途中下車してときどき嵐

ブログ人から引っ越してきました。

「いつもの火曜日」サンチュのお話

2012年10月18日 11時42分09秒 | サンチュのお話

解ってますね。

本当のお話ではありません。

サンチュバカの私の妄想のお話。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「いつもの火曜日」

 

僕はパブロフの犬のように朝を迎えた。

 

いつもの火曜日のように幸せな気持ちで目が覚めた。

 

寝起きの悪い僕だけど、火曜日は特別。

 

もう少し寝てやろうとは思わない。

 

ちゃんと目覚ましを止めて、ベッドの上に起き上がる。

 

起き上がって、気がついた。

 

今日の仕事は違うって。

 

思わずついたため息に少しだけ声が漏れた。

 

その湿り気を帯びた自分の声に、思った以上に落ち込んでいる自分を感じた。

 

あの日、火曜日に違う仕事が入っていたらと、言った時・・・

 

自分の心に空くだろう穴は解っていた。

 

空疎な穴だろうと思っていたけれど・・・それは違った。

 

穴の中には寂しさと悲しさとがいっぱいだった。

 

寂しさと悲しさは痛くて重いんだと、知った。

 

彼女は気持ちを切り替えて次の仕事に向かえと言った。

 

解っている。

 

ちゃんと仕事をする。

 

彼女が指し示してくれたことは正しい。

 

僕のことを見つめ、理解し、そして何より僕の将来を思ってくれた気持ちをちゃんと受け止める。

 

でも、

 

しばらくの間、僕のパブロフの犬は火曜日を迎える度にうっかり幸せを感じてしまい、より深い悲しみの底に落とされた。

 

火曜日を特別な火曜日だと感じなくなるくらいの日々を過ごして・・・今。

 

僕は僕の中に残っている確かなものだけを信じている。

 

あの彼女と過ごした日々。

 

眠れないくらいに病んでいた僕のこころを癒やし、彼女が生きる健やかな世界へと導いてくれた。

 

彼女が教えてくれたこと。

 

彼女を通じて僕が知ったこと。

 

痛みも、苦しみも、すべてが僕の中で形を変え、甘い記憶として空いたと思っていた心に詰まっている。

 

4度目の秋は・・・僕も、彼女も、けっして不幸じゃないのに、あの時の気持ちがよみがえってきて、少し切ない気持ちになる。

 

あの時、彼女は何も言わなかったけれど・・・

 

火曜日の仕事が無くなることについてどう思っただろう?

 

そして次の火曜日を迎えた時ににどう感じただろう?

 

彼女の気持ちが僕と同じだったならば・・・と、聞かなくても解ることをちょっと思ってみる。

 

同じだったからこそ今があるのに・・・

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「I Believe」サンチュの小さな妄想小説

2012年10月01日 23時12分21秒 | サンチュのお話

「猟奇的な彼女」を観て、そしてもらったコメを題材に、久しぶりに、ちょっと書いてみましたわ。

妄想小説って程じゃない、サンチュのほんの小さな一瞬のお話。

「I Believe」

あっ!

なんとなく手に取ってしまって、驚いている自分がいる。

「猟奇的な彼女」のDVD。

以前は好きでよく観ていたのに、いつのまにか観なくなって、新しいDVDやCDの中に埋もれてしまっていた。

この映画タイトルを見ると、少しだけ思い出すことがあって・・・

少しだけ気になる人の顔が浮かんでくる。

「私たち結婚しました」で、私はこの映画を意識してちょっとした演出をしていたんだけど・・・「つかまえて~」とか未来の伴侶に贈る言葉とか再会の約束。

彼は解っていたのかしら?

よく考えたら、私たちの年齢差って・・・

この映画が封切りになった時って、彼は中学生!?

勉強しないでギターばかり弾いていたって言っていたし・・・観たことなかったかもね。

海に女の子と出かけたことないって言ってたし、プールもスケートも・・・若い男の子が経験しているだろうこと、何も経験したことがないって。

不思議な子だったな~

アイドルなのに人見知りで、変に頑なで、もう、この子とどう仕事をしていけばいいのよって、ちょっと腹が立ったし、悩んじゃった。

それなのに・・・

えっ!?なんで私の横で笑っているの?

いろいろなこと、楽しそうに私に話してくる。

急速に親しくなっていったのは仮想結婚でも、夫婦という関係だったから?

親しくなって解ったのは彼は子供じゃなかったってことかな。

子供っぽいところもあるけれど、それは純粋さからきているのね。

とても大人の部分は・・・彼の暗い部分とも関係していると思うけれど・・・自分のやりたいことに向かって日々努力し、辛いことも経験してきたせいかしら。

短い間に彼は私の中に入り込んで、自分をさらけ出してきた。

しかたがなかった。

もう、あの時は彼の気持ちが解りすぎたから。

しかたがないことにして・・・私も自分の気持ちに正直になった。

でも、期間限定。

ハルラ山で交わした約束。

彼は「猟奇的な彼女」の結末を知っていたのだろうかな?

信じていれば・・・なんて思ったかしら。

私は・・・あんなに別れが辛かった理由はちゃんと自分で解っている。

現実は映画のようにはいかないってこと。

そうはしないって。

彼は・・・まだ、信じているかしら?

一途な、変な子だったから・・・ひょっとしたら、なんて・・・

私は・・・もう、過去のことだと思っている。

・・・でも、この映画を観ることができない自分がいる。

I Believe

</object>
YouTube: I believe

映像は東方神起だけど、歌詞が素敵。

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さいたま記念「サンチュカップルストーリー」相変わらずの妄想小説ですが・・・

2012年07月18日 19時29分57秒 | サンチュのお話

大阪での握手会とさいたまスーパーアリーナの4回公演。

たくさん、3次元(たまに4次元もあったな)のヒョンジュンくんを見た。

印象に残ったことのひとつにヒョンジュンくんの輝くばかりの美しさがあった。

そしてもうひとつ、これは言葉だったんだけど・・・でも人というのはそれと同時に上がる階段があれば降りる準備もしないといけないですよね。でも僕はまだまだ若いのでそれからもっと上にのぼってそうなった後に降りる準備をしたいと思います

って、何だかこの言葉が耳に残ってて、で、まあ、記念にちょいと妄想の世界を構築しておこうと。

2人の気持ちをうまく出すにはどうしたらいいかと考えて、脚本風に仕上げてみましたわ。

ノリだけで書いたので、後ほど修正はしますが、とりあえずアップね。

美しい星

   

Momoko

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登場人物

キム・ヒョンジュン(23

ファンボ(28

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あらすじ

歌手ファンボ(28)とアイドルグループのリーダーキム・ヒョンジュン(23)はバラエティ番組「私たち結婚しました」に夫婦役で出演している。年上の妻と幼い新郎という組み合わせでぎこちなく始まった関係であったが、いつしかお互いに惹かれあう関係になる。しかし、ヒョンジュンのドラマが始まるために番組の継続は困難になる。済州島のお別れ旅行が最後の撮影になる。お互いに芸能人、ましてやヒョンジュンは23歳という若さでアイドル。最後の夜に2人は初めてお互いの思いを口にする。それぞれの思いと未来を語り合い、翌日の最後の撮影に臨む。

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○済州島のホテル()

部屋の前の庭、夕食シーンの撮影が終わった2人はそのまま向き合ってテーブルに座っている。スタッフは食事や次の撮影の準備のために周りには誰もいない。

飲んだワインでほおを赤らめ、ボ~っとしているファンボをチラッと見て、その目で周りのスタッフの様子を確かめる。決心したように話しかけるヒョンジュン。

ヒョンジュン「今夜は珍しく、飲んだんだね」

ファンボ「そうね、2人でお酒を飲むなんてもう最後だから飲んでみたわ」

ヒョンジュン「(うつむきながら)・・・うん」

下を向いたまま動かないヒョンジュンを愛おしそうに見つめるファンボ。

決心したように頭をあげ、ファンボの目を見るヒョンジュン。

見つめられたファンボは一瞬目をそらしそうになるが、ヒョンジュンの目を見返す。

ヒョンジュン「僕の気持ち、分かっているよね」

ファンボ「(微笑みながら)うん(首を縦にふる)」

    決心したように話し始める。

ファンボ「気が付かなかったと言って逃げることもできたけれど、ヒョンジュンの気持ちがよく分かっているから正直に答えるわ。ちゃんと分かっている。私もあなたのことをいつの間にか好きになってずっと見つめていたから」

ファンボ「(大きく微笑んで)ありがとう。私のことを好きになってくれて。いい思い出になるわ。私たちいい夫婦だったのね」

   キョトンとするヒョンジュン。

ファンボ「本当に最初はぎこちなくてどうしようかと思ったわ」

ヒョンジュン「僕が言いたいのはそういうことじゃなくて」

無理に浮かべた笑顔で早口にしゃべるファンボ。

ファンボ「でも、いつの間にか仲良くなったね。いっぱい話もしたし、楽しかったわ。日本にだって行ったし、遊園地も合コンも釜山も短い間だったけれど、思い出がいっぱいできたね」

   少し怒ったように割り込んで話すヒョンジュン。

ヒョンジュン「違うよ。ごまかさないで、僕の言いたいことがそんなことじゃないのは分かっているだろ」

   冷静に諭すように話すファンボ。

ファンボ「ヒョンジュン、あなたの気持ちはちゃんと分かっている。あなたが私を好きで、私もあなたが大好きだった」

ヒョンジュン「なんで過去形で話すんだよ」

ファンボ「もう過去にして、前に進まなきゃならないのよ、私たち。あなたにはあなたを大好きだというファンが大勢待っているし、ドラマだって始まるのよ」

ヒョンジュン「僕の好きだという気持ちはどうなるんだよ?」

ファンボ「ヒョンジュン、どうして6歳も年上の私があなたの相手役に起用されたと思う?こんな気持ちにあなたがならない為によ。でも、ごめんね。私が悪かったわ。私が気が付いた時点で気持ちを抑えれば良かったのに・・・ごめんね。そうすればあなたにこんなにつらい思いをさせなくて済んだのにね」

ヒョンジュン「僕のことを好きだと今、言ったじゃないか!」

ファンボ「ごめんね。私が悪いの。私の役目はあなたを守り、あなたを無事にファンの元に返すことだったのに。ほんとうにごめんなさい」

ヒョンジュン「謝って欲しい訳じゃない。それに僕はあなたに守られる存在なんかじゃない」

ファンボ「ヒョンジュン、分かってよ。あなたはまだ若いの。まだまだしなければならないことがあるでしょ。私なんかに拘っている時間は無いのよ」

ヒョンジュン「私なんかって言うなよ!あなたは僕の大事な人なんだ!僕が苦しくて、息もできいないくらい苦しい時に息をすることができるようにしてくれた人なんだよ。あなたがいなかったら僕はどうなっていたか分からない。・・・それなのに僕を見捨てるの?」

ファンボ「大丈夫よ、ヒョンジュン。あなたはここ数か月で強くなったわ。ちゃんとやっていける。それに私はあなたを嫌いになった訳じゃないのよ。あなたへの愛は変わらないわ。愛は簡単に消えるものじゃないのよ。もう会えないけれどあなたのことはずっと見守っていくわ」

ヒョンジュン「ねえ、僕が何もかも捨てるって言ったら?」

ファンボ「そんなことができないのはあなたがちゃんと分かっているでしょ。ファンや支えてくれている人たちを私たちは裏切ることはできないのよ」

   うつむいたままのヒョンジュン。

   しばらくして、厳しい顔をしたファンボの表情がふっと緩む。心を決めたように話し出す。

ファンボ「ヒョンジュン、私、時が経つのを待つわ。あなたが上る階段もいつか降りる時が来る。でも、今は降りる時じゃないし、あなたの上る階段はまだ目の前にあるわ。・・・いつかその階段を降りる時が来たら、私はそこで待っているわ。離れていても、会えなくても、私がどこかに行くわけでも、あなたがどこかに行くわけでもないのよ。私が待っているって約束したらちゃんと待っている人だって知っているでしょ。それがあればあなたは耐えられるでしょ。私を愛していると言うのなら耐えて頑張って。・・・さあ、残りの仕事をしよう、シンラン」

   黙って聞いていたヒョンジュンがまっすぐファンボを見て言う。

ヒョンジュン「僕だって本当は分かっていた。でも、僕の気持ちをちゃんと伝えたかったんだ。こんなにも好きになった気持ちを伝えなかったら一生後悔しそうだし、前に進むことができなかったと思うんだ。分かったから・・・(姿勢を正して)待たせるかもしれないけれど・・・僕が頑張って頑張って、その果てにあなたを求めたら、僕の気持ちに応えてください。その時には僕の立場だとかあなたの立場だとか何も考えないで僕とあなたの求める気持ちだけで返事をしてください」

4年後

   インターネットでヒョンジュンの日本のイベントの様子を見るファンボ。

ナレーション・ファンボの声「私が解き放った星があんなにも輝いている。この輝きは解き放たれたからこその輝き。私の愛した星は本当に美しい。この星を見るだけで私は幸せに生きていける」

End

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ショートストーリー「サンチュ・オリンピック」スンジョの日記風に

2012年06月20日 17時16分35秒 | サンチュのお話

なんだかフランスかイタリア料理のメニューのようだけど・・・大好きなスンジョの日記風に味付けしてみたのでご賞味ください。

最近、サンチュオリンピック編を観ていて思ったの。

これは別れの旅で、お互いの気持ちを確かめるという企画ではあるけれど、この時点ではさすがに2人の続行は決まっていたはず。

ここで別れなくてもいいと2人とも分かっていたはず。

私は最初、知らなかったので、2人の返事をドキドキしながら観ていたけれど・・・ってか、突然の別れの話に半泣き状態。

別れなかったと分かって観ても、今日は別れの選択をしないでいいと分かっている2人を観ても、やっぱり悲しい。

今日、別れなくても、別れがすぐそばに迫っているっていうのは、私も、サンチュの2人も分かっているから。

そんな気持ちをショートストーリーにしてみようと。

スンジョの日記風とは言っても、スンジョ=ヒョンジュンくんと言うことではなく、ヒョンジュンくん、ファンボさん、両方の気持ちね。

分かっているとは思いますが、あくまでもフィクションですよ。

では・・・「サンチュ・オリンピック」スンジョの日記風に

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【↑手をつないでいるの分かります?】

別れの旅なんてまっぴらだ!

破り捨てたミッション

思いもよらない戸惑いの中

何をしても

何を言っても

「別れ」につながってしまう

今日はまだ本当の別れの日じゃない

分かっていても

今 こんなにさびしい

今 こんなに辛い

本当の別れの痛みはどのくらいだろう?

それは耐えられる痛みだろうか?

試しに

自分を傷つけるために 別れのことばを言ってみた

自分の言葉が 思っていたよりもずっと痛い

なにより 相手が傷ついている

それはもっと自分を傷つける

「その時」には 耐えよう

相手の痛みが少しでも軽くなるように

いままでできなかったささやかな望み

手をつないで歩く 走る

何度も 何度も つないで 離して

つないで 離して

いままでそうしたいと願った回数以上手をつなごう

雨が降る中を走る

手をさしのべ

手をとって いっしょに

ふり払い 前へ

追いこし 前へ

ふり返り 顔をみる

お互いの 求める笑顔がそこに ある

そしてまた 手をさしのべる

雨の中のたわむれは

雨が好きな君にも

雨が嫌いな僕にも

9月の雨の中で永遠になる

ポッポは

する でもなく

される でもなく

もう 止められない気持ち

どうしようもなく大きくなった思いを伝えたい

別れのミッションを口実に

強く 強く この思いを相手に残しておきたい

そして

自分の胸に刻みつける

胸のいちばん奥底

だれにも邪魔されないように

時の流れに浸食されないように

今日から眠れるよ と 玉ねぎスープ

うれしいことに声をあげて笑い

悲しかったら 声をあげて泣く

欲しいものを求め

欲しいものだけを追っていく

眠って 起きて 遊ぶ

こどものようなこと 

眠るという単純なことさえ忘れていた 僕

君は 僕に もういちどそれをくれた

「愛しています」

自分自身よりも あなたを信じている

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「クッ!(終わり!)」サンチュカップルに贈る妄想小説

2012年05月26日 12時31分46秒 | サンチュのお話

とりあえずUPします。

ファンボさんの気持ちは理解できるような・・・できないような・・・別に理解しなくても書ければいいんだけど・・・とにかく書きにくくて。

だから、スピンオフのストーリーを入れてみましたが・・・自分でもどうしたいのやら・・・

まっ、どっちにしろ、修正します。

「クッ!」

ふとした瞬間にHJのことを思い出す。
朝起きた時とか、食事の時とか、本を読んでいる時とかの日常の中で思い出すこともあるし、出かけた旅行先の景色の中で思い出す時もある。
湯ぶねにつかっているようにゆったりと温かく彼のことを思う時もあるし、込み上げるものを予感して、その前に彼を胸の中に閉じ込めてしまうこともある。
あれから4年、それは私にとって日常に組み込まれた習慣のようなものになっている。
あぁ・・・習慣というのは感情を伴わない行動だそうだから、それを習慣と呼ぶのは少し違うのかもしれない。
感情はある。
ただ、その感情を説明するのは難しい。
いろいろな感情が混じりあい、揺れ動き、自分の感情なのにつかみきれない。
言えるのは、それは最初の頃は激しく原色を塗りたくった抽象画のようだったのに、今は・・・淡い色で、でもしっかりとした線で描かれた日本画のように静謐なものになりつつあるということ。

HJに対する感情・・・
好きと思えた感情は紛れもない気持ちだと言える。
本来、好きというのはシンプルな感情なのだろうけれど・・・
目の前に、それも何らかの感情を私にぶつけてくる相手がいて、その相手にも私にもその感情を抑えなければならないという制約があって、それに私は6歳も年上だっていうのもあって・・・
そんな場合、本来は素直な感情である好きは素直さを失い複雑な感情に変わる。

最初、私が考えていたのはウギョルでのサンチュカップルとしての2人の距離感のことだけだった。
ここでこんな言葉を言えば新婚らしいだろうとか、こんな行動をとれば新婚らしいだろうとか。
HJは最初は恥ずかしがっていたけれど、感情には素直だった。
海辺で握ってこられた手、それは彼の素直な感情だっただろうに、彼のファンのことが脳裏によぎり、私は思わず振りほどいてしまった。
2人の距離感を考えて仕事をしているはずだったのに・・・
私の作為、それも一貫性の無い作為とHJの素直さ。
彼はとまどったことだろう。
そのとまどいは私を迷わせた。
でも、HJはとまどいながらも私にまっすぐ向かってきた。
番組中に彼が言った言葉「ファン夫人の子犬になりたい」と。
その言葉通り彼は子犬のように、自分を愛してくれる対象として私に向かってじゃれついてくる。
そんな可愛い子犬を愛さないでいられる?
私は最初、この容姿の美しい、ちょっと変わった思考の持ち主だけれど素直な男の子を多分子犬を抱き上げるような気持ちで受け入れたんじゃないかなと思っている。
もう、その後にあったことで記憶があいまいになっているけれど。

それに気がついたのもどの時点からだったのか・・・今では・・・今でも、分からない。
HJが私に向ける眼差しや言葉が何か特別なような・・・
突然だったり、おずおずとだったり、私の手を取ったり肩を抱いたりする行為に何か思いが込められているような・・・
・・・それは・・・ひょっとして・・・私に対する好意?

ある時点からは以前にもましてあきらかに彼の好意を感じるようになり、彼の行動に男を感じた。
それは私の彼を思う気持ちが変わってきているせいなのだろうか・・・な?

彼のあの言葉は、あの行動は・・・ひょっとして私を好きってこと!?
まさかね。
私は6歳も年上よ。

ある日、気がついたら私の中はHJでいっぱいだった。
いつのまにかHJが私の中で飽和状態になり、それが溢れ出したようだ。
溢れてやっと気がついた感情。
そうなるまで気がつかなかった。

いえ、気がついていたものの正体が分からなかった。

いえ、気がついても否定していた。

・・・6歳も年下の男の子に私の気持ちが動くとは思っていなかったから・・・

この思いもよらない感情は恋なのだろうか?
仮想結婚という特殊環境が作り出した幻覚なのかもしれない・・・
けれど彼のことを思うと感じる胸の痛みは紛れもない過去の恋愛の時に感じたのと同じ痛みだ。

彼を好きになって、彼をみると・・・彼も私と同じ眼差しを私に向けているように感じる。
でも、まさかね。
私は彼のことを好きだけれど、恋愛対象として好きじゃない。
いえ、好きかもしれない。
認めよう、好きだ。
でも、この状況においてそれは私の中だけで完結するもの。
だって相手はHJだから。
6歳も年下で、人気のアイドル。
彼が私と同じ恋愛感情を持つ訳がない。

彼をみていると彼の望んでいることはすべて解る。
何をしたいのか、何を言いたいのか、何を食べたいのか。
彼の望むことはすべて叶えてあげたいと思う。
彼が望んだからウギョルの延長の仕事も受けた。
彼が望むから彼の差し伸べる手は拒まない。
彼が笑いたいと願っているからこの時を楽しく過ごす。
彼の望みは私の望みでもある。
彼の望みと、その望みを叶える行為は彼のファンや彼の将来には良くないことだと解っている。
でも、たった2週間ほどのことだから・・・すべては彼の望むままに。
ほんの少しの間だけ、私は大人の分別を捨てよう。
その後のことは、それを果たした後で考えればいい。

別れを意識し、彼だけを思って過ごした濃厚な時間は悲しくて突然涙がこぼれたりしたけれど、幸せな時間であったことには間違いないと思う。
その時だけは歳の差を忘れていた。
彼は私の愛するナムジャだった。
彼も・・・その時くらいは私のことを少しは特別なヨジャとして思ってくれたんじゃないかと思っている。
私の小さな願い・・・本当はすごく大きな願いだったのかもしれないけれど・・・最後に彼にハグをしてもらって、私は自分の気持ちに区切りをつけた。
彼への言葉の最後に「クッ!」(終わり)と告げた。
声に出して告げたのは彼にではなく私に。

「クッ!」

私の親しい友人たちが言うには・・・
もちろん私の気持ちなどはバレバレだったようだけれど、HJが私のことを好きだったって。
それも男として、私を。
最後まで過ごして、嫌われていないことはちゃんと分かってた。
それでいい。
私は彼のこと、男として好きだったけれど・・・やっぱり、彼は違うでしょ。
だって、私は6歳も年上よ。

まぁ、どっちにしてももう別れた人。
・・・って、別れるもなにも最初っからくっ付いてもいなかった。

その後の彼の行動はちゃんと見ている。
彼が頑張っている姿を見ると無性にうれしい。
彼が成功への階段を登っている姿を見るのは誇らしい。
そして、彼との思い出に繋がるものを探して喜んでいる自分がいる。

今、そういう形で彼は私の中にいる。
いえ、中じゃなく周りかな。
昔、彼が言っていた酸素・・・空気のような存在と言ったらいいのかな。
あの新婚旅行での約束はすべて仮想の中だけだと思っていたけれど・・・これだけは今も実行され続けている気がする。
彼という甘やかな空気の中で私は生きている。
それはとても心地いいもので、時にその空気が私を愛おしく見つめ、私を抱きしめてくれているように感じることまである。
それは今でも彼のことを好きだということなのだろうか?・・・

後書きに替えて・・・スピンオフストーリーもついでに読んでください。

今のところ題名は無しで。

そもそも、彼はなんなんだ?
やたらじゃれついてくる。
聞きもしないのに、自分のこと、自分の家族のことをペラペラしゃべる。
趣味は車って、あなたの趣味なんて興味ない。
自分の楽しかった子供時代の話もする。
そんな話をされたって、観たテレビ番組も聴いていた歌も全然違うじゃない。
時には仕事が辛いと泣きついてくる。
転職しようかと深刻な顔をして相談に来る。

何であなたがここに居るのよ!
大人の飲み会に!
あっ、ごめん、さすがに未成年じゃなかったよね。

現れないと安心していたら電話がかかってくる。
今、何してる?って、
何もできないわよ!
あなたの電話の相手をしていたら!

仕事が上手く進まない。
そんな時、手伝いますとすぐに飛んでくる。
上司に叱られた。
隣を見ると、私と一緒にうなだれている。
慰めなさいよ!

私に向かってくる彼をウザい奴だと思っていたのに・・・
あれっ?私、彼を見ている!?
ふざけて触れられた彼の手にドキッとする。

えっ!彼の飲んだコーヒーカップで私もコーヒーを飲んでいる。
それも彼がつけたであろう唇を意識して。
わぁ~、私って最悪。
彼、6歳も年下だよ!
あり得ない!

それにしても・・・
こうして見ると・・・彼、私のことばかり見ている。
う~~ん、なぜに?
ヤバい、また目が合った。

私の誕生日は、明日だ。
なぜか今日、やってきた彼が言う。
みんなより僕は1日早く渡したい、って。

わぁ~!!
何だか嫌な大きさで、嫌な形の箱。
・・・やっぱりね、指輪。
あの時、私のしているファッションリングのデザインが面白いからちょっと見せてって・・・
やられた。

自信たっぷりに私に指輪を渡した彼。
その自信はどこからくるの?
なんで分かるの?

好きな相手を真剣に見ていたら相手の気持ちくらい分かるさ、って。

なんで?なんで私?
6歳も年上だよ。

えっ!僕、最初に会った時から、この人好き!って思ったよ。

そんなの解らない。

好きに理由がいるの?
だから、一生懸命アタックしていたよ。
そっちには相手にされてなかったけどさ。
年なんか、そっちが気にしていただけでしょ。
そっちの気持ちが僕に向くまで何年もかかったけど、やっと僕の気持ちにも気づいたでしょ。
まぁ僕にはたっぷり時間があったから、焦らなかったし、いつも一緒に居られて楽しかったよ。
やっと、渡せた。

バカね。
受け取るけど・・・信じないわよ!
6歳も年上の女を好きになるなんてありえない。

・・・と、これは私のストーリー。

偶然知ったウギョルのサンチュカップル。
私と彼はお互いの気持ちを語りあえる関係になったけれど・・・彼らはどうなのかしら。
若い男の子って本当に無鉄砲に「好き」に向かってくるのね。

ねえ、ファンボさん、戸惑うよね。

解らないわよね。
私の時には分らなかったけれど、ヒョンジュンくんを観ていたら、私の時もそうだったんだな~って。
ファンボさんは6歳の年の差を気にしているでしょ。

気にするなっていう方がおかしいわよね。

私なんて指輪を渡されても信じなかったもん。
あなたも番組の中でさえあんなに一生懸命だったヒョンジュンくんの気持ちをひょっとしたら信じきれていない?

傍からはよく解るんだけどね~、やっぱ、自分のことだと解らないよね。

でも、ファンボさんの側からは見えないもの(見えていても信じられないもの)でもヒョンジュンくんの側からは見えてるわよ。
あんなに真剣にあなたを見つめていたヒョンジュンくんだもの。

ちゃんと解ってる。

あっ、でも、6歳も年下の男の子を思う複雑な心境は・・・私たちにしか解らないか。

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「美しい傷」サンチュカップルに贈る妄想小説第2弾

2012年05月23日 14時32分47秒 | サンチュのお話

私の妄想小説第2弾。

本当はファンボさんについて書きたいんだけど、筆が進まない状態になってるの。

今朝、たまたま観かけたヒョンジュンくんの最近の映像。

ふと目が行ったのが彼の右腕の傷跡。

1_2

まだ、残っていたのね、と。

ウギョルの時ははっきりと分かり、ジフの時も残っていた傷跡。

2_2

先日久しぶりに新婚旅行編を観たら、その傷がやけに生々しかったので新婚旅行の時にケガをしたのかしら?と思ってたの。

あっ!傷を題材に何か書けないかしら、と。

「花男」のOST「僕の頭が悪くて」の中にも「???? ????(アルムダウン サンチョガタ )」 「美しい傷のようで」という歌詞が出てくるし。

この傷、書く前にもう一度調べてみたけれど、ちょっと微妙。

新しい傷なのは間違いないけれど、新婚旅行中かどうかまでは分らなかった。

でも、ストーリーの中では新婚旅行中についたことに。

どうせ、妄想小説じゃん、ってことで。

「美しい傷」

僕の右腕に小さな傷跡がある。
鏡に映さなければ見えない位置にあるのでいつもは忘れているが、自分の写真とか映像を見ている時にたまに気づくことがある。
もう薄くなっているが、あの時の傷跡だとわかる。
僕の心にもこれくらいの傷跡がある。
もう薄いし、たまにしか気がつかないけれど・・・

でも、この傷がついた時のことはっきり覚えている。
「私たち結婚しました」の最初のロケの時だ。
あの日の僕は寝不足と、なにより憧れの人と一緒に仕事ができるということでちょっと変だった。
ものすごく嬉しいのに恥ずかしくて緊張していた。
要は注意力散漫状態だった。
揺れる船の上で何かに当たったらしい。
「あっ!」っと僕があげた声に彼女がすぐに反応して「大丈夫?」と聞いてきた。
「大丈夫です。ちょっと当たっただけです。なんともないです」とあわてて返事をした。
実際、痛みは感じなかった。
と言うより、「大丈夫?」と僕を見上げた彼女の顔が思ったより近くにあり、目が合ってしまったので痛みなんか分らなかったのだ。
後で見ると思ったよりもひどい傷だった。
彼女が「よく見るとたくさん傷跡があるし、ヒョンジュンはよくケガをするのね。これからは夫人としていつも絆創膏を持っておかなくっちゃね」と言った。

ちょっと傷をつくりたいなと思う僕がいた。
それからしばらくして僕の肘に小さな擦り傷ができた。
もちろん意図したことではないけれど。

さっそく彼女は用意した絆創膏を僕の肘に貼ってくれた。

僕の為に本当に用意してくれていたんだと、嬉しかった。
シャワーの時も気を付けていたけれど、数日後にそれがはがれてしまった時にはちょっと辛かった。

僕たちは急速に親しくなった。
と、僕は思っているんだけれど・・・彼女は気まずいとよく口にする。
でも、ちょっと恥ずかしそうな顔をしながら僕の目を見て話を聞いてくれる。
そして笑ってくれる。
僕、そんなに面白いことを言った!?
僕は彼女に笑ってほしくて一生懸命話をする。
今の僕は僕の人生の中で一番饒舌だ。
僕は彼女との仕事の日が待ち遠しい。
会って話をするのが楽しくてたまらない。

僕の気持ちはどんどん彼女に向かっている。
彼女に触れたい。
手をつなぎたい。
自分の気持ちを仕事だからということにして、彼女の腕をつかんでみるけれど、するりとかわされる。
彼女の肩に手を掛けたい。
僕の手はオズオズと彼女の肩にのる。
掌全体で彼女を感じたいけれど、最初は我慢だ。
そっと置く。

ウェディング撮影の日。
久しぶりだったので最初はちょっと恥ずかしくて気まずかった。

でも、彼女のウエディングドレス姿を見たとたん僕はヤバいと思った。
一瞬で全開になった好きという気持ちを抑えて今日一日仕事ができるのか?
僕の気持ちなど分らないカメラマンたち!どうしてくれるんだ!!!
ポッポの写真だって!?
さっきの撮影で何度も無意識に手をつなごうとした僕。
いったんつないだ手を握ったまま離さなかった僕。
僕の体は僕の理性より僕の感情のままに動き始めているのに・・・
ここでポッポなんかしたら、僕はどうなってしまうか分らない。
でも、ポッポは・・・たまらなくしたい。
この日、僕は自分の気持ちが怖かった。

急速に彼女に向かった気持ちが生まれて初めての感情だったから。
それまでだって彼女を好きだと思っていたのに、今日のこの気持ちは・・・
僕が今まで恋だと思っていたものは・・・そんなの恋じゃなかった。
今の僕の状態を恋に落ちたと言うんだろうな。

それからの僕は彼女に気持ちを伝えようと一生懸命だった。
嬉しそうにしている彼女をみると伝わっているんだろうと思うけれど、彼女の本音は分らない。

大きなドラマの仕事が入った。
それまでも寝る時間がないほど忙しかったので、さすがにウギョルの仕事は無理だと判断され降板することになった。
でも、彼女と今の状態で終わるのはどうしても嫌だった。
もっとやりたいこと、いや、しなければならない、言わなければならないことがある。
無理やり入れた仕事は本当にきつかった。
彼女も、弱音は見せない人だけれど、疲れ切っているのが分かる。
そんな中でも、僕が無理に望んだ仕事なのに自分が望んだ仕事だからと言い、頑張っている。
僕はと言えば、僕が望んだことなのに時々めげそうになる。
気持ちはあるけれど、体がもうついていかないのだ。
でも、彼女に申し訳ないという気持ちと彼女が頑張っているのに僕も負けられないと、そんな気持ちで仕事をこなした。
違うな、そんなのは小さな理由だ。
僕はただただ彼女と一緒に居たかったんだ。
話をしたいんだ。
触れあっていたいんだ。
それで僕は笑える。
今までで一番幸せに笑える。
僕はできるなら絆創膏のように彼女に貼りついていたかった。
すぐに剥がれるものだと知っていたけれど。

最後の2週間はお互いを思う気持ちが濃密に溢れている中、ほとんどの時間を一緒に過ごした。

その中でちゃんと理解していった。

この仕事が終われば大人の事情ってやつが待っていること、そして今の僕に彼女と一緒に歩む力が無いことも。
僕はもう自分のしたいことがあるからと家出した少年ではなかった。
でも、自分のしたいことを諦めるほどヤワじゃない。

僕は言葉にはできない約束を彼女にした。

こんなにも好きな気持ちは彼女にきっと伝わっていると信じて。
僕は僕に残る傷跡を「美しい傷」として残すつもりはない。
あいにく僕はジフじゃないもんでね。
僕は現世でもライオンになる。

王者になる。
そして、慎重に、かつ迅速に、僕は獲物を狙うように彼女に向かっていく。

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「セゲロ!」サンチュカップルに贈る妄想小説

2012年05月20日 12時06分43秒 | サンチュのお話

勢いで書いた初の短編小説。

勢いで載せちゃいますが・・・

ショックなことにダラダラと書いた言い訳じみた紹介文がバッサリと無くなっちゃった。

言い訳すんな!

って、ことでしょうか・・・

まっ、一応・・・

「私たち結婚しました」の最終回収録後から現在までのヒョンジュンくんの気持ちをつづってみましたわ。

「イタキス」の「スンジョの日記」をイメージして書いてみたの。

内容はウギョルファン、サンチュカップルファンでないと解らないと思います。

それ以外の方はここでお別れ~~

「セゲロ!」

僕は今、あの日のハルラ山で想像していた人生とはまったく違った人生を生きている。

こんなことになるとは夢にも思っていなかった。
あの時、彼女とは番組が終わっても、会う回数が少なくなるくらいだと軽く考えていた。
収録で涙をみせる彼女にそんなに泣かなくてもまた会えるんだから大丈夫だよと、
今までのように会えないのは僕も寂しいけれど、泣くほどのことはないさと、
思っていた。

「花より男子」の撮影が本格的に始まった。
演技を軽く考えていた訳ではないが、僕が想像していたよりももっといろいろなことを要求された。
僕にはそのすべてに応えるだけの力がまだ無かった。
キスひとつ、涙ひとつ、僕の意のままにはならないが、引き受けた以上は絶対に良い役者だと言われたい。
ジフになりきらなければだめだ。
気持ちだけが空回りする。
そんな状態で出かけた海外ロケ。
目の前の演技に気持ちを集中するだけの毎日。
演技へのストレスと寝る時間もないほどの過密スケジュール。
気がついたらベッドの上だった。
身体中が痛い。
ロケ中に倒れたのだ。
食事が合わないのと体調が悪いせいでろくに食べていなかったせいだ。
撮影はまだ残っている。
新人の僕に休むという選択はない。
とにかく起きて、食べて、撮影をしなければならない。
ホテルの配慮で食べやすい食事が出された。
それを無理やり口に入れた瞬間、あの時、彼女と作って2人で食べた参鶏湯を思い出した。
彼女を思い出したことで、彼女を忘れていたことに気がついた。
僕は彼女を忘れるくらい仕事をしていたようだ。
24時間365日待機していると言ってくれた彼女に電話をしたいと一瞬思ったが、今の僕にはそんな時間はない。
ちょっと辛くて泣きそうになったが、涙はお粥といっしょに飲み込んだ。

時々、ふとした瞬間に彼女を思い出してはいたが、ドラマのことで頭がいっぱいの僕に連絡する時間はなかった。
年末の番組にサンチュカップルとして出演することになった。

ウギョルの撮影で楽しかったことが浮かんできた。

会えることが無性にうれしい。
彼女と並んで話をしよう。

一緒に踊って、ギターの演奏もしよう。

久しぶりに会った彼女に僕はいつものように笑って挨拶をした。

彼女の笑顔と弾けるような「シンラン!」という声を期待していたのに・・・目を見開いて「大丈夫?」と。
僕がひどく痩せたのでビックリしたようだ。

朝、鏡を見た時、彼女が心配するだろうなとは思ったけれど、やっぱりな。

僕は大丈夫なのに・・・会えただけで元気になれる。
彼女に会えてうれしくて、楽しくてたまらない。

でも、以前のようにサンチュカップルとして並んでいられると思っていたのに、席は離されているし、彼女も硬い表情をしている。
僕のファンに刺激を与えない為だと言われた。
僕はドラマの撮影に入ってしまったので知らなかったけれど、サンチュカップルはかなりの反響だったようだ。
その為、僕たちのことを好ましく思ってくれる人も増えたが、アンチをかなり刺激したらしい。
もう最後だと僕が思いっきりスキンシップをしたのもいけなかったようだ。
僕は嬉しい顔をなるべく見せないように仕事をした。
久しぶりに会った彼女と並んで歩いたり、踊ったり・・・ほんの少し彼女に触れただけで、僕の皮膚は熱くなる。

近づくと匂ってくるいつもの香水の匂い。

僕の鼻はその中に潜む彼女だけの匂いをちゃんと嗅ぎ分けている。

僕は優秀な彼女の子犬のようだ。

僕を無視したようにあらぬ方向をじっと見ている彼女。

視線をたどっていくとTVモニター。

そこには小さな僕が居るのだろう。

僕はテレビカメラに向かって笑う。

あっ、でも、あの背中丸出しのドレスには本気で腹が立った。

怒った顔の僕は僕のファン的には良かったのかもしれない。

今日の僕はちょっと変な奴としてテレビの画面に映っただろうな。 

ドラマの放送が始まった。
最初は僕が思ったより視聴率は悪かったけれど、どんどん上がっていった。

番組は高評価のようだ。
僕への評価は・・・嬉しかったり、腹がたったり・・・でも、だんだんジフになっていっている実感はある。
少しだけ余裕が出てきた頃にバラエティ番組の出演の話が来た。
なんと彼女も出演するそうで・・・
僕は嬉しくなって、彼女に連絡した。
とうとう。
あれ以来、初めてだ。
・・・えっ!?
言われた言葉が理解できなかった。
「連絡はしないで」って。
「あなたはアイドルだから」って。
冷静な口調で、優しく諭すように言われた。

僕がどんなに言ってもダメだった。

ウギョルの撮影の時、夫人はしょうがないわね~と、いつも僕のいうことを聞いてくれたのに。

シンランには勝てないって言ってたじゃないか!

「私はもうファンボ・ヘジョンよ」と、言われた。

僕はファンボ・ヘジョンが好きなのに、ファンボ・ヘジョンに拒否された。
他の仕事はなんとか片付けていったが、彼女との仕事には行けなかった。
みんなに迷惑をかけるのは解っていたけれど、あの時の僕には無理だった。
まだ、考えの足りない子供だったのだと、今ではちゃんと分かる。
辛かったけれど、仕事の忙しさでそれを考えないようにすることにした。
いや、考えなければいけないが、仕事は考える時間を奪っていた。

「花男」は大成功で終わった。
終わった後も関連の仕事があり、新しい仕事も増えた。
やっている時にはよく解らなかったが、徐々に解ってきた。
ジフという役が僕に与えたもの。
とてつもなく大きな影響力を持つ僕という僕ではない僕。
僕はドラマをやった後、また元に戻るものだと思っていた。
SS501のメンバーとして歌って踊ってコンサートをして、時にはバラエティ番組に出て、その中で彼女との未来も考えていこうと思っていた。
誤算だった。
こんなに有名になってしまったこともだが、僕自身が役者という仕事に魅力を感じてしまったのだ。
そして、もう一つの大誤算。
彼女とはずっと続いていくはずだった。
僕は本気で好きになった人を離しはしない。
彼女も僕のことを本気で好きになってくれていると思っていた。
だから僕の好き丸出しのウギョルの延長の仕事を受けてくれたのだと。
でも、よくよく考えれば彼女はあそこで終わろうと決心していたんだな、と。
収録が終わりに近づいた頃、よく涙ぐんでいた。
スキンシップを避けてきた彼女が避けなくなった。
そしてハルラ山での大泣き。
僕の気持ちは解っているだろうに・・・
僕は彼女のことが好きだから、ずっと彼女を見てきた。
彼女も絶対僕のことが好きだ。
だから僕は彼女のことを諦めない。
離さない。
僕のことを思って、身を引いたつもりになっているんだろうけれど、僕はそんな愛し方を許さない。
でも、自分は年上で大人だと思っている彼女に僕が今、言葉で何を言っても無駄だろう。
確かに、今の僕は子供だから。
僕は大人になろう。
6歳も年上だと思っている彼女を追い越し、彼女の手をとろう。
僕は速く大人にならなければならない。
歌手でも役者でも多くの人に認められるように・・・
そう決心した。

その日がくるまで連絡はしない。
そう決心していても、気持ちが揺れてしまうこともある。
我慢できずに彼女の誕生日にメールを送った。
指が順番を覚えるくらい「好きだ」という文字を書いては消し書いては消し・・・普通にみえる言葉に少しの冗談を添えた。
届いた。
もちろん返事などなかったが、そのことが僕に勇気をくれた。
アドレスも電話番号も変わってはいない。
彼女はちゃんと受け止めてくれている。

僕は気がついた。
彼女から発せられるメッセージに。
一度気がついてしまえば・・・彼女のメッセージは僕への思いでいっぱいだ。
こんなにも溢れている。
僕も彼女に向けて曲を作ろう。
歌おう。
僕が辛かった時の歌。
僕が嬉しかった時の歌。
そして、僕が彼女にささげる歌。
未来への歌。
結婚の歌だって歌うさ。
彼女の返事はウエディングドレスの写真。

ウエディングドレスを着ているのに優しい目ではなく、強い意志が表れた目。

僕への激励!
大丈夫、待っていると。

強気の僕に強気の返事。

僕たちに普通の恋人たちような会話は無いがちゃんとお互いの考えていることは解る。

辛いときにはいたわりが、落ち込んだ時には励ましが、神からの言葉のように僕に届く。
僕たちを苦しめたインターネットの世界は今では僕たちの味方だ。
それに、僕たちにはちゃんとした生身の人間も味方にいる。
僕の心が折れそうな時「セゲロ!」と叫んでくれる人。
彼女と僕が幸せそうに笑っている写真をくれる人。
ピアスが、指輪が、ネックレスが、何故だか僕に届く。
そして、僕が彼女に身につけて欲しいと思ったものを彼女が何故だか身につけている。
それは僕たちの味方の応援だ。
かつてペアなんて恥ずかしいとTシャツを切り刻んだ僕だが、今は臆面もなくそれを身につける。
それを身につけていると彼女が傍に居るようだ。
生身の彼女を抱きしめる為にはまだ、もう少し僕は走らなければならない。

セゲロ!(世界へ!)
この言葉は彼女がくれたものだ。
終わりの日に、世界を目指せと僕に言ったのだと今ではそう思っている。
そこに立った時、僕は彼女を迎えに行く。
僕は彼女に合図を送る。
指を立て、腕を空に向かって上げる。
その様子は動画として、写真として、一瞬のうちに彼女に届く。
僕が少しだけ世界に近づいた証だ。

今日もコンサートだ。

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