昨日の記事についてコメントでダンボさんから質問をいただいた。若林氏のように3月に米国の利上げがあると予測している人もいるが、どうなのか?ということである。これについては、ありうると考えている。昨日のエントリーでは「利上げは夢物語」と書いていたではないかと思われるかもしれないが、それが「テーマ」の持つもうひとつの側面だ。
「テーマ」は、別名「空気」ともいう。「空気」にはそれに反し難い力があるということは、山本七平(イザヤ・ベンダサン)の名著『空気の研究』(文春文庫・第二次大戦中の日本などを例にした「空気」についての政治学的研究)に詳述されている。かつて、日本が「大東亜共栄圏」という空気(テーマ)に突き動かされて、経済のファンダメンタルズを無視して、無謀な戦争につき進んでいったのは、今ならば、山本氏の指摘のように誰もがその無謀さを理解できることだ。しかし、その当時に、それに反する言動をしたものは、「空気読めない」わけで、それを当時は「KY」どころではなく「非国民」とまで言われたのである。それほどに、時代の「空気」というものは人を盲目にするし、恐ろしい力がある。悲惨な結果を招いた多くの戦争の背後にそのような時代・地域の「空気」があった。近いところの例では、9.11の後のアメリカの「空気」と、その後の中東戦争との関連を考えるとよくわかることと思う。
今回のアメリカの「ドル高」テーマも、経済回復指標・FRBの資産劣化・FRBへの議会の不信などいろいろな周辺諸条件があり、バーナンキが利上げ(その他の出口戦略)を実行しないと言えば、それが逆に「空気読めない」ことになってしまう可能性もある。ヘリコプター・ベン(空から紙幣を撒く)のあだ名を持つバーナンキが無理やり出口戦略(ヘリコプター停止)を行わせられることになるか、あるいは、彼が議会の圧力によって辞任させられるというようなことも十分にありうるだろう。そして、もし春に利上げがあれば、超ドル高、株・商品各種市場の崩壊につながるだろう。いずれにせよ、この「ドル高」テーマの行方については十分に考えておく必要があると思っている。それと合わせた中長期の相場予測についてはまた夜にでも時間があれば書いてみたい。
| Trackback ( )
|