カルロス・ゴーンの弁明が明らかになったが、為替的に面白いところがあったのでちょっと書いてみたい。彼の、主たる容疑の、トレードの損失を会社に付け替えたと報道されていた件だが、ゴーンの弁明によると、かなり様相が違う。(以下、朝日新聞の翻訳からの要約。文中「私」はゴーン。)
1 私は約20年前に日産に入って日本に赴任した際、米ドルでの報酬の支払いを要望しましたが、日本円で支払うという雇用契約を結ばされました。その時からずっと、米ドルに対する円の変動に懸念を抱いてきました。(中略)。そこで、2002年以降、為替スワップ契約を締結していました。私にかけられている容疑では、二つの為替スワップ契約が問題となっています。一つは06年に、もう一つは07年に締結したものでした。
2 08年から09年にかけての金融危機により、日産の株価は急落し、ドルの円に対する為替レートは80円以下にまで下がりました。誰も想像しなかった最悪の事態でした。私が為替スワップ契約を締結していた銀行は、契約上必要となる金額の担保を直ちに差し入れるように要求してきましたが、私自身では要求にこたえることができませんでした。
3 (退職して退職金を充ててスワップを継続しようかと思ったが、それでは責任を果たせないので)他の知人などから担保を用意するまでの間、日産に金銭的な損失を負わせない限りにおいて、一時的に担保を提供してもらうように要請しました。そして、しばらくして、上記の二つの為替スワップ契約の主体を再び私に戻しましたが、この間、日産に一切損害を与えておりません。
というのだ。これだけを聞くと、かなりゴーンの弁明は筋が通ったものに思うが皆様のご意見はどうだろうか?確かに、為替スワップの契約は私的なものかもしれないし、為替リスク回避は自分で行っていたものではあるが、本来、日産が行ってもいい性質のものであり、この手続き自体は、理屈は通っている。法律論は私にはわからないが、ゴーンが納得できないものを感じていることはよくわかった。高額の給与の外国人が日本での給与をドル建てか円建てかという問題は一般的なものであろうし、そのあたりももうすこし知りたいものである。
(追記)弁護士の説明が他にあったので、下に貼っておきます。日産は、スワップの担保の形式的提供だけで、具体的損益(この場合は、含み損)は、もとの契約者のものであったという説明ですね。公私混同には違いないですが、日産が一旦OKしたなら、合法のように思えます。(担保を借りた分の金利は純粋にもらったことになるでしょうが。)
大鶴弁護士は、為替スワップ契約の主体をゴーン前会長から日産へ変更した後も、差損は前会長が負担し、差益は前会長が得るということが、前会長・日産・銀行の「3者の合意で決められていた」と説明。合意がある以上「日産に損失を付け替えられるはずはない」と述べた。
| Trackback ( )
|