駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ご相伴はどちら

2017年04月19日 | 診療

     

 午前中の診療が終わり、さて詰め所で昼ごはんと二階に上がろうとすると事務のMが「Tさんからこれ先生に」とどら焼きを一つ手渡してくれた。食後のデザートにしては大振りだなと思ったが、「自分の分も買ったんだろうな」と思わず口から出た。「そのようです」と観測結果が報告された。

 Tさんは六十後半のおばさんで2型糖尿病で通院している。小太りで食欲旺盛のところに、いつも口やかましく食べ過ぎないように指導している。HbA1cは7%を行ったり来たりで食生活を諸に反映する数値が出る。あんまり口やかましてもと思うが油断させないように、体重を測定してはご注意申し上げている。糖尿病は残念ながら先生に褒められた数値が出たからとケーキを奮発しにくい、因果な病気だ。しかしながら、小太りで甘いものが大好きな患者さんには難儀なことで、あれこれ理由を作って?ご相伴を図っているようだ。デパ地下は難所で街に出たついでに寄ると、いつもお世話になっているからとお土産次いでにご自分の分も確保されるようである。

 まあしかし、月に一度のことなら大目に見たい。日常生活とお付き合いの中に市井の医者は生きており、付かず離れずそこに居るのが仕事のようなものだ。かくゆう私も甘いものが好きで太りやすく、いかんなあと思いながら、頂いたからいいかと食べてしまっている。

 果たして糖尿病の専門医はどうなのだろう。十名ほど存じ上げているのだが、みんな太っておらず、食いしん坊でもない。三人女医さんが居るのだが、三人とも鶴のように痩せており、そのうちお二人は厳しい指導で有名だ。食いしん坊の気持を忖度することなく指導しておられるのであろうか。

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各々方、心の備えはよろしいか

2017年04月18日 | 町医者診言

             

 長谷川一夫の「おのおのがた・・」が耳に残っている人が、どれほどおられるだろうか?。

 凶器を手にした狂気を孕んだ独裁者と情緒不安定なミーファーストのリーダーが睨み合い、一触即発の危機が訪れている。これはある意味必然の結果だ。世の中には話し合いの通じない人が居るわけで、脅し合いになったら相手が毒針を持っていても負けるわけには行かない。幸い?軍事的には筋金入りが位置に着いているので、ペンス以下トランプ周辺の叡智に最善のアドバイスを期待するよりない。

 今一番重要なことは国民が冷静でいることだと思われる。具体的な準備はすべて整っている(はずだ)。外務防衛はそのために碌を食んできた。こうした時に安倍首相は最善には遠いがまずまずのリーダだと思う。トランプは?と思っても、選ぶことができないのも危機の特徴だ。一番怖いのは衆人のパニックと阿保の暴走だ。マスコミは針小棒大の報道をしないように、騒いでも何一つ良いことはない。

 果たして肝の据わった政治家はどこにと考えてしまう。

 「おのおのがた、変があっても落ち着いて行動するように」と言う長谷川一夫の声が聞こえる気がする。専門家ではないが、地震津波に対する備えと基本的には同じと思う。

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迫りくるAIの足音が聞こえる

2017年04月17日 | 世の中

                

 一昨日から上京し、東京国際フォーラムでの内科学会総会に出席してきた。土日合わせて七時間ほど教育講演やシンポジウムを聞いて、最新の情報を取り入れた。講義には慣れているはずの教授連中も晴れの舞台?で緊張か張り切り過ぎか、時間超過する人が多くやれやれと思った。それ以上に時間が押して質問時間がないのに、司会者の注意を振り切って延々と質問する非常識な人も居て、レッドカードを出したくなった。

 医療は長足の進歩を遂げてはいるが、万遍なくとは行かず、例えば同じがんと病名が付いても、遅々として予後が改善しないのから随分予後が改善したのまで様々なことを再確認した。そうなる理由の一つには疾患の細分化がある。中々第一線レベルではできないことで、役割分担してゆくよりなさそうだ。高額の抗がん剤の費用負担の質問が出たが、演者はそういうことは官僚の仕事というお返事だった。最先端の治療改善に心を砕いているのでそこまでの余裕はない。あるいはそうしたことは社会政府の問題と言う意識のようだった。

 中で、やはりやがてそうなるかと思ったのが人工知能AI導入の話題だ。分野により研究者によりかなりのばらつきはあるようだが、近い将来診療でAIが何らかの役割を担うようになる。演者は人間には大雑把なことしかできないと言われたが、まあそれが強みでもあるとやがて消えゆく老兵は心の中でつぶやいたことだ。

 しかし遺憾なことに、AIの分野では日本は米中の後塵をを浴びている。技術者でないおっさんやおばさんが日本の技術は凄いという妙な自信を持つのは改める必要がある。それは自信でなく過信で、手遅れや間違いにつながる。

 長い臨床経験があるとしても謙虚に本物の進歩には付いていかないと思いながら帰ってきた。

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森を見て木を見ない論調

2017年04月15日 | 医療

           

 今月号の文芸春秋に薬を使い過ぎ特集が載っている。確かにと思われるところもあるのだが、パンチに力が入り過ぎ空振りの所もある。勉強している医師の多くは薬を使い過ぎないように注意しているし、患者さんが薬を所望されて出す場合もある

 例えば私は風邪の八割に抗生物質を出していない。風邪はウイルスが原因といっても、そうでない場合もあるし、私のように経験を積んでもウイルスによるものかどうか判断が付かないこともある。それに後期高齢者の場合、細菌感染が重なって肺炎になる恐れもあり、迷ったら抗生剤を加えておくことはよくある。中には、どうしても抗生剤をくれというおばさんも居て、押し問答になる。ヒラメのように恨めしそうな眼付をされ、よくならなかったらどうしてくれると拗ねられると、負けてしまうことも多い。なんたって医療にはプラシーボ効果があるから、ほら効いたと言われてしまう。

 正直、四日程度不要の抗生剤を飲んだからといって何か不都合が個人に起きるということは稀と感じる(マスとしては耐性菌が増えて困る)。抗生剤を出さなかったためにこじれることはたまにあるという印象だ。これは個人的といっても数多い経験に基づいた結論だ。二十五、六年前は風邪の八割に抗生剤を出していた。今は二割程度だ。それで、風邪の経過が違ったかというと違わない。つまり抗生剤を出しても出さなくても変わらない。だから出す必要がないと、多くの人は思われるだろう。私もそう思うのだが、しかし一部には変わらないなら出しておいても悪くないと考えるお医者さんもおられるし、患者さんの中には抗生剤信者も結構いる。中には貰わないと損と思っている感じの患者さんもいる。そうした人達は医事新報も文芸春秋も読んでおられないだろう。

 スタチンにしても杓子定規に投与しているわけではない、特に女性の場合は慎重に見極めて開始しているつもりだ。薬品メーカーの影響が皆無ではないにしろ、学会の基準をよりどころにするしかないので、それを概ねフォロウしている。前線現場にいると患者個々の違いがあるので、自分の臨床経験に基づいた匙加減はしている。患者さんは千差万別、とても一筋縄ではゆかない。

 医学は科学だから少しづつ変化進歩してゆく。年をとっても患者を診る以上は最低限変化進歩に取り残されないようにしている。文芸春秋の筆者がどのような背景の方かは存じ上げないが、木を見ないで森を見ているところがあると感じた。勿論、趣旨は理解し、いくつか反省するところはあった。

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身体だけでない予防と早期発見

2017年04月14日 | 町医者診言

         

 三寒四温の温度は上がってきているが、まだ上がり下がりの波は続いており、今日は肌寒い。随分天気予報は当たるようになったが、気候変動を読むのはまだまだ難しいらしい。尤も、AIが実力を発揮しやすい分野のようで、世界の科学者が協力して十年二十年五十年先の気候変動予測に取り組んでもらいたい。

 中国の南沙諸島占拠やロシアのクリミア侵略を見ていると素朴になぜ現行犯なのに逮捕できないのだろうと思ってしまう。ここでもPOSTTRUTHというのかALTERNATIVE FACTSというのか、日本人の私から見れば屁理屈にしか聞こえないのだが、自分勝手?な言い分を持ち出して正当化が謀られている。正当化できなくても、白にちょいと黒を混ぜて灰色化すれば十分なようで、言い合いが成立し、訳が分からなくなればいいらしい。口は便利で何とでも言える。その点ではトランプ氏は引けを取らないわけで、金正恩まで巻き込んだ煙幕の張り合いで一転俄かに搔き曇り何だかきな臭くなっている。安倍首相は国内向けには煙幕が得意(最近家庭内事情で神通力が低下している)だが、国外ではどの程度の実力なのだろう。S、Y、Tの援護もなく、面舵を見透かされて選択範囲を狭められているのではと危惧する。

 医療では予防と早期発見が重症化を防ぐ一番の方法で、それは政治の世界にもある程度通じるのではと思う。阿呆がボタンを押すのを未然に防いでほしい。甘い考え?そんなことはない、予防と早期発見の大切さを我々は幾多の患者さんの命と引き換えに学んできて、心に刻んでいる。

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