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読書感想「ジェノサイド」

2017年12月13日 11時39分57秒 | 乱読本感想
ジェノサイド
高野 和明
角川書店 2013年12月25日

★4 2017年12月13日 11:35

上巻を半分ほど読んだ時、『何で私はもっと早くこの本を読まなかったんだろう!』と後悔した。
あの、「13階段」の高野和明さんの作品だったのに。
存在を知らなかった訳ではなくて、何度か手に取っていたのに。
どうも、あらすじ冒頭の“イラクで戦うアメリカ人傭兵と、・・・”で却下したようだ、その時点で「ジェノサイド」の意味を知らなかったのにもかかわらず。

読み始めて、「ジェノサイド」の意味を知った。
歴史として知っていること、ニュースとして知っていること、そこは避けて通れない読み物だったが、どこか違った。
壮大なサスペンスで壮大なSFだった。
明らかに作り物だが、リアルな部分が事細かに描かれ、それがフィクションに繋がる。
そのボーダーラインが分からない。
読み進むと虚が圧倒的なリアリティを持ってしまう。
「ハインズマン・レポート」なんぞ、途中Wikipediaで調べようかと思ったくらい。
解説で作り物だと知った。
物語を読み終わって冷静になると、そういわれれば、展開に都合のいい内容だったなと思うが、読んでいる間はそれに引き込まれてしまっていた。
そしてアメリカ大統領、この物語が書かれた時、モデルとなった大統領は今の人ではなかったはずだが、今の人でも通用する、妙な既視感。
興味深かったのは“現生人類”の定義のようなもの。
ジェノサイドを起こす邪悪な存在という位置づけに反論はない。
でも、古賀父子、ピアーズは?
李正勲、坂井友里は?
そして森の民は?
邪悪な存在であったか。
誰かを助けようと尽力する人たち、その中にジェノサイドは無かったのかと問われれば、否と答えるしかないが、そうではない人がいたのも間違いない。
それが人類にとっての救いであることを予感させてくれる終わりに清々しさが残って、「大量殺戮」の読後感は意外に悪くなかった。

最後に、膨大な資料を読んで(200冊の本も読んだとか)これだけの作品仕上げた高野さんの努力に感謝。


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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (神崎和幸)
2017-12-14 18:01:58
こんばんは。

自分も「ジェノサイド」読みましたよ。
いい作品ですよね。
内容以上に人類が繰り返してきた、
そして今でもくすぶる虐殺の歴史に圧倒されました。
しかし人間は希望を作ることだってできる。
そんな気持ちになり、最後まで読んで良かったと思いましたよ!
返信する
読んでいただいて感謝です (momoko)
2017-12-15 11:07:04
>神崎さま
色々な出版物で溢れている昨今、同じ本を読んで感動を共有することが難しくなってきました。
その中で”それ”を共有できたことが嬉しいです。
また、このような作者の渾身の作品に出逢いたいですね。
私は、嘘っぽくても最後が希望に繋がる作品が好きです。
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