きょうは朝から映画を観てきました。
「終戦のエンペラー」(原題名は「Emperor」、ただそれだけ)です。[以下、随所にネタバレがありますのでご注意
を
]
第二次世界大戦(太平洋戦争)で敗れた日本に連合国軍司令長官として君臨するマッカーサー元帥は、知日家の部下・フェラーズ准将に、日本が日米開戦を決定した経緯を調べること、もっと直接的に書けば、昭和天皇を戦争犯罪人として訴追する、あるいは訴追できない証拠を集めるよう指示。フェラーズは軍・政・宮のキーマンたちに面会し、話を聞くが、降伏を決定づけたのは昭和天皇の発言だったことは判ったものの、開戦を決定した過程や、その決定に昭和天皇がどのように関わったのかは、さっぱり判らない。結局、フェラーズ准将は「証拠はないが、昭和天皇を戦争犯罪人として訴追することは適切ではない」というレポートをマッカーサー元帥に提出した。マッカーサー元帥は、「証拠のない推論だけを頼りに、将来に大きな影響を及ぼす決断を下すことはできない。一度、天皇に会ってみよう」ということで、歴史的な会見が実現した…、というのが大まかなストーリーです。
かなり地味な展開ながら、私としてはまったく退屈することなく興味深く鑑賞することができました。
フェラーズ准将とそりが合わないリクター少将曰く、「君(フェラーズ准将)は元帥に利用されている。天皇を軍事裁判にかけないことはアメリカ国民を怒らせることになるだろう。元帥はその責任を君に押しつけ、自分は大統領選挙に出るつもりだ」。実際どうだったのか判りませんが(マッカーサーが大統領を目指していたのは確からしい)、そんな得体の知れない当時の日本の最高権力者・マッカーサー元帥を得体の知れない人物として演じていたのが、「宇宙人ジョーンズ」ことトミー・リー・ジョーンズ。
彼も良かったのですけれど、出色は日本側のキーマンを演じた役者たちの演技と風貌でした。
東条英機の火野正平(一言も発しないものの、「大丈夫か?」と声をかけたくなるほどのやつれ具合が…)、近衛文麿の中村雅俊(公爵然として講釈してました
)、木戸幸一の伊武雅刀(日本側の「得体の知れない人」の筆頭かも…
)、昭和天皇の片岡孝太郎(「人ならぬ人」のオーラが漂っていた
)、そして、関屋貞三郎(この作品のプロデューサー・奈良橋陽子さんの実の祖父
)の夏八木勲(この作品が遺作のひとつになってしまいました…
)。
鹿島少将(架空の人物)の西田敏行は「いつもの西田敏行」で、私として食傷気味…
この鹿島少将(公式サイトでは「鹿島大将」になっているけれど、階級章の桜は一つ=少将)の服装がかなり違和感たっぷりでした。自宅で「第一種軍装」だし、フェラーズと夕食
を摂るときには紋付き姿だし…。
違和感と言えば、「巣鴨プリズン」の収監者が薄汚れて、帽垂れ付きの略帽を被っているのは、外地の「捕虜収容所」みたいでなんか変だし、それよりもなによりも、「玉音放送」を聴く人たちが帽子をかぶっているのは絶対におかしい
と思う
それと、終戦前夜、皇居が反乱軍に占拠された事件(宮城事件)って、銃撃戦があったんでしたっけ?
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気になる細部もありましたが、良くできた映画だと思います。
中でも、フェラーズ准将の運転手 兼 通訳の高橋は、日本人のメンタルをよく現したキャラクターだったと思います。
東京大空襲で妻を失い、その哀しみはまだ癒されていないと言いながら、そんなことはおくびにも出さずにアメリカ軍人のフェラーズ准将に裏表無く仕える…。
この辺り、日本人なら理解できますが、この映画を観た外国人に理解できるのでしょうか?
少なくとも近隣二カ国の人たちにはまったく理解不能だろうな…
ところで、フェラーズ准将(Wikipedia日本版には載っていません)のことは、こちらのサイトに詳しく書かれています。
1945年8月30日、フェラーズは、戦勝国の総司令官マッカーサーの副官として日本に上陸する。まっさきに始めたのは、人捜しだった。岡本嗣郎『陛下をお救いなさいませ 河井道とボナー・フェラーズ』(ホーム社、2002年)に詳しく描かれたように、一色ゆりと河合道の消息を求め、9月23日には二人をアメリカ大使館敷地内の自宅に招待し、旧交をあたためる。戦災を免れた小泉家にも訪れて、食糧から就職の世話まで、さまざまな援助をした。
とあります。
公式HPの「プロダクションノート」に
奈良橋(プロデューサー)はフェラーズについて調査を始め、彼が書き残した記録の数々を読み進めるうちに、彼がしばしば、日本の“友人”を訪ねたと書き記していることに気付く。彼女は,そこにはきっと秘められたラブストーリーがあると感じた。証拠はないが、想像力を膨らませて物語を作り上げようと考えた。そうして生まれたのが、架空の登場人物“アヤ”である。彼女は美しい学校教師であり、フェラーズに日本の文化を伝えた人物である。そのことがフェラーズの日本に対する思いを大きく変え、その思いは戦争によって2人が引き裂かれようとも生涯変わることはなかった。
とある「日本の“友人”」というのが、一色ユリさんと河合道さんだったんですな
そして、一色ユリさんが「アヤ」のモデルってことか…
ということで、お薦め度は★★★☆ってところでした(満点:★★★★★)。
いや、★★★★でもいいかな…
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