湘南徒然草

湘南に生まれ、育ち、この土地を愛し、家庭を持ち、子育てに追われ、重税に耐える一人の男の呟き。

法要の道具として”上縁四突起側面反復文様土器”があった・・・歴史の考察

2021-08-23 19:13:47 | Weblog

火焔土器の話を続けます
火焔土器の上縁には四つの突起があります
この突起は、四つとも同じ形です
側面の文様も、この四つの突起に合わせて
同じ文様が土器側面に沿って4回繰り返されます

岡本太郎は火焔土器の自由奔放な表現を現代芸術に通じる表現と言いました
実際には、自由奔放に見えても、厳しい形式に則っているわけです
ターンテーブルにのせて回転させ、横から眺めれば
1回転の内に、同じ文様が4回繰り返されるわけです
土器を固定し、周囲を1周回っても同じことです

そこで、私は火焔土器のことを

”上縁四突起側面反復文様土器”

と名付けたいのですが、問題があります
そうした形式を持つ同時代の土器が他にもあるからです
山梨県や北関東から出土する深鉢式土器と呼ばれるものに
火焔土器と共通する、この形式のものがあるのです
ただし、大きさと形状はかなり異なりますが
同じ意味と用途があったと推定できます

縄文土器が生命を象徴する造形なら
当然ながら、側面の文様には、その意味があるはずです
縄文時代中期、本州中部山岳地帯に共通する文化があったのです
反復文様から想像される生命観といえば「輪廻転生」です
人は死しても、また生まれ変わるという思想です
それが縄文人の生命観だったのです

では四つの炎は何を意味しているのでしょう
これは埋葬までの間、遺体を野生動物の襲撃から守る4つの炎を意味します
遺体の回りに4つの火を焚いて、夜通し絶やさず、見張りをし
野生動物を寄せ付けないためです
おそらく、死臭を消すため香も焚いたことでしょう
これが現代まで残る”通夜”の原型です

私は”上縁四突起側面反復文様土器”は模擬葬儀に使われたと考えます
縄文人の生命観を表し、埋葬の儀式をなぞるのです
当代の名工に時間をかけて作らせていますから
当然ながら、葬儀には間に合いません
早くとも四十九日法要、遅ければ一周忌法要に使ったのでしょう
4つの突起は紐が通せるようになっています
ここに紐を通し、土中に下ろしたのです

縄文人は、遺体を横にし、折りたたんで埋葬しました
遺体を筵のようなもに挟んで四隅に縄を通して墓穴に下ろしたのでしょう
法要の時に、その模擬行為をして、土器を地中に納めたのです
縄文人にとって、4という数字は葬儀を象徴する数字であり、死を連想させる数字でした
その文化が現代まで残り、日本人は4という数字を忌み嫌うのです

ただし、四方とか四季というように
自然と大地の原理を象徴する数字も4です
縄文人にとっては、4は特別な数字でもあったのです

付け加えるならば
法要をするのは、周辺の地域から葬儀に集まるのに時間がかかるためです
遺体の腐敗を避けるため、村人だけで埋葬を済ませ
後で大々的な法要をする必要があったからです

上延四突起側面反復文様土器を使って法要を営まれる人は、どういう人だったか?
普通の村人ではなく、国王級の人だったのです
だからこそ、当代の名工が腕によりをかけた作品を残したのです
そういう文化が縄文中期本州中央部山岳地帯にあったのです

さらに付け加えるなら
側面を回転しながら反復文様を眺めるのは法要参列者です
日本の伝統的葬儀では”葬式回り”と言って、参列者が棺の回りを回ります
その疑似行為を、法要参加者は、この土器の周囲をまわることで、していたのです



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