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ポルトガルの50曲

2024-02-23 16:30:07 | 世界の音楽
【ファドはポルトガルに打ち寄せる海の波の音】
ファドはポルトガルを代表する音楽として知られる。だが民謡と言ってよいかどうかは疑問がある。しかし現代の都市大衆歌謡と定義づけるにはいささか歴史が古すぎ、起源が定かでない。
ポルトガルの首都のリスボンに、アルファーマという地区がある。この貧しい一画がファドの故郷だと思い込んでいるポルトガル人は多いようだ。それにしてもファドはリスボンの内側から生まれて来たというよりも、15世紀このかた海外に広く船で出て行ったポルトガル人の流浪の暮らしを映し出す歌だと、誰しも認める。中には、遠い島に送られた囚人の望郷の念がファドに歌われたという人もいるが、囚人の歌が一般の人に共感され広まるものだろうか。
ファドを作ったのはポルトガルではなくブラジルだというのが、ブラジルの学者たちの間では定説だ。ポルトガル人はそれを認めたがらないが、大いにあり得ると思う。アレン・ダニエルーは、マレイ系文化の影響は無視できない、とし、ジャワやカンボディアやビルマの古典芸術がポルトガル音楽の影響のもとにファドと非常に近い音楽(クロンチョンなどを指す?)を生み出していると指摘する。ケルト人の影響を指摘する説さえある。
いずれにせよ、ファドはポルトガル人が海外進出の結果として異文化との出会いの中で生み出した混血音楽、と見てよかろう。
フアドはリスボンだけのものではない。この国の北のほうにあるコインブラという町は、1290年に創立されたヨーロッパ最古の大学を持つ歴史的な文化都市だが、この町の学生たちは、黒いマントを羽織り、ギターなどを弾きながら合唱して、石畳の道を練り歩く風習があった。その歌は恋人に捧げるセレナーデだ。それがコインブラのファド。従ってリスボンのファドが人生の苦しみを訴える調子をもつものが多いのに対しコインブラのファドは明るいラヴ・ソングで、テノールの男性が歌う。 ─(ミュージック・マガジン1994増刊『ミュージック・ガイドブック』より中村とうようの記述)



1) Amália Rodrigues / Uma casa portuguesa (1953)
2) António dos Santos / Partir é morrer um pouco (1961)
3) Alfredo Marceneiro / O Amor é água que corre (1961)
4) Adriano Correia de Oliveira / Trova do vento que passa (1963)
5) Amália Rodrigues / Estranha forma de vida (1964)
6) João Ferreira-Rosa / Embuçado (1965)
7) Maria Teresa de Noronha / Fado das horas (1966)
8) Carlos Paredes / Canção verdes anos (1967)
9) Quarteto 1111 / Todo o mundo e ninguém (1970)



10) Amália Rodrigues / Gaivota (1970)
不世出のファディスタ、アマーリアが49歳のときにリリースした名盤Com que voz。12の歌によりポルトガルの風景と人びとに命を吹き込み、ファドを刷新。



11) José Afonso / Grândola, vila morena (1971)
1933~74年と長期にわたったエスタード・ノヴォと呼ばれる独裁政権時代、音楽は比喩や象徴を通して自由・平等・民主主義について主張する手段として左翼レジスタンスによって広く利用された。 多くの作曲家や歌手が有名になり、政治警察によって迫害され、ホゼ・アフォンゾ、パウロ・デ・カルヴァーリョ、セルジオ・ゴディーニョ、ジョゼ・マリオ・ブランコ、マヌエル・フレイレ、ファウスト(グループ)など中には逮捕や追放された者もいる。 彼らの音楽はポルトガルの民俗要素と欧大陸におけるシンガーソングライターの伝統に基づき、「政治に介入・抗議する」意味からムジカ・ジ・インテルベンサオと総称されるように。

判事の父と小学校教師の母を持ち、アンゴラやマカオなど旧植民地滞在も経たホゼ・アフォンゾはポルトガルのルーツ・リバイバルを主導した、ムジカ・ジ・インテルベンサオの代表格。左翼的な活動のため教職の解雇や逮捕・懲役を経験。このGrândola, vila morenaは1974年のカーネーション革命においてクーデター勢力と国民を鼓舞するテーマとなる。82年に筋萎縮性側索硬化症を発症し、87年に57歳で死去。

12) José Mário Branco / Mudam-se os tempos, mudam-se as vontades (1971)
13) Sérgio Godinho / A noite passada (1972)
14) Paulo de Carvalho / E depois do adeus (1974)



15) Banda do Casaco / Morgadinha dos canibais (1976)
バンダ・ド・カサコは1974~84年に活動したフォーク・グループ。ポルトガルの民俗要素とプログレッシブ・ロックを融合し、社会批判を含む風刺的な歌詞と合せ現代の都市化とポルトガルの農村の歴史を交錯させるというユニークなアプローチ。

16) Carlos do Carmo / Lisboa, menina e moça (1976)
17) Fausto / Como um sonho acordado (1982)
18) António Variações / Canção de engate (1984)
19) GNR / Dunas (1985)



20) Rui Veloso / Porto Côvo (1986)
同国のロックの父と称されるルイ・ヴェローゾ。「政治的な要素がなくなり社会的な側面がポルトガルのポップスに入ってきた。ルイ・ヴェローゾで私たちは聴くのをやめポルトガルで作られた音楽を感じて踊り始めた」と評される。96年にホルヘ・パルマらとスーパーグループ「リオ・グランデ」に参加 (31)。

21) Mler Ife Dada / Zuvi Zeva Novi (1987)
22) Rádio Macau / O anzol (1987)
23) Sétima Legião / Por quem não esqueci (1989)



24) Madredeus / O pastor (1990)
25) Jorge Palma / Frágil (1991)
26) Resistência / Nasce selvagem (1991)
27) Mão Morta / Budapeste (1992)
28) Dulce Pontes / Canção do mar (1993)
29) Pedro Abrunhosa & Os Bandemónio / Tudo o que eu te dou (1994)
30) Quinta do Bill / A única das amantes (1996)
31) Rio Grande / Postal dos correios (1996)
32) Clã / Problema de expressão (1997)
33) Ornatos Violeta / Ouvi dizer (1999)
34) Mariza / Oiça lá ó Senhor Vinho (2001)



35) Sérgio Godinho / Lisboa que amanhece (with Caetano Veloso) (2003)
86年の曲をカエターノ・ヴェローゾとのデュエットにより再演。反ファシストの家庭に生まれたセルジオ・ゴディーニョは青年時代、独裁と兵役を避けるためジュネーブ・パリ・アムステルダム・バンクーバーなど世界各地で音楽・演劇・心理学などを学び創作を志す。革命成就後に帰国、ムジカ・ジ・インテルベンサオの系統で最も長期にわたって人気と名声を持続。

36) Humanos / Quero é viver (2004)



37) The Gift / Fácil de entender (2006)
38) B Fachada / Tempo para Cantar (2009)
39) Diabo na Cruz / Os loucos estão certos (2009)
40) Deolinda / Um contra o outro (2010)
41) Dead Combo / Esse olhar que era só teu (2011)
42) Carminho / Lágrimas do céu (2012)
43) Ana Moura / Desfado (2012)
44) António Zambujo / Pica do 7 (2015)
45) Capitão Fausto / Amanhã tou melhor (2016)



46) Bruno Pernadas / Anywhere in Spacetime (2016)
トータスやフアナ・モリーナといった一時「音響派」と呼ばれた系統の音作り、かつ日本の青葉市子のようにRate Your Musicで持ち上げられるタイプの作風。実力あると思うが1曲選ぶとなると決め手に欠ける。

47) Samuel Úria / É preciso que eu diminua (2016) 
48) Gaiteiros de Lisboa / Roncos do diabo (2017)
49) Salvador Sobral / Amar pelos dois (2017)
ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2017にポルトガル代表として参加、同国に初めての優勝をもたらす。甘口のポップスでポルトガル色は希薄。



50) Toy / Coração não tem idade (Vou beijar) (2017)
ピンバ(Pimba)と呼ばれるポルカやクンビアと似たアップテンポで、歌詞に性的な比喩の多い、90年代に人気沸騰した労働者階級向けジャンルにおける近年の代表的ヒット曲。


※番外(外すに忍びない曲とクラシック)
Bomtempo: Requiem à la mémoire de L. de Camoes, Op. 23 – Sanctus (1820)
António Calvário / Mocidade mocidade (1977)
Manuela Moura Guedes / Foram cardos, foram prosas (1981)
Lena d'Água / Demagogia (1982)
Rão Kyao / Fado bailado (1983)
Nuno Canavarro / Untitled (track 9) (1988)
Três Tristes Tigres / O mundo a meus pés (1993)
Expensive Soul / O amor é mágico (2010)
Ricardo Ribeiro / Fadinho Alentejano (2016)
Bernardo Sassetti / Simplemente Maria (2019)
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