先週に「国立科学博物館 上野本館」へ「特別展 毒」を見に行きまして、その時に企画展も見たかったのですが、ちょっとした理由で見る事ができず、今日その企画展を見に行く事にしたのです。
そして、その企画展の他にも「日本館1F企画展示室」のほうで、昨日から開催されている「ワイルドファイヤー 火の自然史」も見てきました。
実際はこちらの「ワイルドファイヤー」の方が気になっていたのですが、来年の2月26日まで開催されているので、1月2日に行った時に見れば良いかな?と思っていたのですが、この機会に見れるのは良かったですよ。
さて、「ワイルドファイヤー」ですが、コレは「野火」。つまり「自然森林火災」の事なのです。ここ最近ではよく海外での森林火災や山火事のニュースが入ってきますが、日本でも年間1000件くらいの野火が起こっており、その原因はさまざまですが、基本的に「野火」の発生には3つの要素があり、それは落雷や火山活動、摩擦や落石による火花、そして人による失火による「着火現象」。二つ目に「燃料」つまり、燃える植物がある事。コレは植物の密集度や乾燥の程度、季節により燃えやすさに違いが出ます。3つ目が「酸素」。火が持続するのに必要で、現在の酸素濃度では火事が長く続く原因になります。単純にこれは「燃焼の3要素」であり、どれか一つが欠ければ火は起きません。
野火原因は解ったとして、ではこの「野火」によって何が解るか?野火の燃料となる「植物」は様々な有機化合物や生物源の高分子で構成されています。これが火の熱で分解される時、空気が十分に無いと液体や気体状の物質を発生させそれが大気と混ざってさらに燃焼します。燃え残った物質は元の植物よりも炭素に富んだ「チャコール」、「炭」や「木炭」となり、野火で残ったチャコールはその野火の規模や温度を知る手がかりになるのです。
チャコールは温度や時間によって材組織が変化し、光の反射率や組織の違いでチャコールになった時の状態を知る事ができるのです。ちなみに「備長炭」は1000℃以上の温度で蒸し焼きに去るので反射率も高く木材組織もよく残されているそうです。
このチャコールは地層にも含まれ、地層内に残された野火の証拠であるチャコールから過去の大気中の酸素濃度も知る事ができ、過去4億年間の大気酸素濃度も解るようになったのです。それによると、3.5億年前に9万5千㎢もの大規模な野火が起こった事が解り、その時に酸素濃度は現在よりも高い30%以上もあったそうです。ちなみに酸素濃度が15%を下回ると野火は起きず、25~35%で最大になることも解っています。実際に酸素濃度が25~30%の高酸素濃度期である「石炭紀」「ペルム紀」、「白亜紀」では野火がかなり頻繁に起きている一方、酸素濃度が15%近くまで落ち込んだ「三畳紀」ではほとんど見られないそうです。
「被子植物」はこの野火をうまく利用し、野火によって撹乱された後にいち早く回復する事ができるために「被子植物」よりも発展をしたとの考えもあるのです。中でもオーストラリアに自生する「フトモモ科」や「ヤマモガシ科」の植物は野火によって焼かれることにより、見の散布やタネの発芽がうながさせる事が知られており、代表的なのがバンクシアやブラシノキ。北米では「ジャックパイン」などの松の仲間がそうです。
やがて、5000万年前以降になると酸素濃度は現在の20%前後に落ち着き、低緯度域を中心に草原やサバンナで野火で維持される時代となります。そして「人類」が現れるとまた別の「野火」が出てきます。
それが「1万年前」くらいから意図的な「野火」が日本でも琵琶湖底に堆積しているチャコールから発見されました。「クロボク」と呼ばれる「黒土土壌」が少なくとも人類による火入れが原因と考えられています。
また、半自然・半人工の環境である「里山」ではときに草原を維持するために「火入れ」、「野焼き」が行われ、明治時代にはかなり計画的に「筑波山周辺」や「房総半島」で管理されていたようでして「迅速測図原図」を見る事によって解ります。
そして、時代は流れ、現在になると、また新たなワイルドファイヤーとの関係を築いていかなければならない状況になっています。毎年のようにインドネシアで発生する「泥炭火災」や熱帯雨林での発生は現在の酸素濃度では起こりえないのですが、人為的な事や気温の上昇、降水量の変化により新たな時代を迎えているのです。
このように「野火」の歴史を見て行くと今まで違った観点で地球環境の変化を知る事ができるのは、面白いですね。
それから、もう一つの企画展、「化学層序と年代測定」。こちらは「地球館1Fオープンスペース」にて開催されています。
コレは、2016年度から5年間、分野横断型の総合研究として「化学層序と年代測定に基づく地球史・生命史の解析」を「国立科学博物館」が実施し、主に3台の質量分析装置を使用して、岩石や堆積物に含まれる酸素、炭素、ストロンチウムなどの同位体比を分析して、地層の年代や堆積時の環境を解析して、時代がハッキリしていなかった化石種の出現や絶滅のタイミングを詳細に決める事ができるようになったとの報告ですね。
それでは本日の登場人物はこの方。「ベルギー国立博物館」にて「地質・鉱物・鉱石研究室」で「学芸員」をしている「ベルジリアン・シェパード・ドッグ・ライノア」の「Chiefille」である「ポレット・テヴェノ」さん。地質に含まれる「チャコール」。これが地球環境を知るに重大な手掛かりになるのを改めて知ったようで…。ちなみに背景は「ワイルドファイヤー 火の自然史」会場内なのです。
