Sakana no Sanaka

沖縄本島テキスト系ダイバーの一考察

不足の美(ノコギリダイ)

2019-10-01 12:43:02 | フエフキダイ科

台風18号は東シナ海を北上中ですが、沖縄島は強風域にも入ることなくこのまま去ってくれそうです。

さすがに海は凪というわけにはいきませんが、荒れ模様という感じでもなく…。

むしろ明日の方がうねりが少し強まるのではないか、とも思えたりしますが…。

陸上は台風感はなく、日差しタップリな感じ。

秋に鳴く蝉の声が、夏の蝉のそれを上回り始めてるこの頃です。

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時は15世紀の室町時代のこと。将軍足利義政がとても大事にしていた青磁茶碗にひび割れが生じてしまいました。この茶碗はもともと12世紀に平重盛が中国人から贈られたものでした。そこでこの茶碗を中国に送り、同じような茶碗を求めたところ、中国ではもうこのような優れた青磁茶碗はないとのことで、その茶碗のひび割れを鎹(かすがい)で止めて送り返してきました。

というようなことがあったのだとか。

しかし戻ってきた茶碗を目にした足利義政は、それが醜い姿だと感じたために職人に良い修復方法を探らせたのだそう。そして生まれた技法が『金継ぎ』あるいは『金繕い』と呼ばれる修復技法なのだとか。

これは割れや欠け、ひびなどの陶磁器の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法。

漆で破損部分を修復したという痕跡は縄文土器にも見られるそうですが、それに室町時代以降の蒔絵の工芸技術が加わり、さらには茶道精神の普及により、金継ぎに芸術的な価値が見いだされるようになったのだそう。

室町時代、お茶の世界では器の金継ぎをした箇所のことを『景色』と呼んで、愛でて楽しんだのだとか。『景色』とは、鑑賞の対象としての自然界の眺めという意味ですから、破損そのものを、人知を越えた自然現象による芸術作品と捉えたのかもしれませんね。

そして金継ぎには、『わび・さび(侘・寂)』という『不足の美』を愛でる日本文化が根底にあるのだそうです。

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さて…

〈フエフキダイ科ノコギリダイ属ノコギリダイ Gnathodentex aureolineatus 19年8月7日 沖縄島安和グスク〉

学名種小名は『金色の線条のある』の意。

体側に数条の鮮黄色縦帯を纏っています。

 

コメント
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