途中下車してときどき嵐

ブログ人から引っ越してきました。

読書感想「不発弾」相場英雄

2020年07月27日 10時49分33秒 | 乱読本感想
新潮文庫 2018年6月1日

プロローグで“三田電機、不適切会計!”とか、どこかで聞いたような話だ。
あぁ、これは東芝の粉飾決算のことが題材の小説なのか。
あれは何だか規模が大きすぎて結局うやむやになった感じだったからその概要くらいは分かるかなと読み始める。
現在(不適切会計が発覚した時代)それを捜査する側と古賀という男の半生が交互に描かれる。
証券マンになった古賀は学歴も後ろ盾もないけれど、力のある先輩とか有力者に取り立てられる。
彼らにとってはそれだけ優秀で信頼できる人だったのだろう。
バブルが始まり、人々は踊り、そして終わった。
バブルの終焉で人は踊りを止めたと私は思っていた。
が、
一部のお金に執着する人、賢い人、権力者、大きな組織に組み込まれた人たちはそれを終わらせまいとあがく。
終わっては困る人たちが益々の損失を生んでいく。
そうか、ここから終わりが始まったのか。
そして、それは終わっていない。
ある日、多額の損失が不発弾の様に露見する。
本書が書かれてからしばらく経った今でも終わっていないと思われる。
確かに“不発弾”がまだ隠れていると思わせられる小説だった。
難しかったけれど描かれたバブルの闇が興味深かった。

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読書感想「ニュータウンは黄昏れて」垣谷美雨

2020年07月07日 16時45分12秒 | 乱読本感想
新潮社 2015年7月1日

『キャ~!怖い!ホラーやん』と、琴里が黛を朋美に紹介した時に思った。
三起子が琴里を黛に紹介した時はこれから何が起こるんだ?怖いこと!?くらいだったけれど、その後に起こった怖いことが分かってから、それでも黛を朋美に紹介するのか!
朋美に起こるだろう”怖いこと”を想像するより、朋美に危ない奴(黛)を紹介した琴里が怖かった。
琴里、三起子、朋美はかつて同じニュータウンで育った幼なじみだが、それぞれが思い描いた現在ではなかった。
それを打開するには・・・お金!お金持ちの男と結婚!
黛はお金持ちだけどね~~

これはそう言う話なのか!?
ちゃんとタイトルにあるようにニュータウンの、それも老朽化した元ニュータウンの話ではあるのだが、ついついかなり歪に育った金持ちのお坊ちゃまと、彼とつきあうことになった女子たちの方に興味は行った。
興味は持ったが決して気持ちのよい話ではなかった。

そもそも、田舎で育って都会を知っても都会に住もうとは思わなかった私にとってはニュータウンなんて全く縁がないところ。
田舎に住めば家なんて普通に建てられるし、バブルに踊らされて多額の借金をする事もなかった。
私だけではなく、周りの人のほとんどが。
だからニュータウンの老朽化問題なんて知っているけど実感が無い。

最後は垣谷美雨作品らしく”希望”でまとめられているが、今回はあまりにも多くの人たちのエゴに圧倒されてちょっと引いてしまった。
当人は本当に困っていてそうするしかないのかもしれないが、エゴにしか思えなかったから。


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読書感想「震災キャラバン」高嶋哲夫

2020年07月04日 21時57分57秒 | 乱読本感想
集英社 2011年10月20日

コロナ禍の中でいつもとは違う生活をしているといつもとは違う本に出あう。
東日本大震災が題材になっているロードノベルだ。
高嶋哲夫と言えば「災害三部作」「予言小説」
そうでない(人を描いた)作品もあると知っているが、私の中ではそのイメージで凝り固まっている。
この作品は災害を扱っているが、いつもの災害小説ではなく”そうでない作品”になっている。
神戸から被災地に、支援物資を積み込んだバンに乗って人探しに向かう。
その一連の物語は当時に、そしてその後にいろいろな形で発信された内容と変わったものは無い。
あまりにも多くの人がかかわっているのでその”死”も”奇跡”もありふれたように感じた。
それゆえに、小説の中の出来事が現実のひとつひとつに思えた。
この作品、最後まで読んで、発行日を見てちょっと驚いた。
2011年10月25日
その日、2011年3月11日から約半年で発行されている。
予言小説を何作も書く高嶋哲夫もすごいが、この速さもすごいな。

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