Sakana no Sanaka

沖縄本島テキスト系ダイバーの一考察

雅称は末摘花(ウスクレナイウミウシ)

2022-04-12 20:50:30 | ウミウシ

先週末から夏日が続いているやんばるです。

今日もときどきの曇り空が心地よく感じる日差しでした。

6月並の気温なのだとか…。

弱い風は少し湿っていて、それもまた心地よかったり。

まだ数日こんな日が続きそうな感じです…。

風は南東のち北東。晴れ、ときどき曇。

■■

『なつかしき 色ともなしに なににこの 末摘花を 袖にふりけむ』

源氏物語の主人公、光源氏が作中で詠んだ歌です。

「あれ? 俺なんでこの赤鼻の姫といたしちゃったのかなぁ…」

超訳すとこんな感じの歌。

亡き常陸宮の姫君(つまり皇族の姫君)の噂を聞いた18歳の光源氏は、『零落した悲劇の姫君』という幻想に憧れ、求愛し逢瀬を果たします。

ところがそのあとで姫君の顔を見た光源氏はびっくり…。というのも件の姫君は先の赤い大きく垂れ下がった鼻の、まあ有り体に言えば『不美人』だったのです。

というのが、源氏物語第6帖、『末摘花の巻』のあらすじ。

一見家柄以外に何の取り柄もないようで、でもとても純真な心の持ち主であるこの姫君の一途な思いに、結局光源氏は感動してしまいます。

そして光源氏と晩年まで添い遂げる妻の一人となります。

美男美女揃いの源氏物語の中では異色のキャラクターですが、こういうキャラクターが平穏な晩年を迎えられるところも、源氏物語の面白いところだと思えたり…。

『末摘花』とは光源氏がこの姫君につけたあだ名。

末摘花は紅(くれない)の雅称。紅とはベニバナ(紅花)の異名。

つまり『紅い花』と『紅い鼻』をかけたわけです…。

■■

紅色をくれない色と読むのは古い読み方で、近世以降はべに色と読むのだとか…

〈イロウミウシ科アデヤカイロウミウシ属ウスクレナイウミウシ Goniobranchus sp. 22年2月14日 沖縄島安和〉

薄紅(うすくれない)は、ややくすんだ紅色。

薄さの程度は、桃色に近い色から赤みの強い色まで幅広いのだそう。

画像はまだ幼い個体。

雅な色を纏ったウミウシです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東の彼方の異界(トウモンリュウグウウミウシ)

2022-03-29 21:05:54 | ウミウシ

一日中ドンヨリ…な空模様かと思っていたら、意外と日差しを浴びられた本日のやんばるです。

でも明日からもず~と曇と雨アイコンが並ぶ予報になってます。

晴れアイコンが見えるのは一週間後…。

とはいえ、今日みたいな日差しがあるのかもしれませんが…。

風は北東~東。曇ときどき日差し。

■■

『水晶宮』、『水府』、『龍の宮(たつのみや)』、『龍の都(たつのみやこ)』、あるいは『海宮(わたつみのみや)』

これ皆『竜宮(龍宮)』のことです。『竜宮城』も竜宮のことなのだとか。つまり竜宮にある城という意味ではないのだそう。

中国や日本の昔話、伝説、物語などに登場する海神の宮ですね。

海の中に存在すると考えられているものであり、海神あるいは水にまつわる神が主であり、そこにおもむいた者へ(礼品として)宝物が与えられる、という点が数々の伝説に共通しているのだとか。

竜宮が登場するもっともポピュラーな昔話は、やっぱり『浦島太郎』ですよね。亀に乗って海の中に行き、主である乙姫から玉手箱を貰って帰ります。

それ以外にも『山幸彦と海幸彦』に海神が住む宮として登場します。そこを訪れた山幸彦は帰りに霊力のある玉を貰っています。

陰陽師安倍晴明の物語にも竜宮は登場します。亀を助けてそのお礼に竜宮に連れて行かれた安倍晴明は、動物の言葉が理解出来るようになる『龍仙丸』を貰ったのだそう。前半は浦島太郎ですよね…。

中国では『西遊記』で、孫悟空が大暴れする場所として竜宮(水晶宮)が登場するのだとか。

当地には『儀来』というニライカナイをさす言葉があるのだそうですが、昔話の中では竜宮と同義語として使われることがあるのだとか。

ニライカナイとは遙か遠い東の海の彼方、または海の底、地の底にあるとされる異界。

豊穣や生命の源であり、神界でもあるのだそう。太陽の神を主神とする神の世界で、火や稲もそこから将来されたとする伝えもあるのだそう。

当地では生者の魂もニライカナイより来て、死者の魂はニライカナイへと去ると考えられているのだそうです。

■■

さて…

〈フジタウミウシ科クロスジリュウグウウミウシ亜科クロスジリュウグウウミウシ属トウモンリュウグウウミウシ Nembrotha livingstonei 22年2月4日 沖縄島安和〉

画像は幼体。

学名種小名は献名ですね。

体色や模様の変異が著しいウミウシです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

歌謡、ふんどし、苗字…(コヤナギウミウシ)

2022-03-15 20:10:58 | ウミウシ

意外に曇りがちな空模様でしたが、それでも夏日近くまで気温が上がった本日のやんばるです。

風はゆるやか~で、数字以上に暖かく、いや暑く感じた一日でした。

この先一週間は、期間の半ばと終わり頃に雨交じりになりそうですが、気温は高いまま推移しそうです。

風は弱い北東。晴れときどき曇。

■■

『小柳』その一

平安末期に行われた雑芸(ぞうげい)の一つ。雑芸とは平安後期から鎌倉時代にかけて流行した歌謡の総称なのだとか。

古典的、貴族的なものに対して、民間から出たものなのだそう。

『小柳』その二

小柳繻子(しゅす)、またはそれでつくった帯のこと。本絹繻子の一つで黒地を主とし、力士の褌(ふんどし)などに用いられるのだそう。

一説によると力士の小柳が用いたことがこの呼び名の由来なのだとか。

第六代横綱阿武松緑之助が『阿武松』を名乗る前の四股名が小柳だったそうで、前述の力士とは阿武松緑之助のことのよう。

もの凄い大食漢で、婦人に人気のあった力士だったそうです。

『小柳』その三

地名や苗字。

苗字としては九州北部に多く、特に佐賀県に集中するのだとか。

有名人で小柳姓といえば、小柳トム(ブラザー・トム)、小柳ゆき、そして小柳ルミ子が僕的にはぱっと浮かぶ感じ…。

全員歌手ですね。ご先祖を辿ると歌謡の小柳に繋がったりして…。

■■

さて、この子は小柳ルミ子と直接的な繋がりが…

〈Janolidae科コヤナギウミウシ属コヤナギウミウシ Janolus toyamensis 22年1月13日 沖縄島崎本部〉

学名種小名は『富山産の』の意。

たぶんこの富山は富山湾のことなんでしょうね。

そして和名のコヤナギは小柳ルミ子から。

本種の記載年である1970年が小柳ルミ子のデビューした年であることに因んでいます。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人形緑黄色野菜(ニンジンヒカリウミウシ)

2022-03-08 20:08:26 | ウミウシ

風はヒンヤリでしたけど、たっぷりと降り注ぐ陽光が心地良かった本日のやんばるです。

このまま週末まで陽光が気持ちいい日が続きそう。

最高気温も日増しに高まりそうで、週末には夏日になるかも…。という感じです。

風は北~北東。晴れ。

■■

『ニンジン』

漢字で書くと『人参』ですね。

セリ科ニンジン属の二年草。根菜。

漢字表記の人参は、人の形に似ていることからその名になったのだそう。

但しこの人参は奈良時代に渡来し、薬用として栽培されていたウコギ科の『朝鮮人参(オタネニンジン)』のことだったのだとか。

食用のニンジンは、根が朝鮮人参に、葉がセリに似ていることから当初は『セリニンジン』と呼ばれていたのだそう。

でもこちらの方が主流になると、セリ科の方を指して人参と呼ぶようになり、ウコギ科の方を朝鮮人参と言うようになったのだとか。

ニンジンの学名種小名である『carota』は、英語のキャロット(carrot)の語源であり、カロテン(carotene)の語源でもあります。

根菜の中で唯一カロテン含有量が多く、緑黄色野菜に分類されるニンジン。緑黄色野菜の中でもトップ3に入るくらいに豊富なカロテンが含まれているのだそう。

ビタミンA・B1・B2・C、カリウム、食物繊維も多く、栄養的価値が高い野菜なのだそうです。

ところで日本ではニンジンといえば馬、というイメージが強いのではないでしょうか。

これは日本では馬に飼料として安価なニンジンを用いたからで、ヨーロッパではリンゴやパン・角砂糖が用いられているのだとか。

つまり日本で生まれ育った馬はニンジンを好みますが、他国育ちの馬はニンジンを好まなかったり、むしろ嫌うこともあるのだそうです。

■■

さて、こちらは光るニンジン…

〈フジタウミウシ科ハナサキウミウシ亜科ヒカリウミウシ属ニンジンヒカリウミウシ Plocamophenrus pecoso 22年1月13日 沖縄島崎本部〉

学名種小名は『そばかすのある』の意。

外套縁に3対の短い発光瘤を持つウミウシです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

petal(ハナビラミノウミウシ)

2021-11-16 19:34:41 | ウミウシ

気持ちのいい青空が広がった空模様。ポカポカとした心地よい一日だったやんばるです。

明日はドンヨリな感じで雨交じりになるかも…。それが数日続くような予報です。

今日のような晴れ空は、週末まで待たなければいけないような雰囲気です。

その週末には夏日になりそうな予報です。

風は北東。晴れ。

■■

『花びら』

花冠を構成している花葉のこと。

花冠とはまあ、僕らが花をイメージするときにパッと思い浮かぶ花の全体像で、その主要な構成要素が花びらということのよう。

もともとは葉であったのが変形したもので、だから花葉なのでしょう。

花びらは色鮮やかなものが多く、それに飾られた花は人の目を引きますね。

もちろん本来は人の目を引くためではなく、鳥や虫などの目を引くためのもの。花粉の輸送にそういうものたちの力を借りなければならないからですね。

そういうものたちを誘うために、美しい花びらで飾られた花の構造が発達したのだそう。

花粉とは生殖細胞。つまり花びらを含む花冠は、生物学的には種子植物の生殖器官なのです。

平安時代後期から、ただ花といえばそれは桜の花のことを指すのだとか。

来春にはまた賑わうかもしれないお花見も、だから生殖器官を皆で愛でているわけです。

そう考えると、不思議な気分になったりも…。

■■

さて…

〈Myrrhinidae科クセニアウミウシ属ハナビラミノウミウシ Phyllodesmium poindimiei 21年9月26日 沖縄島安和〉

学名種小名は『ポワンディミエの』の意。

ニューカレドニア東海岸のポワンディミエかな…。

『花びら』は、美しい背側突起からなのでしょうか。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しのぶれど…(シノビイロウミウシ属の1種)

2021-08-24 19:31:51 | ウミウシ

台風12号は、沖縄島からはかなり距離を取ったコースを北上してくれたおかげで、大きな影響はありませんでした。

少し風が強まったかな…って感じだけ。まあ、空模様は不安定でしたけど。

今日には十分に風は弱まり、明日以降もこんな感じの真夏日が続きそうです。

風は南。晴れ。

■■

『しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思うと 人の問うまで』

平兼盛の和歌。百人一首の中で、僕がパッと口に出来る数少ない歌の一つです。

まあ、だいたい分かると思いますけど恋の歌です。

『胸にしっかりと秘めた恋だと思っていたのに、恋しているんだねと友人に指摘されるくらい顔に出てしまっていたようだ』

って感じの歌ですね。

この歌は、960年に村上天皇が開いた『天徳内裏歌合(てんとくだいりうたあわせ)』で詠まれたのだとか。

この歌合は文学史に残る盛大なものだったそう。

歌合とは、歌人を左右二組にわけ、その詠んだ歌を一番ごとに比べて優劣を争うイベント。

歌合戦みたいな感じに思えたりもしますが、平安期には歌の優劣が出世にもかかわる重大事だったのだそう。

ということはコンペティションの意味合いの方が強かったのでしょうか。あるいはラップバトル的な…。

ちなみにこの歌は『天徳内裏歌合』で勝利しています。

■■

しのぶ、色、といえば…

〈イロウミウシ科シノビイロウミウシ属の1種 Thorunna sp. 21年6月18日 沖縄島新里〉

クチバイロウミウシに似ていますが、外套膜最外周を縁取る橙色の帯が、触覚前方で途切れないことで区別できます。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

薄衣(ウスギヌウミウシ)

2021-08-03 19:24:06 | ウミウシ

鋭い日差し、と思っていたらザッと一雨。という真夏の空模様が続いてますやんばるです。

近海にはポコポコと、本当にポコポコという感じで熱帯低気圧が発生しています。

明日以降近づいてくる熱低が一つ。こちらはまあそんなに危惧するほどでもなさそうですが…。

もう一つ、南シナ海の熱帯低気圧が24時間以内に台風9号になりそう。

今のところ、来週沖縄島の西側を北上しそうな予報です。

風は南東。晴れ時々雨。

■■

『かの薄衣は、小袿のいとなつかしき人香に染めるを、身近くならして見ゐたまえし』

源氏物語第三帖『空蝉』の一文です。

『あの薄衣(うすぎぬ)は、小袿(こうちぎ)でとても心惹かれる人の香りが染みこんでいるので、身近に置いてご覧になるのだった』

って感じのこと。

薄衣の持ち主、つまり心惹かれる人とは空蝉のことで、身近においてその香りを感じながら眺めているのが光源氏です。

この空蝉のエピソードは以前にも書いたような気がしますが、大好きなので…。

光源氏17歳の夏、空蝉という女性に夜這いをかけるのですが、着物だけを残して逃げられ、それを持ち帰るという感じのお話。

もっとも、ちゃっかり他の女の子といたしてたりしますけど…。

ハートブレイクの若き光源氏が、薄衣を抱えて恋しい人の香りをクンクンしてるようなイメージが浮かんで、そのちょっとあぶない感じがよかったり。

またこのエピーソードが夏っていうのもいいなぁと思えたりします。幼く苦い恋の思い出は、夏が相応しく思えません?

光源氏が無敵のプレイボーイになる前夜の物語です。

まあ、光源氏は無敵とは言いがたい恋愛をこの後も結構していますけど…。

■■

さて…

〈キヌハダウミウシ科キヌハダウミウシ属ウスギヌウミウシ Gymnodoris subflava 21年5月24日 沖縄島新里〉

学名種小名は『黄金色の下(に)』って感じの意。

体色を表しているのでしょうか。

ところで『うすぎぬ』には『薄絹』と書く言葉もあります。

『薄絹』は生地の薄い絹のこと。またはそれを思わせるもの。

『薄衣』の方は、うすごろものこと。またはそれを思わせるもの。

似ていて微妙に違う二つの言葉。この子はどちらでしょう? どちらにも思えますが…。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泥より出でて…(ハスイロウミウシ)

2021-07-20 19:37:58 | ウミウシ

台風6号は危惧していたとおりスピードを落とし、沖縄島の南の海上を西進中です。

今後も勢力を強めながら、ゆっくりと西進を続けるようです。

暴風雨の時間が長~く続きそうな予報になってます…。

風は強い北東。雨。

■■

『水芙蓉』、『不語仙』、『池見草』、『水の花』。

これらは全て一つの植物の異名。その植物とは『蓮』です。

日本での古名は『はちす』、つまりは蜂の巣。これは花托(花のベース部分)の形状を蜂の巣に見立てたとするのが通説なのだとか。『はす』はその転訛なのだそう。

7月の誕生花であり、夏の季語でもあります。

『蓮は泥より出でて泥に染まらず』という慣用句がありますが、ハスの花は清らかさや聖性の象徴として称えられることが多いのだとか。

仏教では花を咲かせる姿が智慧や慈悲の象徴とされ、如来像の台座は蓮華をかたどった蓮華座だったり。あるいは厨子の扉の内側に蓮華の彫刻を施したり。さらには寺院では、仏前に『常花』と呼ばれる金色の木製の蓮華が置かれていたりするのだそう。

ハスの葉はその微細構造と表面の化学的特性によって、決して濡れることがないのだとか。つまり葉の表面についた水分は、表面張力によって水銀のように丸まって水滴となり、泥や小さい昆虫やその他の異物を絡め取りながら転がり落ちるのだそう。

この現象は『ロータス効果』として知られているのだとか。

前述の『蓮は泥より出でて…』は、科学的にも裏付けられているのですね。

ちなみに森永乳業のヨーグルト製品に採用されている蓋は、この『ロータス効果』を再現して裏側にヨーグルトがくっつかないようになっているのだそうですよ。

■■

さて…

〈イロウミウシ科アデヤカイロウミウシ属ハスイロウミウシ Goniobranchus preciosus 21年5月11日 沖縄島安和〉

学名種小名は『貴重な、上品な』の意。

清らかさや聖性に繋がりそうな名前にも思えたり…。

ハスの花は白またはピンク色。

ハスの花の地色を纏うウミウシです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平安の古色(クチバイロウミウシ)

2021-07-13 19:36:04 | ウミウシ

梅雨が明け、カーチバイが止み、今週はベタ凪のコンディションになってるやんばるです。

風が緩すぎて灼熱~で、スコール系の一時雨が心地良い感じです。

雨が上がるとまたすぐに灼熱~になりますけど…。

この先もこんな感じの日が続きそうです。

風は弱い南東。晴れ、一時雨。

■■

『水底の朽葉にありぬ鯉の影』

昭和初期の俳人、西東三鬼の句です。

この句の季語は『朽葉』。冬の季語です。

字面から察しがつくかもしれませんが、『朽葉』とは枯れ落ちた葉、落ちて腐った葉、落ち葉のこと。

または朽葉色の略。

朽葉色は日本の古い色の名前の一つ。この色は、平安時代と江戸時代以降では違う系統の色をさすのだとか。

平安時代には、朽葉は多様な樹木の紅葉に由来し、黄朽葉、赤朽葉、青朽葉(なんか早口言葉みたいですが)等々、『朽葉四十八色』と言われるほど派生が存在したのだそう。

平安時代の貴族は明るい黄赤を非常に好み、朽葉はイチョウやカエデなどのもみじと同義で、朽葉色は鮮やかな黄赤系統の色だったよう。

それが江戸時代になると、朽葉色は黄枯茶色の別名になったのだそう。

この色は当時の女性の着物の地色としてよく使われていたのだとか。

この緑褐色や現在の朽葉色は、いわゆる枯葉色の茶褐色系統なのだそうです。

一つの色が、時代と共に大きく変化してしまったというわけですね。

■■

さて…

〈イロウミウシ科シノビイロウミウシ属クチバイロウミウシ Thorunna purpuropedis 21年5月7日 沖縄島新里〉

学名種小名は『紫の足の』の意。

腹足の地色は薄紫色です。

〈同種別個体 同日 同ポイント〉

外套膜周辺部が、橙色から赤色の色帯で縁取られる本種。

黄赤系統の色ですよね。

平安時代の古色を纏ったウミウシです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天鵞絨(ゴマフビロードウミウシ属の1種)

2021-07-06 19:22:33 | ウミウシ

梅雨が明けてから暑~い日が続いてるやんばるです。

ざっと降る雨が心地よかったり。でもそれさえも物足りなく思える日も…。

日陰で風に吹かれていないと、なかなかに灼熱です。

この先も鋭い日差しの暑~い日が続く予報です。まあ、鋭い日差しは大好物ですけど…。

風は南東。晴れ、一瞬だけ雨。

■■

『天鵞絨』

『てんがじゅう』と読むのだとか。

日本では、ポルトガル語のベルード(velude)から転訛した『ビロード』という名の方が一般的ですね。

ビロードは添毛織物の一つ。その発祥地はよくわからないのだそうですが、中世においてすでに地中海沿岸で生産されていたのだとか。

やわらかな肌触りと深みのある色調が特徴で、軽くて温かく、着心地が良いのだそう。

日本には天文年間(1532~1555)にポルトガル商船によってもたらされたのだとか。

それでポルトガル由来の呼び名になったのでようね。ちなみに英語だと『ベルベット』になるのだそう。

冒頭の天鵞絨は、『白鳥の羽毛のような手触り』という意味なのだとか。

伝来した当初は絹製の生地を指していたため、このような和名になったのだそうです。

天文年間と言えば、室町時代から戦国時代へと移っていく頃。

ビロードは戦国武将たちの陣羽織やマントととして愛用されたのだとか。

上杉謙信所用と伝えられる、緋地花唐文様のビロードのマントが有名です。

ビロード(ベルベット)は滑らかなものの象徴で、チェコスロバキアでスムーズに成功した革命が『ビロード革命』と呼ばれていたり。

のど越しが滑らかな『ブラック・ベルベット』なるカクテルもあったり。

またサッカーの小野伸二選手の滑らかなパスは『ベルベット・パス』と名付けられていたりするのだそうです。

■■

さて…

〈ツヅレウミウシ科ゴマフビロードウミウシ属ゴマフビロードウミウシ属の1種 Jorunna sp. 21年4月27日 沖縄島安和〉

この子も、触り心地は滑らかなのでしょうか。

試してみることはないでしょうけど…。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

純米酒の響き(キイッポンウミウシ)

2021-06-22 19:32:38 | ウミウシ

きっぱり梅雨って感じの空模様が続いてるやんばるです。

梅雨明けの平年値は過ぎたんですけどねぇ…。

ただ明日の後半には晴れアイコンが現れる予報。

そして週末にかけて晴れ時々曇、あるいは曇時々晴れの予報になっています。

このどこかで梅雨明けしますかねぇ…。

ところで今日の午前マリアナ諸島で熱帯低気圧が発生しました。

明日には台風まで発達しそうです。そしてそのまま北上しそうな気配です。

風は東のち北東。雨、時々曇。

■■

『生一本』

『きいっぽん』と読みます。酒税法で定められた日本酒の製法品質表示基準の一つなのだとか。

一つの製造所だけで醸造した純米酒であることを意味するのだそう。

ということは一つの製造所だけで醸造していない純米酒もあると言うことになりますね。

実は1970年代までは、大手の蔵元が小さな蔵元の日本酒を買い取ってブレンドし、自社銘柄として販売することが珍しくなかったのだとか。

現代では蔵元ごとにそれぞれの銘柄で日本酒を造るのが一般的で、ほとんどの純米酒が『生一本』のような時代になっているのだそう。

この『生一本』の歴史を遡っていくと、『灘の生一本』に辿り着くのだとか。

つまりもともと『生一本』と言えば、それは『灘の生一本』のことだったと言うこと。

『灘の生一本』とは日本酒のうちで最も優秀な日本酒を表す語として、古くから灘酒に用いられてきたのだそう。

それが何故『生一本』という表現なのかは諸説ありますが、『灘で造られた混じりっけのない生粋の日本酒』という説がよく知られているのだそうですよ。

『生一本』

日本酒好きにはたまらない響きですね。

まあ、僕は下戸なんですけど…。

■■

さて…

〈イロウミウシ科レンゲウミウシ属キイッポンウミウシ Mexichromis trilineata 21年4月9日 沖縄島安和〉

和名は日本酒と響きが同じですが、『生一本』からではなく…。

背面に白色で縁取られた黄色の縦線が入るので、『黄一本』でしょうか…。

でも…

〈同種同個体 同日 同ポイント〉

学名種小名は『3本の線のある』の意で、背面の黄色縦線は3本が主流のようです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

直前に『開けゴマ』で…(クロゴマフジタウミウシ)

2021-06-15 19:02:36 | ウミウシ

激しく雨が降ったかと思うと、カラッと晴れ上がり陽光サンサン…。

と思っていたらまた激しく降り出して、そしてまた青空に…。

って感じの沖縄的な梅雨空になった本日のやんばるです。

大雨や洪水の警報が発表されたエリアもあったようですが、こういう降り方は梅雨の終盤の印象。

梅雨明けが近づいているのかも知れません。

まあ週間予報では、今週いっぱいは雨交じりの空模様が続きそうですが…。

風は西~南西。雨のち晴れ、のち雨、そしてのち晴れ。

■■

『開け、ゴマ』

『千夜一夜物語』の1篇とされる『アリババと40人の盗賊』に登場する呪文で、物語そのものは知らなくてもこの呪文は知っているという方もいるのではないでしょうか。

唱えると洞穴の岩の扉が開き、中には盗賊の隠した財宝がある…って感じの展開でしたよね。

この呪文、何故ゴマなのかは諸説あり、食材としてのゴマの形態に関するものから、見立てや霊的な意味とするもの、あるいは神秘性や性的な隠喩とする説など、いろいろとあるのだそう。

そもそもこの『ゴマ』が植物としてのゴマに対してなのか、それともゴマ粒に対して命じているのかもはっきりとしていないのだそうです。

食材としてのゴマには『白ごま』、『黒ごま』、『金ごま』と大きく三つに分けられて流通しているのだとか。

この三つ、何が違うのかというと、その見た目なのだそう。

つまり『白ごま』や『黒ごま』といった特定の品種があるわけではなく、種子の外皮の色が白いものは白ごま、黒いものは黒ごま、黄褐色のものは金ごまと呼ばれているのだとか。

栄養成分はほぼ同じなのだそう。細かな成分の違いはあるようですが…。

抗酸化作用を持つ成分が豊富に含まれているゴマですが、そのまま食べても栄養成分がほとんど吸収できないのだとか。

ゴマの健康効果を最大限に高めるためには、外皮を壊した状態、つまりすりゴマの状態で食べるのが良いのだそう。ただしゴマは酸化しやすいので、直前にするのがベストなのだそうですよ。

外皮を開くと中に栄養成分が…。直前に『開けゴマ』して食べるのが良いと言うことですね。

■■

さて…

〈フジタウミウシ科フジタウミウシ亜科フジタウミウシ属クロゴマフジタウミウシ Polycera sp. 21年4月9日 沖縄島安和〉

体表に黒ごまを振りかけたような本種。黒ごま模様といったところでしょうか。

ただし胡麻模様というのは和柄にあって、それは胡麻を振りかけたような模様ではありません。

胡麻の実の断面図をモチーフにした模様なのだそう。

『健康長寿』を願う縁起物の和柄なのだそうですよ。

〈同種同個体 同日 同ポイント〉

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コーヒーカップはドーナツではない(キホシウロコウミウシ)

2021-06-08 19:57:00 | ウミウシ

午後遅くから強雨になったやんばるです。

まあやんばるだけでなく沖縄島中で激しく降ったようで、冠水した道路のニュースが流れてたりしてました。

大雨や洪水の警報が出ているところもあったよう…。

明日以降はそんなに激しく降らないようですが、週の半ばは一時雨の予報。

その後、週末にかけては晴れアイコンが見られる予報になっています。

風は南東。晴れ時々曇、のち強雨。

■■

とある大学の数学科の給湯室では、コーヒーカップに『注意!これはドーナツではない』と書かれているのだとか。

誰かがドーナツと間違えてコーヒーカップを食べてしまわないようにということです。トポロジーのジョークですね。この大学にはトポロジストが多くいるのかも知れません。

トポロジーとは位相幾何学のことで、何らかの形を連続変形しても保たれる性質に焦点を当てた学問なのだそう。

そしてトポロジー的には、ドーナツの形とコーヒーカップの形は同じ(同相)なのだとか。

形って不可思議ですね…。

生物の形、すなわち生物体の構造の基本的、一般的形式はボディプランと呼ばれ、分類学に置いて第一に着目されるのがこのボディプランなのだそう。

およそ5億4200万年前から5億3000万年前の間のいわゆる『カンブリア大爆発』という現象で、突如として今日見られる動物のボディプランがでそろったのだとか。

そこでありとあらゆる可能性が探られ、現代の生物体へと繋がっていったよう。

まあしかし今だって、なかなかに奇天烈な形の生命体はいますよね。

例えばスクリューのような推進構造を持つバクテリアとか。あるいは、歯車を使ってジャンプする昆虫の幼虫とか。

さらには、車輪を回転させて移動する細胞とかもいるのだとか。ちなみにこれ、魚類の表皮細胞です。

スクリューに歯車に車輪…、生物の形は何でもありなように思えたり…。

■■

さて…

〈カンランウミウシ科キマダラウロコウミウシ属キホシウロコウミウシ Cyerce sp. 21年4月9日 沖縄島安和〉

この子もかなりユニークな形をしています。

ファインダーを覗きながら、どの角度からどこにフォーカスすればいいのか、最初すごく迷いました。

そもそも出会ったときにはどっちが頭かもよく解らなかったし…。

〈同種同個体 同日同ポイント〉

背面突起の形も触覚の形も、見れば見るほど個性的に思えたり…。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

女性形(シラヒメウミウシ)

2021-05-25 19:00:12 | ウミウシ

先週末から梅雨空が戻ってきたやんばるです。

週が明けてもそんな空模様が続いていますが、前線の活動は活発ではないような感じの降り方です。

青空が見える時間帯もありました。

週間天気予報を見ても、曇メインの日が続くような感じの予報になってます。

風は北~北東。曇時々雨。

■■

英語でチャイナ(china)、フランス語ではシーヌ(chine)という言葉、もちろん中国を表す言葉ですね。

その語源は中原初の統一王朝である『秦』に由来しているのだとか。

大航海時代にインドを経由してヨーロッパにこの言葉が伝わったとき、シンからシーナに変化したのだそう。

ギリシャ・ラテン圏では、国名・地域名は女性形になることが多く、シン(chin)もシーナ(china)になってしまったのだとか。

もちろんその後秦王朝は滅亡してしまいましたが、シーナという言葉は定着したのだそうです。

日本にはこの言葉は仏典を通じて平安時代に伝わったよう。江戸時代前期には地域を表す呼称として定着していたようです。

そして今も地理的な言葉として馴染み深いですね。

『東シナ海』や『南シナ海』、『インドシナ半島』とか。

あとラーメンに欠かせない『シナチク』なんて言葉もまだ残っているのでは…。

それとももう今は『メンマ』でないと通じないのでしょうか?

■■

さて…

〈イロウミウシ科アデヤカイロウミウシ属シラヒメウミウシ Goniobranchus sinensis 21年3月30日 沖縄島安和〉

学名種小名は『中国の』の意。

秦のギリシャ語・ラテン語表記が Sinae ですから、そこからなのでしょう。

つまり厳密には『秦の』の意になるのでしょうか…。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西遊記のラストシーンは…(トウリンミノウミウシ)

2021-05-16 18:38:53 | ウミウシ

灼熱~な日々が続いてますやんばるです。

いつまで休むのか…って感じの梅雨の中休み中です。

当然気温はぐんぐん上昇し、本日も真夏日寸前の29℃を記録しました。

水温もぐんぐん上昇中で、場所によっては27℃を上回るところも…。

週末には雨交じりの空模様になりそうですが、日曜日からの5日間ほどは平年よりかなり高くなるとして、気象庁は『高温に関する早期天候情報』を発表しています。

雨交じりでも、まだまだ暑い日々は続きそうです。

風は南西。晴れ。

■■

孫悟空(ドラゴン×××じゃなくて西遊記の方)をイメージするとき、どんな姿を思い浮かべます?

例えば雲に乗って空を飛ぶ姿。あるいは、長い棒状の武具を振り回す姿でしょうか。それとも、頭に輪っかがある猿の姿でしょうか。

これらは全て孫悟空の定番アイテムですよね。空飛ぶ雲は『觔斗雲(きんとうん)』、伸縮自在の武具は『如意棒または如意金箍棒(にょいきんこぼう)』。

そして頭にはまっている輪は…、あれ、何という名前なのでしょう。觔斗雲や如意棒という名前を知っていても、あの頭の輪っかの名前を知っている方はなかなかいないのではないでしょうか。

あの頭の輪っかは、『緊箍児(きんこじ)』というのだとか。

『緊箍児』は頭にはめると肉に食い込んで根が生えるのだそう。そして『緊箍児呪(きんこじじゅ)』という呪文を唱えると、『目がはれあがり、頭が痛くなり…』という効果があるのだとか。

孫悟空の乱暴も諫められるくらいですから、相当な痛みなのでしょう。

ところで西遊記のラストシーンをご存じでしょうか?

天竺に辿り着いた三蔵法師一行は、それぞれが仏になります。当然孫悟空も『闘戦勝仏』という仏になり、三蔵に「仏になったのだから、もう頭に輪っかをはめておくこともないでしょう?」と訴えます。そして三蔵に促されて頭を触ると、もうそこに『緊箍児』がないことを知って安堵するというシーンで終わっているのだそうです。

やっぱり『緊箍児』は相当に痛かったのでしょうね。

■■

さて…

〈ヨツスジミノウミウシ科Favorininae亜科トウリンミノウミウシ属トウリンミノウミウシ Godiva sp. 21年3月15日 沖縄島安和〉

和名の『トウリン』が『頭輪』由来なのか、実はよく知りません。あしからず…。

学名を見ると、口の中に甘い味が広がるウミウシです…。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする