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新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

「ノルウェイの森」と「ノルウェーの森」

2010-12-12 10:31:09 | 映画

昨夜、話題の映画を観てきました。


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ノルウェイの森」です。


原作は、発表当時(1987年)に読みました。

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実家の書棚には単行本の初版がひっそりしているはずです。

Wikipediaによれば、「ノルウェイの森」の発行部数は、上下巻・単行本・文庫本を合わせて1000万部を超えているそうな。上下巻を別にカウントするのはどうかと思いますが、それを差し引いても凄い数字です。

当時、超特大ベストセラーの登場で、版元の講談社は大いに潤い、古色蒼然とした音羽の本社をツインビルに建て替えるなんて「」が流れてきました。しかも、ツインビルは、片方が赤いビルでもう片方が緑のビル、そして、ビルの呼び方は「上館」と「下館」・・・・ここまで来れば、明らかにネタですな


   


それはともかくも、映画「ノルウェイの森」、5つ星満点で、★★★といった印象でしょうか。


原作を読んでいない人にとってこの映画作品はかなり退屈ではなかろうかとか、なぜタイトルが「ノルウェイの森」なのか判らないのではないかとか、登場人物が次から次へと亡くなっていきひたすら陰鬱ではなかろうかとか、直子と緑との対比がボケているのではないかとか、、、。


私にとって村上春樹の作品は、現実離れしたシチュエーション、かなり個性的な登場人物、意表を突くウィットに富んだ台詞、ユニークな比喩、それらが醸し出す雰囲気、といったところが好きで(一番好きな作品は「羊をめぐる冒険」)、こうしたところからすれば、リアルな「ノルウェイの森」はちょっと異色な作品だと思っています(そうした作品が一番売れているというのはビミョーな気分です)。


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では、私が映画「ノルウェイの森」に期待していたものは何だったかというと、、、、正直、あまりありませんでした。大好きな作家と言っても良い村上春樹の、嫌いではない「ノルウェイの森」がどのように映像化されたのかを見たいといった程度のもの。

そんなあまりテンションの高くない私の期待を更に裏切る駄作ではなかった一方で、不明をわびさせるような傑作でもなかった、というのが「★★★」の評価の理由です。


映画の中にも、魅力的な会話(台詞)がちりばめられています。

例えば、


直子「思うんだけど人って、十八と十九の間を行ったり来たりすべきなのよ。
   十八が終わったら十九になって、十九が終わったら十八になるの。
   そしたら…、そしたら、色んなことがもっと楽になるのに」

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とか、


ワタナベ「孤独が好きな人間なんていないさ。無理に友達を作らないだけ。
   そんなことをしたってがっかりするだけだから」
緑 「もしあなたが自叙伝を書くことになったら、その台詞使えるわよ」
ワタナベ「からかってるの?」
緑 「私、あなたの喋り方すごく好きよ。私、緑っていうの」

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とか…。


でも、本ならば、読み返すまではいかなくても、なんどか視点が戻って反芻することができますが、映画ではそうは行きません(いくつかは公式サイトで見られますが…)。あっという間に埋もれてしまいます。


   

と、ここまで不満ばかりを書いてきましたけれど、画面から漂う1960年代末の雰囲気(私、実体験の記憶はほとんど無しですが…)は、とてつもなく良かった


ファッションも、騒然とした大学のキャンパスも、家の中の家具・家電・調度類も、レコードショップ(レコード針が並ぶ棚)も、40年以上前の日本はこうだったんだと納得させられるものになっていました。

モノだけでなく、ワタナベ松山ケンイチ)と永沢玉山鉄二)の二人は、全身から1960年代末を発散していました


1962年生まれのベトナム系フランス人トラン・アン・ユンが監督・脚本を担当した作品で、ここまで「1960年代末の日本」を写せるなんて、奇跡ではないかと思ってしまいます(スタッフさんたちにも拍手)。


トラン・アン・ユン監督と言えば、何度も画面に大きく映し出される登場人物たちのとか、これまた何度も登場する「家の外は雨」のシーンとか、かなり村上春樹を読んでいらっしゃるなと思いましたです。


   


ところで、冒頭、

なぜタイトルが「ノルウェイの森」なのか判らないのではないか

と書きました。


原作では、40歳間近の作家らしい「」を乗せたボーイング747ハンブルク空港に着陸し、その機内で流れてきたビートルズの「ノルウェーの森」を耳にした「僕」が過去に思いを馳せるシーンから始まっています。

映画には、原作の冒頭シーンは無いし、レイコさんがギターを弾きながらを歌うシーンが出てくるものの、公式サイトの「名場面集」で紹介されている「ノルウェイの森」をめぐる会話も、映画の公開版では無くなっているような気がします(見落とした?)。

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ここで気になるのは、この記事のタイトルにした「ノルウェイの森」と「ノルウェーの森」のこと。

村上春樹の小説は「ノルウェイの森」で、ビートルズの曲は「ノルウェーの森」(EMIの公式サイトをご参照方)。著作権を気をつかってのことでしょうか?

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EMIの公式サイトの中に、東芝EMIで、ビートルズの日本版ディレクターだった高嶋弘之さんの衝撃的なインタビュー(聞き手は放送作家の倉本美津留さん)が載っています。


高嶋 : 歌詞がすぐには来ないから、日本にいる外国人に聞き取りをしてもらうんですよ。それが間違えていることもあるから一応読みますけど、僕はいちいち辞書を引いて訳つけないんですよ。歌詞を自分の知ってる単語で適当に訳すんですよ。それから歌を聴いて、自分でひらめいたところでメインのタイトルをつける。後で振り返ってみてね、一番最悪だったのは、「ノルウェーの森」ですよ
倉本 : 「Norwegian Wood」ですよね。
高嶋 : あれ「ノルウェー製家具」ですよそんなもん知るかってことですよ。パッと聞いたら「ノルウェーの森」って、浮かんだんですよ。


そんないい加減な…
でも、タイトルの語感からしても、曲の感じからしても、「ノルウェーの森」がぴったりだと思います。


   

と、まぁ、例によってとりとめもなくなってきましたが、原作を読まずに映画「ノルウェイの森」を観た人の感想を知りたい私であります。

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
徒然煙草さま☆ (blues)
2010-12-13 07:18:20
徒然煙草さま☆

映画の感想ではないですが…。

僕の好きな作家はビリー・ホリデーの曲からタイトルをいただいていますが、間違えています(笑)

ノルウェー~ノルウェイのような気遣いではなく、ビリーがゴッドブレイスと歌っていると思い込んでの間違いだったようです(^_^;)

それが新人賞に輝き、デビュー作なんですから(笑)本人は居直るしかないと。。。
返信する
bluesさん (徒然煙草)
2010-12-13 07:44:35
bluesさん


花村萬月さんの「ゴッド・ブレイズ物語」ですな。


ちょっと調べてみました。
「ブレイズ」に近い単語は「braise=油で炒めてからトロ火で蒸し煮にする」になってしまいます。
っつうことは、
God braise the child.だと、「神よ、子らを蒸し煮にしたまえ!」と恐ろしいことに…[E:shock]
返信する
徒然煙草さま☆ (blues)
2010-12-13 08:19:44
徒然煙草さま☆

凄いですね(笑)

本当に徒然さんが知らないことなんてないんじゃないか!って思ってしまいますm(_ _)m
返信する
bluesさん (徒然煙草)
2010-12-13 21:22:08
bluesさん


>本当に徒然さんが知らないことなんてないんじゃないか!って思ってしまいます


そんなわけないですよ。
照れますがナ…[E:coldsweats01]
返信する
はじめまして (Sayaka)
2011-07-06 09:32:27
はじめまして

昨晩、DVDで「ノルウェイの森」を見ました。
原作を読まず、有名そうだから、というのでレンタルしたのですが
意味がわからず、退屈でした
(思い入れがなかったので、徒然煙草さんには失礼なのですが)

色々と疑問点が解消しました。
ありがとうございました。
こちらに記事をかきました。
http://mimi9sayaka.blog14.fc2.com/blog-entry-527.html

ところで、トップ記事(http://tabacco.blog.ocn.ne.jp/blog/2011/07/post_cc34.html)の電気の件、大変ですよね。
うちのところはまず、一度に皆が出勤しないようになってしまい、今日は私は休みです。でも15%カットで、その中で残り10%になったらエアコンを切る、と宣言されています。
しかも建物の構造上、窓を開けてはいけないらしく。

でも日曜は、前年比がだせないのと、規制の対象外だとことでした。
無事、皆が元気で夏を乗り切れることを祈っています。
また次の冬や、次の夏…。この問題が解消に向かうことを。
返信する
Sayakaさん (徒然煙草)
2011-07-06 18:39:43
Sayakaさん


ようこそいらっしゃいました[E:sign01]


「原作を読まずに映画『ノルウェイの森』を観た人の感想を知りたい私であります」なんて書きましたが、Sayakaさんのブログを拝見すると、私の危惧がかなりドンピシャだったようで…[E:catface]


やはり原作を読んでいなければ、なかなか入り込めない映画作品だったようですねぇ。ふむふむ…[E:think]


********


きょうの私は昼前から外出&直帰でしたので、「魔のエアコン停止」から脱出できました。
この土日出勤の際には、目一杯エアコンに働いていただいて、次の月~水曜日にはエアコンを使わなくても良いくらいにギンギンに事務所を冷やしてもらいたいものです。
これでもピークカットには貢献できますし…。

職場ではUSB接続や電池で動く「マイ扇風機」が増殖中で、私も注文してしまいました。
あとは、消毒用のアルコール・スプレーを持ち込もうかと…[E:coldsweats01]


お互い、無理しすぎず、電力危機を乗り切りましょう[E:sign03]
返信する
早々にご訪問、コメントありがとうございました。 (Sayaka)
2011-07-07 08:22:54
早々にご訪問、コメントありがとうございました。


「目一杯エアコンに働いていただいて、次の月~水曜日にはエアコンを使わなくても良いくらいにギンギンに事務所を冷やして…」
それは寒そうですね(^_^;)
でも、私のいる建物ではないのですが、数年前に工事をして
夜間に氷をつくっておき、昼間にそれで冷気を利用するエアコンシステムを
導入しているところがあるんです。
そこに夏だけ異動したい。


私はこの夏、通販生活で買った「クールスナップマフラー」という
水に濡らして首に巻くやつを職場で使っています。
でも、気づいたら、書類と接してしまい、紙がブヨブヨになりました(^_^;)
返信する

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