Sakana no Sanaka

沖縄本島テキスト系ダイバーの一考察

お墨付き(スミツキトノサマダイ)

2019-12-31 19:09:21 | チョウチョウウオ科

早朝の雨の後は気温が下降する一方で、寒~い大晦日になった本日のやんばるです。

最高気温は20℃でしたが、これを記録したのは午前三時のこと…。

明日も寒い一日になりそうで、元日っぽい感じになりそうです。

陽光はたっぷりみたいですので、体感はそんなに寒くないかもしれませんけど。

明後日以降はまた平年並みかそれ以上に暖かい日が続きそうです。

風はやや強めの北。曇り。

■■

ときは天正18年(1590年)11月14日の夜、独眼竜として知られる戦国武将の伊達政宗が、家臣の伊達成実・片倉小十郎・茂庭綱元を呼びます。そして前年に秀吉に会津領を没収されたことを恨み、一揆勢と通じて秀吉の家臣である蒲生氏郷を挟撃すると打ち明けます。ところがこの企みが蒲生氏郷に伝わってしまい、氏郷によって秀吉に訴えられ、政宗は秀吉に呼び出されます。政宗はもちろん否定しますが、氏郷は証拠があると言って、政宗が書いた一揆勢宛ての書状を出します。そこには政宗が一揆勢を密かに援助することを約束する文章と、政宗の鶺鴒の花押が書き記されていました。秀吉から糾明を受けた政宗は、しかし鶺鴒の花押の目には必ず針で穴を開けているが、これにはない。だからこの書状は偽物です。と釈明します。確かに政宗が書いた他の公の書状には、鶺鴒の花押に穴が開いていました。結局政宗はこの件で責任を問われることはありませんでした。

これは、かなり昔に見た大河ドラマの独眼竜政宗で印象に残ってるシーンの一つです。というのも、いやいや、やばい文書には穴開けてないだけじゃん。これで秀吉納得しちゃっていいの? と思ったから。まあでも今から思うと、秀吉は当然クロだと知ってたはずですね。知った上で、こういう言い訳をちゃんと用意している政宗という男は使えると、思ったのかもしれませんね。

ここに出てくる『花押』とは、証明の代わりに使われる記号・符号のことです。日本では平安時代中期から使用され始め、江戸時代まで盛んに用いられたのだとか。

初めは署名を極端に形様化したものでしたが、戦国時代に著しく多様化し、必ずしも実名を元に作成されなくなったのだそう。政宗の花押も鳥のセキレイを図案化したものでした。

公式な文書には必ず花押が墨で記されていました。権威や権力のある人が与える許可や保証のことを『お墨付き』と呼ぶのはこの花押に由来しているのだそうです。

■■

さて…

〈チョウチョウウオ科チョウチョウウオ属スミツキトノサマダイ Chaetodon plebeius 19年11月18日 沖縄島新里〉

画像は幼魚。

殿様のお墨付きならぬ、お墨付きの殿様…。

学名種小名は『平民の、普通の』の意。

いずれの海域でも生息数が多いことに由来しているそうですが、殿様なのに平民ってどこか不思議な感じがしたりも…。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

源氏星(クロヘリシロツバメガイ)

2019-12-24 18:38:30 | ウミウシ

ぽかぽか陽気のクリスマスイブになった本日のやんばるです。

最高気温は22℃でしたが、陽光が強く数字以上に暖かく感じた一日でした。

半袖Tシャツにハーフパンツ姿で、ポイントまでの車内はクーラーかけてましたし…。

明日以降も比較的暖かな日が続きそうです。

風は北東のち東。概ね晴れ。

■■

冬の夜空の代表的な星座といえば、オリオン座ではないでしょうか。

全天には1等星は21個しかありませんが、オリオン座はその明るい1等星を二つ有している星座です。さらに2等星を5つも有していて、とても見つけやすい星座です。

オリオンとはギリシャ神話に登場する巨人の漁師。海神ポセイドンの息子で優れた漁師でしたが、その能力を驕り過ぎたために神々の怒りを買い、神々によって放たれたサソリに刺されて死んでしまったのだとか。その後星座として天に上げられましたが、今でもサソリ座が東の空に現れる頃には西の空に沈んでいくのだそう。つまりまだサソリを恐れているということですね。

オリオン座の二つの1等星は、ベテルギウスとリゲル。リゲルはオリオン座で最も明るい恒星で、全天でも5番目に明るい星です。

リゲルは青白い光を放ちますが、それは色温度が高いから。太陽の表面温度は5800℃ほどだと言われているそうですが、リゲルのそれは11700℃なのだとか。

もう一つの1等星ベテルギウスは赤い色を放ちますので、リゲルとベテルギウスはそれぞれ『源氏星』、『平家星』という和名で呼ばれたりもします。

それは源平合戦のとき源氏の旗が白、平家の旗が赤だったことに由来しているのだそう。

スポーツ競技などで、二組に分かれて戦うときに使う『紅白試合』という言葉も、このことが由来なのだとか。剣道の紅白試合や、野球の紅白戦とかですね。

大晦日の紅白歌合戦も、同じ由来なのだそうですよ。

■■

さて…

〈カノコキセワタガイ科ニシキツバメガイ属クロヘリシロツバメガイ Chelidonura pallida 18年7月12日 沖縄島安和〉

学名種小名は『青白い』の意。

源氏の旗印を纏ったウミウシです。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニチホン(ツユダマガイ)

2019-12-17 20:21:42 | 水中生物

12月も中旬ですが、夏日になった本日のやんばるです。

南寄りの湿った風は弱く、普通の12月的な服装をしていると汗をかくことに…。

明日以降はここまでの気温上昇はないようで、週末にかけて雨交じりの数日になりそうです。

風は南西。晴れ。

■■

『日出ずる処の天子、書を、日没する処の天子に致す。恙なきや』

とこれは推古天皇の名で、聖徳太子が中国の皇帝にあてた手紙の一文。最近の教科書では『聖徳太子』ではななく、『厩戸皇子』と記述されているそうですが。

『日出ずる処』というのが我が国『日本』のことですね。もっともこの手紙が書かれた当時は『日本』という名称ではなかったようですが。

『日本』という名称が登場したのは、『大化の改新』の頃なのだとか。あるいは天武天皇の治世に『日本』という表記が成立したという見解もあるのだそう。

それ以前は中国や朝鮮では『日本』のことを『倭』と呼んでいたようですが、『日本』という呼び方に変わった経緯は明らかになっていないのだとか。

ところでこの『日本』という表記、ここまで何と読んでいました? 『ニッポン』ですか? それとも『ニホン』ですか?

大化の改新の頃は、『日本』と表記して『ヒノモト』と読んでいたそう。『ニッポン』と読まれるようになったのは奈良時代以降だそうで、『ニッポン』に加えて『ニホン』とも読まれるようになったのは、室町時代以降だと推測されているのだとか。つまり『ニホン』は『ニッポン』より後に生まれた読み方のようです。

そもそもの『ニッポン』という読み方は、呉音読みの『ニチホン』が音変化したものなのだそうです。

では現在は、『ニッポン』と『ニホン』のどちらが我が国の正式な呼称なのでしょうか。

昭和9年に文部省臨時国語調査会が正式な呼称を『ニッポン』に統一する『国号呼称統一案』なるものを発表したそうですが、採択には至りませんでした。

というわけで、日本政府は『ニッポン』でも『ニホン』でも正式な国の呼称として正しいとしています。

■■

さて…

〈コゴメガイ科ツユダマガイ属ツユダマガイ Crithe nipponica 19年10月17日 沖縄島安和〉

学名種小名は『日本の』の意。

この場合の読みは『ニッポンの』の意味ですね…。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地名→人名→地名…(ミナミダテハゼ)

2019-12-10 20:15:40 | ハゼ科

日差したっぷり、風はゆるやか…。気持ちの良い陽気になった本日のやんばるです。

明日はいったん雨交じりになりそうですが、明後日からは晴れベースの暖かな日が続きそう。

週末から週明けには夏日になるかも…な予報になってます。

風は北東~東。晴れ。

■■

『小笠原諸島』

民間人が居住する父島と母島の2島を含む、30余の島々からなる東京都小笠原村の行政区域。

まあ、多くの方がよくご存じの場所でしょう。2011年にはユネスコの世界自然遺産に登録されましたし。

日本で唯一生物地理区の区分でオセアニア区に属し、形成以来ずっと大陸から隔絶していたために『東洋のガラパゴス』と呼ばれるほどに独自の進化を遂げた貴重な動植物が生息する場所です。

また、日本では当地沖縄とこの小笠原諸島だけがコーヒーを栽培していたりも。

この『小笠原諸島』の『小笠原』は、実は人名、つまり名字に由来しているのだとか。

1593年、信濃小笠原氏の小笠原貞頼が、伊豆諸島南東で3つの無人島を発見したと『巽無人島記』に記述されいるのだそう。ただしその記述内容はかなり信憑性が低いようですが。

しかしその後、1727年に貞頼の子孫を自称する小笠原貞任なる人物が、貞頼の探検事実の確認と島の領有権を幕府に求めたのだとか。最終的にはこの訴えは却下され、さらには貞頼の実在さえも否定されたようですが、これ以降件の島は小笠原島と呼ばれるようになったのだそう。

そして幕末、米国との間で小笠原諸島の領有問題が発生したとき、幕府はこの島は16世紀末に小笠原貞頼が発見した島で昔から小笠原島と呼ばれていると主張し、以後日本領となったのだとか。

一度は完全否定しておきながら…って感じですけど、まあ外交術ということでしょうか。

貞頼という人物は実在したことは確かなようですが、小笠原の発見については伝承の域をでないとされているそうです。

ところで貞頼の信濃小笠原一族ですが、元をたどれば清和源氏の一族なのだとか。

中世、その一族が甲斐源氏として今の山梨県に広がっていたそうで、そのなかの小笠原という地名に住んだ一族が小笠原氏を名乗ったのだそう。

あれ、地名の由来を辿ると人名に繋がり、さらにそれをたどると結局地名に行き着いてしまいました…。

■■

さて…

〈ハゼ科ハゼ亜科ダテハゼ属ミナミダテハゼ Amblyeleotris ogasawarensis 19年10月7日 沖縄島安和〉

学名種小名は『小笠原諸島の』の意。

タイプ産地が小笠原諸島父島二見港付近の海岸であることに因んでいます。

地名から人名へ、そして地名へ、さらにそこから魚名へ、って感じですか…。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブルーウォーター(クロメガネスズメダイ)

2019-12-03 19:32:48 | スズメダイ科

師走の初日は半袖Tシャツで心地よく過ごせたのですが、昨日から一気に冬になったやんばるです。

最高気温も20℃に届かず、年末年始並みの寒さなのだそうで…。

これ書いてる今はウォームパンツ履いてフリース着てます。

今週はこんな感じで推移しそうです。しかも週の後半の予報が暴風雨になってたりします…。

風は北~北東。晴れたり曇ったり。

■■

『賢者の石』

錬金術師の必須アイテム。中世ヨーロッパの錬金術師が、鉛などの卑金属を金に変える際の触媒となると考えた霊薬のことです。

あるいは人間を不老不死にすることが出来るという、霊薬としてのエリクサーと同様のものなのだそう。エリクサーってご存じですか。日本では(日本だけではないかもしれないですけど)、数々のRPGでおなじみの万能薬アイテムとしてポピュラーなのではないでしょうか。

ゲームだけではなく小説やコミック、アニメなどにも賢者の石は度々登場しますよね。

すぐに思い浮かぶのは『手合わせ錬成』を身につけた『国家錬金術師』の物語。コミック原作でアニメ化されたやつです。ほらあれ、弟が甲冑の…。

あと約三十年前に、ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』を原案にしたアニメにも『ブルーウォーター』と呼ばれる賢者の石が重要なアイテムとして登場してました。

オリハルコン製で膨大なエネルギーを秘めていて光CPUのコアでもあり、古代アトランティス人が製造した、という何かものすごい設定でした。

このアニメですが、『海底二万里』だけではなく、『天空の城ラピュタ』と同じ原案を下敷きにしているのだとか。

従って、『ブルーウォーター』という賢者の石は、『飛行石』と兄弟関係にあるのだそうです。

ところで、賢者の『石』なのにブルー『ウォーター』って名前、不思議ですよね。

賢者の石の見た目には諸説あり、アラビアでは黄色い卵のような形、西洋では赤い石の形が一般的なのだとか。

しかし実際には僕らがぱっとイメージする『石』つまり個体の石とは限らないのだそう。それが液体だったとしても石として扱われるのだそうです。

もっとも、『ブルーウォーター』は特殊な鉱石で、固体の石でしたけど…。

■■

さて…

〈スズメダイ科ソラスズメダイ亜科ソラスズメダイ属クロメガネスズメダイ Pomacentrus vaiuli 19年10月7日 沖縄島安和〉

学名種小名は『青い水』の意。

つまりブルーウォーター。

食べても不老不死にはなれないでしょうけど…。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする