ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

一献一品出合い酒@九段下

2013年05月16日 | ◆一献一品出合い酒

魚料理が絶品の「魚鐵」にて、出羽櫻×薩摩揚げ。丼盛りの刺身でビールを空けた後のひと息なら、ビシビシ辛口の地酒を優しく受けてくれる、このコンビが似合う。

揚げたて熱々を冷めないうちに、ショウガ醤油でひとかけら。グッと押し返す弾力を待ち受けたら、フッと穏やかでソフトな食感に、驚きよりも和みを感じる。湧き上がる魚味の濃さを、シャープな後口の酒で流したら、今度は何もつけず素のままの、すり身の旨味をかみしめる。漁師料理ではない、飲み屋のお袋の味の肴を、鋭い地酒が引き立てる一期一会。

ふたつ三つとアテをつまみ、猪口もグイグイ進むのは、薩摩揚げのほのぼのさのせいか、飲み相手である旧友と花咲く昔話のせいだろうか。一献一品の小さな酒宴、今宵も天下泰平なり。(130516)


日々是好食…カレーパンの素性

2013年05月16日 | ◆日々是好食

カレーパンは、パン屋の店頭を飾るスタークラスの惣菜パンだ。販売トレイに盛られた、香ばし気なコートをした見た目は、ほかのしっとり系のパンとは一線を画した貫禄を感じさせる。トングが迷わず伸びていき、ひとつ、ついでにもうひとつ。レジで油物用の紙に包まれるのを見たら、もう家に帰るまで待てやしない。

帰路を歩きながらひとつだけ、とガサゴソとり出し、バクリといけば生地はカラリふっくり、そして中からルーがグジュッ。締まり目で具が多めなのは、お母さんの昨日のカレーを思わせる。さらに揚げたてのタイミングに出くわした日には、その食感は一新。カリカリクリスプな生地にホットなルーが、得も言われぬ好タッグを形成し、このひと時だけで一日が幸せに思えてしまう。

にしても、カレーパンはその素性が、実に不思議な食べ物だ。カレーといっても、本国インドには存在しない。パンとはいえ、ヨーロッパにも見られない。そもそも揚げた見た目と食感は、パンというよりはフライのようにも。いわば、カレーに揚げ物にパンが組み合わされた、日本人が好きなものが合体した洋食パン。明治期に生まれた先輩格のあんパンの流れをくむ、ハイブリッドアレンジな日本の食べ物なのである。

ホテルのカレーはうまい、との定説があるが、ホテルのカレーパンもやはりうまい。箱根富士屋ホテルのカレーパンは、メインダイニングのカレーをアレンジした、クラシックなスタイル。ぽってりしたパン生地の食べ応えと、スパイスがひとつひとつ際立ったルーには、まだ日本の食べ物になり切る前の、「洋食」なカレーパンが垣間見えた気がした。(130516)