Sakana no Sanaka

沖縄本島テキスト系ダイバーの一考察

ふりふられ(フリソデエビ)

2020-08-25 10:49:56 | エビ・カニ類

台風8号は非常に足が遅く、沖縄島に最接近してから24時間くらい経過してるはずなのですがまだ強風域に入っています。

当然ですが風は強く、波も高い状態。

まあ、ゆっくりですが遠ざかっていることに間違いはないので、天候も海況もこれ以上悪くなることはないのですが。

回復には時間がかかりそうな気もしますけど…。

風は強い南~南西。曇。

■■

好きな子に告白して振られる。

告白されたけど振った。

恋愛において好きだと告げたり告げられたりしたときに、断ること、断られることを『振る、振られる』と表現しますよね。

何を振ったり振られたりするのでしょうか。これ、実は振袖なのだとか。

江戸時代前期の踊り子たちは着物の袖で、『振って愛情を示す』、『すがって哀れみを請う』ということを表現していたのだそう。

これを当時の未婚女性たちが真似をして流行し、振袖は未婚女性の着物という習慣が定着していったよう。そして男性からのアプローチに対して、『イエスの場合は袖を左右に振る』、『ノーの場合は袖を前後に振る』という感じで意思表示をしていたのだとか。

つまりその昔は、告白に対してイエスでもノーでも振っていたわけですね。

振袖の原型は飛鳥時代には存在していて、若い女性だけではなく子供や元服前の男性も着用していたのだそう。

現代は未婚女性の第一礼装として、卒業式や結婚式、そして成人式の定番衣装になっていますよね。

また振袖を振るという行為には、呪術的な意味、つまり厄払いの意味もあるのだとか。

これは『魂振り(たまふり)』と呼ばれるもので、空気を揺らすことによって神様を呼び起こしたり、魂を奮い立たせたり、厄を払ったりするという考えなのだそう。この空気を揺らすという行為は、例えば神社で柏手を打ったり、鈴を鳴らしたりすることも同じ意味を持っているのだとか。

そしてこの行為、僕らの日常でも行っているのだそう。それは誰かを送り出すときに、『いってらっしゃい』と手を振りますよね。これは手を振ることで、厄払いや神様のご加護で安寧を祈願するという意味が込められているのだそうです。

手を振って見送るって、大事なんですね。

■■

さて…

〈フリソデエビ科フリソデエビ属フリソデエビ Hymenocera picta 20年7月13日 沖縄島安和〉

学名種小名は『彩色された、色鮮やかな』の意。

和名の通り、第2胸脚はまさに振袖。

フォトジェニックな振袖です。

〈同種別個体 同日 同ポイント〉

大抵ペアで出会います。

 

 

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白いお腹(ナミスズメダイ)

2020-08-18 20:15:33 | スズメダイ科

灼熱~で、ベタ凪~な日々が続いているやんばるです。

一応風は北寄りなんですが、風に吹かれても涼しさは感じられず…。

台風7号が発生したようですが、遠ざかっていく一方の進路。

南の海上には他にも気になる低圧部はありますけど、取り敢えずは好天が続きそうです。

風は北東。晴天。

■■

『カウンターシェーディング』という言葉をご存じでしょうか。

動物の体表の日陰になる部分が白っぽい明るい色に、光の当たる部分が黒っぽい暗い色になる現象のことです。つまりお腹側が白っぽくて、背中側が黒っぽい体色のこと。

迷彩の一種でもある模様で、哺乳類・爬虫類・鳥類・魚類・昆虫という幅広い生物種で確認されているのだそう。

魚類では例えばサメ類の体色が、典型的なカウンターシェーディングの配色ですね。

1909年に画家のアボット・ハンダーソン・セイヤーによって大枠が発見されたのだそうで、別名『セイヤーの法則』とも呼ばれたりするのだとか。

この模様には、上下から見られたときに背景に溶け込ませる機能や輪郭をぼかす機能、あるいは横から見られたときには外見を平坦化させる機能などがあるのだそう。

必ずしも被捕食者だけのものではなく、遅くとも白亜紀前期にはこの特徴を持つ生物がいたと考えられているのだそうで、白亜紀の海生爬虫類モササウルスや恐竜のプシッタコサウルスもカウンターシェーディングの配色であったと考えられているのだとか。

また、腹側を上にして上下逆さまに生活する習性のある動物のなかには、配色が逆さまの逆カウンターシェーディングを纏っている種もいるのだそう。ダイバーに身近なところでは、アオミノウミウシがこれにあたるのだそうですよ。

動物たちはずいぶんと前から生き残り戦略で腹を白くしたり黒くしたりしていたよう…。

ところで僕ら人間界にも『腹黒』、『腹白』という表現があります。『腹黒』の方はよく使われますけれど、『腹白』の方はあまり使われませんね。

腹黒は、『腹が黒いこと。心の内に悪い企みを持っていること』の意。腹白はその逆で、『腹の白いこと。心の内が清く正直なこと』という意味なのだそうです。

■■

さて…

〈スズメダイ科ソラスズメダイ亜科クラカオスズメダイ属ナミスズメダイ Amblyglyphidodon leucogaster 20年7月9日 沖縄島崎山〉

画像は幼魚。

学名種小名は『白い腹(の)』の意。

幼魚のころは黄色のアクセントが綺麗な被写体です。

成魚になっても、お腹の色は白より黄色の方が目立つように思われるのですが…。

 

 

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忍び(モヨウシノビハゼ)

2020-08-11 17:23:41 | ハゼ科

8月に入って立て続けに台風が発生していますね。

1日に3号が発生してから10日間で6号まで発生していますから、2.5日に1個のペース…。

沖縄島近海を通過した5号は足早に去って行き、もちろん影響はありましたがまあそんなにひどくもなく。

明日からはまた強烈な日差しの猛暑が続きそうです。

小笠原近海の熱帯低気圧が少し気になりますけど、今のところ台風までは発達しないようです。

風は南。曇。

■■

『乱破(らっぱ)』、『素破(すっぱ)』、『草』、『奪口(だっこう)』、『かまり』。

これらは皆同じものを指す呼称の異名です。

『忍び』とも呼ばれる、と言えばわかりますよね。そう、『忍者』のことです。

忍者は、室町時代から江戸時代の日本で諜報活動・破壊活動・謀術・暗殺などを仕事とした集団ですね。

古くは飛鳥時代に聖徳太子が大伴細人(おおとものほそひと)を間諜(いわゆるスパイ)として用い、これを『志能備(しのび)』と呼んだと伝えられる地域もあるのだとか。

忍術を使う忍者は源平時代以後の日本で発祥したもので、日本各地で71の流派が文献上に見られるのだそう。うーん、伊賀・甲賀・根来…くらいしか思うつきません…。

まあそういう日本各地の忍者集団が、室町時代から戦国時代、江戸時代にかけて、ある集団は大名や領主に仕え、またある集団は独立した傭兵的に、戦場で戦ったようです。

江戸時代に入ってからは主に諜報活動に従事していたようですが、当然隠密活動ですから歴史の表舞台に現れることはなく、松尾芭蕉や葛飾北斎が実は忍者だったなんて説があったりもするのだそう。つまり旅をしながら諜報活動をしていたのでは、ということですね。

因みに秘密や隠し事を暴いて明るみに出すことを報道用語で『すっぱ抜く』と言いますが、これは前述の忍者の異名である素破が語源なのだとか。

歴史上の忍者の最後の活動は、ペリーの黒船来航の際の船上パーティーに潜入し、パン・タバコ・蝋燭・便箋を持ち帰ったことなのだそう。なんか地味~に思えたりも…。

海外でも『Ninja』は普通に知られる存在ですが、忍者が登場する最初の海外作品は『007は二度死ぬ』なのだそう。

日本ではもちろん古くから忍者が活躍する小説や映画やドラマ、コミックやアニメがあるわけですが、最近では『NARUTO』とかで忍者を知る少年少女たちが多いのではないでしょうか。『NARUTO』は海外でも人気があるそうですから…。

僕はといえば、『仮面の忍者赤影』で忍者というものを知りました…。

■■

さて…

〈ハゼ科ハゼ亜科モヨウシノビハゼ属モヨウシノビハゼ Echinogobius hayashii 20年7月6日 沖縄島新里〉

学名種小名は『林氏の』の意。

本種に最初に和名をつけた魚類学者の林公義に因んでいます。

本種は砂底に生息し、危険を感じると孔の中に逃げ込みますが、テッポウエビ類との共生関係はありません。

そのため孔の様式も違うのだとか。共生ハゼの孔が砂底に対して斜めに伸びていくのに対して、本種の孔は垂直に伸びているのだそうです。

 

 

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frying noise(サンゴテッポウエビ)

2020-08-04 20:35:22 | エビ・カニ類

台風4号は沖縄島を大きく迂回するように進んでくれまして、ほとんど影響なしな感じです。

空模様の大きな崩れもなく、陽光サンサン気温は真夏日…な日が続いてます。

この先も当分の間こんな感じの日が続きそうです。

風は南東。晴れ。

■■

『沈黙の世界』という映画をご存じでしょうか。

1950年代のフランスとイタリア合作のドキュメンタリー映画で、ジャック=イブ・クストーの潜水調査活動を記録したものです。

ジャック=イブ・クストーはご存じですよね。フランスの海洋学者で、『自給気式水中呼吸装置』つまりは『スクーバ』の発明者の一人です。

『沈黙の世界』とは水面下の世界のことですが、ダイバーなら誰もが知っているとおり、水中は決して静寂に満ちた世界ではありませんよね。

環境が生み出す音も聞こえますし、人工的なものの音だって聞こえます。それに生物の発する音も盛大に聞こえたりもしますよね。

沿岸域で最もメジャーな生物音は『テンプラノズ』なのだとか。天ぷら調理をしたときのような「パチパチ」という音です。英語でも『frying noise』と同じような発想で呼ばれているのだそう。

このテンプラノズはテッポウエビ類が発している音です。テッポウエビ類は第1はさみ脚が左右不同で、大きい方のはさみ脚の可動指と不動指の内側にプランカーとソケットと呼ばれる突起と受け口を持っています。

このプランカーをソケットに激しく打ち付けることで、強烈な衝撃音を発生させるのだとか。つまり鉄砲と言っても空砲ですね。もっと厳密に言えば指パッチンですね。テッポウエビは英語で『Pistol shrimp』と呼ばれますが、『Snapping shrimp』とも呼ばれています。指パッチンの英語『finger snapping』からです。

でも空砲と言っても、近くにいる動物を気絶させたり、試験管に入れるとそれを割るほどの強さがあると言われているのだとか。空砲でもあなどれない威力のある鉄砲ですね…。

テンプラノイズは、なわばり侵入者に対する威嚇・追い払いのために発せられているのだそうです。

■■

さて…

〈テッポウエビ科テッポウエビ属サンゴテッポウエビ Alpheus lottini 20年7月3日 沖縄島エンプラ〉

ハナヤサイサンゴやトゲサンゴなどの枝間に共生する本種も、強力な鉄砲を持っています。

 

 

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