駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

思いがけぬこと・・転倒

2015年07月04日 | 人生

           

 平凡なような人生にも思いがけぬ事がある。思いがけぬ事といっても、これは必ずあると申し上げてよく、希有な事と言う意味ではない。そして、残念ながらその多くというか殆どは良いことではなく悪いことなのだ。

 Tさんは82才の男性で未だ矍鑠として自力で通院してこられる。二年ほど前、家族がこの頃怒りっぽくなって困ると連れて来られた。認知の点数は境界値なのだが、周辺症状が出てきてしまったのだ。試しに漢方薬の抑肝散を投与したところ非常に良く効き穏やかになられた。家族に大変感謝され、本人も調子が良くなったようで七、八分の道のりを月に一度一人で歩いて来られるようになった。先日受診の際、何となく歩みがゆっくりでいつものようににっこりされないので、「どうかした」と聞いたところ、風呂場で転んで肋骨を二本ばかし折ったとのことである。それはいけませんねと申し上げながら更に話を聞くと、掴まった風呂場の手すりが抜けて転んだとのことである。なんということだ。まったく思いがけないことが起きる。「頭を打たなくて良かった」申し上げたことだ。

 トイレ(トイレへの道も含む)と風呂場は高齢者には危険地帯で、手すりを付けるようにアドバイスしているのだが、誰が工事したか手すりが抜けてはどうしようもない。癌が死因の第一位と騒がれているが、思わぬ伏兵が転倒事故で、高齢者には転倒が直接あるいは間接の原因で亡くなる方も多い。全く抜けるような手すりではどうしようもないが、転ばぬ先の用心は本当に大切と申し上げておきたい。

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