途中下車してときどき嵐

ブログ人から引っ越してきました。

読書感想「グレイヴディッガー」高野和明

2021年08月21日 09時48分32秒 | 乱読本感想
角川書店(角川グループパブリッシング) 2012年2月25日

「13階段」ですごいと思ったのははるか昔。
その流れで読んだ「幽霊人命救助隊」は何これ!?だった。
そして最近「ジェノサイド」を読んだら、やっぱり「13階段」の高野さん!だった。
こんなにすごいのに何で出合いが少ないんだろうと思ったら、発表作品が少ないのね。
たまたま見かけた本書、読み始めてすぐに引き込まれてしまった。
不思議な連続殺人、これって、警察もののミステリーじゃないの?
魔女狩りに関して、中世イングランドの伝説が出てきた。
「ジェノサイド」を読んだばかりなので、これって、ひょっとしたら、また、高野さんの創作!?
一瞬、調べようとしたが、流れに任せて一気読みを選んだ。
何だろう?いかにも創作という感じとやけに緻密な描写のリアリティ。
「ジェノサイド」と同じ感覚。
これはもう、その作り物の世界に身を任せて楽しむしかない。
殺人場面はけっこうエグイんだけど、作り物の世界だと思えばそれほど気にならない。
でも、作り物の世界にいる人たちは、ひとりひとり、心があって、生きている。
事件を追う警察関係者の、“多分”それが正しいのであろう“正義”
“多分”と書いたのは、本書では“正義”を問われる。
正義を口にしつつ悪事を働く警察関係者、悪党なのになぜか命を懸けて人を助けた人、助ける人。
助ける人、悪党なのに子供の命を救おうとする八神俊彦。
この物語、振り返ってみれば、その八神の1日にも満たない、逃亡の物語。
いや、彼を追う悪と警察からは逃げているけれど、逃亡じゃないな、命を救うためにそこに向かう物語。
ハラハラドキドキして、最後は、アメリカ映画みたいに終わる、プチだけど。
そういえば、高野さんは映画関係者だったな。

解説の方、村上貴史さんは高野さんの熱いファンのようだ。
解説の中身も熱いが、冒頭の一文が的を射ていて、高野作品を良く解っていらっしゃる。
【真面目で誠実な法螺吹きが生んだ極上のワンナイトサスペンス】
素晴らしい!

最後に、やはりイングランドの伝説「グレイヴディッガー」は高野さんの創作だとか。
魔女狩りに関して歴史的事実が羅列される中に巧く紛れ込ませてあった。


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読書感想「6時間後に君は死ぬ」高野和明

2021年08月21日 09時33分56秒 | 乱読本感想
講談社文庫 2010年5月14日

タイトルは衝撃的だが、「13階段」の高野和明ならこれもありかなと読み始める。
1話目、普通にサスペンス、高野和明にしては深みが無いと言った感じ。
2話目、1話目と同じ青年が登場するが1話目とは少しテイストが違って、ちょっとほっこり。
3話目もまた少し違うテイストだが、前向きの話。
4話目はファンタジー要素が強くて、やっぱり前向きな話。
2、3、4、と和んでいたら、5話目で今度は「3時間後に僕は死ぬ」って。
1話目と同じ男女の登場人物だが、あれから5年が経っている。
今度は未来が見える青年、圭史が3時間後に死ぬという。
1話目で6時間後に死ぬはずだったのに未来を変えた女性、美緒と再び未来を変えることができるか!?
3時間のハラハラドキドキはやっぱりサスペンスとしては物足りない。
3時間後、思いっきりネタバレだが、青年は死なない。
未来を変えたのだ。
この話、タイトルにミスリードされてしまったが、実は色々悩んで努力して自分の“より良い未来”を作り出していくという話のようだ。
ん?なんでサスペンスにファンタジー?と思った2話、3話、4話の方が本題だったようだ。
サスペンス好きな私としては高野和明のスリリングな話が読みたかったけれど、悪くは無かった。


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読書感想「ボーダレス」誉田哲也

2021年08月07日 09時44分39秒 | 乱読本感想
光文社文庫 21021年2月20日


”誉田哲也”の文字だけで買ってきていた。
”櫻坂”やら”日向坂””乃木坂”メンバーの名前と髪の長い女の子の写真、”ひかりTVドラマ”の文字も見える。
誉田哲也のそういう系(ストロベリーナイトやジウ)ではないのだろうと読み始める。
最初の場面に登場の女子高生たちのやり取りから、先日読んだ「あの夏、二人のルカ」を連想し、そういう(青春っぽい)話だと勝手に思い込んだ。
だから次の場面の別の登場人物の女の子たちの話にミステリー要素が出てきたときには女子高生の書いた小説なのだろうと思い込んで読んだ。
しかし、病弱な女の子の話、喫茶店の女の子たちの話が出てきて、あれれっ?どれが現実で、どれが女の子の創作なんだ?
結果から言えば、この物語に女子高生の創作などはなく、どの物語もある地点で繋がる4つのお話だったのだ。
それはミステリーであり、青春の物語であり、爽やかに終わった。
ある意味シンプルな話を勝手な思い込みで複雑にして読んでいたが、余分に楽しめたのだから良しとしよう。


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