ。当初、意表をつかれた代執行の手続きだったが、ひょっとすると千載一遇のチャンスかもしれない、と思えた。国が法廷闘争を選んでくれたことに感謝したい。もしも行政不服審査法上の裁決だけであったなら、裁判に持ち込めるまでは圧倒的に不利だったことは確実だった。しかし、今回のように裁判所の判断を仰ぐチャンスを得るなら、官邸の言いなりでしかない霞が関の審査庁から出る裁決を待つよりも、ずっとマシだからだ。負けが確定するまでは、諦めないぞ。卑怯な手を用いる者たちに、法の鉄槌を下されんことを!)


この検討内容は、あくまで当方個人の見解であり、どの程度の正当性・正確性があるかは当方には判断できない。過去に書いてきた記事とも違っている部分がある(以前には気付けなかったことも多々あった)ので、お詫びして本見解に変更をお許し願いたい。



文中の文言は、次のように記すものとする。
・公有水面埋立法 =公水法
・合衆国政府 =米国政府
・日本国政府 =国、政府
・合衆国軍隊 =米軍
・沖縄に関する特別行動委員会 =SACO
・日米安全保障協議委員会 =SCC
・普天間代替基地建設事業 =基地建設
・沖縄県知事 =知事
・沖縄防衛局 =事業者



総論


1 大規模埋立工事は不可逆的である

ひとたび埋立工事を実行してしまうと、自然環境、生態系や利害得失関係などは工事以前に戻せない。条文上では原状回復が存在しており規定されてもいるが、現実には不可能である。そしてその不可逆性によって、工事完了後でさえ長期に渡る利害対立が残る原因となる。従って、事前の評価が大切であり、事業計画について慎重な検討がなされなければならないことは言うまでもない。


1)諫早湾干拓事業における教訓

埋立行政の大失敗例である。事後救済や解決方法が未だに確立されていない。平成22年福岡高裁判決により開門義務が確定判決となったが、平成25年長崎地裁による開門禁止仮処分が決定された。更に、平成27年1月には最高裁が国の抗告を棄却し、現在においても福岡高裁や長崎地裁で係争が続いており、今後の解決の糸口は一向に見えない。
計画から約20年を経て昭和63年に埋立承認、平成9年には潮受堤防の締切となったものの、現在においても裁判が続いているということである。混乱と迷走の元凶は稚拙な事業計画や影響評価で実施を決定したことであり、明らかな失敗事業であった。これならやらない方がまだよかった(一方当事者だけの不満が残るだけだから)という声も聞こえよう。杜撰な埋立という政策によって、30年以上にも及ぶ争議を生み出したと言っても過言ではない。
同じ失敗を繰り返さない為にも、事前の評価、検討が重要ということである。


2)鞆の浦埋立問題

広島県知事に対し、公有水面埋立の免許をしてはならないとする旨の判決であった。

【平成21年10月1日 広島地裁判決】

『景観利益に関する損害については、処分の取消しの訴えを提起し、執行停止を受けることによっても、その救済を図ることが困難な損害であるといえる。以上の点や、景観利益は、生命・身体等といった権利とはその性質を異にするものの、日々の生活に密接に関連した利益といえること、景観利益は、一度損なわれたならば、金銭賠償によって回復することは困難な性質のものであることなどを総合考慮すれば、景観利益については、本件埋立免許がされることにより重大な損害を生ずるおそれがあると認めるのが相当である。』と判示された。
沖縄県においても、自然環境及び景観保護の観点から免許することが適切ではないという判断の一因となっているのであるから、これについて十分な検討がなされるべきであり、現時点での知事の政策判断は尊重されるべきである。また、海とその周辺の自然環境の恵沢を享受する権利は不特定多数の一般個人にもあり、当然に保護されるべき法益である。最高裁判例によれば、次の通りである。

「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(最高裁平成16年(行ヒ)第114号,同17年12月7日大法廷判決・民集59(10)2645)。

代執行の提訴を行った国においては、この名文をしかと噛みしめるべきである。
『当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌すべし』、と最高裁が言っているのである。



2 現政権下における行政庁の行為は果たして法に基づいているのか

本来、行政の行為は法に則り正確に実行されなければならない。ところが、現政権への信頼は乏しく、本当に法に基づいて行政行為がなされているのか疑問である。


1)論点1:基地建設の根拠法は何か

本件のような大規模事業を一般法を根拠とし、行政の裁量権のみで実施することは、事業を円滑かつ安全に遂行する上で支障を来すことは当然に予想された。国の直轄事業として本件基地建設を行うのであるから、行政事務や手続の多くを沖縄県に押し付けるのではなく、国が大半を負うべき責務がある。公水法の承認は知事権限を尊重するのが当然としても、特別法での対応があってしかるべきである。
例えば、「公共用地の取得に関する特別措置法」や「新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法」では、重要な公共事業の位置づけがより明確化されている。本件基地建設が唯一の方法であって非常に重要であると政府が主張するのであるから、特別法の対象事業としての遂行が望ましく、重要であればこそ特別法の必要性が増すことはあっても減じることはなかろう。
本件基地建設が特別法の制定が必ずしも求められないとしても、政府の権限の基となっている根拠法を明示するとともに、これを説明すべきである。防衛省設置法4条12号及び各年度における予算関連法しかないのであれば、それでもよいが、あまりに無造作な根拠といえよう。


2)論点2:海上保安庁の強制排除の法的根拠は何か

海上保安庁は、作業範囲の海域に設置された浮標内に進入したカヌーや民間人を強制的に排除している。身体拘束を伴う行為が公然と行われており、これまで告発された例もある(不起訴処分となった)。海上保安庁が明確な法的根拠を提示しておらず、拘束時にも法的根拠について宣言・説明していることは皆無である。逆に問われても答えない。
海域の通航・進入制限は、どのような法的根拠があるのか不明のままであり、範囲が示された唯一の手掛かりは、防衛省告示123号(平成26年7月1日)のみである。この告示をもって海上保安庁が行っている身体拘束の根拠とすることは不可能である。海上保安庁法18条1項の適用と主張するとしても、その要件を満たしていることの立証が必要である。


3)論点3:政府の海域提供の法的根拠は何か

論点2と関連するが、政府が米軍に提供することとした海域について、前記防衛省告示123号をもって手続が完了していると考えることはできない。まるで私有地のような独占的領域として海を取扱うことは、不当である。最高裁の判例では、次のように述べられている。

【最判三小 昭61.12.16 民集40(7)1236)】
『海は、古来より自然の状態のままで一般公衆の共同使用に供されてきたところのいわゆる公共用物であつて、国の直接の公法的支配管理に服し、特定人による排他的支配の許されないものである(中略) 現行法をみるに、海の一定範囲を区画しこれを私人の所有に帰属させることを認めた法律はなく、かえつて、公有水面埋立法が、公有水面の埋立てをしようとする者に対しては埋立ての免許を与え、埋立工事の竣工認可によつて埋立地を右の者の所有に帰属させることとしていることに照らせば、現行法は、海について、海水に覆われたままの状態で一定範囲を区画しこれを私人の所有に帰属させるという制度は採用していないことが明らかである』

【最判二小 平17.12.16】
『海は,特定人による独占的排他的支配の許されないものであり,現行法上,海水に覆われたままの状態でその一定範囲を区画してこれを私人の所有に帰属させるという制度は採用されていない』

これらから当然に一定範囲を区画して私人所有に帰属させることは不可能であり、防衛省がたとえ告示によって米軍に対する提供を決定したとしても、国会による立法措置なく特定人(本件では防衛省及び米軍)による排他的支配が無条件に認められることはない。
従って、防衛省告示123号には法的根拠を欠いており、本件海域の提供は違法である。


4)論点4:公共用物である本件海域を利用する権利は一般公衆にあり、法益もある

防衛省告示123号の存在により、米国政府及び米軍が独占的排他的に本件海域を使用する権利を獲得できる、という説明は誤りである。理由は、前記最高裁判例で尽きているわけであるが、法律の条文からでもそれはうかがい知ることはできうる。国は本件埋立に伴い岩礁破砕許可申請を行っているが、申請書には漁業権者の免許番号と補償の措置について記載されていた。もしも防衛省告示123号をもって独占的排他的支配を必然的に確立するのであれば、海域の漁業権者への補償は不要であるはずである。米軍に提供する海域を区画し指定しても、それをもって海域への進入制限を加えたり、海の利用を一方的に制限できる根拠となるものではないということである。

提供海域の主要な利用権者として、漁業権を有する者に対して補償しているが、他の利害関係者が存在する場合には、同様に補償の対象としなければならないはずである。漁業権者については、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊の水面の使用に伴う漁船の操業制限等に関する法律」に基づいて制限と補償がなされているものであろう。

また、土地収用法5条3項は、『土地、河川の敷地、海底又は流水、海水その他の水を第三条各号の一に規定する事業の用に供するため、これらのもの(当該土地が埋立て又は干拓により造成されるものであるときは、当該埋立て又は干拓に係る河川の敷地又は海底)に関係のある漁業権、入漁権その他河川の敷地、海底又は流水、海水その他の水を利用する権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの権利を収用し、又は使用することができる』と規定している。「海水その他の水を利用する権利」は、漁業権以外の補償対象となるべき法益として存在し、その権利を消滅又は制限するには土地収用法の規定に基づく手続が必要なのである。

つまり、土地収用法という法律に則った手続が正当に行われた場合にのみ、制限が可能となるということである。本件においては、そうした手続が実施されていないことは明らかであって、国が違法でないという合理的説明があるなら、それを提示する義務がある。論点2、3と合わせて、整合的説明ができなければならない。

更に、「防衛省における自衛隊施設の取得等に関する訓令」では、4条(1)で『施設とは、自衛隊の用に供する土地、建物、立木、その他土地に定着する物件及び土地収用法第5条に掲げる権利をいう』とされ、(2)において、施設の取得等とは、『土地収用法第5条の権利の消滅又は制限』が含まれている。すなわち、土地収用法5条の権利は国民に存するものであり、この権利の消滅又は制限は、土地収用法による手続や本施設の取得等に関する訓令の手続によらねば許されないということである。この訓令4条の除外規定として、「自衛隊の訓練等に必要な制限水域の設定及びこれに伴う損失補償に関する訓令」があるが、これは制限水域が自衛隊の「施設の取得等」には該当せず、単に漁業権者への補償を行うに過ぎず、この場合土地収用法5条に掲げる権利の消滅又は制限を主張することはできない。本件での制限水域の正当性をこの訓練等に必要な制限水域と主張する場合であっても、漁船以外に制限を課すことは違法である。


海ではなく河川に関する重要判例では次のように判示される。

『公水使用権は、それが慣習によるものであると行政庁の許可によるものであるとを問わず、公共用物たる公水の上に存する権利であることにかんがみ、河川の全水量を独占排他的に利用しうる絶対不可侵の権利ではなく、使用目的を充たすに必要な限度の流水を使用しうるに過ぎないものと解するのを相当とする(大審院明治三〇年第四二二ないし第四二四号同三一年一一月一八日判決、民録四輯一〇巻二四頁、同院大正五年(オ)第六二号同年一二月二日判決、民録二二輯二三四頁参照)』

海の利用についても、独占排他的に利用しうる絶対不可侵の権利を約するものとは解されず、使用目的を充たすに必要な限度の使用を許容するに過ぎないと解するべきである。次の判決文も参照すべきである。

【昭和55年1月31日 東京地裁判決】

『そもそも海や海岸は、何人も他人の共同使用を妨げない範囲で自由に使用できる自然公物であり、海水浴もこの公物の自由使用として普通地方公共団体による海水浴場の開設を待つまでもなく、自由にできる行為である』
(注:当時には海岸法の規定がなかった為、海と海岸が併記されている)

海の独占排他的な利用の権利を証明できる法的根拠は、存在しない。
仮に防衛省告示第123号で使用を宣言したとしても絶対不可侵の権利ではありえず、海は何人も自由に使用できる自然公物であり、自由使用が当然に認められているものであって、遊泳や釣りなどは自由にできる行為である。


【昭和35(オ)676, 昭和39年1月16日判決(最判一小)】

『地方公共団体の開設している村道に対しては村民各自は他の村民がその道路に対して有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行い得べきところの使用の自由権(民法七一〇条参照)を有するものと解するを相当とする』
『通行の自由権は公法関係から由来するものであるけれども、各自が日常生活上諸般の権利を行使するについて欠くことのできない要具であるから、これに対しては民法の保護を与うべきは当然の筋合である。故に一村民がこの権利を妨害されたときは民法上不法行為の問題の生ずるのは当然であり、この妨害が継続するときは、これが排除を求める権利を有することは、また言を俟たない』

使用できる利益を有するに過ぎず固有の権利を有していない者、すなわち、反射的利益を享受し得るに過ぎない者てあっても、第三者の行為によって利益享受が妨害された場合には、第三者に妨害排除を請求する権利を有する、とされた。通航の自由権や海を使用する権利は、自然公物の自由使用として認められていたものであり、この権利を妨害する本件区域での海上保安庁の強制排除等の行為は明らかに不法行為である。


(つづく)


そろそろ「りふれは」の人々は反省すべきでは?

2015年11月16日 16時44分35秒 | 経済関連
これまでの繰り返しになるわけだが。

最近、クルーグマン先生の論説がNYTに出ていたそうですが。非常に興味深い見解だったように思います。


さて、直近のGDP統計では、悲惨な結果が並んでいるわけだが、勇ましく「インフレ目標を達成できなければ、辞任だ!!」と豪語していた人たちは、どこに行ったのでしょう?


副総裁をして、日銀を辞めるという決意でやると言わしめたわけで、そのような強硬な「インフレターゲット」政策を掲げていた連中がいたのではありませんか?


賃金要因についても、これまで繰り返し述べてきたが、反対派はどこに行ったんだ?


山形浩生氏も何か意見があるのではないかと思うが、どうなんだろうか。


13年4月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/dca1c41877ee493600a1ccb477e15206



13年9月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/1d9cf32bef8fc2e6a233bd2615681ae4

2年以上前に警告していたことが、今まさに現実になっているでしょう?
所詮は、そういうもんなんでしょうな。

つまり、ド素人以下の連中しかいなかった、ということですわ。
日本の経済ナントカの中身を知るにつれ、幻滅というか残念というか、もうね、これではダメなわけだな、と思いましたわ。


1つ、マシなことをやっても、他でダメダメなことを3倍とか5倍とかやってしまう。
だから、良くならない。

で、別な1手をまたやる。
その数倍の失敗を積み重ねる。

そうして、また逆戻りの失敗。


もうね、本当に愚か者たちのやり方を見てると、これではまあ、いかんですわ、と思うにきまってる。
だって、素人よりもバカなんだもの。


13年5月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/72ddfdab9c1296d95ef576487defe9bf


繰り返し言っても、多くは失敗に至るまでは「分からない」んだわ。
間違っているということが、理解できないんだわ。


13年10月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/b3eb998d5d58a417e703e758b7a50cf3


規模の大きい法人に流れ込んでいる資金を吐き出させない限り、資金循環は変わらない。実効税率は大企業ほど儲かるシステムだから。


バラマキとか言われるのを避けたいなら、子会社の株式配当金とかに課税を多くする等、大企業に圧倒的に有利な税制を改めさせない限りは、日本経済は再生しない。巨大企業にこそ金が溜まり、そこで滞っているからダメなんだ。その資金の一部を個人へ振り向けるような政策変更が必要。バラマキ先は、学費支援を拡大するとか、子育てに重点配分するとか、いくらでもやれる。社会保障費が伸びるのがダメなんだ、って言うけど、高齢者が3人に一人なら、その分野の需要が増大することになるのは必定であり、これを無理に抑制することによりかえってマイナス要因となっていることに気付くべきである。年金保険料を抑制したいなら、年金制度の見直しが必要であって、これは産業ではないだろ。医療や介護は、それ自体が成長産業であることに変わりないわけだよ。
だって、潜在消費者としての対象が、かつて1000万人以下だったものが、3倍とか4倍に膨れ上がっているんだぞ?

自動車免許だって、そうだったろ?
免許を持ってた人は10%の時代と、ほぼ90%以上という時代では、自動車の潜在購買層というのは数が違うだろ?だから、一定程度の需要が毎年発生するんだろうに。


ここで、何故医療や介護が社会の需要に応えることを認めないわけ?
大企業でなく、病院や医療従事者とかに金が行くからか?


真のフリーライダーは、労働者の労働力を搾取し、賃金を上げないばかりか、下請けの経費を叩き切り、不正規雇用で社会保険料を払わずに済ませる、極少数しか存在しない、1%にも満たない法人を優遇しているせいで、日本経済は沈んでいるんだよ。

商売の理屈すら分かってない無能な経団連のアホどもなんかが、色々と口出しした結果が、この20年の失敗の結果だったんだ、ってことを、もう一度直視するべきである。




続々・安倍政権の経済政策失敗は想定通り~連続マイナス成長達成

2015年11月16日 11時53分50秒 | 経済関連
財務省が「統計数字が違うんじゃないか?」と、自らの無能と失敗を認めなくない気持ちは分からないではない。
だが、実力テストみたいな試験結果の点数というのは、自分が信じたくないと思っても、数字は数字なんだわ。その結果を受け止めるよりないんだよ。過去と同様に、成績は最低であり、落第ですね、ということだ。江戸時代の幕府の武士たちより、頭が悪いかも。


で、前四半期に引き続き、7-9月期も連続マイナス成長を達成してくれました。アベノミクスを喧伝しておった連中は、早速の沈黙ですかな。
「りふれは」どもの言い訳はまだですか?(苦笑)←某下衆連中の得意な表記をパクってみました。


>http://jp.reuters.com/article/2015/11/16/gdp-idJPKCN0T500120151116

[東京 16日 ロイター] - 内閣府が16日発表した7─9月期国民所得統計1次速報によると、実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0.2%、年率換算でマイナス0.8%だった。4─6月期の前期比マイナス0.2%に続き2四半期連続のマイナス成長となった。設備投資と在庫投資が足を引っ張った。中国など新興国減速の影響で企業部門の慎重姿勢が強まったとみられる。消費や輸出は持ち直したが力不足だった。

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日本というのは、本当にバカと無能しか上の方にいないということなのでしょうね。政界だけじゃなく、官僚たちも経済界でも同様、これほどまでに愚かであることが、信じ難いわ。
何度も「気を付けろ」って言っても、無駄に終わるんだわ。頭がおかしいんじゃないか。

庶民のせいではない、エリート面した社会も世間の事も物事についても、無知無能な連中が集まっているからこそ、総体としての「大失敗」しか達成できないのだよ。


特に被害拡大をもたらしたのは、経済界のアホどものせいだな。
寄生虫みたいな官僚主義的大企業幹部がヘタに政治力を持ってしまっているが故に、経営面での失敗と同様に日本経済をもダメにすることに加担し被害を拡大させたということ。