Sakana no Sanaka

沖縄本島テキスト系ダイバーの一考察

大和邇の姫(オトヒメウミウシ)

2020-02-25 20:05:53 | ウミウシ

最高気温は24℃、風は南寄り、陽光も十分…。二月的なものがどこにも見つからなかった本日のやんばるです。

まあ、水温は21℃ですけど…。

この先の一週間も基本晴れベース。雨交じりになっても気温は高めで推移していきそうです。

風は南東~南。晴れ時々曇り。

■■

昔々、あるところに海彦と山彦という兄弟がおりました。兄の海彦は海で魚を捕り、弟の山彦は山で獣を狩って暮らしていました。ある日、山彦は海彦に自分も漁をしたいから道具を貸して欲しいと頼みます。そして海に出かけたのですが、そのとき海彦が大切にしている釣り針をなくしてしまいました。山彦が浜辺で途方に暮れていると、そこに潮流の神が現れ、山彦を海の世界である綿津見へと導きます。綿津見の宮殿で、山彦は豊玉姫というお姫様と出会い愛し合うことになります。そして三年過ごした後に、海彦の針と豊玉姫から貰った『潮満玉』と『潮引玉』を手に和邇(わに)の背に乗ってもとの世界に戻ります。そしてなんだかんだとあって、攻めてきた海彦を二つの玉を使って懲らしめ、忠誠を誓わせました。おしまい。

かなり大雑把に語ってしまいましたが、これは昔話の『海彦と山彦』。

もとの話は『記紀』に記された『山幸彦と海幸彦』で、天孫属と隼人族の闘争を神話化したものなのだとか。

でもそれよりも、上記を読んでお気づきかと思いますが、『浦島太郎』のベースになった神話とされています。

つまり山彦が浦島太郎で、綿津見の宮殿が竜宮城、豊玉姫は乙姫のモデルなのだとか。

山彦が漁師じゃなかったり、玉手箱が二つの霊力のある玉だったり、乗っかるのが亀ではなく和邇だったり…と違う部分もありますけど。

『山幸彦と海幸彦』の神話では、豊玉姫が山幸彦の子を身籠もります。そして山幸彦のところへやってきて、産屋で出産することになります。そのとき豊玉姫は「絶対に産屋の中を覗かないで下さい」と言うのですが、まあこういう流れの定番で、山幸彦は覗いてしまいます。するとそこには八尋の大和邇がいたのでした。それは豊玉姫の真の姿でした。という感じに続いています。

この大和邇とは、日本神話に登場する海の怪物のことです。一説によるとサメだと言われ、また別の説によるとワニだと言われ、また別の説によるとヘビだとも言われています。

八尋は『非常に長いこと、非常に大きいことの』意味ですから、山幸彦は巨大なサメかワニかヘビを目にしたということなのでしょう。もちろん彼は恐れて逃げ出しました。

やっぱり、見ちゃ駄目って言われたら見ない方が良いと思うんですよね、僕は…。

■■

さて…

〈イロウミウシ科アデヤカイロウミウシ属オトヒメウミウシ Gniobranchus kuniei 20年1月14日 沖縄島安和〉

学名種小名は『海の宝石が詰まった箱』というニューカレドニアの言葉をラテン語化したもの。

玉手箱ではありません…。

でも二つの玉には近いかな…。

 

 

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ぼんやりとみえるさま(ボンボリイソハゼ)

2020-02-18 19:13:32 | ハゼ科

寒気の南下に伴い気温がぐぐっと下がり、この冬一番の寒さになった本日のやんばるです。

昨日から北寄りの風が強まり、海況もハードな感じなっています。

この寒さは明日の朝までのようで、明日の日中には冬型気圧配置もくずれ、風もゆるまるよう。

さらに明後日以降はまた暖かい日になり、週末から来週にかけて続いていきそうです。

風は強めの北。曇り時々弱雨。

■■

『雪洞』

何と読むか解りますでしょうか。『ぼんぼり』と読みます。「あかりをつけましょぼんぼりに~♪」の『ぼんぼり』です。

紙や絹のおおいがある手燭、あるいは柄のついた行灯のことですね。

でも茶道を嗜まれている方なら、『せっとう』と読まれたかもしれません。お茶の道具でそういう名称のものがありますから。

というか、茶道具の『雪洞(せっとう)』に形状や構造が似ているので、灯具の『ぼんぼり』に『雪洞』の字が宛てられるようになったのだそうです。

『ぼんぼり』という言葉は、江戸時代に『ぼんやりとみえるさま、はっきりとしないさま』を表す言葉だったのだとか。

後に、木などで枠を作り紙や絹で枠をおおい、その内部で油やろうそくを灯す灯具、つまり『ぼんやりと周りがみえる明かり』のことを『ぼんぼり』と呼ぶようになったよう。

また、『ぼんぼり』はお祭りや宗教的な行事において、重要な灯具として用いられているのだとか。

お盆のときに仏壇に飾られる『ぼんぼり』は、帰ってくるご先祖様が迷わないための目印として用いられているのだそう。

前述のひな祭りは桃の節句とも言われますが、もともとは上巳(じょうし)の節句と言われ忌み日とされていたのだとか。この日に災いを避けるため、自分の身代わりとして穢れを移した人形を川に流す風習があり、この人形がひな人形の原形であると言われているのだそう。

現在のひな祭りは江戸時代後期の結婚式の様子を表したもので、当時の式は夜の9時~11時くらいに行われていたので、お内裏様とお雛様の隣に『ぼんぼり』が置かれます。

ひな人形の下には緋毛氈が敷かれますが、これには魔除けの意味があるのだとか。つまりひな祭りには『女の子の成長を祝う』という意味だけではなく、『災いをさける、穢れをはらう』という元々の意味も残っているのだそう。

そういう意味でも『ぼんぼり』が用いられているのかもしれませんね。

■■

さて…

〈ハゼ科ハゼ亜科イソハゼ属ボンボリイソハゼ Eviota ancora 20年1月7日 沖縄島安和グスク〉

学名種小名は『フック・碇』の意。

目の後ろの淡いオレンジ斑の形が由来です。

 

 

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シワになりにくい素材(チリメンウミウシ)

2020-02-11 20:28:55 | ウミウシ

時間と共に風が南寄りへと変化していった本日のやんばるです。

一日を通して風はゆるやか。日差しもあって過ごしやすい感じでした。

明日はさらに気温が上がりそうで、4月上旬並みの気温になるのだそう。

そして週の後半には夏日の予報の日も…。

週末までは暖かい日が続きそうです。

風は北東のち南東。晴れのち曇り。

■■

越後の縮緬問屋のご隠居といえば、日本で一番有名な副将軍、水戸光圀の仮の姿ですね。まあ、時代劇のなかだけですけど…。

幼い頃テレビを見ながら、『この人はじゃこ屋さんのふりをしているのだな』と思ってました。『縮緬』といわれれば、当時の僕にとっては『ちりめんじゃこ』以外は思いつきませんでしたので。

もちろん縮緬は絹を平織りにして作った織物で、ちりめんじゃこという名はこの織物の縮緬が由来です。

ちりめんじゃこはイワシ類の仔魚、いわゆるシラスを食塩水で煮た後、天日干しした食品。小さな魚を広げて干した様子が、縮緬を広げたように見えることからこの名前で呼ばれるようになったのだとか。

確かに、縮緬の細かな波のような模様が天日干ししているシラスのような感じに思えたりも。

縮緬は16世紀末に中国から堺に伝えられたのだそう。当時は南蛮貿易が盛んで、そこから全国に広がっていったのだとか。

それまでの日本の織物はシワになりやすいというデメリットがあったのだそうですが、縮緬は伸縮性があってシワになりにくく、日本人に重宝されるようになっていったのだそうです。

因みにちりめんじゃこになる前の『シラス』ですが、一説によるとその語源は『白洲』なのだとか。

『白洲』とは、江戸時代の奉行所で裁きを行う場所。

遠山の金さんや大岡越前が「これにて一件落着」とか言ってる、あの『お白洲』のことですね。

まあ、時代劇のなかのことですけど…。

■■

さて…

〈イロウミウシ科コモンウミウシ属チリメンウミウシ Goniobranchus reticulatus 20年1月7日 沖縄島安和グスク〉

学名種小名は『網目状の』の意。

和名と学名で、微妙に模様のニュアンスが違いますね…。

 

 

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超人的存在(ハクトウミノウミウシ)

2020-02-04 19:05:28 | ウミウシ

今日は二十四節気の立春ですね。

暦の通り、日中は陽光たっぷりで、春の始まりっぽい感じだったやんばるです。

インターバルで、ウェットスーツのまま風に吹かれても心地良い感じでした。

この先一週間も過ごしやすい日が続きそうな予報です。

風は北東のち南東。晴れのち曇り、のち雨。

■■

『白頭(はくとう)』

年老いて白髪になった頭。しらがあたまのこと。米国の国鳥、ハクトウワシ(白頭鷲)の白頭ですね。

同じ『白頭』と書いて、『しろがしら』と読む言葉もあります。これは能楽用語。

ある春の日のこと。鞍馬寺の僧が、寺で修業している稚児を連れて花見に出かけました。彼らが花見を楽しんでいると、いつの間にか見知らぬ山伏が一人紛れ込んでいました。山伏を気味悪がった一行は、稚児を一人残して帰ってしまいました。その残された稚児は山伏に向かってこう言います。

「私以外の子は皆平家の子で、私だけが源氏の子なのです。だからいつも辛い目に遭わされるのです」

この稚児は源義朝の子、牛若丸でした。つまり後の源義経です。

山伏は牛若丸を励ますために、鞍馬山の名所を案内します。そして感激している牛若丸にこう言います。

「実は私は本当は山伏ではなく、鞍馬山に住んでいる大天狗なのだ」

こうして天狗と知り合った牛若丸は、鞍馬山の天狗たちから武芸を教わり、兵法を学び、鍛錬の日々を送ることになりました。

とこれは『鞍馬天狗』という能の演目です。

この演目に登場する大天狗は『白頭』を頭部につけています。つまり白髪のかつらですね。

能では、老体の超人的な存在の役にこの『白頭』が用いられるのだそうです。

天狗ですから、それはまあ超人的キャラクターですよね。

もちろんこれは伝説をもとにした演目で、実際に牛若丸が天狗に剣術を教わったわけではありません。ですが、鞍馬山で過ごした幼少期に義経が武芸の鍛錬に励んでいた、ということはあったようです。そのとき牛若丸に剣術を教えたのは、天狗の仮面つけた義朝の遺臣だったのではという説や、平家に不満を持っていた鞍馬寺の僧侶だったのではという説などがあるのだそうです。

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さて…

〈フジエラミノウミウシ科フジエラミノウミウシ属ハクトウミノウミウシ Trinchesia sp. 19年12月19日 沖縄島安和〉

触覚間から両口触手の基部を結ぶ白色の三角斑が印象的な本種。

『白頭』ですが、超人的な存在ではなさそうですね…。

 

 

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