FXと暗号資産(Crypto)とゴールド(金)についての随想です。コメント欄は承認制になっています。
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さて、月に一度のLEAP/E2020の40号(英語版)が出ている。このプライベートシンクタンクは、ひじょうに急速な危機の到来を予測していたが、意外にドルもポンドもしぶといこともあり、このところやや2chなどでの注目度も落ちているようであるが、よく読むとやはり他にはない情報が多いのがこのレポートである。

今回の話題は、これからの展望・ドバイとギリシャのケーススタディ・2009年度の自己評価・投資指針ということになっているので順に述べていきたい。無料版の順番で、有料版の内容もやや織り交ぜつつ簡単に解説していく。

1 展望

2010年の春には、危機が新たな転換点に達する。西洋諸国の公的債務は手に負えない量に達する。同時に2009年の経済刺激策では足りなかった新たな経済の窮乏が明らかになり、それに対する対策が必要となるが、公的債務の増大によって新たな支出も不可能であることが明らかになる。公的債務の増大が社会保障システムへの支出ができない状態を引きおこし、中間所得層や退職者層がさらに窮乏化する。

同時に各種金融機関や公的機関の破産状態が増加し、金利の上昇と通貨から金への逃避を招く。ドルや米国債の減価により、各国中央銀行はその資産の一部を金に逃避するが、FRBはそれを公式には認めない。経済回復の見込みがなくなるため、2010年春は、ため込んできた20兆ドルの米ドルによる幽霊資産が各国の社会保障システムへと移動する(そして、それを破壊する)兆候が見られるだろう。

2 ドバイとギリシャ

(ドバイ)(銀行が「安全資産」と見なしていたものが本当は何であったかの明白な証拠)

ドバイは、それまで安全な資産と見なされていた。一部の問題はあっても、エミレーツ航空のようなよい企業もあり、不動産資産も問題なかった。ところが、ドバイワールドとナキールの債務繰り延べ問題がいったん発生すると、事態は一変して、ドバイの資産の価値は激減した。来年1月の、ブルジュ・ドバイ(世界最高の高さのタワービル)の開業式はまちがいなく、ドバイ神話の終わりを告げるものとなるだろう。そのタワーは、ドバイとその国際化の巨大な墓標となる。
現在、ドバイの債務を大量に持っている英国系の銀行は、ドバイの債務はアブダビの支援により問題ないと言っているが、数ヶ月後には、これらの銀行(HSBC、RBS、バークレイズ)はドバイの巨大な債務に直面することになるだろう。
これは一例であり、このようなタイプの「リスクのない資産」を銀行が大量に抱えていることが2010年には判明すると思われる。

(ギリシャ)(フランクフルトにとっては小さな問題であり、むしろ、米国・英国にとっての強い警告である)

これについては33号で述べた、2009年の3月の、東欧が非常な経済的問題を抱えており、それによって欧州が大きな危機を迎えるという広く報道された出来事との類似性を指摘できる。我々は、東欧危機については、まったく信頼性がないものであり、これは、ウォールストリート(アメリカ)とシティ(英国)による計画的なたくらみであると考えていた。つまり、EUにたいするいわれのない不安をあおり、欧州発の銀行危機というニセのストーリーを創作し、それによってアメリカや英国の適切な対策に対して欧州の対策は遅れているという形にユーロ圏をおとしめようという策略である。これによって米国と英国の真の経済の問題から目をそらさせることでG20における欧州の地位を低下させようとしていたのである。(このことはその後東欧問題が大きくならなかったことから証明された。)
 
今回のギリシャ問題もまったく同じ構図だ。ギリシャの債務は、欧州にとって過大評価されているだけでなく、実は本当は債務の問題は米国や英国のアキレス腱なのである。ギリシャの問題点は過去から明らかになっており、今後改善可能である。
ギリシャのGDPはユーロ圏の2.5パーセントに過ぎず、アメリカのGDPの12パーセントを占めるカリフォルニアの負債・デフォルトの方が、米ドルや米国経済にとっての問題であることは明らかだ。欧州諸国の問題点をとりあげる同じアナリストが、米国各州のひどい財務状況を問題にしないのもおかしい。ユーロ圏は世界最大の金資産を持ち、国家財政は黒字、貿易収支も黒字であり、国家財政も安定している。

ギリシャ等の格下げをおこなっている格付け会社は、ドバイの問題も見抜けなかったのであり、ちゃんとした格付け予測能力を持っていないことはあきらかだ。彼らはサブプライム問題も、リーマン・AIG・ドバイの破綻を予測できなかった。彼らは米国政府に従属した存在であり、今後の米国と英国に起きる重大な問題を指摘することは不可能である。

3 予測・評価等

このあと、債務増大により米国・英国に問題が生じること、昨年の自己評価は72パーセントだったこと、今後、特にポンドは避けること、商業用不動産が30パーセントから50パーセント下落することなどが述べられるが、時間の関係上省略する。

(レポート解説ここまで)
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以上、今回のレポートでもっとも力が入っていたのは、上に示したギリシャの問題である。もともとLAEP/E2020はフランスのシンクタンクであることもありユーロ圏の評価は甘いところがある。しかし、それを割り引いても、私には、このレポートの内容が述べていることは信じるに足りると考える。また、このレポートで言っていることが正しければ、それは私がずっと述べてきた現在のドル高のテーマが無理矢理構築されたものであり、その基礎は弱いということとまったく同一である。今日このレポートを読んでまさに我が意を得たりというところだ。前回の東欧危機のテーマと同じように、それほど遠くないうちに、この雇用統計以来のドル高テーマキャンペーンには限界が生じ、その反動の猛烈なドル安と金の暴騰が来る可能性をますます確信してきているのである。






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さて雇用統計以来のドル買いもかなりいいところまで来た。昨日はドルインデクスで78.5あたりまでいったようだ。金も当面の節の1080のところまで来ている。半月ほど前に12月末に1060目標と書いたがほぼ近いところまで来た。このドル高の基礎は弱いという見方から、自分がこのドル高相場に乗れていないのは困ったものだが、そろそろ反転に向けての心準備をしていきたい。いろいろな数値を見ると、国債利回りも、VIXも、リスク増大相場にはなりそうにないことを示している。となると、ここから予測されるのは、単純ドル安ではないだろうか。まだ市場にはまったくその気配がないが、何かのイベント発生によるドル安テーマへの移行を想定している。



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さて米国債の利回りが着実に上がってきているが、代表的な10年債の利回りインデクスのP&Fを示しておく。15日のところでダブルトップで上方ブレークしている。単なるダブルトップではなく、むしろ三角保ち合いからのブレークと解釈することもできる。いずれにせよ、水平計算してみると相当に高い利回りが上昇目標値となってくる。
 
米国債の利回り上昇は、国債が売れないということであるが、今回の場合は、米国回復期待であり、よい上昇だ。こういう場合は、利回り上昇はそのままドル円の上昇と平行することが過去の傾向から明らかになっている。ということで、ここでのダブルトップブレークは、さらに大きなドル円上昇がこの後あるのではないかということを推測させるものであり、ドル円ショートは要注意となってきている。また、ドル円上昇は、背後にドル高があると見るのが当然であり、この国債利回り上昇もドル高を示唆するものとなる。
 
ドル高材料ばかりでどうも具合が悪いのだが、とにかく公平に材料を見て判断しなくてはいけないので、あげておく次第である。

なお、ついでに書いておくと、米国期待に反して、欧州(ユーロ)が売られているわけだが、中国(株)も売られているようである。これも今までの逆パターンと見るとよいだろう。バルチックドライ指数が下げているが、これも中国の経済の減退予測が主たるものだと言われており、現在の相場が、
 
米国期待 VS. 欧州・中国不調
 
という形で構築されていることを示している。私見では、この形となる基礎はかなりあやふやであり、まだドル安が突然やってくる可能性があると考えている。とにかくここは待ってみたい。(普通はドル買いトレードがノーマルであろう。)


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