駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

インフルエンザの瞬間診断法

2014年01月25日 | 小考

                       

 インフルエンザが流行し始めた。インフルエンザには診断キットがあるのだが、それよりも迅速簡便廉価な診断法がある。一目で付く診断法と言ってもこの方法は見るのではなく感じる診断法である。

 患者さんがどことなくしんどそうに診察室に入ってきて椅子に座って二三回咳をする。そうするとまるで電気ストーブが近づいてきたかのような微かな熱感を皮膚に感じる。身体全体から熱を発し、だるくつらそうだが受け答えはきちんとできる。言葉では表現しにくいのだが、私はインフルエンザに罹りましたと顔に書いてある。インフルエンザ流行期であればこれでほぼ間違いなくインフルエンザと診断できる。

 勿論、中にはさほど高熱でなく迷う症例もある。迷う症例では診断キットの陽性率は50%程度で境目の症例の診断は難しい。これは診断キットの正確さが100%と仮定した場合で、実際には検査時期、採取検体や個体差・・の問題があるので、診断キットの信頼性は100%ではない。症状所見が典型的でない境目症例や発症初期には見逃しも出てくる。

 先に書いた熱感感知診断できるような症例では90%以上の確率で診断キットも陽性なのだが、時には陰性の症例もあり、臨床診断と検査診断どちらを優先すべきか迷わされることもある。そうした場合は診察所見病歴を勘案して状況証拠で決めることになる。

 最も注意すべきは、あっまたインフルエンザかと発熱患者を病歴と所見をはっしょって診断してしまうことだ。二十人に一人くらい別の発熱疾患が紛れ込んでいる。これは教科書よりも、臨床医誰もが失敗から身にしみて学ぶ教訓だろう。診断にはいつも病歴所見検査の三つ揃いを忘れてはならない。

コメント
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