マガジンひとり

自分なりの記録

成長を止める呪い

2023-07-07 19:33:59 | 亡国クロニクル
「俺ァ~ジンジラジンがええ~な!」
渡辺美智雄・衆院7期目・自由民主党中曽根派、の発言。近藤真彦は田原俊彦より6ヵ月遅れて1980年12月にレコードデビュー。各種賞レースでは翌81年に回る。大晦日に行われるTBSのレコード大賞に対し、TBS以外の民放各局持ち回りで11月に行われる歌謡大賞というのが当時あって、こちらは新人賞候補から表彰を受けた2組が自動的に大賞候補にもなる仕組みだったので、来賓の渡辺は新人賞の近藤が歌った「ギンギラギンにさりげなく」がお気に召したらしく、大賞は誰がいいと思いますかと問われてそう答えた。

別に、いま騒がれているようなジャニー喜多川の大規模な性犯罪の一環として、自社タレントを政財界要人の元へ売春斡旋し、渡辺の親分で翌年首相になる中曽根康弘が太客だったと噂されている関連でそう発言したわけではないと思う。この時点では喜多川の汚いやり口は未完成で、田原と近藤の大成功を糸口として長期にわたってシステム化されていったのだろうと思う。ただ何か、当時歌が下手だと叩かれた田原近藤に対し、既に立場を築いている人ほど彼らを庇うような発言・そぶりを示す傾向があったように思う。私が覚えているのは沢田研二・ビートたけし・竹宮惠子…。

魔夜峰央はパタリロの漫画に本人として出演し「ゆれてゆらゆら首の座らぬトシちゃん音頭~~わたしは元気の良いマッチの方が好きだ」と、2人をライバル関係とみて肩入れするファン心理に火を注いだ。後年さくらももこも『ちびまる子ちゃん』の時代設定を無視して光GENJI内海のことをまる子に喋らせているな。まあ少女漫画は客層がほぼミーハーに決まっている小中学生女子ということで、喜多川が田原近藤を売り出すにあたっても、田原には少女漫画の王子さま、近藤には少年漫画のピュアな不良のような役割分担させてリサーチ&マーケティングを図り、2人とも成功したけれども近藤の人気が上回る、この結果はたとえばやがて少女漫画の発展が頭打ちとなって90年代には少年漫画のホモパロディ、いわゆる「やおい・腐女子」が専業主婦の陰画のような存在として台頭してくる、ジェンダー事情の保守化と日本文化の退廃をテレビと漫画が共同で演出する、いわば共犯関係のようなものなので、先の竹宮や魔夜は一種の楽屋落ちとして本音を覗かせたに過ぎないのでは。いや客への媚びとか共犯とかご本人ですら意識していない、漫画雑誌やテレビを含む構造が生み出し、個々をそう導くものに違いない。すなわち日本のメディア・広告業界の前近代性と、経済発展から爛熟に至る大衆の欲望が出会う、時代精神に衝き動かされた権化的存在が喜多川や秋元康であり、タレントや番組スタッフや作家漫画家やコピーライターであったのだろう。



しばらく前からウォーレンバフェットが日本の商社の株を買い増し、いまや5大商社の平均8.5%を超える大株主になっているという。この「総合商社」という、あらゆる輸出入を扱う事業形態は日本独特なのだそうで、中国の王朝は昔から総合商社のように運営されてきたと聞いたことがあるが、それって政府の役割ってことじゃないですかね。わが国は公共を民営化して私物化する新自由主義の先進国で、円安のため国民は苦しみ商社や政府関係者は潤い、バフェットは商社の大株主になることで日本人の命を安く囲っている。

民営化の最たるものは中世から発達した「世間」だ。人びとが色と金の現実主義で協調し、監視・査定・選別・ときに排除の機能を持つ。武士階級にとっては分断支配に役立ち、農民漁民、とくに女たちにとって相互の「監視」は暮らしの安全保障にもなる。武士と農漁民、男と女がお気持ちお立場を分かち合って一枚岩となる世間の存在は、英国産業革命に伴う中流階級の形成よりはるかに先行しており、戦争と加工貿易の欧米帝国主義に日本がキャッチアップし繁栄するのに最大貢献した民活。

現代の私たちにとって分りやすい世間は「小中学校の女子」だ。社会性が強く、マジメで、団結して悪い男子を糾弾することも。しかし理想のためでなく基本エゴと現実なので、誰が誰を好きだとか、噂や陰口でクラスは騒然、一匹のメスに戻ってしまう。結婚できない男は蔑まれるが、女はもっと悲惨。「妹よ、おまえは器量が悪いのだから、俺はずいぶん心配したんだ」。兄の親友と結婚することに。狭い世間。近親相姦的で同類婚が多い。均質性の高さ、自分の考えのない集団主義は帝国主義の時代には強みにもなりえたろう。いまではマザコンかつロリコン、マザコンかつ男尊女卑、マザコンかつ同性愛(私?)、甘えと被害者意識、冷笑と差別、公私混同と無責任を大量生産。

本質を見極めることは自分との戦い。自分の考え・価値観が確立しなければ文化を生み出すことはできない。ジャニーズ事務所や秋元康、メディアや広告業界の前近代性とは、きのうやきょう始まった話でなく、遠い過去からの必然として日本が衰退する縮図を見せてくれた。私は近藤真彦と同学年。光GENJIが半裸で歌い踊るのをハァハァして見ていた。ジャニーズの問題は私の人生の問題でもある。喜多川は逃げ切って死んでいったが、関係者はみな決まりの悪い思いをしている筈だ。「一族の誰かを殺せば他の者が喜ぶ。皆殺しにする力はない。なので安倍を殺すことにした」「今さら洗脳を解くのはかわいそう。70の老人から生きるよすがを奪うべきでない」。世間の日本人は山上のお母さん。何かにすがり、守られていると信じる子どものまま滅んでいく。
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