小学館 2017年4月6日
★5
米津玄師の「Undercover」を聞いたとき、受験英語にはなかったから、意味を知らなかったよ~。
書店に行ったら「アンダーカバー」の文字が!
真保さんだったら面白いだろうと買ってきた。
私は“真保裕一”と言えば、「ホワイトアウト」より「奪取」が大好き。
現実でありそうだけど、でもそこまでやると現実じゃない、そのボーダーラインでハラハラドキドキさせてくれる壮大でスピード感あふれる娯楽作品だった。
いつかそんな作品に出逢いたいと読んできたが、なかなか出逢えない。
「栄光なき凱旋」は胸が痛かった。
“行こう!”シリーズは、面白くないわけじゃないけど違うでしょ!
他、色々、真保さんの幅の広さは感じるけど、私が出逢いたいのはこれじゃない!
「ブルー・ゴールド」を読み始めた時、壮大な話、来たか!?と思ったけれど、違った。
前置きが長くなったが、もう20年くらい次の「奪取」に出逢いたいと思ってきた。
フィリピンで麻薬密輸の疑いで捕まったカリスマ経営者、会社も財産も信用もなくし、劣悪な環境でどうする?
真相を探ろうと動き出す戸鹿野智貴、うっかりはめられてしまったとは言え、苦労人で賢い人、復讐するのか!?
少し前に観たドラマ「モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―」になるのか!?と思ったけれど、そんなドロドロではなかった。
と、言うより、別の物語も始まった。
イギリスの麻薬捜査官ジャッドが捜査でイタリア、トルコ、スペイン、アメリカを巡る、ワールドワイドなサスペンス。
戸鹿野とジャッドの調査が交互に描かれる。
それが最後に繋がるのは解っているが、どう繋げるかは真保さんの腕次第。
次々現われる人たち、加齢による記憶力低下でこう言うのは苦手なんだけど、意外に覚えていられる。
何故だろうと思ったが、ちょこっと登場する人達にもその人の人生やら性格が与えられている。
短い言葉なのに、その人が浮かび上がる。
戸鹿野がいた刑務所の人達、ジャッドが各国で出会う捜査官たち、色々な人にワクワクしてしまう。
ちょこっとの人でさえそうだから、戸鹿野やジャッドのまわりにいる人達はより魅力的に描かれている。
ジャーナリストの美香子、西山(父)、ジャッドの上司ホワイト、みんな賢くて頼もしい。
登場人物全般に『こんな人いないよ~』なんだけど、いいのよ、これは壮大な娯楽なんだから、私はそれを楽しむ!
とは言え、世界の麻薬事情、捜査事情、それらに対する日本の事情はきちんと、皮肉も交えて入っている。
本の厚さや文字数より遙かに多くのものが入っている。
読み終わって、閉じた本を見るとこんなに薄い本だったんだとちょっとビックリした。
厳密に言えば549ページで長編小説だが、その倍以上読んだ気がした。
そしてもっと読んでいたい気がした。
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