駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

本格小説を読む

2015年07月15日 | 

                   

 ほんまに梅雨明けとちゃうんかと聞きたくなる青空だ。私的に梅雨明け宣言をしておきたい。台風が降らせる雨は梅雨の雨とは違う。

 本格小説と言っても「本格小説」水村早苗著という題の小説のことなので、ちょっとややこしい。読んでみようかと手に取ったのは多和田葉子さんからの展開で、リービ英雄の「越境の声」を読んだからで、高齢者の私が読み終えることが出来たのだから大変面白い小説だった。出てくる春夏冬の三姉妹の感覚が母に似ていたせいか、女性の世界なのに非常に良く理解できた。

 小説としての評価は文壇で高いようなので、私ごときが評するのは滑稽かも知れないが、非常に文学的(古典的)だと感じた。人間の物語があり、それを時空を縦横に移動して巧みに語って行く、「本格小説」と題した意図というか気持ちもそこにあるだろう。尤も、この題名はちょっと素直に受け取れないところもあり、水村早苗という人がちょっと重たい女性的な女性なのだろうという想像が働く。文学的な女性というと妙な表現かも知れないが、科学と違い手の内は隠して対象は鋭く観察解読するという能力に長けた人だと思う。太刀打ちできる男は少なく、目利きの文芸評論家には高く評価されやすいと思う。

 お茶漬けではなく、洋風のフルコースを戴いた読後感であった。

コメント (2)
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