和歌山毒入りカレー事件では、直接証拠がなかったため、警察も検察も林眞須美を自白に追い込む必要があった。
ところが、取調べに否認し、黙秘した。
警察の取調べは、毎日朝8時半から夜中の12時半までに及んだ。
窓のない狭い部屋で、常に3~4人の男に囲まれた。
机は蹴る、椅子は蹴飛ばす、怒鳴る、殴る、灰皿をぶつける、捜査書類で頭を殴る、机を押されて壁との間に体を挟まれる、食べ物の中に安全ピンを入れられる。
子どもたちの写真を見せられて、その写真で頭や腕を殴られる。
島田事件、赤堀事件、袴田事件などで警察は取調べで暴力を振いましたが、現在でも同じことが行われているわけです。
自白させることは無理だと考えた検察は、夫を抱きこむことにした。
離婚を勧め、離婚届を持ってきたが、サインをしなかった。
林眞須美は逮捕の三日前に流産していた。
検察は、愛人がいたと言って揺さぶりをかけた。
さらには、「眞須美が愛人と行ったモーテルの領収書だ」と言って、それらしき領収書を見せた。
「4人の子どものうち、2人はおまえの子じゃない」から始まり、カシミヤのコートを見せ、「これは眞須美が愛人に買ってもらったコートだ」と言う。
週刊誌も「眞須美が愛人の子を妊娠していた」と書いた。
夫の取調べ室には連日、寿司やウナギの出前が届いた。
取調べ室にカラオケが用意され、夫は検察と一緒に歌ったこともある。
検事は「眞須美は落とせん。どうにもならん。健治、頼むから眞須美にヒ素を飲まされたと書いてくれ」と白い紙を差し出した。
そして、八王子医療刑務所のパンフレットを見せながら、「言うとおりにしたら、八王子の医療刑務所に入れるよう手続きしてやる。ここで数年過ごすだけで出られるようにしてやるから、眞須美にヒ素を飲まされたと書いてくれ」と、検事が土下座したこともあった。
検察は、自宅で夫にヒ素入りくず湯を飲ませて殺そうとしたと主張し、裁判は林眞須美の犯行と認定した。
しかし、『もう逃げない』によると、実際はまったく違う。
1996年、祖母が急性白血病で亡くなり、保険金1億4000万円を受け取った。
車のローンの返済や居候していたマージャン仲間のIさんの借金返済などに使ったが、まだ1億円くらい余っていた。
ところが、父とIさんが競輪などに使ってしまい、金庫には300万円しかない。
母は激怒し、家から出て行けとどなると、父は「ワシが体張って億のカネ稼いだら文句ないやろ」とタンカを切り、ヒ素を飲んで高度障害保険金をだまし取ると宣言した。
耳かき1杯分のヒ素をコーヒーに混ぜて飲んで入院したが、症状が軽かったため医者から退院するように言われてしまう。
そこで母に家からヒ素を持ってくるよう命じ、少し多めのヒ素を抹茶片栗に混ぜて飲んだ。
すると、20日間以上も生死の境をさまよった。
これで1億5千万円の高度障害保険金を手に入れた。
保険金詐欺を行ううえで不可欠だったのが医師による診断書である。
父から金品を受け取って偽りの診断書を書いていた医者は5、6人いる。
両親は医者を1人ずつ家に呼んではもてなしていた。
カレー事件をきっかけに医者たちの不正も発覚したが、誰も罰を受けていない。
公判で検察は動機を、カレーづくりに参加しなかったことを主婦たちから問い詰められて激高し、カレー鍋にヒ素を入れたと主張した。
だが、母が午前中のカレーづくりに参加できなかったのは、糖尿病の検査の予約を入れていたからで、事前に参加できない旨も伝えてあった。
祭りの時間帯には家族でカラオケに行き、家族の誰もカレーを口にしなかった。
裁判所は激高説を退け、動機が不明のまま死刑判決を下した。
林健治は妻と共謀して1億6千万円の保険金を詐取したとして、懲役6年の判決を受ける。
最高裁の判決
①カレーに混入されたものと組成上の特徴を同じくする亜ヒ酸が林宅から発見された。
②被告人の頭髪から高濃度のヒ素が検出された。
③被告人のみがカレー鍋に亜ヒ酸を混入する機会を有しており、鍋の蓋を開けるなどの不審な挙動をしていたことが目撃されている。
よって、合理的な疑いを差し挟む余地のない。
しかし、河合潤は、カレーに混入されたヒ素と、林宅などから発見されたヒ素は同一ではない、頭髪鑑定ともども過誤があったと指摘している。
河合潤『鑑定不正』という本が出版されています。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/archives/001/202109/202109Kanteifusei_BookReview.pdf
住民の目撃証言は心許ない。
証拠はなく、自白もなく、動機も曖昧。
これで死刑判決を出したのですから、無罪推定の原則に反しています。
近所の子供がイタズラで白アリ駆除剤をカレー鍋の中に入れたのではないかと聞いたことがありますが、こちらのほうが真実らしく思えます。
以前、和歌山カレー事件の弁護人である安田好弘弁護士の講演を聞き、自白も物的証拠も動機もなく、状況証拠だけで死刑にしたのはおかしいと思ったものです。
田中ひかる『「毒婦」和歌山カレー事件20年目の真実』と和歌山カレー事件林眞須美死刑囚長男『もう逃げない』を読み、ますます冤罪ではないかという思いが強くなりました。
1998年7月25日に事件が発生。
事件の翌日、父はニュースを見ながら、「これは、あれやな、あの犬を殺ったヤツが犯人やな」と言った。
林家が引っ越してくる前に、この辺の飼い犬が何十匹か毒殺されたし、裏の畑に毒がまかれて1年間使われなかったこともあった。
当時、林家の収入源は保険の給付金だった。
保険金詐欺を繰り返しており、億単位の保険金を何度も受け取っていた。
8億円を詐取していたという。
父はいつもサングラスにステテコ姿だった。
昼夜を問わないマージャンの騒音は近所に迷惑をかけていた。
競輪で1日に2000万円をスッたことがあった。
母は人とうまくやろうとか、人からよく見られたいという気持ちはあまりなかった。
たしかに怪しそうな夫婦ですが、たまたま同じ団地に住んでいただけかもしれません。
死刑事件でたまたまというのは珍しくないようです。
三崎事件では、家出をした娘を探していて、親子3人が殺された食料品店近くで路上駐車していた荒井さんが逮捕され、死刑になりました。
名張毒葡萄酒事件は、たまたま亡くなった5人の中に妻と愛人がいた奥西さんが逮捕されました。
当初は集団食中毒と見なされた。
7月26日午前6時ごろ、患者たちの吐瀉物から青酸化合物を検出し、カレー皿からは結晶状態で見つかった。
ところが、事件から一週間以上経過した8月2日、警察は「カレーには青酸化合物だけでなく、ヒ素も混入されていた」と発表した。
いつの間にか、青酸化合物の混入は問題にされなくなった。
自治会役員やカレーライス担当の主婦たちの証言により、鍋にヒ素を混入する機会があったのは12時20分ごろから13時までの間に、カレー鍋のそばに一人でいた林眞須美しかいないと結論づけた。
しかし、祭りが始まる1時間ほど前の17時ごろからカレーを温め直しており、そのときにかき混ぜているので、毒物を「上部にふりかけた」のであれば、毒物が混入されたのはカレーライスを配る直前ということになる。
また、カレーを調理したガレージの持ち主は、事件直後テレビ局の取材に「1時から2時半の間に孫と友達(林家の次女)と3人で、2つのカレー鍋を味見したが、異常はなかったと証言している。
部外者が出入りしても不審がられない祭りの状況で、知らない人も出入りした。
時間の証言に裏付けがある人はまれで、時間の記憶にあいまいな部分がある。
犯行は「一瞬のすき」だったのではないか。
16歳の少年は、白のTシャツにクリーム色のズボンだったと証言。
ガレージの向かいに住んでいた女子高生は、髪は肩につく長さ、白いTシャツに黒っぽいズボン姿、首にタオルを巻いていたと語っている。
しかし、当時のニュース映像を見ると、髪はショートカットである。
一緒にいた主婦たちは警察官調書で「林さんは黒っぽい服を着ていた」と証言している。
ところが、公判で主婦たちは警察に誘導され、女子高生の証言に合わせて証言を変えた。
また、当初、女子高生は林眞須美の不審な行動を自宅1階の窓から目撃したと述べていたが、1階からは向かいのガレージの様子は見えない。
3か月ほどして、それは勘違いで、2階の寝室の窓から目撃したと証言を変えている。
しかし、2階からは2つあったカレー鍋の片方は見ることができるが、ヒ素が混入されていた鍋は見えない。
林家の台所の物入れに微量のヒ素が付着したプラスチック容器(「白アリ薬剤」と書かれてあった)が家宅捜査の4日目に発見された。
84人の捜査員が、1日目は約11時間、2日目は約8時間、3日目は約9時間、捜索したのに、この容器は見逃されていた。
事件発生後、林家では車庫のヒ素は処分したのに、なぜその容器を取っておいたのか。
検察は中井泉東京理科大教授が鑑定を依頼した。
この容器に付着していたヒ素と、青い紙コップに付着していたヒ素、カレー鍋に残留していたヒ素とが同一であるという鑑定結果が示された。
同一の工場で同一の原料を用いて同一の時期に製造した亜ヒ酸が希少なものであれば、林眞須美がヒ素を混入した可能性は極めて高いことになる。
しかし、実際には少なくとも50kg入りドラム缶60個分が出回っていた。
弁護団は河合潤京都大学教授にヒ素の鑑定書の解説を依頼した。
河合潤は鑑定書にいくつも問題点があることに気づき、独自に鑑定を行い、事件に使われたヒ素と、林家にあったヒ素は別物だという結論に達した。
紙コップに付着したヒ素は高純度(75%)だが、林家から見つかった容器のヒ素は不純物がたくさん混じっていた(49%)。
低濃度のヒ素が紙コップに移されることで高濃度になることはない。
河合潤さんはこのように語っています。
中井泉は河合潤に反論した。
しかし、裁判所は中井鑑定を重要な証拠として林眞須美を有罪としたのである。
中井泉はなぜこのような雑な鑑定を行なったのか。
自白しないため、検察は中井泉に「2週間で結果を出してほしい」と依頼したのである。
「和歌山毒物カレー事件の林真須美死刑囚、再審請求し受理される」(6月11日)というニュースがあってすぐ、6月9日に和歌山市内に住む少女(16歳)が心肺停止状態になって死亡し、少女の母と妹が関西国際空港連絡橋から飛び降りて亡くなったことが報道されました。
この女性が林眞須美死刑囚の長女だったことには驚きました。
というのが、その時、和歌山カレー事件林眞須美死刑囚長男『もう逃げない』を読んでいたからです。
今までどんな日々を過ごしてきたのかと思うと、言葉を失う思いがしました。
犯罪加害者の家族の置かれている状況については今までブログに書きました。
https://blog.goo.ne.jp/a1214/e/332e09bc1486207c007971f7c74c9403
https://blog.goo.ne.jp/a1214/e/bf66be4010127798e188a4f259f6132f
加害者家族支援をしている NPO法人World Open Heart理事長の阿部恭子さんは大勢から相談を寄せられるそうです。
http://www.worldopenheart.com/rules.html
家族が逮捕されると普通の生活ができなくなります。
・話し相手を失う。
・世間とのつき合いを失う。
・外出が困難になる。
・仕事を失う。
・自殺を考える。
・楽しいことや笑うことに罪悪感を抱く。
子供への影響が大きい。
・子供の進路変更を余儀なくされる。
・私立で学んでいた子供が学費の確保が困難になる。
・不登校になるケースが多い。
平野啓一郎『ある男』は、弁護士の城戸章良が死刑囚の子供を探すという小説です。
ある死刑囚は、幼少期は食事さえ満足に与えられないほどの貧困と、父親からの凄まじい暴力に苦しんだ。
十代から素行不良になり、高校を中退し、両親と絶縁して、一人暮らしを始めた。
結婚して息子が生まれたが、妻や子供に日常的に暴力を振るった。
ギャンブルで借金漬けとなり、連日、取り立てに追われた。
子供会で親しくなった家に金の無心に訪れるが、断られて激昂し、夫婦と子供を惨殺、金を奪って放火した。
そのうちに、他の子供たちとは違って、彼ばかりが、登下校時に、マスコミに事件について訊かれるようになる。死んだ友達のことだけでなく、必ず{お父さん}の様子を尋ねられる。最初から、どこか呆然としていた母親の表情をふしぎそうに見ていた姿を想像する。警察が訪れ、カメラマンが怒号を発しつつ押し合いへし合いする中で、父親が逮捕され、連行された朝の情景を思い描いてみる。・・・
かわいそうに、と城戸は心底感じた。成人後の原誠の背中を思った。掛ける言葉が見つからなかった。
加害者家族の置かれている状況を思いやる想像力が必要ですが、現実は違います。
『もう逃げない』を読み、林眞須美死刑囚の子供たちが理不尽な扱いを受けていることに驚きました。
両親が疑惑の夫婦として報道されると、親戚から、配偶者から離婚したいと言われた、子供が学校に行けないなどと電話があり、母親は泣いた。
両親が逮捕された4人は児童相談所に連れていかれる。
男子部屋に行くと、小中学生7~8人に殴られた。
両親の逮捕後、子供たちは何度も警察署へ連れて行かれ、刑事たちから話を聞かれた。
母がカレーにヒ素を入れたというストーリーと矛盾するようなことを言うと、「そうじゃないだろう!」と机をバンバン叩く。
怖くて言うことを変えると、つじつまが合わないとしてウソつき呼ばわりされた。
X学園という児童養護施設に入園する。
1人当たりの私物はロッカー1つ分と決められていた。
ランドセルや教科書、洗面用具など以外のものをどうやって入れたらいいか迷っていると、職員が勝手に荷物を仕分けして処分した。
間違ってスノコの上に土足で上がると、女性の先生はスネを蹴り、「カエルの子はカエルやな」と言った。
X学園では児相よりももっとひどい暴力にあった。
高校生たちから首を絞められたり、鉄アレイで頭を殴られたりした。
モデルガンで至近距離から額を撃たれ、弾が当たって前歯が折れた。
カレーライスに乾燥剤などを入れられ、うっかり食べて吐き気や腹痛に苦しんだ。
学園ではこづかいが与えられたが、小学生以下の子供たちは上級生に取られてしまう。
見て見ぬふりをした職員たちは日常的に暴力をふるっていた。
食事の集合時間に遅れた、食べるのが遅いと、理由をつけては子供たちをつねった。
つねる場所は服に隠れて痕が見えないところだった。
真冬に裸にされて水風呂に入れられたこともある。
裁判所で検事から話を聞かれ、1日6時間以上のこともあった。
長女が「裁判所に行きたくない」と言ったら、園長が「抵抗するならおまえら国賊だ。もっと厳しい学園に放り込んでしまうぞ」と怒鳴った。
もっと厳しい学園とはS学園で、職員が子供を叱る時、「S学園に入れてしまうぞ」という脅し文句を使った。
すべての児童養護施設がこんなわけではありませんが、職員による虐待は珍しくないようです。
「施設で受けた傷 路上生活22歳 「職員の暴力」訴え」
https://mainichi.jp/articles/20210819/ddm/013/040/019000c
長女が入学した高校は入学が決まった時点で保護者たちを集め、「今度、カレー事件の容疑者の子どもが入学してきますが、特別な目で見ないでください」と伝えた。
高校の正門の前でマスコミが待ち伏せしているので、長女は不登校になり、退学した。
長女は大阪で働き始めた。
父が刑務所を出所した時、大勢のマスコミが長男の高校や学園に押しかけた。
校長は「卒業させてやるから、もう学校に来なくていい」と言った。
レストランで働いていた時、店長に「林眞須美の息子なの?」と質問され、「そうです」と答えると、「うちは食べ物を扱ってる店だから、衛生的に問題があるんだよね」と言われて辞めた。
罪のない子供をどうして追い詰めるのでしょうか。
誰にも気持ちを吐き出せないということが、どれだけつらいことなのか。いまならぼくにもわかる。
大谷洋子「死刑廃止へ。カリフォルニアの経験」(「FORUM90 vol.169」)という講演録に、いかにお金や署名を集めるかの説明があり、興味深かったです。
大谷洋子さんはカリフォルニアのDeath Penalty Focus(DPF)という非営利団体に勤めている。
DPFの活動の一つが死刑に関する情報や問題を支援者や一般市民と共有すること。
・収入源について。
① 個人的な寄付
手紙やEメールなどでお願いする。
アメリカの生活の中には宗教があるのと、チャリティが当たり前という文化がある。
春先と冬、特にサンクスギビングやクリスマスのシーズンである冬場が一番大きい。
その時期は何十億という寄付金が国内で動く。
アメリカでは、寄付金は税金が免除になるので、年末に寄付をして、その年の課税額を少なくする。
② イベント
多くのNPOは年に1回から2回、ファンドレイザーという資金集めのパーティーをする。
死刑反対のために活動した人を表彰するパーティーで、チケットが1席3万~5万円、1テーブルで30万~100万円ぐらい。
前のほうの高い席だと250万円する。
プログラムに載せる広告は2万円から100万円。
チケットや広告で収入が2000万円、そこから食事代やホテル代を引いて1000万円ぐらいが入ってくる。
③ 財団からの寄付金
金持ちは税金対策のために、財団を作ってチャリティをする。
大企業や大きい法律事務所は年間何百万、何千万円という枠を設けている。
財団から寄付をしてもらうために、NPOは、こういう活動をしていて、これだけのお金が必要だという企画書を出さないといけない。
審査にパスすると、5万円から1億円、3億円という付与金が与えられる。
④ オンライン・オークション
ハリウッドの俳優に頼んで品物を寄付してもらい、オンラインのオークションにかける。
クリントン大統領と対談するというのは1000万円で落札。
グーグルのCEOとの対談は300万円で落とされた。
⑤ その他
プリズン・ロー・オフィスという団体は、受刑者から人権侵害だったり法律違反という苦情を訴える手紙が毎日300通ほどの来る。
勝算のあるケースや深刻なケースは弁護士が告訴し、最終的には和解金をもらう。
和解金だけで毎年約10億円から12億円の収入がある。
弁護士の時給がだいたい5万円から15万円なので、それで収入を得ている。
・州民投票のための死刑廃止キャンペーン
州民投票は4年に一度の大統領選挙の年にするのが一般的。
2016年はキャンペーンが17~18あり、死刑廃止はその一つ。
① リサーチ
州民投票を起こすためには準備段階が重要。
いろんなことを調べるためにプロのリサーチ会社に頼む。
たとえば、州民投票をするときに、どのような文言にすれば死刑反対にイエスとチェックしてくれるかに焦点が合わされる。
条件を変えたり、語順を変えたりして、いろんな質問をする。
最終的に投票用紙にどのような質問をするかを、コンサルタントと相談しながら決める。
最終的に有効な質問は、「死刑を廃止すると年間150億円が節約できる」といった、死刑にかかる費用を前面に押し出すことだった。
キャンペーンには莫大な費用がかかるので、まず支援者を見つけないといけない。
2016年には、スタンフォード大学の教授が1億円、ネットフリックスのCEOが1億円を約束してくれた。
文言が決まると、州の司法長官とそのチームが文言に間違いがないかなどの精査をする。
② 署名集め
次に署名集めをする。
前回の州知事が得た得票数の5%の署名を集めないといけない。
2016年は30万数千票だったが、2020年は62万票ぐらいの署名が必要。
署名集めはボランティアだけでなく、プロの署名活動家にもお願いする。
一署名あたり100円ぐらいしか出していなかったので、署名用紙が17から18あるキャンペーンのリストの最後のほうになってしまう。
一般の人たちは署名用紙の全部に署名はしない。
なるべく上のほうにしてもらうため、プロへの支払いがだんだん高くなり、最終的には1000円ぐらいになった。
結局、署名だけに3億何千万円も使った。
テレビ広告をもっと入れたかったが、30秒スポットでも1000万円から5000万円かかる。
・お金の必要性
どういうふうにしてお金を集めるか。
アメリカでは、政治関係のお金を誰かに寄付すると、それを全部報告しないといけない。
その報告はインターネットで見ることができるので、毎日チェックし、たとえば同性婚に賛成している人を全部書き出して、インターネットでさらに調べ、この人を知っている人を探し、プレゼンテーションをして寄付のお願いをする。
だいたい100万円ぐらいはくれる。
それで、2016年には11億円ぐらいを集めた。
しかし、死刑廃止の住民投票では勝てなかった。
敗因としては費用が足りなかったこと。
キャンペーンに勝つためには13億円から15億円は必要だと言われている。
州民の民意よりも、お金があれば政治を変えられる。
正義であっても、お金がないと変えられない。
以上ですが、寄付金の額の多さに驚きました。
毎日新聞の書評で、石澤靖治さんがハーラン・ウルマン『アメリカはなぜ戦争に負け続けたのか』をこのように紹介しています。
https://mainichi.jp/articles/20200202/ddm/015/070/001000c
大統領選も死刑廃止も結局は金次第ということです。
中川智正さんと何度も面会したアンソニー・トゥー氏は『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』に、中川智正さんのことをこのように評しています。
私もそう思います。
中川智正さんの俳句。
証人として出廷することになった。スーツを買うよう現金を差し入れて下さった方があった。
「無駄だね」と友に笑えど医書残り
今もなお医学書を手元に置いている。
中川智正さんだけではなく、林泰男さん、端本悟さんたちも、本人を知っている人の話だと、すごくいい人だそうです。
死刑囚に限らず、犯罪を犯した人のほとんどはごく普通の人だと思います。
だからといって、いい人だから処刑すべきではないということではありません。
犯罪を犯すに至ったのか、その背景を考えるべきだと思います。
オウム真理教の場合は神秘体験が大きいです。
多くの犯罪者は、貧困、虐待、障害、アルコールや薬物などの要因があります。
恐怖も背景の一つです。
2018年12月12日、大阪府警は、傷害や恐喝未遂などの疑いで半グレ集団「アビスグループ」のメンバーの10~30代の男女49人を逮捕・送検したと発表しました。
ナンバー2は「リーダーの指示にそむけば集団リンチに遭う。やるしかなかった」と供述しているそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASLDD535NLDDPTIL018.html
オウム真理教でも、地獄に落ちるという恐怖がありました。
また、教育も大きな要因です。
戦争において捕虜や民間人を拷問したり虐殺した兵士たちは、それはしてはいけないと教えられていたかどうか。
また、上官の命令には従わざるを得ませんでした。
麻原彰晃が最終解脱者であり、超能力を持っていると信じ込んでいる信者にとって、麻原彰晃の指示は絶対だったでしょう。
カエサルの言葉に「どんな悪い結果に終わったことでも、それがはじめられたそもそもの動機は、善意によるものであった」というものがあります。
麻原彰晃たちは救済のつもりだったのです。
また、夏目漱石『こゝろ』には「悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているのですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にある筈がありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです」とあります。
どんなにいい人であっても、さまざまな条件が組み合わされば何をするかわからない。
それが人間だと思います。
人間は、天使でも、獣でもない。そして、不幸なことには、天使のまねをしようとおもうと、獣になってしまう。 パスカル『パンセ』
なぜオウム真理教は事件を起こしたのか。
なぜオウム真理教は凶悪な宗教になったのか。
アンソニー・トゥー『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』は、お金の問題、そして麻原彰晃が絶対的な力を持っていたことをあげています。
麻原彰晃に絶対の服従を要求し、生活の規則も厳しかった。
どの団体でも活動するのに資金がいる。
オウム真理教の一番大きな資金源は、信者にすべての財産を寄付させることだった。
これに不満を持つ人、疑問を持つ人が出たので、そういう人たちを拷問、はては殺人までするようになった。
しかし、教祖が絶対者で、お金にうるさい宗教はいくらでもありますが、殺人まですることはありません。
では、なぜあんな事件が起きたのか。
藤田庄市「死刑大量執行の異常 宗教的動機を解明せぬまま」(「世界」2018年9月号)を参考にして私なりにまとめると、麻原彰晃の誇大妄想、そして神秘体験と被害妄想が大きいと思います。
自分は神によって選ばれたのだという誇大妄想。
その背景には麻原彰晃の神秘体験がある。
信者も神秘体験を経験して麻原彰晃を信じ、その指示に従うようになった。
麻原彰晃は国家権力を覆そうとして武装化に走り、通常兵器だけではなく、生物兵器や化学兵器を作ろうとした。
麻原彰晃は自分やオウム真理教がフリーメーソンなどによって毒ガス攻撃されているという被害妄想を持っていました。
1990年2月、衆議院選挙でオウム真理教は全員が落選した。
必ず当選すると信じていた麻原彰晃は当局による妨害があったと思い、4月、「マハーヤーナではなくヴァジラヤーナでゆく」と宣言。
広瀬健一さんはヴァジラヤーナについてこう書いています。
藤田庄市氏は、オウム真理教は神秘体験を重視したが、麻原彰晃は正式に師についてきちんとした修行をしていない、つまり師匠に教えを授かるという師資相承を受けていなかったことを指摘しています。
そのため、神秘体験が真実なものか、幻覚にすぎないかの判断ができていなかった。
1審で裁判官に名前を聞かれたとき、土谷正実は「私は麻原尊師の弟子です」と答えた。
トゥー氏はこのように書きます。
藤田庄市氏は「事件の底を流れる宗教的動機は無差別大量殺人による救済だった」と結論しています。
麻原彰晃も神秘体験の犠牲者と言えるかもしれません。
江川紹子さんはオウム真理教事件について、「個々の事件の動機、どういう方向に教団が進んでいたのか、という点もほぼ分かりました」と言っています。(2018年8月22日の対談、『年報死刑廃止2018』所収)
しかし、早川紀代秀さんはこのように書いています。
このまま刑が執行されたなら、〝正解〟は永遠に謎のままとなるでしょう。
ぜひとも、ご本人の意見を聞いてから、死にたいものです。
アンソニー・トゥー『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』にもこのように書かれています。
オウム真理教事件がなぜ起きた、麻原彰晃は何を考えていたのか、死刑執行によって事件の真相が明らかにならないまま闇に葬られたわけです。
麻原彰晃だけではありません。
菊地直子さんは都庁小包爆弾事件において原料をアジトに運んだが、それが何だったか知らなかったと主張。
中川智正んは菊地直子に対してむしろ有利に証言した。
ところが、井上嘉浩さんは菊地直子さんが運んだ中身が何であるか知っていたと証言している。
高橋克也さんの裁判でも井上嘉浩さんと中川智正さんの証言は正反対になっている。
そして、アンソニー・トゥー氏はこのように書いています。
井上は中川氏、遠藤をはじめ他の多くの信者の事件への関わりを重くしようとしたようだ。
誰の証言が正しいかということもわからないままになってしまいました。
リチャード・ダンジッグ元海軍省長官が中川智正さんや広瀬健一さんたちと面会し、テロについて聞いたと、『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』にあります。
ところが、日本では行政の人や専門家がオウム真理教事件の死刑囚に会ったとは寡聞にして知りません。
仮に日本人研究者からそうした要望があったとして、法務省や拘置所が許可を出すかは疑問です。
なぜアメリカからの要望には応じたのかと思います。
こうした事件を繰り返さないために、日本政府も研究者に依頼すべきでした。
だからといって、オウム真理教事件がなぜ起きたのか、死刑執行によって真相が闇に葬られた、だから執行すべきではなかったと言いたいわけではありません。
それだったら、真相が明らかになれば処刑してもかまわないということになります。
トゥー氏はこんな話を書いています。
そのとおりだと思います。
『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』に、「地下鉄サリン事件21年の集い」では、同じ死刑でも罪の大きさに不公平があるから、これを契機に是正する方法を考えるべきだという意見が出たとあります。
すると、「中国の死刑判決を参考にしろ」と誰かが言ったそうです。
中国では、すぐに執行される死刑判決と、2年の執行猶予がつく死刑判決がある。
後者の死刑判決では、執行するかどうかを、2年の執行猶予期間の犯人の悔悟の具合、服役中の態度を見て決める。
態度がよければ無期懲役に減刑される場合もある。
死刑廃止論者ではないという江川紹子氏も。死刑にも執行猶予をつけられるように、法改正すべきだと説いています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20181228-00109396/
中国の死刑制度は悪くないと思いました。
村上春樹氏はオウム真理教死刑囚の大量処刑について、「胸の中の鈍いおもり 事件終わっていない オウム13人死刑執行」を書いており、その中でこんな文章があります。
ただ、遺族感情というのはなかなかむずかしい問題だ。たとえば妻と子供を殺された夫が証言台に立って、「この犯人が憎くてたまらない。一度の死刑じゃ足りない。何度でも死刑にしてほしい」と涙ながらに訴えたとする。裁判員の判断はおそらく死刑判決の方向にいくらか傾くだろう。それに反して、同じ夫が「この犯人は自分の手で絞め殺してやりたいくらい憎い。憎くてたまらない。しかし私はもうこれ以上人が死ぬのを目にしたくはない。だから死刑判決は避けてほしい」と訴えたとすれば、裁判員はおそらく死刑判決ではない方向にいくらか傾くだろう。そのように「遺族感情」で一人の人間の命が左右されるというのは、果たして公正なことだろうか? 僕としてはその部分がどうしても割り切れないでいる。みなさんはどのようにお考えになるだろう?
https://mainichi.jp/articles/20180729/ddm/003/040/004000c
たしかにオウム真理教事件の判決は公正とはいえません。
アンソニー・トゥー『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』も不公平さを指摘しています。
山形明 VX事件の実行犯。被害者が死亡したが、自首して懲役20年。
林郁夫 地下鉄サリン事件実行犯で2人が死んでいる。教団で果たした役割も大きかった。逮捕されると、すぐに全部しゃべり、警察の罪状糾明に役に立ったので無期懲役。
中川智正氏の弁護士「林はたくさん警察に真実を述べたと言っているが、でたらめなこともしゃべっている」
ところが、自首した人、人を殺していない人が死刑になっています。
岡崎一明 田口事件と坂本弁護士一家殺人事件の実行犯の1人。自首したが、自首が遅すぎるという理由で死刑。
横山真人 地下鉄サリン事件実行犯だが、死者はいないのに死刑。
中川「林郁夫さんが極めて話すのが上手なのに対して、横山君はひどく口下手でした。横山君が林郁夫さんのようなコミュニケーション能力があれば、死刑にはならなかったかも知れません」
土谷正実 サリンを製造したが、何に使われるのか知らなかった。
中川「土谷君は、一連の事件の首謀者ではなく、しかも化学兵器の使用にも直接関わっていないのですが、死刑判決でした」
松本サリン事件では「何に使われるか知らなかった」ので殺人幇助罪とされたが、地下鉄サリン事件でも知らなかったのに、殺意があったとして殺人罪に問われて死刑になった。
井上嘉浩 謀議に加わったが殺人はしていない。
これら死刑になった人たちは、山形明・林郁夫の2人と比べて罪が重いのでしょうか。
村上春樹氏はこんなことも言っています。
裁判官や弁護士に当たり外れがあるわけですが、死刑かどうかが決まるわけですから、運不運ではすみません。
では、麻原彰晃だったら死刑にしてもいいのでしょうか。
地下鉄サリン事件当時、東京地検刑事部副部長だった神垣清水氏はこう語っています。
アンソニー・トゥー氏と高橋シズヱさんのやりとり。
高橋シズヱさん「いいえ、一番恨んでいるのは警察です」
トゥー「それはなぜですか」
高橋「坂本事件のときも、上九一色村の施設建設のときも、警察への訴えはみな無視された。もしあのとき警察が行動を起こしていたら、地下鉄事件も起こらず、主人がなくなることもなかったのです」
そうか、と思いました。
2018年1月25日、高橋克也さんの刑が確定し、オウム真理教事件の裁判が終結しました。
そして、半年後の7月6日と7月26日に13人の死刑囚が処刑されました。
逃亡していた高橋克也、平田信、菊地直子の3名が逮捕されるや、死刑執行までの具体的な日程が検討されたのだと私は思っていました。
というのも、2017年に再審請求中の死刑囚3人が死刑執行をされていますが、このことについて安田好弘弁護士が「昨年の3人の死刑執行は今年のオウム死刑執行を射程距離において、再審請求しているオウムの人たちを執行できるための地ならしとしか思えません」(「FORUM90」VOL.160)と語っているからです。
しかし、アンソニー・トゥー『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』によると、もっと早い時点で執行の準備がなされていたようです。
アンソニー・トゥー氏は1930年生まれ、毒性学および生物兵器・化学兵器の専門家です。
中川智正さんとは拘置所で15回ほど会っています。
2011年11月21日、遠藤誠一の死刑が確定した。
毎日新聞の記者から、法務省は13人のオウムの死刑囚の死刑を2012年の初めに執行する予定だったと聞いた。
そのため2012年3月に、東京拘置所にいる13人のオウムの死刑囚を絞首刑の設備がある7つの拘置所に移送する予定だった。
しかし、執行しようとしていた矢先、2011年12月31日、平田信が警察に自首したので、死刑執行ができなくなった。
共犯の裁判が終わるまでは死刑は執行できないからである。
トゥー氏の推測が正しければ、オウム真理教事件が審理されているころから、執行の日程が考えられていたのでしょう。
このように言い切るからには、トゥー氏には情報がどこかから入っていたのでしょう。
2018年1月、高橋克也は最高裁によって無期懲役が確定した。
トゥー氏は3月に訪日することにしていた。
中川氏はこう言った。
翌14日に中川は広島拘置所に移動した。
どうして中川智正さんは移送が近いことを知っていたのでしょうか。
トゥー氏によると、死刑囚は自分の将来や仲間の消息については案外詳しい。
弁護士を通じてほとんど誰とでもやり取りすることができる。
獄中ではパソコンは使えないので、書いたものを弁護士に渡し、弁護士がメールをする。
そして、他の人の弁護士が代理でタイプしたものが送られてくる。
このようにトゥー氏は書いています。
しかし、早川紀代秀さんはこのように書いています。
夕方の点検が終わってしばらくしたころ、ちょうどリンゴを食べようとしていたやさきに、突然数人が来られて「移送」と告げられ、即房内の荷物全部、ダンボール箱詰めです。入れ終わったものはすべて持って行かれ、後には、お茶もコップもなく、もちろんリンゴは食べそこねて、がらんとした房内で一夜をすごしました。
行き先を尋ねても教えてもらえなかったので、「ひょっとしたら明朝執行か??」と思いつつ寝ました。(『年報死刑廃止2018』)
死刑囚の弁護士だって、いつ移送されるかは知らないでしょうし、まして執行がいつあるかはわかりません。
安田好弘「13人死刑執行という大量虐殺」(『年報死刑廃止2018』)にこうあります。
当の処刑される人たちには、この段階でもまったく知らされていない、ましてや、家族に対しても、また再審弁護人に対しても知らされない。
それと、新実智光さんの妻のメッセージに、7月6日、面会に行ったが会わせてもらえなかった、執行されたと悟った、支援者に電話をすると、昨日の夜にアレフ支部にマスコミがきていたらしい、とあります。
法務省はマスコミにはそれとなく知らせているようです。
死刑囚本人やその家族たちには黙ったままなのに。
おかしな話です。
オウム真理教元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(63)ら教団元幹部7人の死刑が執行された6日、テレビ各局は朝から一斉に放送を臨時ニュースに切り替えた。同じ日に7人執行という過去にない展開を受け、テレビ局に入ってくる情報は刻々と変化。取材で得た執行状況をリアルタイムで伝えたり、死刑囚の顔写真に執行が済んだことを示すシールを貼ったりするなど異例の報道になった。SNS上では、違和感を訴える声も相次いだ。(略)
「執行が次々と始まっています」(フジテレビ)、「松本死刑囚以外に5人以上の死刑が執行される見通し」(日テレ)、「きょう松本死刑囚を含む7人の死刑を執行する予定であることが関係者への取材で分かりました」(NHK)。フジは「井上死刑囚の死刑執行」「早川死刑囚の死刑執行」などと情報が入るたびに、赤地に白抜きのテロップを次々に表示した。(朝日新聞7月6日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180706-00000143-asahi-soci
今までは執行が終わったあと、誰を執行したかを発表していました。
ですから、今回も7人がほぼ同じ時刻に執行されたのかと思ってましたら、そうではありませんでした。
麻原彰晃の執行がまず報道され、そのあと、次は誰それが執行されたと伝えています。
まるで選挙速報のように、誰それさんが当確、次はどなたでしょうか、と実況中継してたわけです。
http://健康法.jp/archives/41089
「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人の高橋シズヱさんは次のように語っています。
http://blogos.com/article/309260/
坂本堤弁護士のお母さん坂本ちよさんのコメントです。
https://www.asahi.com/articles/ASL764RXRL76UTIL02P.html
坂本都子さんのお父さん大山友之さん。
お母さんの大山やいさん。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180707-00000003-ibaraki-l08
被害者遺族は単純に死刑を喜んでいるわけではありません。
法務省や検察の人の中にも死刑廃止を考えている人はいるようです。
ある検察幹部は(略)「今回の執行が存廃論議をスタートさせるきっかけとなる可能性はある」と話した。(中国新聞7月7日)
大規模の死刑執行に、非人道的という批判もあったそうです。
欧州連合(EU)加盟28カ国とアイスランド、ノルウェー、スイスは6日、今回の死刑執行を受けて「被害者やその家族には心から同情し、テロは厳しく非難するが、いかなる状況でも死刑執行には強く反対する。死刑は非人道的、残酷で犯罪の抑止効果もない」などとする共同声明を発表した。そのうえで「同じ価値観を持つ日本には、引き続き死刑制度の廃止を求めていく」とした。(略)
今回の死刑執行を伝えた米CNNは、日本の死刑執行室の写真をウェブに掲載。「日本では弁護士や死刑囚の家族に知らせないまま、秘密裏に死刑が執行される」と指摘した。またロイター通信は、「主要7カ国(G7)で死刑制度があるのは日本と米国の2カ国だけだ」と指摘。
執行の前日の5日夜、安倍総理や上川法務大臣ら自民党国会議員50人が赤坂宿舎での「赤坂自民亭」に出席し、大いに盛り上がったそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180706-00000013-san-pol
執行が決まったのは3日前です。
いかに重罪を犯したとはいえ、7人もの人間を処刑することがわかっているわけですから、「懇談を楽しんだ」とは思えません。
http://健康法.jp/archives/41083
なぜこの時期に執行したのかと取り沙汰されています。
7月5日に水道法改正され、水道事業の運営権を民間に売却できることになったこと、あるいは私立大学研究ブランディング事業にからむ収賄容疑で文科省の局長が逮捕され、加計学園の2校が私立大学研究ブランディング事業に選ばれていたことが明らかにされたこと、そうしたことから国民の目をそらせるためじゃないかと邪推しております。