今朝は忘れ物をし、十分ばかり到着が遅れてしまった。空は入道雲こそないが、まっ青の青空で太陽がじりじりと照りつけていた。医院に着いた時には汗が湧き出ており、早速診察室の冷房を強風にして入れたことだ。
三十年以上前のことだが、その頃はまだMワクチンとかHワクチンに人気?があり、患者さんと家族の希望で使うことがあった。勿論、効果はなく数ヶ月で亡くなられたのだが、Hワクチンなどはわざわざ上京して診て貰いに行く患者さんも居られた。最初は歩いて最後は車椅子で行かれたのだが、やせ細って息も絶え絶えの患者さんに「随分良くなった」と対応されると聞いて驚いたのを憶えている。最後に行かれてから二週間ほどで亡くなり、死亡診断書を書いたのだが、家族の挨拶やお礼もなくあまり良い気持ちはしなかった。
どこまで本気でやせ細って弱っていかれる患者さんに良くなったと声を掛けたのかわからないが、ワクチン製造者は自分さえも欺いていたのかもしれない。患者さんも家族も希望して信じていたからそれで良かったのだろうか。多くの医療機関は無駄ですから止めましょうと争うこともなく、患者家族の希望を入れて対応していたと思う。
MワクチンやHワクチンは未熟で効果がない(延命効果は無いが緩和効果はあった)ので人気がなくなったようだが、癌治療に免疫を利用するという考え方自体は今も生きており、抗原を特定し科学的に癌腫病期などを考慮して使用され、一定の効果が示されている。
科学的というのは手の内を隠すことなくどこでも誰にも再現可能な方法で統計的な有効性を示しているということで、言葉巧みに信じ込ませるのとは違う。医学は科学なのだが100%というわけではない。それは多分人間が相手だからだと思う。