三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

オウム真理教事件死刑囚の死刑執行(1)

2018年12月03日 | 死刑

2018年1月25日、高橋克也さんの刑が確定し、オウム真理教事件の裁判が終結しました。
そして、半年後の7月6日と7月26日に13人の死刑囚が処刑されました。

逃亡していた高橋克也、平田信、菊地直子の3名が逮捕されるや、死刑執行までの具体的な日程が検討されたのだと私は思っていました。
というのも、2017年に再審請求中の死刑囚3人が死刑執行をされていますが、このことについて安田好弘弁護士が「昨年の3人の死刑執行は今年のオウム死刑執行を射程距離において、再審請求しているオウムの人たちを執行できるための地ならしとしか思えません」(「FORUM90」VOL.160)と語っているからです。

しかし、アンソニー・トゥー『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』によると、もっと早い時点で執行の準備がなされていたようです。
アンソニー・トゥー氏は1930年生まれ、毒性学および生物兵器・化学兵器の専門家です。
中川智正さんとは拘置所で15回ほど会っています。

2011年11月21日、遠藤誠一の死刑が確定した。
毎日新聞の記者から、法務省は13人のオウムの死刑囚の死刑を2012年の初めに執行する予定だったと聞いた。
そのため2012年3月に、東京拘置所にいる13人のオウムの死刑囚を絞首刑の設備がある7つの拘置所に移送する予定だった。

2012年の初めに中川氏は移転するのだとの通知を受け、荷物の整理を始めたとのことである。

しかし、執行しようとしていた矢先、2011年12月31日、平田信が警察に自首したので、死刑執行ができなくなった。
共犯の裁判が終わるまでは死刑は執行できないからである。

私見だが、司法当局は3人の逃走犯の裁判を早く決着させたいので裁判を簡単にしたのではないか。この3人の逃走犯の裁判が終わらないと、死刑が確定した13人のオウム幹部を処刑できないからである。


トゥー氏の推測が正しければ、オウム真理教事件が審理されているころから、執行の日程が考えられていたのでしょう。

オウム幹部の裁判は、本稿執筆中の2017年の時点でほとんど終わりに近づいてきた。逃亡犯3人の裁判も終了した。上告などでまだ完全には終わっていないが、これもまもなく終わると思う。そうなれば死刑が確定した13人の死刑が執行される。

このように言い切るからには、トゥー氏には情報がどこかから入っていたのでしょう。

2018年1月、高橋克也は最高裁によって無期懲役が確定した。
トゥー氏は3月に訪日することにしていた。

中川氏から「よそに移されたら、規則も違うから3月にお会いできないか」というメールを頂いた(中川智正さんから直接メールをもらったわけではない)。中川氏の頭の中にも死刑について真剣に考え始めたのだと思った。これが最後の面会かもしれないと思った。3月13日に東京拘置所で面会した。


中川氏はこう言った。

近日中に移されるかもしれません。勿論何時かとかはわかりませんが、近い内に起こるかもしれません。その時に備えて私は関連の書類を拘置所の倉庫から取り寄せて、自分の独房に置いています。移動の通知は朝の9時ごろに来て、すぐに移動ということになるらしいです。

翌14日に中川は広島拘置所に移動した。

どうして中川智正さんは移送が近いことを知っていたのでしょうか。
トゥー氏によると、死刑囚は自分の将来や仲間の消息については案外詳しい。
弁護士を通じてほとんど誰とでもやり取りすることができる。
獄中ではパソコンは使えないので、書いたものを弁護士に渡し、弁護士がメールをする。
そして、他の人の弁護士が代理でタイプしたものが送られてくる。

このようにトゥー氏は書いています。
しかし、早川紀代秀さんはこのように書いています。

この間の移送は、時期が時期だけに、てっきり執行かと思いました。
夕方の点検が終わってしばらくしたころ、ちょうどリンゴを食べようとしていたやさきに、突然数人が来られて「移送」と告げられ、即房内の荷物全部、ダンボール箱詰めです。入れ終わったものはすべて持って行かれ、後には、お茶もコップもなく、もちろんリンゴは食べそこねて、がらんとした房内で一夜をすごしました。
行き先を尋ねても教えてもらえなかったので、「ひょっとしたら明朝執行か??」と思いつつ寝ました。(『年報死刑廃止2018』)

死刑囚の弁護士だって、いつ移送されるかは知らないでしょうし、まして執行がいつあるかはわかりません。

安田好弘「13人死刑執行という大量虐殺」(『年報死刑廃止2018』)にこうあります。

(7月6日)午前7時頃の段階で、私のところに電話があり、どうも執行が今日行なわれるという話が入ってきました。これはあとから分かったのですが、前日の段階で被害者遺族の方に法務省から電話があった。そしてさらに別の被害者の方には、当日の朝6時過ぎ頃にに電話があったという話からこういう話がスタートしているわけです。(略)
当の処刑される人たちには、この段階でもまったく知らされていない、ましてや、家族に対しても、また再審弁護人に対しても知らされない。

それと、新実智光さんの妻のメッセージに、7月6日、面会に行ったが会わせてもらえなかった、執行されたと悟った、支援者に電話をすると、昨日の夜にアレフ支部にマスコミがきていたらしい、とあります。
法務省はマスコミにはそれとなく知らせているようです。
死刑囚本人やその家族たちには黙ったままなのに。
おかしな話です。

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