病診連携という言葉を一般の方がご存じかどうかよく知らないが、これは言葉通りに総合病院と診療所が互いに連携して患者を診ることを意味している。そんなのは当たり前じゃないかと思われた方は医者も人間なのをお忘れかもしれない。勿論、百年の昔から一部の医療機関では病診連携があったと思われるが、システムとして病院と診療所が役割分担をして上手に棲み分けるようになったのは高々この二十年余りのことだ。
五十年の昔は武見太郎がいみじくも三人に一人は欲張り村の村長と言ったように、医師であっても利潤が第一の傾向の方もおられ、必ずしも病態優先の診療ではない側面があった。しかし今は医療の進歩専門化と生活習慣病の管理在宅療養促進といった展開から病診連携は必須必然のものになっている。
病診連携には紹介状が付き物で、これが大きな鍵を握っている。一番良いのは顔見知り友人関係でのやり取りでお互いの個性や能力を知っていることであるが、一つの医療圏は大凡三百人対三百人という大人数の構成で、しかも病院側は人の動きが激しいので、顔見知り友人になれる数は限られている。紹介状が重要になる所以である。
紹介状は普通たかだか二回のやり取りなのだが、会話をしたような気持ちで理解できる紹介状が一番良いと思っている。こうした症状があって、(入院)精査が必要と思うという紹介状に、こうした病気が考えられ(入院)精査加療してみますという返事が直ぐ返ってくる。二三週間すると診断が付きこうした治療をしました、しばらく当方で診させて頂きますあるいは良くなりましたのでそちらで経過を診て下さいといった返事が返ってくる。そうでしたか、ありがとうございましたと返事をする。ごく当たり前の遣り取りなのだが、これが出来る医師は三人に二人程度で、五人に一人くらいこの先生にはもう紹介しないという不十分不確か不愉快な返事が舞い込んでくる。そう感じるのは私だけではないようで、しばしばそうした先生は早期に転勤してゆかれる。