私、中学~高校の頃、ブラバンをやっていました。ブラバンはいわゆる「文化系」の部活に括られますが、実質的には「運動部系」と一緒で、毎日毎日、顧問の先生の罵詈雑言、なだめすかし、「よいしょ」、物理的攻撃などが入り交じった「指導」の下、ひたすら練習の連続です。
さて、昨夜、映画「セッション」を観てきました。
この作品は、公式サイトから転記しますと、
名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない〈完璧〉を求める狂気のレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。しかし…。
というもの。
監督・脚本は「弱冠28歳」のデイミアン・チャゼルで、チャゼル監督自身、高校時代にジャズ・バンドでドラムをやっていたものの「鬼コーチ」のスパルタ指導に耐えかねて挫折したという経験の持主だとか。
チャゼル監督が、そんな経験(トラウマ)を膨らませたのか、薄めたのか、そのままなのかは判りませんが、フレッチャー先生の指導たるや凄い っつうか 酷い っつうか怖い
フレッチャー先生の指導は、「のだめカンタービレ」(のだめも幼少期のスパルタレッスンがトラウマになってましたっけ…)の千秋の「口撃」とハリセンの「物理的攻撃」を強烈に強化したものに、陰湿さを加えた感じ。
学生を育てることと、自分が目指す音楽を作り上げること、自分の憂さをはらすこと、それらが渾然一体となったものがフレッチャー先生の指導なのかもしれません。
それにしても、まだまだ甘ちゃんの若造でしかないアンドリューに対して、あそこまでするか? (熱血指導のことではありません) ありゃ大人げなさすぎだと思いますゾ
はっきり言って、人間性にかなりの問題あり です。
この作品の原題は「WHIPLASH」。 「Whiplash」は、作品中に何度も演奏される曲のタイトルなのですが、一般名詞としては、
という意味です。なるほど…
「セッション」という邦題では甘すぎると思う一方、「ウィップラッシュ」じゃ意味が判らないし、曲名に掛けた意味合いが消えてしまうんだよなぁでも、まさか「愛と青春のスティック」なんてのでは、鳥肌が立ってしまう…邦題をつけるのは難しい作業なんですなぁ…
低予算(3億円)で、かつ短期間に制作されたこの作品、CGも大がかりなセットも使われていませんが、いや、だからこそ、観客が画面の中に感情移入していける気がします。
ちなみにこの作品は今年のアカデミー賞で5部門にノミネートされ、助演男優賞(J・K・シモンズ)、録音賞、編集賞を受賞しています。いやぁ~、凄かった、おっかなかった、J・K・シモンズの演技
難を言えば、テクニックの面からのみ音楽の高みを目指す話に終始してて、音楽って(特にジャズって)そんなものじゃないんじゃないの? と思いました。でも、一流の音楽(芸術全般がそうだと思う)は、ベースにテクニックがあってこそのものなわけで、仕方のないことなのかもしれません。とくにアンドリューの場合は音大の1年生ですし…
さはさりながら、久しぶりに手作り感にあふれた良い映画を観ました
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