湘南徒然草

湘南に生まれ、育ち、この土地を愛し、家庭を持ち、子育てに追われ、重税に耐える一人の男の呟き。

「カムイ伝」は作り話

2009-09-30 11:53:59 | Weblog
本日の産経新聞1面に
田中優子法政大学教授のコラムがでています
このコラムは出来が悪いのですが、今回も最悪です

論理がハチャメチャで
「カムイ伝」と差別と黒人大統領誕生が
どの様に繋がっているのか、さっぱりわかりません

田中教授は何が言いたいのでしょう?

田中教授は、なんと「カムイ伝」を教科書にして
大学の授業をしているそうです

マンガ好きの総理大臣は、まともに漢字も読めず
彼の不人気により、自由民主党は政権の座を去りました

大学で、マンガを、大真面目に、歴史の資料とするなら
マンガ好きの総理大臣に恥の意識が無いのは当然です

しかし、はっきり断っておきますが
マンガはマンガであり
どんなに上手に、分かりやすく描いてあるからといって
そこに歴史の真実があるわけではありません

「カムイ伝」はフィクションです

司馬遼太郎の小説を読んで、歴史を語る人がいます
います・・・というより、多いです
一般人の歴史認識というものは、そうして出来上がっていくのでしょう
歴史というものは、そういうものなのかもしれません

歴史の真実は、世論のごとく
そうした、多数決で決められてしまう可能性があります

歴史家の役割とは
世論の多数決から、歴史の真実を救い出すことにあります
デマを流されても、過去の人々は抗議できません
歴史家はデマゴーグではなく
真実を愛する誠実な人でなければいけません

勿論、歴史家に限らず
学者、知識人と呼ばれる人は
まず、何より、誠実でなければならないのです
そうでなければ、一種の詐欺師となるからです

罪に問われることはなくとも
そして、実際に、真実が研究の過程で明らかになることもあるので
学者のミスを一概に批判はできないのですが
はじめから、自分の思い入れで、フィクションに逃げるのはいただけません



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予言としての”友愛革命”・・・カレルギーの思想12

2009-09-29 20:12:28 | Weblog
ここまで、私の拙い解説で
カレルギーの思想を紹介してきました
皆さん、いかがなものでしょうか?

なにぶん急なものでしたので、私の準備不足もあり
このような中途半端なものとなってしまいました

鳩山政権の誕生にともない、私としては
鳩山一郎氏の翻訳した「自由と人生」を中心に
現時点で、皆さんにご紹介したい部分は一応終わりました

カレルギーの生涯と思想については
近い将来、ふたたび、このブログで取り上げるつもりです

最後に「友愛革命」について、簡単に触れたいと思います

カレルギーによれば、友愛革命とは
フランス革命の自由主義が、貧富の差と階級的憎悪を作り
ロシア革命の平等主義が、破壊と抑圧を作り出した現在
次に来るべき、可能性のある革命の想像です

今から80年以上前に、カレルギーは予言しました

共産主義国家は
国民の全てが共産主義の失敗に気付くまで、存続し続ける
そして、外からの侵略ではなく、内部から崩壊するであろう
あるいは、いつの間にか資本主義に変貌して存続する・・・

マルクス主義が階級的憎悪を生み出したのではない
貧困と奴隷労働が階級的憎悪を生み出したのだ
貧困と奴隷労働に対する戦闘の武器は
マルクス主義ではなく、技術革新である

近代的な科学技術の発達する以前は
人間の生活、文明、経済は人間の筋肉労働に頼らざるを得なかった

古代ローマの力も、アテネの自由も
奴隷労働の上に依存していた
もし当時、奴隷解放をすれば、文明の自殺になったであろう

科学技術の発達が、人口の要求以上の食糧を生産し
近代工業の大量生産技術は
従来、贅沢品であったものを、労働者大衆に供給できるようになる

過労と失業は、仕事を分け合うことで解消できる

社会問題が
資本主義と技術革新で解決できることを、一般の人々が認識できるようになれば

「財産は泥棒の別名」などと言われることはなくなり

「財産は人間の権利なり」と、フランス革命の標語通り、言われるようになる

その時、現在の階級闘争は終焉する

雇用者と被雇用者の間に対立があっても
革命の危険なしに、解決されるであろう

都市のブルジョアジーとプロレタリアートの階級意識は消え
農村の大農小農の違い程度のものになり
多少の嫉妬はあっても、階級闘争は起きない

人々が、日本人のように、毎日沐浴するようになる

人々が、権力への意志を持ち続け、戦い続けるというのは間違いだ
人々が権力を指向するのは
権力を持たなければ、自由が得られなかった時代と社会のためだ

工業技術の勝利による階級闘争の終焉は、友愛のための大革命を形成する
それは、個人主義を基調とする社会主義であり
隣人の個性を尊重することをもって、人格の観念の最高位とするものだ

もし母親が弧弱なる幼児を乳養する習慣がなければ
全ての哺乳類、そして勿論人類も、とうの昔に絶滅している
一切の友愛主義、一切の人道主義に対して、母性的感情はその核心を成す・・・
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平和を実現する関税同盟・・・カレルギーの思想11

2009-09-28 13:55:12 | Weblog
ルシュールは
フランスの経済指導者から成る第2委員会を作りました
この経済委員会は
フランスの経済部門を代表する20名からなるものでした

ドイツにも、これと同様の委員会を結成し
フランスードイツ両国間で、パン・ヨーロッパとして
経済問題を話し合うことが決議されました

ドイツ経済界はパン・ヨーロッパ運動を真剣に考えていませんでした
第1回パン・ヨーロッパ会議以後、急に関心を示し始めたのです
ドイツの経済指導者の大部分はフランス同様に国粋主義者でした
彼らに関心を起こさせたのは、ヨーロッパ関税同盟でした

ベルサイユ条約により領土の一部を失ったドイツは
過剰人口を養うため、食料を輸入せねばなりませんでした
その輸入代金を得るためには、工業製品を輸出しなければならなかったのです
ドイツにとって、輸出は死活問題でした

ところが、多くの隣接諸国は自給自足政策をとり
貿易障壁は強くなるばかりでした

ドイツのいろいろな大コンツェルンは
ヨーロッパ関税同盟を作るためなら
喜んで政治上の譲歩を行なうか、政治問題の方を我慢する気構えを示したのです

コンツェルンにとっては、政治より経済の方が重要でした

「ドイツ帝国よりもドイツ関税同盟の方が先に出来ていたのだ」

その話を、カレルギーは何人ものドイツ人から聞かされたのでした

ドイツの経済指導者達は
フランスの経済指導者達と協調して
新しい独仏戦争の勃発が不可能となるほど
両国の経済が組み合わされることを欲したのでした・・・

・・・実際には
その後のブロック経済化と世界恐慌により
カレルギー達の目論見は実現せず
第二次世界大戦が起こり、独仏戦争も勃発してしまいました

カレルギーの理想を、真に、人々が理解するのは第二次世界大戦後となりました

自由貿易を否定したブロック経済が、結果として
第二次世界大戦を引き起こした事情を人々は理解したのです
平和のためには、関税同盟が必要だったのです
カレルギーらの洞察は正しかった・・・

EUは、ベネルクス3国の関税同盟に始まり
EEC(ヨーロッパ経済共同体)となり
ECとなって、英国も加わり、現在のEUになりました
関税同盟に始まり、農業問題をはじめ、幾多の困難を乗り越え
ついに、共通通貨を発行するまでに至りました

EUの進化の歴史を
経済的効率の追求の歴史のごとく解釈する者もいます
それは、とんでもない間違いなのです
あくまで平和を実現する手段としての、重要な経済政策として出発したのです
このことを人類は、けして、忘れてはならないのです

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政治家と経済人・・・カレルギーの思想10

2009-09-27 18:58:54 | Weblog
カレルギーとハイエクの違いは
ハイエクがあくまでも経済学者として
経済理論的な正しさにこだわるのに対し
カレルギーは、人間の全体としての自由にこだわるため
経済システムなどは、人間にとって都合の良いものを
その都度、事情に合わせて使えばよいと考える点にあります

国家による統制経済に対する考え方が
カレルギーとハイエクではくっきり違います
それはまさに、人間全体から経済を見るカレルギーと
経済から人間社会を見るハイエクの違いなのです

ただし、カレルギーは経済を軽視してはいませんでした
ある時期からは、政治家よりも経済人の方が
ヨーロッパ統合運動に対しても、期待できると考えていたようです

カレルギーが、政治指導者を通じて紹介された経済界の指導者達は
政界の指導者たちよりも、実際的であり、行動的でした

カレルギーが、フランス外相アリスティド・ブリアンに
フランスにおけるパン・ヨーロッパ委員会の人選を頼んだとき
ブリアンが委員長に指名したのはルイ・ルシュールでした
経済界の指導者にして政治家でした
他の人物を想定していたカレルギーは意外でした

カレルギーは、ルシュールとともに
フランスのパン・ヨーロッパ委員会を
すべての政党指導者、元大臣、元首相、元大使・・・
学者、芸術家、ジャーナリスト・・・から結成しました
そして、ルシュールは言いました

私達は良い委員会を作った
もっと名前を連ねようとすれば、それもできる
しかし、この委員会の力でパン・ヨーロッパが作れると思ってはいけない
この委員会の委員連中は、1年に1回の総会に出席するか、欠席する
それ以外には、パン・ヨーロッパのためには、何もしない
もし貴方が真に
パン・ヨーロッパの味方に、フランスを引き入れようと思うなら
経済指導者からの援助が必要です


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自由経済も万能ではない・・・カレルギーの思想9

2009-09-26 15:53:51 | Weblog
カレルギーによる
一党独裁体制が軍国主義化する過程の分析は
私に、ハイエクによる
全体主義の指導者の性格に関する分析を思い出させます

人々は、ナチスドイツの悲惨の原因をヒトラーの性格に帰します
同じく、ソ連の悲惨の理由をスターリンの性格に求めるのです
カレルギーは、指導者の性格に原因を求めるのは間違いであると指摘します
ハイエクもまた、同様の考え方をします

ハイエクは計画経済を否定します
そんなことは、人間の知性では不可能だというのです
複雑な要素が無限に絡み合う経済現象は
どんなに優れた知性の持ち主でも
全体をコントロールすることはできないからです

ハイエクによれば、計画経済は
不可能なことを可能だとする前提で成り立っていることになるのです
そのため、虚偽やゴマカシ、隠蔽がはびこり
誠実な人間は耐えられなくなるのです
虚偽や隠蔽に平然と耐えられる不誠実な人間だけが
全体主義国家の、立身出世の階段を登り続けることができるのです
したがって、全体主義国家では、指導者はもとより
幹部連中が皆、不誠実な人間ばかりになるのです

ここで私が、ハイエクのことを扱うのは
カレルギーとハイエクがとても似ているからです
そして、この両者の共通性と”違い”が興味深いからです

二人とも、19世紀末に生まれ
ウィーンで学んだ自由主義者です
先祖を辿れば、ハプスブルク家の家臣であり、貴族です

ハイエクはサッチャー革命、レーガン革命の原動力となった思想家です
20世紀の自由主義経済学の中心に位置し
ノーベル経済学賞を受賞しています

ハイエクは、共産主義だけでなく、政府による経済活動への干渉に反対しました
いわゆる市場原理主義の教祖とみなされているのです
昨年、米国でサブプライムローンの破綻による不況が起きるまで
その権威はゆるぎないものでした

ハイエクは、ソ連の共産主義はもとより
ナチスの国家社会主義、ムッソリーニのファシズム
イギリスの社会主義的な統制経済までも批判しました

カレルギーは、イタリアのファシズムを好意的に解釈し
もしこれがイギリスで、世襲貴族による上院を廃し
各種業界団体の代表による上院とすることができたならば
民主主義の偉大な勝利であると賞賛されたであろうと言うのです

カレルギーは無慈悲な競争による自由主義経済を支持しませんでした
この点がハイエクとの”違い”なのです

カレルギーはイタリアのファシズムを支持していません
しかし、党や政府ではなく
各種業界団体が経済界を指導するシステムは
良いものだと考えたのです

これを、ファシストが発明したシステムだからといって
嫌悪する必要はない・・・というのがカレルギーの主張なのです
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一党独裁国家は仮想敵を必要とする・・・カレルギーの思想8

2009-09-25 17:51:00 | Weblog
カレルギーの思想は
政治思想に関しては
何と言ってもヨーロッパ統合の提言と
全体主義との戦いが重要です

彼の全体主義の分析では
全体主義にもいろいろあり
イタリアのファシズムに関しては、比較的好意的に分析しています
共産主義の侵入に対する防御として成立したというのです

カレルギーは
全体主義の問題は、独裁者の意志や人格によるものではなく
批判を許さない一党独裁体制がもたらすものだと考えます

一党独裁体制は、反対派が非合法活動に走るため
それへの対抗上、警察国家化するのです
さらに、党内での権力闘争がありますから
党自体が確実な命令系統を持つ軍隊組織のごときものになるのです
そして、政府が軍隊組織化するのです

政府が軍隊組織化すれば、国は軍国主義になります
一党独裁体制は、必ずしも戦争は望みません
敗戦は政権崩壊につながるからです
にもかかわらず、仮想敵を想定し、盛んに臨戦態勢を宣伝するのです
そうでもしなければ、軍国主義体制が維持できないからです

独裁国家では、指導者は必ず冷酷非情な権力主義者になり
権力者を取り巻く幹部連中は不誠実なイエスマンばかりになります
人々は彼らの性格が独裁国家の悲惨を生み出すと考えますが
実際は、こうした人物と組織でなければ
一党独裁体制は維持できないのです

現代でも、良い例があります・・・北朝鮮です

北朝鮮は先軍政治という軍国体制を布いています
周辺諸国で、北朝鮮を侵略しようなどと考えている国はありません
それなのに、軍国体制は強化されるばかりなのです
まったく、合理的には、理解できない現象なのですが
以上のように考えれば、簡単に理解できるのです

いまだに、日本を侵略国家であると非難する国があります
理屈は北朝鮮の場合と同じだと考えればいいのです
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民主主義や憲法より重要なこと・・・カレルギーの思想7

2009-09-24 19:17:27 | Weblog
カレルギーの思想は
人間は、全体的に生きるのが目的だ、というものです

人にはそれぞれ
美意識があり、信仰する宗教や、信じる思想があります・・・
食欲があり、性欲があり、家庭の事情があります

これら全体を含むのが人間です
それを実現するために
人間にとって、一番重要なのは”自由”だと
カレルギーは考えます

カレルギーは民主主義の偉大な価値を認めます
しかし、それ以上に、自由の価値を認めるのです

民主主義と自由は必ずしも一致しません

カレルギーは
もし私有財産権や信教の自由を認めない勢力が選挙で勝利しそうであれば
なにがなんでも、それを阻止しなければならないと主張します

隣国の侵略意図が明瞭な時には
憲法問題などに拘泥せず
生死の問題を眼中におかざるを得ないと指摘するのです

民主主義も憲法も手段なのです
人間という目的のための手段にすぎないのです

生活様式(ライフスタイル)や財産や宗教は
民主主義の原則よりも
はるかに、卓越して重要なものだと
カレルギーは指摘するのです
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野党の重要性・・・カレルギーの思想6

2009-09-23 18:48:37 | Weblog
私は、総選挙における民主党の勝利に触発され
その因って来る要因を、さか登るうちに
田中角栄、鳩山一郎、・・・そしてクーデンホーフ・カレルギーに至り
彼の思想を紹介することとなりました

カレルギーがイギリスについて論じた
議会における、フェアプレイの精神の重要性は
ぜひ、与党となった民主党議員の皆様に理解していただきたいことです

そこで今回は
野に下った自民党の皆様を励ます内容といたします

カレルギーによれば
民主国家における野党は
人権尊重という点では、与党以上に重要な役割を演じているのです

民主主義国家が全体主義国家を建設するに至らなかったのは
野党による阻止の力が大きかったからなのです

野党は、次の選挙で与党に勝つため
容赦なく与党の失政を攻撃し続けます
これが、国政の調節機関として、極めて重要な役割をしてきたのです

今日、民主国家において、無実の人が逮捕されたり
警察から不当な扱いを受けたりすれば
マスコミが黙っていませんし、野党はこれを政府に質します
行政機構に汚職の疑いが露見すれば、マスコミはこれを騒ぎたて
野党は厳しく政府を追求します

これによって、担当大臣が辞職に追い込まれることもありますし
内閣そのものが崩壊することもあるのです

もし一党独裁の国で、こうした事件が起きても
犠牲者は、助かる方法はなく、不正はもみ消されてしまうのです
それでも尚、不平不満を並べ立てようものなら
逮捕され、拷問され、殺される危険さえあるのです

野党が存在する民主的制度は
今日においても、政府当局に横暴不正がある場合には
人民にとって最善の保障となり
個人の法律的身分や、個人的自由を保護する有力な障壁となり
人間を国家より保護しているのです

カレルギーが
ここまで野党の存在を高く評価するのは
全体主義国家というものが、一党独裁体制であり
野党の存在を許さないからです

一党独裁の全体主義国家では
重要なのは、誰が党の執行委員であるかということだけです
かりに民主的な憲法を持ち、純粋に多数の支持を得た議会があったとしても
それは表面を取り繕う飾り物に過ぎないのです

さらに、カレルギーは言います

いずれの民主国にせよ
もし一党だけが政府を独占して
他の党派が全部拒否せられたならば
一朝にして全体主義的組織に変化してしまうことは
何の造作もないことだ・・・と
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イギリス議会制の不文律・・・・カレルギーの思想5

2009-09-22 21:36:27 | Weblog
1935年当時の政治状況をみると

ロシア、ドイツ、イタリアは
その憲法が人民主権の立場を明記し
多数の支配を原理とする、大いに民主的なものでした

しかし、ロシア、ドイツ、イタリアは自由な国柄ではありませんでした

イギリスは、自由で議会制度の国ではありますが
憲法は部分的にしか民主主義の原理にそっていません
君主制であり、世襲貴族による上院もあります

アメリカ、スイスは自由で民主的ではありますが
議会政治ではありません
それら政府は、議会による不信任決議で倒れることはありません

個人の自由を尊重する少数者の寛容な支配もあれば
自由の権利を一切制限してしまう狭量な多数者の政治もあるのです

民主主義と自由主義は同じではありません

イギリスは、国王や上院があり
他の多くの国々とくらべて、民主的ではありません
しかし、この当時、最も自由な国であり
個人的自由と人格の尊重されることは、他に類例を見ないものでした

イギリスの議会政治が、ヨーロッパ諸国と比較して、成功した理由を
カレルギーは、イギリス議会に”不文律”の基礎があるからだと考えました

民主主義諸国の成文憲法は、多数党に無制限な権力を賦与しています
イギリスでは、不文律により、暗黙のもと、これを制限しています
対立政党が敗北した場合でも、フェアプレイの精神で臨むのです

イギリス議会の不文律とは、たとえば
敗れた対立政党を追求し、根こそぎ殲滅するような悪どい勝利を禁じます
対立政党が再起し、将来の選挙で勝てるようなチャンスを与えます
また、与党が敗れた場合には
暴力をもって対立政党を弾圧するようなことはせず
潔く政権の座を引き渡します
選挙戦において、非難や批評は自由ですが
名誉毀損や侮辱の類はしてはならないのです

イギリス議会では、心構えに武士道が要求されるのです
この精神は、紳士にこそ宿るが、無頼漢には皆無のものです

イギリス以外の多くの国々では
残念ながら、無頼漢が議会を占領していたのです

無頼漢は、一度選挙で獲得した権力は、脅迫でもされないかぎり離しません
屁理屈をこねて、政権引渡しを拒んだり
選挙結果を誤魔化したり
恐喝や暴行により、無理な多数派を形成しようとするのです
無頼漢は、そうしない方が馬鹿か臆病と考えるのです

ドイツにおける議会政治の覆滅は
二大政党が、公正なる勝負の法則を理解せず
選挙を利用して独裁政治を建設しようとし
爆弾をもちいて選挙を蹂躙することも辞さなかったからです

イギリスの民主主義は
英国紳士の理想と同一の精神の二つの面なのです
独裁政治は文明のあらゆる段階に存在できますが
民主政治は、高い道徳的水準を必要とし
武士道の強い観念が随伴するのです

イギリスの自由は
紳士のために紳士によって創造された自由です
その理由によって、イギリスは
独裁政治や全体主義の危険から免れているのです


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近代民主主義の成立・・・カレルギーの思想4

2009-09-21 18:05:53 | Weblog
近代ヨーロッパに民主主義が成立した根本原因は何でしょう

カレルギーによれば”火薬”と”印刷”です

銃を持った一兵卒は
騎馬に乗り剣や槍を持つ武士より強いのです
銃砲が戦場の主役となった時
勝敗を決するのは、武士の武勇ではなく、火器と兵士の数量です

フランス革命に始まる徴兵制は
兵士の数を揃えることを容易にしました
これがナポレオンに勝利をもたらした要因の一つです

徴兵制は普通選挙に匹敵する民主制度である・・・と、カレルギーは言います
国民の中から徴兵するわけですから
政府当局は世論を無視した政策を行なえなくなるからです

印刷技術の発明は義務教育を作りました
書物の大量生産が義務教育を可能にしたです

それまでは書物から得られる教養は、僧侶や貴族など上流階級の独占物でした
大衆は読み書きを覚えることで、無知蒙昧から解放され
世界情勢を知ることが出来るようになりました
政治に関心を持てるようになったのです


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