子どもの頃に苦手だった食べ物が、いつの間にか好物に変わっている。成長するに連れての声変わりならぬ「味覚変わり」はどんな時期、どんな要因がきっかけで生じるのだろうか。
自身は子どもの頃、内臓系の肉が苦手中の苦手だった。特にダメだったのがレバー。あの濃厚な食感と香りが、当時はきつすぎて全く受け付けなかった。が、焼肉に行くと頼んでもないのに、母親が焼けたのをひょい、と皿にのせてくる。「体にいいから食べておきなさい」のひとことがまた、追い打ちのプレッシャー。言われてみると「体にいいから」の前振りがつく食べ物は、子どもは大概苦手なような気がする。
で、どうして食べられるようになったか思い出すと、中学生ぐらいの頃に見た父の晩酌が浮かんできた。焼き鳥や煮込みのモツやレバー、皮をアテに、今宵も天下泰平な様子を脇で見ていれば、子ども心に実にうまいもんに見える。この頃は運動部もやっていたから、「体にいい」には逆に興味が湧く時期。酔った父からのもったいぶったお裾分けがまた「価値観」を高め、希少なレバー串をホッコリ、ねっとり、じっくりと味わったものだ。
思うに、嗜好は味覚の変化に加え、食への興味や意欲の変化にも影響されるのではなかろうか。言われながら食べるより、そそられて誘われる方が、興味も食欲も湧くというものだ。今や、内臓系は大好物の自分の晩酌では最近、娘がアテの焼き鳥串をひょいひょい、と持っていく。これは味覚の開花か伝承か、はたまた単に酒飲みの血筋開眼なのか?(130502)