駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

「憲法の条件」を読む

2015年07月27日 | 

                       

 本の香りと手触りが好きな自分は電子書籍には無縁と思っていた。ところが先日、これ良いですよと娘婿がkindle paperwhiteを見せてくれ興味を持った。彼は流行を追う男なので、話半分に聞かなければならないのだが、五 日後には私もkindle paperwhiteを手にしていた。

 キンドルが本当に良いか私に役立つかはこれから使ってみてのことで不明だが、既に大きな福音をもたらした。試しにとダウンロードした「憲法を読む」NHK出版新書が私がこうしたことを論じた本はないだろうかと求めていた類い希な本だったからだ。社会学者の大沢真幸さんと憲法学者の木村草太さんの対論で日本の憲法を論じた本なのだが、そうなんだよ良く言ってくれたという勇気ある正鵠を射った発言に肯き、成る程そうかという明晰な説明分析に膝を打った。

 前半に出てくる大沢さんの言葉には自分があれこれ考えてきた社会現象や歴史的意味に明確な表現を与えて貰った気がしてすっきりしたのだが、敗戦を受け入れ兼ねている日本人の精神心理分析や不思議な実態のない国体についての断言にそこまで言って危険が危なくないのだろうかと心配にもなった。尤も、こうした学者の表現には反発は少ないのかも知れない。

 木村草太さんからは法というものの考え方ありかたを教えられた。唯、安倍総理は官僚と公明党の言い回しに乗せられ実のない名だけを手にしているという指摘は学者の見方で政治家の立ち回りに疎いと感じた。それにしても国会でもマスコミでも何と雑な議論が交わされてきたのだろう。やはり、本書は国民必読の書と思う。碌に読みもせず、すかした学者の空論という非難はあるだろうが、そうした皮相の拒絶の意味も解き明かしてある。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする